生産性向上が強く求められる中小企業
RPAは大企業を中心に導入が進んでいます。RPAを導入することで主に人件費の削減が可能となり、生産性を飛躍的に向上させることが期待できるからです。働き方改革に注目が集まる中、RPAの導入は企業の競争力をも左右する要素となってきました。
一方で、中小企業がRPAを導入することは決して簡単なことではありません。多額のIT投資が必要になることに加え、ITに詳しい従業員が少なく自社に最適なITツールの導入自体が難しいからです。しかし、中小企業にこそ生産性向上が強く求められているという実情も明らかになってきました。
中小企業の生産性の現状
我が国の企業全体に占める中小企業の割合は、どの程度かご存知でしょうか。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)によるとその割合は実に99.6%。中小企業の生産性は、日本全体の生産性をも左右する要素になると考えてよいでしょう。
しかし、中小企業の労働生産性は大企業の半分程度しかありません。しかも労働生産性が向上傾向にある大企業に対して中小企業は低下傾向にあり、その差は拡大しています。
参照:日本を支える中小企業|独立行政法人中小企業基盤整備機構
参照:中小企業・小規模事業者の生産性向上について|経済産業省
中小企業が直面する深刻な人手不足
従来、中小企業は生産性を犠牲にして「こだわり」「丁寧」といった要素で差別化を図ってきました。圧倒的な規模の経済性により安価な製品を大量に生産する大企業に対抗するためです。
しかし、中小企業の人手不足は深刻化しています。本業は黒字で業績も好調なのに、人手不足が原因で倒産に陥る「人手不足倒産」も常態化してきました。中小企業も生産性を向上させて人的資源不足を補わないと、もはや存続することすら難しいといえるでしょう。
参照:深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命|中小企業庁
中小企業とRPAツールの現状
低い生産性にあえぐ中小企業の救世主になると期待されているのがRPAツールです。RPAツールはどのようなツールで、その導入の実態はどうなっているのでしょうか。ここでは、RPAツールの実情について解説します。
RPAツールとは
RPAツールとは、オフィスにおける定型化された業務を自動化するツールのことです。RPAは、Robotic Process Automationの頭文字をとった用語です。RPAツールを使えば、パソコンの中に仮想的に存在するロボットに人間がやっていた定型的な業務を代行させることができます。
RPAツールはパソコン単体でおこなう業務を自動化するデスクトップ型と、複数のパソコンのロボットを統合管理するサーバー型に大別されます。さらに、近年ではAI技術を使ってより高度な業務の自動化を実現するRPAツールも登場しています。
一般的には小規模で安価な業務自動化はデスクトップ型で実現できますが、大規模な業務自動化はサーバー型が求められ、その投資額は小さくはありません。
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2021.03.11
RPAツールを種類別に比較!サーバ型とデスクトップ型の違いも解説
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「導入したくてもできない」RPAツール
人件費を抑制してダイレクトに生産性向上を実現できるRPAツールは、その市場規模を急速に拡大させています。しかし、RPAツールの導入は働き方改革への注目を背景に大企業が先行しており、中小企業では導入が十分に進んでいないのが実情です。
中小企業で導入が進んでいない要因の一つに、社内のIT技術者不足があげられます。業務を細かく分析して把握し、それを自動化するためにRPAツールの選定、設定を行うことは容易なことではありません。
また中小企業にとっては、たとえデスクトップ型でもその投資負担は軽いとはいえません。「導入したくても導入できない」、それが中小企業にとってのRPAツール導入の実情といえるでしょう。
参照:2017年度のRPA市場売上金額は35億円、前年度比4.4倍と急成長、2022年度には400億円に達すると予測
ITRがRPA市場規模推移および予測を発表|株式会社アイ・ティ・アール
RPAツールが「格差」を生み出す?
RPAツールは、AI技術を取り入れ急速に進化しています。今後RPAツールが担う役割として期待されているのがOCR(光学的文字認識)です。手書きを含めた紙の文書を読み取り、高度な業務自動化を実現できるとされています。
RPAツール導入が進む大企業とIT投資が進まない中小企業では、生産性の差がさらに広がる可能性があり、「格差」が生み出される可能性があるのです。
RPAツール導入に使える補助金はこれ!
生産性が上がらない中小企業に対し、国が資金面からの中小企業支援に乗り出しています。それが、中小企業の強い味方「補助金」です。補助金をうまく使えば、「導入したくても導入できない」RPAツールに対して導入の可能性を広げてくれるはずです。ここでは、RPAツール導入に使える補助金について紹介します。
IT導入補助金
RPAツールを導入する場合にまず検討したいのがIT導入補助金です。「IT導入支援事業者」が販売するソフトウェアを導入する場合に補助を受けることができます。IT導入支援事業者の中にはRPAツールを取り扱っている事業者もありますので、そうした事業者にまずは相談するのがよいでしょう。
- 補助上限額(A類型):150万円
- 補助上限額(B類型):450万円
- 補助率:1/2
ものづくり補助金
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」ですが、「ものづくり補助金」の名称で知られています。工場における設備投資目的で使われることの多い補助金ですが、生産性を向上させるためのITツールも対象になるため、当然RPAツール導入にも使うことができます。補助額が大きいのが魅力の補助金です。
- 補助上限額:1,000万円
- 補助率:1/2(条件を満たせば2/3)
小規模事業者持続化補助金
従業員数が5名以下(一部業種は20名以下)の小規模事業者が受けることができる補助金です。ホームページ、チラシ、看板といったプロモーション目的に使われる事が多い補助金ですが、安価なデスクトップ型のRPAツールであれば、この補助金を使うことができる可能性があります。
中小企業がRPAツールを使った生産性向上を実現するために
補助金を使えば中小企業がRPAツール導入を成功させることができるのか、といえばそうではありません。ここでは、中小企業がRPAツール導入を成功させ、生産性向上を実現するためのポイントについて解説します。
資金調達
RPAツールの導入に際し、まず立ちはだかる壁は資金面の問題でしょう。資金面の課題を解決する可能性を持つ補助金は、公募される時期に申請しないと使うことはできません。
今回紹介した補助金は、どれも今後2次公募が開始される予定(7月中旬~)のため、補助金を使いたい事業者は補助金の動向をチェックするようにしてください。
現状分析と課題の明確化
効果が高いといわれるRPAツールですが、RPAツールがあれば生産性向上が実現できるわけではありません。自社にIT技術者がいないからといってIT導入をシステムインテグレーターに丸投げすると、期待通りの成果が得られないことがあります。
まずは現状の業務を分析し課題を明確化した上で、その課題を解決するためのツールを選定することが重要です。そのうえで、システムインテグレーターなどに相談するのがよいでしょう。
運用保守
RPAツール導入後の運用体制についても検討する必要があります。情報システム部門がないことも多い中小企業の場合、クラウドサービスの利用やアウトソーシングサービスの利用により、運用負担を減らすことも検討してください。
近年では管理者不在のロボットが間違った処理をし続けたり、想定外の処理をしてしまう「野良ロボット」という問題も顕在化してきました。RPAツール導入後の運用保守体制にも気を配り、生産性向上を確実に実現できるようにしてください。
補助金を活用してRPAツールを導入しよう
RPAツールは中小企業の生産性向上の大きな味方になります。「補助金」を有効に活用すれば、RPAツールの導入も決して夢ではありません。
補助金を活用できるRPAツールを比較することから、自社の生産性の向上に組んでみてはいかがでしょうか。