RPAとは
RPAとは「Robotic Process Automation」の略であり、ロボットによる業務の自動化を意味します。近年ではAI技術の発展により、人間だけでなくロボットも仕事ができるようになってきました。このRPAという言葉は2016年ごろから使われており、大幅な業務の効率化が実現できることから、多くの企業が関心を持ち導入が急激に増えつつあります。
RPAとは具体的にどのようなものなのか、概要や従来の業務自動化ツールとの違いを説明していきます。
業務を自動化するツールのこと
RPAは業務を自動化するツールです。人間が作業手順を指示すると、「ロボット」と呼ばれる作業員がRPAシステムの中で動き回り、業務が自動的に進んでいきます。誰でもできるような単純作業がRPAの得意分野であり、そういった業務を優先的にロボットに任せることで企業全体で業務の効率化を図ることができます。
では、RPAは従来の業務自動化ツールとは何が違うのでしょうか。RPAを正しく理解するために、他のツールとどのような違いがあるのか知っておくと良いでしょう。
Excelのマクロ機能との違いは「自動化の範囲」
ビジネスシーンにおける最も身近な自動化ツールといえばExcelのマクロ機能でしょう。Excelのマクロ機能も事前に自動化するプロセスを設計すれば、指示通りに自動で計算させることが可能です。このExcelのマクロ機能とRPAの違いは自動化できる範囲にあります。
Excelのマクロで自動化できる範囲はExcelやOfficeドキュメント内での作業に限定されます。それに対して、RPAの自動化の範囲はOffice以外の社内で利用している複数のアプリケーションまで広がるのです。
例えば、売上データを計算してPDF化し関係者にメール配信する過程で比べてみましょう。
|
RPAによる自動化 |
Excelマクロによる自動化 |
データ入力 |
○ |
△ |
計算 |
○ |
○ |
PDF化 |
○ |
不可 |
メール送信 |
○ |
不可 |
例えば、RPAを活用すればデータ入力・自動計算・該当するシートをPDF化・ファイル名の変更・関係者へメールを送信といったプロセスを全て自動化できます。Excelマクロであれば、PDF化やメール送信は人の手で行わなければなりませんが、RPAならばこれらも含めて全て自動化できるのです。
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産業用ロボットとの違いは「作業内容」
「ロボット」と聞くと工場などで機械の組み立てを行う産業用のロボットをイメージする人も多いでしょう。このような産業用のロボットとRPAの大きな違いは、実施する作業内容です。
産業用ロボットは人間の手や足など体の動きを代行します。つまり工場で働く人の業務を代行しますが、RPAはデスクで働く人がPCで行う業務を代行するのです。RPAは体の動作の代わりに、キーボードやマウスによるシステムの操作・処理を自動化できます。
RPAの仕組み
ここからはRPAはどのような仕組みで業務を自動化するのかを説明します。RPAで業務を自動化するためには、まず人間が現状の業務手順をRPA用にシナリオ化する必要があり、そのシナリオに基づいてRPAが業務を進めていくのです。詳しく見ていきましょう。
人間が自動化したい業務をシナリオ化する
RPAに業務を遂行してもらうためには業務手順を記したシナリオが必要になります。従来のRPA製品では、シナリオを作成する際はプログラミングと同様にコードを書き込むなどの作業が必須であり、専門的な知識やスキルが無いと活用しづらいものでした。
しかし近年リリースされているRPA製品では、プログラミングを行うプロセスを省略し、人間が行うマウス・キーボード操作を認識して自動化するものがほとんどであり、一気に導入しやすくなりました。普段の業務手順をそのままRPAに記憶させることができるため簡単にシナリオを作成することができます。
シナリオを作成する際には、現状の作業手順を細かく整理するようにしましょう。
RPAツールがシナリオに基づいて業務を行う
RPAは作成されたシナリオに基づいて作業を行います。一度作業開始の指示を与えれば、想定外のトラブルやエラーが起きない限りは休みなく継続して作業を進めていきます。
人間と違って24時間365日稼働し続けることができるため、大量の入力作業などを任せれば一気に業務を効率化し、残業時間の短縮などの効果も得ることができるでしょう。
シナリオ作成には注意点もあります。作業手順に変更が生じたり、利用しているシステムがアップデートされた場合は、それに合わせてシナリオを修正(再登録)する必要が出てきます。シナリオが間違っていると、RPAは間違った手順のまま作業を進めてしまいます。シナリオは定期的にメンテナンスするようにしましょう。
RPAが人間のシナリオをどのように実行していくか5つのステップに分けて紹介します。
- 1. コードを認識する
- 2. データを元に判断する
- 3. PCを操作する
- 4. 作業の流れを記録する
- 5. 作業を制御する
RPAにセキュリティ上のリスクはあるか
RPAは人間が作ったシナリオの通りに業務を遂行します。それはすなわち、人間の代わりにパスワードを入力してシステムにログインしたり、アクセス権限を使って社外秘の情報にアクセスするということです。
RPAの利用によって得られるメリットは非常に魅力的ですが、その分情報漏洩などのセキュリティリスクを低減するために社内のセキュリティ対策を見直す必要があります。とはいえ、RPA導入前に比べてセキュリティ対策を何倍も強める必要はなく、企業が一般的に求められるセキュリティ対策のレベルを維持すれば十分であると言えます。
またセキュリティ面の強さを売りにしたRPA製品もあるため、心配な場合はそういった製品を優先して導入検討してみましょう。
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RPA導入のメリット
自社でのRPAの活用方法を考える前に、導入によって得られるメリットを改めて確認しておきましょう。
業務の自動化による効率と品質の向上
RPA導入の目的であり最大のメリットは「自動化による業務の効率化」です。RPAは与えた指示(シナリオ)の通り業務を行うことができるため、業務に必要な時間を削減できます。
また、人間は業務量が多いとどうしてもミスをしがちですが、RPAを活用すれば業務を効率化するだけでなくヒューマンエラーの防止もできるため、業務の品質を高められます。さらに、RPAは24時間365日休むことなく処理を行えるため、人間が処理を行うよりも短期間で処理を完了できます。
労働環境の改善や人件費などのコスト削減
RPAを導入すれば、今まで時間がかかっていた業務も短時間で完了できます。無駄に発生していた残業を削減することができ、労働環境の改善を実現します。
また、地味で単純な作業を日々繰り返していると従業員のモチベーションも下がってしまいます。単純作業を自動化することで人間が本来やるべき仕事に集中できるため、従業員のモチベーションを保ちやすくなるでしょう。RPAは長い目で見れば、人件費をかけるよりも低いコストで済むため、予算の節約にも貢献します。
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RPA導入の活用事例
RPAツールをより深く理解するために、具体的にどのような活用事例があるか知っておくと良いでしょう。自社と同じような業界の事例があれば、RPAツール導入の良い参考になります。
業務レベルの均一化と人件費の大幅削減(大手通信会社の例)
大手通信会社のA社は以下の課題を感じていました。
- 【A社の課題】
- ●顧客の情報を変更するためにはシステムで複雑な処理を行う必要がある
- ●問い合わせ内容の入力に1件20分近くかかる
- ●選択肢が多く、ミスが多い
- ●業務を行う担当者によって処理に要する時間が大きく異なる
- 【A社の効果】
- ●複雑な業務の自動化に成功、担当者の業務負担を軽減
- ●情報入力を自動化することで1件あたりの処理時間を1分に短縮
- ●ロボットが処理を行うため、担当者による差異を解消
- ●ミスの削減を実現することで業務品質が向上
このように、RPAツールを導入することで業務品質を均一にしました。また、業務時間の短縮により人件費削減も実現できたのです。
業務品質の改善(国内生命保険会社の例)
国内生命保険会社のB社は以下の課題を感じていました。
- 【B社の課題】
- ●解約返戻金の算出などの計算や事務処理の時間が膨張している
- ●処理する件数が多く人手が不足している
- ●事務処理に取られる時間が多く業務を圧迫している
- 【B社の効果】
- ●複雑な計算を自動化、ミス業務時間の削減に成功
- ●人が行っていた業務の自動化により人手不足を解消
- ●本来やるべき業務に集中できる
このようにRPAを導入することで業務のスピードが上がり、業務品質を大幅に改善できました。残業時間削減と品質向上を両立した業務環境の構築に成功したのです。
実際のRPA製品をチェックしてみよう
RPA導入時には多かれ少なかれコストがかかります。わざわざ導入するわけですから、導入して良かったと思えるような良い効果に期待したいと考えるのは当然のことでしょう。
RPA導入を成功させる鍵は、自社に適した製品を選ぶことにあります。そのためには一定数の製品を比較しながら自社で導入すべきRPA製品の条件を考えることが大切です。以下の記事でRPA製品の比較を行っていますので、導入を本格検討する際は是非ご覧ください。
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RPAを活用して企業全体の業務効率を改善しよう
人材不足や長時間労働の是正といった世論の後押しもあり、RPAツールを導入する企業は右肩上がりに増えています。自社での導入を検討する際は、複数の製品を比較し自社に最適な製品を選ぶことが大切です。RPAを最大限活用し企業全体で業務効率を改善していきましょう。