RPAツールの5つのセキュリティリスク
多種多様な業務を自動化できる便利なRPAツールですが、使い方を誤ると重大なセキュリティ事故が発生する可能性があります。RPAツールにはどのようなセキュリティリスクがあるのか解説していきます。
1.過剰な権限付与によるデータへの勝手なアクセス
RPAは予め設定された通りの動作をします。人が行っていた操作を代わりに実行するため、その業務の担当者と同等以上の権限を与えなければなりません。具体的には、必要なデータベースへのアクセス権限を与えたり、ログインするためのIDやパスワードを記憶させる必要があるのです。
これは他人に重要なデータのアクセス権を与えることと同じであり、想定外にRPAが機密性の高いデータに勝手にアクセスしてしまう可能性もあります。RPAに作業に必要な権限を与えるのは悪いことではありませんが、ある程度のリスクがあることを覚えておく必要があります。特に他部門のデータにアクセス可能な権限を与える場合は、十分に注意が必要です。
2.サイバー攻撃によるロボットの乗っ取り
RPAは人の代わりに作業をする「ロボット」であるとよく言われますが、その実態はソフトウェアであり、サイバー攻撃の対象になり乗っ取られてしまう恐れがあります。乗っ取られたRPAはこちらで指示した以外の動作をすることがあります。
インターネット回線などの社外環境に繋がっている場合は、悪意のある第三者によってバックドアと呼ばれる情報が盗まれる扉が勝手に作られ、情報漏えいしてしまう恐れがあるのです。企業に対するサイバー攻撃は近年増加し、その手口も多様化しています。定期的にセキュリティ対策を見直し、不正アクセスを防止しましょう。
3.内部の不正行為による誤った使用
セキュリティというと外から攻撃を受けて情報が漏えいするというイメージがありますが、原因が社外にあるとは限りません。RPAを悪用した内部の社員の不正行為も考えられます。
例えば他部門の重要データに不正アクセスしたり、夜間の時間帯に顧客リストなどの個人情報を盗むことも、RPAに指示を与えればできてしまうのです。誰でもRPAを利用できる状態は、社内でのRPA活用を後押しする一方で、誰がどんな指示を与えているか把握しづらくなるというリスクがあるのです。
4.設定ミスによるセキュリティ事故
そもそもRPAに指示した作業内容にミスがあり、想定外の事態を招くことがあります。例えば、顧客への定期的なメール送信もRPAでの自動化の対象になりやすい作業の一つですが、誤った顧客リストを指定していたり、別の顧客に送るデータを添付してしまうことが起こりえます。
一番の問題点は、顧客からミスの指摘が無いと担当者側では気づきにくいという点です。指摘を受けるまで長期間に渡って誤送信をしてしまった場合の損害は計り知れません。
5.ロボットの誤作動による想定外の動作
RPAと人とで同じ作業をした場合、ミスが起こる可能性はRPAの方がずっと低いでしょう。しかしRPAは絶対にミスを起こさないという認識は誤りです。RPAはソフトウェアであり、開発時のコーディングミスや環境に依存した検証不足など様々な要因によって誤作動するリスクがあるのです。
同じ処理をループする(繰り返す)場合は、製品ごとの使用環境にもよりますが、他のシステムや企業全体のネットワークの通信速度にも影響することがあります。例外データを誤ってインプットした場合も、それに気づかず普段と異なる処理をして正常終了したと判断してしまうこともあるでしょう。
RPAツールのセキュリティ対策
ここまで解説したように、RPAツールにはさまざまなセキュリティリスクがあります。ロボットが稼働している環境に十分なセキュリティ対策が行われていなければ、攻撃を受けたときに情報漏えいなどの問題が発生します。
しかしこれらのリスクは適切に対策することで防ぐことができます。有効な対策方法を知って、RPAを安全に使用できる環境を整えましょう。
部署ごとにロボットを分け最低限の権限のみ与える
ロボットを同じ企業内で使い回すと、各部署から権限を与えられることによって何でもできる権限過剰な状態になってしまうことがあります。部署ごとにロボットは分けるようにし、作業を実行させるために必要な最低限の権限のみを与えるようにしましょう。
部門をまたがって情報を入手しなければならない作業については、本当にRPAで自動化する必要があるのかをよく検討することが必要です。どうしても権限付与が必要な場合は読み取りのみの権限付与とし、間違って消去や編集をしないようにしましょう。
ID・パスワードは暗号化して保存する
万が一、IDやパスワードが流出しても暗号化してあればリスクを低減できます。暗号化とは、予め用意された鍵を使用しなければ解読できないような処理のことです。悪意のある第三者がIDやパスワードを入手しても、暗号化されていれば使うことができず、不正アクセスを防ぐことができるのです。
権限なしには入れないデータ領域に暗号化されたID・パスワードを保管すれば、二重にセキュリティ対策をすることができ、更に安全性が増すでしょう。
アップデートを行い常に最新の状態を維持する
RPAに限らず全てのソフトウェアに言えることですが、ソフトウェアにはセキュリティホールと呼ばれる、プログラムの不具合や設計上のミスが必ず存在します。
悪意のある第三者はそのセキュリティホールを狙ってサイバー攻撃を仕掛けてきますが、ベンダーから定期的に提供されるセキュリティアップデートのパッチを実行することで、これを防ぐことができるのです。
サイバー攻撃の手口は日々新しくなっているため、アップデートせずにいるとすぐに攻撃を受けてしまいます。パッチの提供があったらなるべく早く全社で適用するようにしましょう。
RPAセキュリティ対策チームを作る
RPAは各業務の担当者が中心となって使用することが目的のツールであるため、企業の情報セキュリティ対策を担う情報システム部門のチェックから漏れることがあります。現場の担当者は問題がないと思っていても、専門知識を持つ情報システム部門からすると大きなリスクのある使い方をしていた、というのはよくある話です。
RPA導入前から、現場の担当者と情報システム部門の人間を集めたセキュリティ対策チームを組織しましょう。チームとして、定期的にRPAの使い方をチェックする体制を構築できれば、セキュリティ事故の予防に繋がるはずです。
RPAツールの安心な選び方
RPAツールはリスクを把握し、セキュリティ対策を実施することで安全に使用することができます。RPA製品を選ぶときは、ツール自体にもセキュリティ対策の機能が備わっているかも必ず確認するようにしましょう。
ここでは、RPAツールを選ぶときのポイントを解説します。
業務の規模・適用範囲で選ぶ
RPAツールにはそれぞれ対応している規模があるため、どのくらいの規模の業務を自動化したいか明確にしておく必要があります。定型業務を自動化できる汎用型のRPAツールもあれば、複雑な業務に適応できるAIを搭載した特化型のRPAツールもあります。
また、導入形態は大きく分けて「デスクトップ型」と「サーバ型」の2種類があります。個人のデスクトップ上の業務を自動化するか、サーバ上で処理を行うかの違いです。会社レベル単位の業務を効率化し、より厳密にセキュリティ対策を実施したい方は、情報システム部門の目が届きやすいサーバ型の製品を中心に導入を検討すると良いでしょう。
プログラミングの有無で選ぶ
RPAツールを活用するときには、ロボットに指示を出す「シナリオ」を設計する必要があります。このシナリオの設計にはプログラミングの知識・技術が必要です。しかし、RPAツールの中にはプログラミングを行わずに直感的な操作でシナリオ設計できるものもあります。
このようにプログラミングの知識が不要なRPAツールの登場は、RPA導入のハードルを下げ、多くの企業が活用できるようになりました。シナリオ作成は重要であり、やり方を間違えると誤作動の可能性が発生することもあります。
サポートの充実度で選ぶ
RPAツールは比較的新しい分野であるため、社内に知識のある担当者がいないケースがほとんどです。実際にRPAツールを運用してみると挙動がおかしかったり、不具合が発生したりするため、サポート体制が充実しているかどうかは重要です。
また土日祝日も稼働している企業であれば、サポートの対象となる曜日や時間帯も重要な要素になるでしょう。重要度の高い業務を自動化している場合、土日祝日に不具合が起きたときに対応できるかどうかは企業にとって大きな問題です。
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いかがでしたか。今回はRPAツールのセキュリティリスクとその対策について紹介しました。RPAツールは指示に対して忠実に処理を行うため、誤作動が発生すると損害が大きくなりやすいのが特徴です。
また、インターネット接続を必要とする業務を自動化するときなど、サイバー攻撃対策にも細心の注意を払わなければなりません。自社に合ったRPAツールを導入し、万全なセキュリティ対策を行って効果的に運用しましょう。