ビジネスチャットのセキュリティは安心できるのか
ビジネスにおける社内外とのコミュニケーション手段として、従来はメールが広く普及していました。しかし、メールは暗号化などのセキュリティ対策をしていないケースが多く、数あるサイバー攻撃のなかでも比較的容易に攻撃可能な手段であるため、なりすましメールやマルウェアなどがあとを絶ちません。実際にIPAが発表したデータによるとメールを介したサイバー攻撃が上位に複数あることがわかります。セキュリティ対策を講じてもサイバー攻撃は進化を続け、万全なセキュリティを構築するのは難しいでしょう。
一方、非対面でスピーディーなやりとりができるコミュニケーション手段として、近年注目されているビジネスチャットには、個人情報や機密情報の漏えいを防止できるセキュリティ機能が搭載されています。ログ監査や通信内容の暗号化、アクセス制限などといったセキュリティ機能により、情報漏えいのリスク低減が可能です。
また、ビジネスチャットのなかには金融機関や官公庁の水準を満たすセキュリティレベルの製品もあり、メールと比較しても安全性が高いといえます。
参考:情報セキュリティ10大脅威 2023|IPA独立行政法人情報処理推進機構
ビジネスチャットのセキュリティリスク
高いセキュリティを誇るビジネスチャットでも、リスクがゼロとは言い切れません。具体的にビジネスチャットにどの様なリスクが潜んでいるのかを紹介します。
情報漏えい
情報漏えいの発生経路には、機密情報の誤送信やスマホの紛失といった人為的ミスによるものと、悪意ある第三者がウイルスを仕込み、感染により情報を盗み見られるといった故意的なものがあげられます。
ビジネスチャットを利用する際は「送信前にトークルームの間違いがないか確認する」「URLやファイルを開く際は異常がないか確認する」など、ビジネスチャットの運用ルールを設けて社内の管理体制を整えましょう。
アカウントの乗っ取り
ビジネスチャットのアカウントパスワードを簡単なものに設定していたり、2段階認証を有効にしていなかったりすると、総当たり攻撃を受け、第三者にアカウントIDやパスワードを知られてしまうリスクがあります。IDやパスワードが流出すると、アカウントの乗っ取りや不正ログインが発生する可能性もあります。
アカウントの乗っ取りや不正アクセスを防ぐためには、「2段階認証機能のあるビジネスチャットを利用する」「こまめにログアウトする」などの方法が有効です。
シャドーIT
シャドーITとは、企業が管理していないデジタル端末やツールを、社員独自の判断で利用することを指します。企業側が把握・管理できないため、適切なセキュリティ対策が講じられないことも多いでしょう。そのため、シャドー ITはトラブルや情報漏えい、ウイルス感染などの原因になりがちです。企業が管理していないデジタル端末やツールを勝手に使用しないように決めておくなど、事前にガイドラインを設けておきましょう。
ビジネスチャットのセキュリティ機能
セキュリティリスクを低減するため、ビジネスチャットには強固なセキュリティ機能が施されています。ビジネスチャットに実装されている4つのセキュリティ機能とその効果をみていきましょう。
IPアドレス制限機能
端末のIPアドレスをチェックしてアクセス制限を行います。許可済みのIPアドレスのみ、システムへのアクセスが可能です。これにより、自社ネットワーク以外からのアクセスを拒否できます。IPアドレス制限機能は、なりすましなどの不正アクセス防止に効果的です。
端末認証機能
管理者が許可した端末のみ、システムにアクセスできます。パソコンのみアクセスを許可するなど、企業ポリシーに沿った運用が可能です。
万が一、端末が紛失してしまった場合は認証を取り消すことで、紛失した端末からシステムにアクセスできなくなるため、端末の紛失・盗難時のリスク対策に効果的です。なお、端末が見つかった場合は再度認証するとアクセスが可能になります。
ログ保存機能
操作ログをサーバで保存し、閲覧できる機能です。不正アクセスが起きた場合、いつどのような操作が行われたのかを確認できるため、漏えいしたデータや日時の特定が可能です。ログ保存機能により、原因究明など事後の対応がスムーズに行えます。また、ログを活用した事前対策も可能です。
たとえば、誤操作などの人的ミスに対して、ログを管理することで必要な対策を講じられます。他にも、ログ機能が搭載されていることを社員に周知すれば、故意の漏えいを防ぐ抑止力になるでしょう。
暗号化機能
端末、通信経路、サーバの各段階で暗号化を施す機能です。万が一、通信内容が傍受されても、暗号化により解読はほぼ不可能な状態にできます。
暗号化機能により、端末の紛失やハッキングなどのさまざまなリスクに対応した強固なセキュリティが実現します。
セキュリティ機能が備わっている製品であれば、不正アクセスや情報漏えいなどのリスクが少なく、安全に利用できるでしょう。なお、以下の記事では、ITトレンドおすすめのビジネスチャットツールを紹介しています。導入を検討する際は、あわせて参考にしてください。
自社でできるセキュリティ対策
ビジネスチャットのリスクを回避して、安全に利用するためには、ツールのセキュリティ機能に頼るだけでなく、自社でできるセキュリティ対策を行うことも大切です。ここでは、自社でできるセキュリティ対策について紹介します。
強固なパスワードを使用する
ログイン時に使用するパスワードは、推測されやすいパスワードを避け、できるだけ複雑なものに設定しておきましょう。アルファベットの大文字・小文字や数字、記号を組み合わせるなどして、8桁以上のパスワードに設定することで、総当たり攻撃を受けた場合でも破られないような強固なパスワードにできます。単純な総当たり攻撃に対しては有効な対策といえます。
2段階認証を設定する
万が一、パスワード情報が漏えいしてしまった場合でも、メールアドレスなどに認証コードが送信される2段階認証を有効にしておけば、不正アクセスや情報漏えいによる被害を防げます。セキュリティリスク対策として有効な手段のため、2段階認証に対応した製品の場合は必ず設定しておきましょう。
社員教育を実施する
ビジネスチャットチャットで情報漏えいが発生してしまう原因の多くに、メッセージの誤送信やスマホの紛失、パソコンを開いたまま席を離れてしまった、などの人為的ミスがあげられます。そのため、実際に使用する社員の使い方次第でセキュリティの安全性も変わってきます。教育の手間がかかってしまうものの、ビジネスチャットを利用する社員全員にセキュリティリテラシーの教育を徹底することで、人為的ミスによる情報漏えいを防げるでしょう。
ビジネスチャットツールの選定ポイント
ビジネスチャット導入を検討する際の選定ポイントについて紹介します。
セキュリティ性能
ビジネスチャットの安全性は製品によって異なります。IPアドレス制限や端末認証、ログ保存、暗号化、権限管理などの厳格なセキュリティ機能が搭載されているかを確認しましょう。なお、社員だけでの利用ではなく、社外の関係者も招いたコミュニケーションの場を作るような場合は、より一層アクセス権限などの機能を重視して製品を選定する必要があります。
提供形態
提供形態によってもビジネスチャットのセキュリティ強度が異なります。
- ■オンプレミス
- 自社ネットワークを利用しているため安全性が高く、外部からの攻撃リスクを軽減できる。また、自社で開発・運用を行うためセキュリティポリシーに沿った運用が可能。ただし、システムの運用・管理・脆弱性への対応も自社で行うため、高いスキルをもつ人的リソースの確保が必要不可欠。
- ■クラウド
- 同一のサーバを不特定多数のユーザーが利用しているため、オンプレミス型と比べると外部攻撃の標的になりやすい。また、セキュリティはサービス提供者に依存するため、データセンターのセキュリティレベルやどのような運用の下でデータが管理されているかを確認する。
操作性
操作性がよくない製品を導入してしまうと、誤送信などの操作ミスが起きる可能性も高くなってしまうため、使いやすさや利便性を事前に確認しておくことが重要です。機能などは制限されるものの、無料プランや無料トライアルが用意された製品もあるため、製品選びの際に操作感をチェックするのがおすすめです。
セキュリティ性能の高いビジネスチャットを選ぼう
自社のセキュリティポリシーに適した最適なビジネスチャットを導入すると、安全かつ効率的な社内コミュニケーションが実現します。ビジネスチャットの安全性は製品によって異なるため、製品に搭載されているセキュリティ性能や提供形態などに注目して比較しましょう。
なお、ITトレンドではビジネスチャットの一括資料請求が可能です。社内検討際にも活用できる比較表作成特典もあるので、ぜひお役立てください。