決算業務とは
決算業務とは、決算に向けて決算書類を作成することです。日々の経理業務で作成した帳簿をもとに年間の全取引をまとめます。経理が作成する決算書類は、主に会社の経営状況を把握できる損益計算書と貸借対照表です。企業が1年間どのような事業を行ったのかや財務状況を明確にして、定時株主総会で株主に報告します。
また、作成した決算書をもとに法人税・消費税など納付する税金の額を計算します。企業は正確な納税金額を申告・納付しなければなりません。決算書は監査役の監査を通り、株主総会へ提出します。
非上場・中小企業での決算業務の流れ
つづいて、非上場の企業や中小企業の決算業務の流れを解説します。
1.決算残高の確定
決算業務を行うときは、まず決算残高を確定します。決算残高の確定とは、決算日の勘定科目の残高と実際の残高が一致するか確認することです。基本的には、帳簿で管理している勘定科目全ての残高が一致しているか確認します。
また決算残高の確定でも仕訳作業が発生します。これを「決算整理仕訳」と呼び、買掛金、未払金、棚卸資産や固定資産の処理を行い、通常業務の決算と区別します。
決算残高が確定した後は、勘定科目の詳細を記入した「勘定科目内訳明細」を作成します。勘定科目内訳明細は法人税の申告時に提出する書類の1つであるため、作成しなければなりません。
決算残高を確定するために、まずは日々の帳簿作成を正確に行う必要があります。もし帳簿の作成に不備があれば、決算時期の確定作業に大幅な時間がかかってしまうことでしょう。
2.税金の計算
決算残高が確定したら、それをもとに税金の計算を行います。もし決算残高が間違っている状態で税金の計算をすれば、後々ペナルティを課せられるでしょう。基本的に経理で計算する税金は法人税と消費税の2つです。
消費税を計算するときは、売上に含まれる消費税から仕入れや経費などに含まれる消費税を差し引いてください。しかし、計算して求められる消費税の金額と帳簿上の消費税の金額には差異が発生します。この差異を修正して消費税を確定し、未払消費税として決算書に計上してください。
法人税を計算するときは、会社の規模や利益に応じて税率が異なるため要注意です。
計算する法人税の種類も複数あり、法人税・事業税・法人市民税・法人県民税が該当します。これらの法人税を計算し、納付すべき金額を確定してください。消費税と同様に、法人税も未払法人税として決算書に計上します。
3.決算書の作成
最後に決算書を作成します。確定残高をもとに損益計算書や貸借対照表などの決算書類を作成してください。また残高など確定した結果だけでなく、処理方法などに変更点があれば注記事項を記載することが必要です。
決算書の作成完了後は、監査役・取締役会・会計監査人などの確認や承認を受けます。決算書に不備がなければ株主総会に提出してください。一般的に株主総会は決算日から3ヶ月以内に開催されるため、決算業務は3ヶ月以内に完了させなければなりません。
上場企業特有の決算業務
つづいて、上場企業特有の決算業務を見ていきましょう。
速報資料である決算短信の作成
上場企業の場合は中小企業とは違い、決算の速報資料となる「決算短信」を作成する必要があります。通常の企業であれば、決算日から3ヶ月以内に決算書類を作成しなければなりません。しかし決算短信は決算日から45日以内に作成する必要があります。
決算短信は速報資料ですが、決算書の内容と大きく異なる点はありません。内容は損益計算書・貸借対照表などになります。そのため、上場企業のほうが決算時期の経理業務が煩雑になることでしょう。また、この決算短信は監査の義務はないので覚えておきましょう。
子会社も含めた連結決算を行う
上場企業の中でも子会社を擁する企業グループの場合は、親会社の単体決算だけでなく、連結決算を行わなければなりません。このような場合、各会社で決算業務を完了させて連結決算の業務に移る必要があるため、さらに時間の余裕がなくなります。
決算月におこなう業務
経理担当者が決算月におこなう業務はなにがあるでしょうか。
棚卸作業
棚卸では、売上に対する原価を計算することが目的となります。ここで洗い出すべきは、在庫数ではなく、仕入れに使用した金額となります。なので、購入したが使用していない在庫量を数えることとなります。
減価償却資産の処理
減価償却資産は、長期間使用する資産を年数ごとに費用計上します。減価償却の規定は細かいので、減価償却資産として計上してよいのか、耐用年数は何年かなどの判断が必要となります。
経過勘定の処理
経過勘定の処理は、下記のものがあります。
- 前払い費用・未払い費用・貸し倒し引当金
- 開業費などの繰越資産の処理
- 仮払金・買受金の計上
精算表及び勘定科目内訳書の作成
決算表の、勘定科目の貸借が合っているかや現金残高の整合性をチェックします。金額に間違いがあると決算に誤りがあることになってしまうので、注意が必要です。また、この際勘定科目内訳書の作成もおこないます。
決算業務効率化のポイント
最後に、決算業務を効率化するポイントを見ていきましょう。
データの整理や優先順位をつける
決算業務は1年間の経理業務の集大成でもあるため、日々の業務で利用するデータを整理し優先順位をつけることが大事です。決算時期になると、どの経理部門も例外なく忙しくなります。そこで決算書類作成のための必要なデータ探しに時間がかかれば、さらに余裕はなくなるでしょう。しかし業務にあてる時間が少なくても、決算書類にはミスが許されません。そのため、効率良く決算業務ができるように普段からデータを整理しておきましょう。
決算業務を早期に行う
決算業務を行う時期を早めることも有効です。決算日は各会社で決まっているため、決算日前後で実行できる業務を分けておきましょう。決算日前でも行える業務は前倒しします。例えば、決算資料作成に必要なデータを1ヶ月前から整理するだけでも違いは大きいです。決算業務を前倒しすることでミスが削減でき、トラブルが発生しても余裕を持って対応できるでしょう。
アウトソーシングを利用する
決算業務の負担が大きく、連日残業をしているような状況であれば外注も視野に入れましょう。外部に委託することで自社の業務負担を削減できます。
普段から給与計算や労務管理など、経理や人事業務を代行しているアウトソーシング会社に、決算業務も依頼できないか相談してみましょう。依頼時には、重要な機密情報を外部に委託する関係上、安全管理体制を十分に確認してください。
以下の記事では、メリットやデメリットと、おすすめのサービスを比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
煩雑な経理の決算業務を効率的に行おう!
決算業務は1年の経理業務の中でも特に負担が大きく、煩雑化しやすいです。日々の経理業務の集大成になるため、データ整理を行って決算書の資料を作成しやすくしておきましょう。決算の主な流れは、決算残高の確定・税金の計算・決算書の作成です。
経理データの内容を確認して決算書を作成するのは大変ですが、ミスは許されません。そのため決算業務の早期開始やアウトソーシングを活用して、決算業務を効率的に行いましょう。