経理担当者が知っておくべき連結決算とは?
親会社・子会社といったグループ企業の経理担当は、通常の決算ではなく連結決算を行います。しかし、連結決算は一般的な決算と内容が異なるため、どのように処理すれば良いか分からない人も多いでしょう。そこで、この記事ではグループ会社が行う連結決算について詳しく解説していきます。連結決算を行う流れや注意点もあわせて紹介するので参考にしてください。正確に財務状況を把握しましょう。
連結決算とは
まずは、連結決算とはどのようなものか見ていきましょう。
企業グループ全体としての財務諸表を作成すること
連結決算とは、親会社・子会社など関連会社全体の財政状態・経営成績を連結して決算することです。主にグループ会社が行う決算方法のため、1社しかない場合は連結決算を行いません。M&Aや子会社を新設したときは、グループ全体の状況を把握する必要があるので、連結決算を利用します。また、連結決算は連結会計と同じ意味であり、普段の業務では連結会計と表現されることが多いです。
会社法に定められた条件に該当する会社が行う
連結決算の義務があるのは、有価証券報告書を提出している大会社です。
大手企業であれば、子会社の数が数百を超える場合も少なくありません。このような場合、親会社の財務状況を良く見せるために、費用を子会社で計上することが可能です。連結決算を行うことで、グループ全体を通した赤字や黒字の状況を正確に把握できます。もし連結決算をしていなければ、投資家や債権者が適切な判断を行えないでしょう。このように、親会社単独の決算情報だけでは有用性が低いため、連結決算が必要になります。
連結決算が必要な理由
連結決算(連結会計)が必要な理由は、企業グループ全体の財務状況、数値を把握するためです。
例えば、子会社Aから子会社Bへグループのお金を集めていて、見た目上子会社Bが黒字になっているようにしていたとします。全体から決算情報を集めれば、子会社Aが赤字状態になっているなどの粉飾をおこなっていないかを判断出来ます。
投資家や債権者に不利益がおこならないようにするためには、粉飾決算が怒らないような制度を設ける必要があります。そのために必要な制度が連結決算になります。
連結決算の流れ
つづいて、連結決算の流れを見ていきましょう。
1.個別財務諸表の作成、収集
連結決算を行うときは、まずグループ会社の個別財務諸表を作成します。各会社の決算資料を集め、グループ会社間の取引情報を反映させなければなりません。
グループ会社全体で以下の情報を収集する必要があります。
- 財務諸表(損益計算書・貸借対照表・株主資本等変動計画書)
- 内部取引情報
- グループ会社内の商品の期末在庫金額
- グループ会社で購入した固定資産
また、グループ会社内で計上した利益を控除してから合算しなければなりません。そのため、関係する利益率も重要な情報になります。
グループ会社の数が多ければ、必要書類の作成・収集に時間がかかるので、スケジュールを組みましょう。
2.個別財務諸表の合計、連結調整前財務諸表の作成
グループ会社の個別財務諸表を作成・収集した後は、その財務諸表を合計して連結調整前財務諸表を作成します。このとき以下のような点に気をつけましょう。
- 勘定科目をグループ会社で統一する必要がある
- 海外に関連会社がある場合は円に換算する
- 決算期が違う関連会社があれば調整する
グループ会社の中で決算月が異なる場合は、ズレが発生する可能性もあります。しかし、決算月のズレは3ヶ月以内なら許容されるため、そのまま連結処理しても大丈夫です。
3.連結修正仕訳の作成
最終的なグループ全体の連結財務諸表を作成するためには、連結修正仕訳を作成しなければなりません。連結修正仕訳とは、グループ内の取引で利益になっていないものを除くことです。具体的な連結修正仕訳には以下のものが該当します。
- 開始仕訳
- 投資と資本の相殺消去
- 未実現利益の消去
- 税効果の調整
開始仕訳
開始仕訳は、前期までにおこなった必要な仕訳を入れることになります。開始仕訳をおこなうことによって、前記の利益余剰金の残高と当期残高を合わせることにあります。
投資と資本の相殺消去
親会社が保有している関係会社の株式と子会社等の資本金を相殺することです。親会社が保有している関係会社の株式と子会社の資本金は、移動しているだけなので、両方を計上してしまうと二重計上となってしまいます。
未実現利益の消去
未実現利益とは、グループ内で取引された製品や商品の利益のことです。これらの取引は、実際能取湖グループ内での移動になります。
税効果の調整
当期純利益の連結調整前後での差異の分だけ税額を調整することです。
4.連結財務諸表の作成
連結修正仕訳の作成が完了したら、連結財務諸表を作成します。連結財務諸表は、親会社の個別財務諸表に子会社の個別財務諸表を合計し、連結修正仕訳で調整することが必要です。
ここまでの手順で細かい調整を行っているため単純に合計するだけで問題ありません。
この連結財務諸表の勘定科目の表示には、独自の規則である「連結財務諸表規則」がありますので考慮しましょう。
勘定科目が多い場合、金額の重要性が低いものは「その他」にまとめることが可能です。
連結決算をする際の注意点
連結決算でもっとも注意しなければならないのは、各社のスケジュール管理を徹底することです。上場企業の場合は、決算日後45日以内に連結決算の情報を開示しなければなりません。その期間までに子会社や親会社の個別財務諸表などの必要書類を集め、連結決算の資料を作る必要があります。
確実に決算処理をするため、事前に計画を立てて各社の決算処理を行いましょう。また各業務をスムーズに進めるためにも、不慣れな経理担当がいれば決算日前に十分な研修をしてください。特に連結決算の場合、スケジュールが逼迫することが多いため、事前の準備を行って余裕を持つことが大切です。
事前の準備を行い、効率的な連結決算を行いましょう
グループ会社は連結決算を行う必要があります。通常の経理業務と異なるので注意してください。連結決算の場合は、単純にグループ会社の財務諸表を合計するだけではありません。勘定科目をグループで統一する必要があります。海外の関係会社であれば円に統一します。またタイトスケジュールの中、連結決算業務を行わなければなりません。事前の準備を万全にして、効率的に連結決算業務を進めましょう。