経理の1年のスタートとは
多くの日本企業の場合、新入社員の入社や異動は4月に行われます。そのため、経理の1年のスタートは4月です。4月の主な業務は「年次決算処理」と「固定資産税の第1期分の納付・軽自動車税の納付」です。税金納付は、税務署の指示に従って行うシンプルな内容のため理解しやすいのではないでしょうか。
なかなかイメージしにくい年次決算とは、その言葉の通り1年間で会社がどれだけ利益をあげたのか、また翌年にどれだけ資産や負債を繰越すのか、その金額を確定させることを言います。経理業務として作成する決算書類は「賃貸貸借表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」の4点全て、またはそのうちのいくつかです。日々の売掛金・貸掛金の数字が正確ではなかった場合、決算処理に苦労することになります。
また決算報告時には、前期や前々期と比べ利益や負債、資産がどうなっているのか、経営者に伝える必要があります。その結果によって税額も変わるため、経営者にとっても重要問題と言えるでしょう。年次決算を皮切りに、中間決算の準備や処理が続き、その間に賞与の支払いや年末調整が入ります。最初の1年はあっという間に時間が流れていくことでしょう。
特に大事な業務
経理業務は、日々の業務から月次決算、年次決算までどれも経営に関する重要な業務です。しかしその中でも特に大事な業務が「年次決算業務」です。月次決算業務は、簡単に言えば社内の中で今の業績や状況を把握・確認するための資料作成のこと。そのためスピード感は重視されますが、どちらかと言えば簡易的なものであることが多いです。
しかし、年次決算業務の場合、社内で使用することはもちろん銀行や取引先、株主にも公表するため、間違いがあることは許されません。もちろん、税務申告にも使用されます。
帳簿の記録と現物があっているかどうかを確認する実地棚卸、そして仕訳伝票が追加されないように伝票の締め切りを行います。売り上げと原価確定、決算整理仕訳の計上を終え、初めて決算書を作成することができるため、時間も手間もかかります。ちなみに決算整理仕訳は資産の評価や、引当金の計上、法人税等の計算が含まれるなど日常の仕訳とは全く異なるもの。また10日程度で作成する月次決算業務と比べ、年次決算業務は予定を立てるところから含めると数ヶ月以上かけて行うことが一般的です。それだけ重要な業務だと言えるでしょう。
また、提出場所によって必要な書類も異なります。銀行の場合は、資金繰り表が必要ですし、それに加えて損益計算書や貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、勘定科目内訳書、株主資本等変動計算書も求められることがあります。税務書の場合は、キャッシュ・フロー計算書や資金繰り表を提出する必要はありません。会社が上場している場合は、さらに有価証券報告書等他の書類が求められることになります。
繁忙期に備えて、経理アウトソーシングを利用するという手もあります。下記の記事では、経理アウトソーシングのメリット、デメリットをまとめていますので、そちらも合わせてご覧ください。
経理の年次業務
年次決算業務以外にも年次業務があります。どのタイミングで、繁忙期になりそうなのかを把握することはスケジュール作成に役立ちます。
- 確定申告や納税
- 確定申告は決算月から2ヶ月以内に行う必要があります。所属している企業の決算月がいつなのかによって、確定申告をおこなう時期も変わってきます。また、確定申告後に法人税や消費税の納付をおこなうことになります。
- 賞与支払
- 賞与を支給している企業では、7月や12月などに予め処理を行っている必要があります。支給月の前に処理をおこなう必要があるので、ボーナス支給月を把握しておくようにしましょう。
- 年末調整
- 12月には年末調整をおこなう必要があります・各社員が収める税金と納税額が一致するかを把握します。一致しない場合年末調整をおこなうことで買う僕を解消します。社員一人ひとりの計算をおこなう必要があるので、作業量は膨大になります。
- 実地棚卸
- 決算期末には実地棚卸をおこなう必要があります。現物の数量や種類を確認し、棚卸し資産の残高を確定します。帳簿との違いを洗い出し実際の現物とのズレを把握する必要があります。
年次業務が度のタイミングで行われるかを把握し、繁忙期に備えましょう。
年間を通して経理は毎月忙しい…
経理の忙しさは決算時だけ!それを乗り越えればあとはのんびりできるはず!なんて思っていませんか。春は決算業務がありますし、地方税や法人税の納付の5月が終われば、次は6月の株主総会の準備が始まります。夏だけは、ほっと一息つける期間ではありますが、この間に溜まっている処理を消化したり、数字が合わない部分を再チェックするなどのこまごまとした業務を片付けることに時間を費やす人も少なくありません。
そして、秋になれば今度は中間決算の準備、処理。半期報告書の作成と、また慌ただしい日々が始まります。12月には年末調整を行い、年が明けた1月には支払い調書の作成と提出、償却資産申告書の作成と提出。それが終われば、すぐに年次決算準備に取り掛かることになります。
しかし、毎年同じ年間スケジュールとも言えるため、経理業務を1年経験すれば次の年にはどの時期に何をしなければいけないか、感覚を掴みやすい点は経理業務のメリットとも言えます。特に納税に関しては、締め切りや納付時期がしっかり決まっているため理解しやすいでしょう。
めまぐるしく、次から次への仕事が訪れるのは経理業務の特徴です。しかし目の前の内容だけにとらわれず、1年の流れを一区切りとして捉えることで経理業務自体にやりがいを感じられるはずです。
経理の繁忙期を知って、効率的な業務を行おう!
経費の精算や仕訳伝票の記帳など、日々の業務と決算時期のみ慌ただしいイメージが強い経理業務にも、年間を通した大きな仕事の流れがあります。日常業務、毎月の業務、年に1回の業務。そしてその間に税金の支払いや年末調整など様々な内容が入るため、経理部門=決算時以外は暇ということはありません。
年間スケジュールに基づいた作業内容を知り「大変そう」と感じるか「やりがいがある!」と感じるかは人それぞれの価値観です。しかし流れ作業ととらえず、一つひとつの作業に意味があることを知ることで、より経理の仕事は面白いものに感じられるでしょう。