個人事業と法人について
企業には、個人事業、株式会社などの会社、組合など様々な形態がありますが、それらは個人事業と法人に大別されます。事業を行う場合は、個人事業なのか法人なのかを選択する必要がありますが、内容や特徴、手続きなどが異なります。
会社の知識の第一歩として、まずは個人と法人について押さえておきましょう。
個人事業
近年では、副業が解禁され、会社に勤務しながら個人事業として開業し、確定申告をおこなう方も多いのではないでしょうか。個人事業の場合は、法人の場合と異なり、面倒な手続きなく事業を開始できます。税務署などに事業開始届を提出するだけでよいので、最初は個人事業として事業を開始することがほとんどです。
しかし、納める税金は所属税となり累進課税が適用されるため、所得が多いほど法人税と比較すると不利になります。また、法人より信用力が低いため、金融機関から融資を引き出すことが難しいという特徴もあります。このため、個人事業として事業を開始し、所得の増加に伴って法人に移行するケースが多くなっています。
法人
民法では、私たち人間は自然人と定義されますが、自然人と同様に権利の主体として認められているのが法人です。組織や団体は、法人格を取得することで、自然人と同じく法律行為をおこなうことができるのです。
法人格を得るためには、面倒な手続きが必要で特定の条件をクリアする必要がありますが、一定の所得以上になれば、個人事業と比較して有利になり、社会的な信用も得られるため、事業活動の規模が大きくなると、ほとんどの場合法人に移行します。
法人の種類
法人は、公法人と私法人に大別されます。公法人には、地方公共団体や社団法人、独立行政法人といった公的な機関が含まれます。私法人は、利益の取得を目的とする営利法人と、宗教や慈善活動といった公益を目的とした公益法人にさらに分割されます。営利法人の代表例が株式会社で、公益法人の代表例が、宗教法人や特定非営利活動法人(NPO)です。
なお、会社法が設立される前は、営利法人として有限会社が認められていました。現在では、会社法で株式会社の設立条件が緩和されたため、有限会社の新規設立はできなくなっています。会社法設立以前に設立した有限会社は、有限会社を名乗ることは許されています。
株式会社について
営利法人を代表する法人は株式会社です。組織に属して仕事をされている方のほとんどは、株式会社に勤務しているといえるでしょう。それでは、会社法では株式会社をどのように規定しているのでしょうか。
株式とは
株式とは、出資者に対して割り当てられる地位のことです。従来は出資の証として株券が発行されていましたが、現在は発行されることは少なくなりました。株式会社は、出資を細分化して株式を提供し、市場から大量の資金調達できるようになったのです。
株式を受け取った株主は、大きく分けて2つの権利を有します。1つ目は、株式会社から配当を受けることが権利。2つ目は、株式会社の管理や運営に参加することができる権利です。株式会社は、株式を多く保有している株主の発言権が大きくなるという特徴があるのです。
株式会社の機関
株式会社が法人である以上、法律行為をおこなうための機関が必要になります。会社法において、絶対に設置しなければならない機関は、株主総会と取締役のみとなっています。会社には、「社長」は必ずしも必要ではないのです。取締役の任期は、2年と定められおり、取締役の選任は株主総会に委ねられています。人事権は株主総会にあるため、ときに新聞を賑わす株式争奪戦が勃発するのです。
会社法では、株式会社の種類や規模などに応じて、取締役会、監査役、会計監査人といった機関を定めています。しかし、多くの会社にある常務や専務、執行役員といった機関は会社法では定義されていません。法的根拠のない、その会社にしか通用しない立場であるといえるでしょう。なお、取締役会を設置する株式会社は、取締役の中から代表取締役を選任しなければなりません。ほとんどの株式会社では、代表取締役が社長になるケースが多いようです。
組織再編について
企業が戦略の手段として活用する合併などの組織再編についても、会社法で細かく規定されています。新聞紙上などでは、M&Aという用語でひとくくりにしていることも多いのですが、組織再編の種類は意外と多くあります。大企業が仕掛ける派手な企業買収などが注目されますが、事業承継に悩む中小企業がM&Aの手法を使うことも増えてきました。ここでは、会社法で規定している組織再編について解説します。
事業譲渡
会社の特定の事業を、ほかの会社に移転することをいいます。組織再編の一つの手法として認識されていますが、事業譲渡は、会社間の売買契約行為となります。多角化などにより経営の非効率がある場合など、経営をスリム化するために事業譲渡を選択するケースは少なくありません。
東芝がパソコン事業をシャープに売却した事例は、典型的な事業譲渡であるといえます。事業を譲渡した会社は、本業に集中するなど、新たな成長戦略を描く必要があるといえます。
合併
2つ以上の会社が1つの会社に統合されることです。合併により、消滅する会社が存続会社に権利義務の全部を承継させる吸収合併と、新しく会社を新設する新設合併に大別されます。バブル崩壊後、経営難に陥った金融機関が合併を繰り返しながら事業を存続させた事例は、合併の代表例であるといえます。
三菱東京UFJ銀行(現在は三菱UFJ銀行)といった名称には、合併を繰り返してきた名残があるといえます。最近では、ユニー・ファミリーマートホールディングスのように持ち株会社を新設して合併するケースも数多くあります。
株式交換・移転
特定企業の株式を取得し、自社の子会社にするなど、支配権を得る行為のことです。株式の全部を取得できれば、完全子会社にすることができます。新聞紙上などで、買収という言葉が使われる場合は株式の買い取りを伴い、ほとんどの場合、この手法がとられます。
ヤマダ電機傘下に入った大塚家具の事例は、友好的な買収となりました。しかし、ぺんてるを巡ってコクヨとプラスが争っているケースや、富士フイルムホールディングスによる米ゼロックスの買収劇など、敵対的な買収で株式争奪戦が起こることも少なくありません。
会社法はビジネスマンに必要な知識
法律の知識は、なじみがなく理解をすることが難しいことも多いため、敬遠する方も多いでしょう。しかし、会社法の知識があると、時事ニュースに対する理解も深まり、ビジネスマンとして成長する機会となるはずです。M&Aが増加傾向にある中、仕事をするうえで会社法の理解が必要になるケースも少なくないでしょう。
会社法には、事業を継続していくうえで必要な知識にあふれています。仕事の質を一段階高めるためにも、会社法をより深く理解してみてください。