登壇者プロフィール
株式会社RevComm
執行役員
Head of Sales/CS/Alliance
角田 潤彌 氏
日本コカ・コーラやデロイトトーマツ コンサルティングをはじめ、世界的なリーディングカンパニーにてマーケティングやM&A、事業再生を行う。その後、ベンチャー企業を中心とした新規事業開発や上場企業での取締役CFO/CHRO/CSOを歴任。
RevCommに参画後は、営業/CS/アライアンス部門を統括。
共著に「銀行員のためのM&A入門(銀行研究社)」。
株式会社セレブリックス
セールスカンパニー執行役員
カンパニーCMO/セールスエバンジェリスト
今井 晶也 氏
セールスエバンジェリストとして、法人営業に関する研究、執筆、基調講演等を全国で行う。
2021年8月には“Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術”を扶桑社より出版。営業本のベストセラーとして11刷となる重版が決定。2022年7月には単著二作目として“お客様が教えてくれた「されたい」営業”を出版。
現在は執行役員 CMOとして、セールスカンパニーのマーケティング、営業、新規事業、事業推進を管掌する。Everything DiSC®️の認定トレーナーであり、専門は営業、プレゼンテーション、コミュニケーションスタイルと多岐に渡る。
日本のセールス/組織の現状
株式会社RevComm 角田 潤彌 氏(以下、角田):
多くの方が営業組織の現状に不満を抱いていますよね。ただ、「何が不満足ですか?」と聞くと「よく分からない」という声が結構多い。特に営業組織というのは商談の内容なども、全部が見えているか?というとそうではなく、目指すところも曖昧、従って営業活動そのものも良いかどうか判断できない。そんな中で「根性で乗り切る」みたいなことが多かったですよね。
結果的に「どうしていいのかが分からない」という状況に陥って不満足が生まれるのです。だから、見えない部分を1つひとつ可視化していくことで不満が解消されていくだろうなと思いますね。
株式会社セレブリックス 今井 晶也 氏(以下、今井):
現状を見ていて、一番に思うのは、ずばりマネージャーが弱い。逆に言えば、マネージャーが強くなれば多くの方の不満は解消していくと思いますし、そうしなければならないとも考えています。決してマネージャーを否定したいわけではないのですが、弱いという観点にはいろいろな意味合いがあるんですよ。
たとえば最近、心理的安全性やパワハラ問題などのキーワードが出ていますよね。ある種ブームの転職やZ世代のマネジメントを考えると、あまりに厳しく言い過ぎると辞めてしまうかもしれないからどこまで要望していいのかが分からない。そこで要望よりも共感を優先して、お客様への向き合い方を少し無視しがちだと思います。
当然ですが、ハラスメントは絶対にダメです。ですが、マネージャーが優しくすれば退職者が減るのではなく、成長を感じられなくなれば辞めます。だからこそ今の日本の営業組織には、まずはマネージャーがしっかりと要望することが必要だと思います。
もう1つは、情報に振り回され過ぎ、ということです。情報提供している身として言うのもおこがましいのですが、営業に唯一解は無いと思うんですよ。我々はテックの必要性や重要性を謳っていますが、実は取れたデータを見るだけでは成果は上がらないですよね。データ自体に意味はなくて、データにどう意味付けするかが重要です。意思のないデータに意味なんてないので、そこはしっかりと向き合う覚悟が必要だと思います。
角田:
1億総データサイエンティスト化したほうがいいなと思っています。ちゃんとデータで語れる人を増やすべきだと思っています。特にZ世代の人たちは偏差値教育の中で、データでもって客観的に自分たちのどこが良くてどこが悪いかを明確に指摘されて改善することに慣れています。正解が分かっていればそれに対して走っていく事に関しては我々の世代の比にならないほど早いです。。ただ今の日本ビジネス環境では、正解の内容をデータ分析して伝えられる人たちがまだ充分に育っていないと思います。
なので、分析してデータで伝えられる人たちを育てていくことができれば、「要求を伝える」ということがそんなに強いメッセージじゃなくなると思っています。だって、それを実践したら本人たちが得をすることがデータで示されている訳ですから。
課題を解決するために何が必要か
今井:
まずは「テクノロジーが解決するんじゃない、自分がやるんだ!」という意識を持ってください。マネージャーがデータに向き合う覚悟と強い意思を持たないと、せっかく営業現場の皆さんがとった営業活動の記録も、意味のないデータになってしまいます。そして、判断軸を持ってメンバーに要望を伝えるサイクルを作るのが重要だと思います。
あとは、データから恩恵を受けるとデータを活用したくなるものです。食わず嫌いになっている可能性もあるので、データ分析が得意な人とミーティングをして、データの恩恵を受けることが大事だと思いますね。
角田:
課題って「目標ー現状」の差分です。つまり課題を特定するためには、目標をもう一度見定めるべきだと思います。たとえば、年収300万円の人が300万円でい続けたい場合は「維持する」のが課題になりますよね。一方で、300万円の人が500万円になろうと思うと、1年間で200万の昇給となると、今の仕事でいいのか見直すというのが課題になります。つまり現実感を含めて再度目標自体を見直すことを最初にするべきだと思います。
あと昔は課題を特定したあとは根性論だったと思いますが、今はITの力で分析した結果の正解を出せるようになりました。たとえば、スタッフの営業課題を特定する為に上司が商談に同席するケース等で、「実はそれなりに優秀なのにたまたま39度の熱がでて、滅茶苦茶調子が悪く商談も酷かった場合」、その一回でもって、「イケてない奴」と思われたり昇進にも響いたりする不幸があった訳です。
一方で、今は商談のすべてが分析・解析されるので、偶然の1回だけではなく、それをも含めて総合的に判断されます。統計処理された情報はその人の本当の能力と言えますし、本人も納得感があるんですよね。要は、データの力で公平な示唆が出せるようになっているのです。ただ、そのデータを読み解くためには強い意思や力が必要になってきます。
複数の成功パターンを取り入れる
今井:
上司の同席する商談って、普段の商談よりも緊張しますよね。しかも、上司の好きなやり方に合わせなければいけないことがあったりします。
角田:
そう!上司のやり方は成功パターンの1つでしかないし、そもそも1つしか勝ちパターンがないわけではないですよね。私はよく「マニュアルって、御社に何個あります?」と聞くのですが、大抵の答えは「1個」なんですよね。でも弊社の「MiiTel」を使えば、本当は10個のパターンで成功しているといったことが分かったりするのです。
その結果を元に「もしかして今まで9個の勝ちパターンを捨てていませんでしたか?」と聞くと、「あ!」となるんですよね。「今まではどう教えていましたか?」と聞くと、「そのパターンだけで教えていました」と。ほかの9パターンを習ったらもっと上手くいった人の可能性を潰していたし、その9パターンで獲れていたはずのお客様も逃していたわけですよね。
なので、ITの力でそういったことがなくなってきている、なくせるというのはすごくいい話だと思います。
課題感や組織規模に応じて解決策を考える
今井:
課題を解決するために必要なものは、課題感や組織規模にもよりますね。営業パーソンが3名しかいない会社と100名いる会社の課題って、随分違います。一定数以上になってくると「どうトップセールスを育てるか」よりも、「どうボトムアップして底上げをしていくか」のほうが成果につながりやすいですよね。
トップセールスのやり方って、割とファンタジーです。彼らは、ほかの人よりも一歩上を行くことを習慣化していますよね。たとえば、人が100件電話をかけていたら105件をかけるといったことを続けて、どんどん高めていくのです。気が付けばほかの人が到底追いつけない基準になっていたり、感覚を身につけていたりして、商談の場で活かしているのですよね。それをほかの人が再現するには、テクノロジーの力で「なぜ上手くいったのか」を言語化しないと難しいですよね。
また、分母としては上手くいっていない人のほうが多いわけです。100名いる中の1名のトップセールスのやり方を解析するより、99名はなぜ上手くいかなかったのかをデータで解決したほうが、組織としての前進の幅は大きいわけですよね。ここに目を向けるのも、現代の営業組織の課題だと思います。
角田:
まさにこれからがデータサイエンティストの時代だと思います。1人がどうこうするのではなくて、全員を底上げする1点って何でしたっけ?を特定して底上げした方がはるかに成果がでると。100人の組織で1人のエースプレイヤーが100点、残りの99人が2点という場合なら、1人ひとりが1点ずつ上げたほうが遥かに成果が出やすい訳です。こういった統計処理ができる人がいると強いですよね。
今井:
やっぱり成功パターンを横展開したくなりますが、受注率が1割だったら、1件の成功サンプルを得られるまでに10商談をしなければいけないですよね。けれど、そこまでに9個の失敗サンプルが集まっているわけです。そこを改善したほうが商談の改善サイクルは速くなります。起きている問題を取り除いて、上手くいく可能性を高めるのが営業組織を底上げするポイントになると思うので、そこに目を向けるのが大事ですよね。
角田:
世の中の企業様は、結構商談内容を捨ててしまっていることが多いです。我々RevCommは商談をすべて社内に蓄えています。録音解析と統計処理を加えて、何が良いか・何が悪いかがすべて出ているのですよ。一件監視されているようなすごく嫌な会社に見えますよね(笑)。でも逆に言うと、簡単に誰もが振り返ることができ、簡単に誰でも真似られるということです。成果が出ている人の商談を全部見に行けるのです。これって真似る側からしたら結構いい仕組ですよね。
たとえば、横で給料が上がって昇格している人がいるとしたら「彼、何やってるの?」って絶対に気になりません?それで、彼の商談を見たら「うわ、1個しか売るつもりはないのに、なんか100個売れてる!」みたいな。「なるほどこうやればいいのか!」という事が起こります。
つまり、良くしていこうと思えば、真似したり反省したりするという意味で良い情報も悪い情報もみんな取りに行きたいですよね。そのためにガラス張りにして見える化したり、商談をすべて金脈として残していたりするのが非常に効果的です。このような取り組みをされている企業様の伸び方はすごいというのが、最近の感想です。
データ分析で必然的に成果をあげられるように
今井:
おっしゃる通りですね。今までの「営業って、こうやったらいい」という理想論には、もはやオカルト的な要素があって。たとえば「分かりやすくハキハキ喋る」「明るく元気に」って、必ずしもいいわけではないです。業界によってはボソボソ喋るぐらいがいいこともあります。
あとは喋る・話すのテンポやラリーの回数なども一概には言えないですね。「お客様が8割喋って営業が2割喋るぐらいがちょうどいい」という情報を鵜呑みして、もし初回の電話で営業がほとんど喋らなかったら見事に電話を切られると思います。営業電話に関するデータを調べてみると、アナウンサーぐらいのテンポで喋ると切られやすいんですよね。アナウンサーの方だと1分間に300文字ぐらいのテンポで話すと思いますが、営業電話の最初のコールでは1分間450文字ぐらいがちょうどよかったりします。
なぜかと言うと、テレビだと話を聞こうと思って観ています。でも、営業の電話がかかってくるのを待ってました!という人はいないですよね。だから、出た瞬間から切ろうとする。一方で営業はアポイントを取りたいと思っている。コミュニケーションのスタート位置が、真逆を向いているわけですよね。
そのため、切られる前に「ん?ちょっと待てよ」と思ってもらえるための、0.5秒の間をどうやって作るかっていうせめぎ合いがあるんです。そういう事実が「MiiTel」などのテクノロジーを使うことで分かったりします。
角田:
性別や年齢、業態、時間帯によって、「どんな形で何秒どう話せばいい」というデータがあります。たとえば、ゆっくり話すお年寄りの方に滅茶苦茶早口で話をしたら、分かってもらえません。反対に、経営コンサルタントや今井さんみたいな方にゆっくり話すと嫌がられるんですよね。
我々のツールを使っているとそういうのが分かりますので、きちんと科学することで、偶然ではなく必然的に成果をあげられる方法をみんなが実践することができるのです。
今するべきことは?
今井:
難しいですね。今すべきということは特にないですが、今からしておかないと1、2年後に後悔するよというものは結構あります。1つはテクノロジー対応。もう絶対に必須で、やっておかないと後悔します。それから2つ目が人材の確保、3つ目がコンテンツの拡充かと思います。
やっぱり労働人口が減っています。月によって違いますが、営業の有効求人倍率も1.78倍と、企業が人材を獲りあっている状況ですよね。労働人口が減ればこうしたことが増えていくばかりで、人材採用がより困難になります。
そこでお客様にベストなタイミングでベストな提案をし、無駄な営業行為をどれだけ減らせるかが大事になってきます。興味があるタイミングで興味のあるトークができれば、人数が少なくても問題ないですよね。それを助けてくれるのがテクノロジーだと思うので、まずはテクノロジーが必須というのが1つ。
2つ目に、減っていく人材の中でも、テクノロジーを活用して成果を出せる営業パーソン、もしくはマネージャーをどう雇っていくのかが重要です。3つ目に、それでも営業パーソンの退職はありますし、長く働いてくれるかどうかも分からないと考えると、組織側は営業パーソンが辞めた後も成果が出る状態を作る必要がありますよね。たとえば、営業パーソンのトークと同じようなコンテンツや資料を作っておけば、その営業パーソンがいなくてもコンテンツが営業してくれますよね。
角田:
今するべき本当に大切なことは、やっぱり反省だと思っています。私は日本を愛していますが、過去日本は世界でも有数の高時価総額企業を抱えていたのですが、ほかの国々に一気に抜かれてしまっております。日本人の強みは創造力と言われていますが、プラスアルファで模倣する力も相当強かったと思います。
今井さんのいらっしゃるセレブリックスさんは日本で一番強い部類の営業組織を持っていらっしゃる企業だと思うのですが、成功している理由は、テクノロジーの時代においてきちんとデータ解析ができているからだと思います。成功していない企業は、成功している企業との「差」という課題を明確にして、反省しながら真似をしていくことが大切だと思っています。愚直にやるべきことを特定し、感情を度外視してきちんとやっていきましょうという感じですかね。これは、自分自身もそうですし、周りの人たちにもそう言っています。
今、DX化をしたくないなと思っている私ぐらいの世代の人が多いです。ただ、今の世の中を見てみると企業はDX人材を大量に募集しているわけですよ。よく見たら、DXをやりたくないって言っている人の隣の部署でDX人材を募集しているという状況です。「もしあなたがやらないなら、誰かやってくれる人を採ります」となると、その人自身のキャリア自体を閉ざしてしまうリスクもある。そう考えたときにやっぱりDXには向かい合うべきだと思うんですよね。
今井さんがおっしゃっていた通りで、意思を持って、やるべきだと思います。皆さん意思は多分あると思いますし、できると思うので、ぜひ取り組んでいただきたいなというのが私からのお願いです。
おわりに
角田:
どんなにIT化されたとしても、コミュニケーションを除外して何かをやっていける世の中ではありません。1人ひとりをきちんと説得していくために、データを使いながらパラダイムシフトを起こしていくことを続ければ、必ず成果は出ると思います。自分たちの伝えたいことを伝えるためにどうデータを活用すればよいのか、真剣に考えたうえで一つでも二つでも試していただけたらなと思います。今日はどうもありがとうございました。
今井:
角田さんから、今はいろいろな情報にアクセスしやすいし、その情報の模倣をすることが大事だというお話があったと思います。できる限りいい情報を得て、鵜呑みにするのではなく、自分の組織にどうフィットすべきなのかを考えながら、取り入れていただけたらと思います。
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