登壇者プロフィール
株式会社セールスフォース・ジャパン
Slack マーケティング本部 プロダクトマーケティング ディレクター
伊藤 哲志 氏
コロナ禍で緊急事態宣言中の2020年5月に、Slack社初の米国本社以外でのプロダクトマーケティングマネージャーとして入社。自社、業界イベントで多くのプレゼンテーションをこなしながら、マーケティングメッセージ策定やコンテンツ作成を中心に国内のマーケティング施策を担当。
Slack Japan以前はマイクロソフトやセールスフォース・ドットコム (現 : セールスフォース・ジャパン)にて製品マーケティングを担当。
株式会社パソナグループ 常務執行役員
ハイブリッドワークライフ協会 常務理事
伊藤 真人 氏
株式会社パソナグループ 常務執行役員 広報本部長/メタバース本部長
株式会社パソナJOB HUB代表取締役社長
ハイブリッドキャリア協会 代表理事
髙木 元義 氏
ハイブリッドワークの現状
株式会社パソナグループ 伊藤 真人氏 [以下、伊藤(パソナグループ)]:
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが浸透し、現在はハイブリッドが当たり前になってきていますよね。また、会社や家以外の場所、ワーケーション先のコワーキングスペースなど組み合わせの選択肢が増え、ハイブリッドワークについての考え方が変わってきていると感じています。この2年くらいで300社ほどの企業が、オフィスを東京から地方に移転したという話もあり、会社のあり方や働き方も変わってきていると思っています。
私の働き方については、8割、9割くらい出社しています。ただ、会社自体が兵庫県の淡路島に移転したので、海の横のオフィスという環境で仕事や会議をしています。社員のうち約500名弱が首都圏などから淡路島に移転しているなど、弊社は働く場所や環境の選択肢を率先して提供しているほうではないかと思っています。
株式会社パソナグループ 髙木 元義氏 [以下、高木(パソナグループ)]:
ハイブリッドワークやハイブリッドキャリアはWorkstyle3.0と位置づけられます。もともとWorkstyle1.0は正社員がフルタイムで1社で仕事をするという働き方ですが、これに2つの方向で動きが出てきました。1つは、場所と時間の自由度が高まり、リモートワークやワーケーションができるようになったこと。もう1つは、所属の自由度が高まり、1社だけでなく複業や2、3社と契約して働ける環境が出てきたこと。この2つがWorkstyle2.0。
この2つを組み合わせたWorkstyle3.0の働き方が、ハイブリッドワークやハイブリッドキャリアです。多様な働き方をする方々が増えてきているのは非常に素晴らしいことだと思っています。
では、なぜWorkstyle3.0の働き方ができるようになったのかと言うと、たとえば個人が、大手企業での経験やキャリアを中小企業や地方の企業で活かすなど、自分のキャリアを複数の企業で活かすことができるようになったこと。そして経営者の方々も、採用とは違った形で個人の経験やキャリアを活用できる、という認識が広がってきたことが大きいのかなと思っています。
株式会社セールスフォース・ジャパン 伊藤 哲志氏 [以下、伊藤(Slack)]:
私自身、新型コロナウイルスの影響によるリモートワーク真っ最中の時期にSlackに転職したものの、約2年ずっと自宅でリモートワークをしておりました。もちろん在宅でも仕事ができていたのですが、会社に出社し同僚と会ってみて、それはそれでとても生産性が上がることもあり、要は組み合わせだなと肌身で感じています。
世界中の働く方々に対して弊社が行った面白い調査結果をご紹介しますと、リモートワークを組み合わせて働きたいと答えた人が76%いました。一方で、私もそうですが、対面での対話が懐かしいと実感している人が61%いました。一見ジレンマがあるように見える結果ですが、おそらく多くの方がこのような感覚をお持ちなのではないかと思っています。
もう1つ面白いデータがございます。先ほどと同じ調査で、リモート組と出社組の方々それぞれに仕事に対するエンゲージメント、すなわち貢献意識について聞いてみたところ、リモート組も出社組も70%以上というどちらも高い結果になりました。この結果をふまえて私たちは、働く場所というのは実はあまり関係ないのではないかという仮説を立てました。働く場所よりも、その人が本領や実力を発揮できる環境をどういうふうに用意できるかが重要なのではないかと考えています。
多様性という言葉がありますが、独身の方、介護を必要とする家族がいる方もいらっしゃるでしょう。お子さんが小さくて家ではなかなか仕事に集中できない方もいれば、家のほうが集中できるという方もいらっしゃるといったように、どのような環境がベストなのかは人それぞれです。それぞれのベストに対して、会社としてどのような選択肢を用意できるのかが、今後重要になってくるのではないかと考えています。
ハイブリッドワークのメリット、デメリット
伊藤(パソナグループ):
私自身は実はハイブリッドワークのデメリットをほとんど感じていません。働く自由度を社員に与えることで、それぞれの能力を発揮できたり、それにともなう責任感が生まれたりエンゲージメントが上がっていったりする、というメリットのほうが大きいと思います。
あえて言えば、働く人の意識調査を行うと、週5日働く場合、2日、3日は何らかの形で人と出会いたいという結果があります。ハイブリッドワークのなかで、コミュニケーションロスをどううまく解消していくのかが課題だと思っています。
高木(パソナグループ):
メリットは、たくさんあると思っています。たとえば、移動時間が減ることもそうですが、会議の時間もきっちり1時間で終わるなど、本当に効率的に仕事ができますよね。1日に可能な会議や面会の数が非常に増えたと思います。ハイブリッドワークやITを使うことで淡路島や海外出張先など、どこにいても誰とでも会議ができるというのは非常にメリットだと思っています。
逆にデメリットは、先ほどのパソナの伊藤の話につながるのですが、「偶然のコミュニケーション」が減ってきていることだと感じています。皆さんにも想像して欲しいのですが、たとえば実際に誰かと会う場合、会議と会議の合間に「実はちょっとこういうことがありまして、この件なんですけど」といった話ができますよね。あるいは上長や経営者の方々と偶然会ったときに、その方に「○○さん。すみません、この件なんですけど」と話かけることもできるかもしれません。
実はそのようなコミュニケーションはすごく大事ですが、リモートだとなかなかできないですよね。偶然のコミュニケーションが減らないようにどう改善していくかがチャレンジだと思いますし、いろいろなツールを使いながら対策するといいと思っています。
伊藤(Slack):
まさにそのとおりだと思いますね。私自身、600日以上のリモートワークの最中に採用やチームマネジメントも行っているので、効率良く働けていると実感しています。チームメンバーと会うまでに1年くらいかかったんですが、リモートで会っているので、実際に会うのは初めてでも、初対面ではない感じはありました。
一方で、たとえば、新しく入ったメンバーのキャッチアップなど、今までであれば隣の席である程度手取り足取り教えられていましたが、オンラインで、会ったことがない同僚から情報を聞くのは心理的にハードルが高いですよね。人見知りの人であればなおさらです。
もう1つデメリットは、効率良く働けるがゆえに、働き過ぎてしまうことです。リモートでは、チームメンバーがどのような働き方をしているのかをマネジメント側が気にかけていないと、1日中仕事をしようと思えばできてしまう環境と言えるので、そのあたりの難しさはあると思います。
生産性を上げるマインドセット
伊藤(パソナグループ):
ハイブリッドワークの場合、生産性を上げるマインドセットを実践するために、まずは離れた場所で働くことについてのマネジメントが求められます。働く人に対する信頼や、自分たちのコミットがより伝わるようなメッセージ、たとえば、「信頼しているんだよ」、「期待しているんだよ」ときちんと伝えていくことが大切です。
同時に、何のためにこの仕事をしているのかという目的感みたいなものがハッキリしていないと、リモートワークの生産性は上がっていかないのではないかと思います。
高木(パソナグループ):
大事なことは、企業の理念と「なぜ・なんのために」というところの意識合わせです。そうすると必然的にマネジメントがメンバーを管理するという考え方から、メンバーがリーダーシップを取っていくという意識に変わります。なぜ・なんのために僕たちがあるのか。企業の理念とどのような社会を実現したいのかという思いが浸透していれば浸透しているほど、1人ひとりの生産性は高まっていくと思います。
逆に、「なぜ、なんのために」ということがしっかりと明確に打ち出されていない状況で、家でずっと1人で仕事をしていると、「どうしてこれ、こんなに大変なんだろう」とネガティブな気持ちになるかもしれません。大事なのはやっぱり理念と、どう浸透させるかというところ。そして、自分自身と企業の「Will・Can・Must」をどう合わせて前進するのかといったところなのではないかと思っています。
伊藤(Slack):
最近ではパーパスという言葉を使ったり、弊社ではアライメントという言葉を使ったりしていますが、会社や組織、自分のチームがどこに向かっているのか、どのような山を登ろうとしているのかを浸透させ、仲間同士で同じ方向を向くことが大事ですよね。その時に、上司や部下、管理する側とされる側ではなく、同じ山を登るために自分が担う役割があると考えます。リーダーシップを取る人、分析をする人、アクションを取る人とそれぞれ役割がありますよね。
その山を登るという作業の中で、Slackは意思疎通や方向性を揃えるのに非常に適したITツールになっていると思います。けれど、ITツールを入れればハイブリッドワークがうまくいくわけではなく、組織としての方向性をどういうふうに共有するのか、というマネジメントの意識とツールをうまく組み合わせて仕事を回していくのが大事なのかなと思います。
明日からすぐに実践するには?
伊藤(Slack):
Slackについて、おそらく多くの方がテキストベースのチャットアプリという印象を強くお持ちだと思います。もちろんSlackには、メールのように「お疲れさまです」といった定型文でなく、テキストベースで話をすぐできるというメリットはあります。同時に、先ほど高木さんと伊藤さんがお話されていたような、会議と会議の合間での上司へのちょっとした相談や、席に行ってちょっと会話するといった普段のオフィスで行いやすいコミュニケーションは、最近導入されたハドルミーティングという機能が使えると思います。メッセージに反応してくれたら、「今ちょっといい?」「ハドルしない?」という流れで、Slack上で突発的な会議を音声で行えます。
伊藤(パソナグループ):
Slackで音声での会議ができるというのは、すごく面白いですね。私もSlackを使わせていただいていて、文字ベースで気軽に打ち合わせができるのが本当にいいと思っています。ただ、文字ベースのみだと、たまにコミュニケーションが行き詰まることがありますよね。やはり会話の中で解決できることは実はたくさんあるので、Slackの中で気軽に音声でやり取りできるのはすごくありがたいです。
高木(パソナグループ):
今後、ますますITツールを活用しながらハイブリッドワークを実現させていくことが重要だと思います。おそらく、われわれの世代よりも上の方々がもっと慣れていけば、若手メンバーは生き生きするのではないでしょうか。
伊藤(Slack):
そうですよね。私たちより上の世代の方々には、絵文字を使うことをおすすめしています。意外と、お孫さんとLINEをやっていて慣れていまよね。Slackにはいろいろな絵文字が用意されていて、オリジナルの絵文字を作ることもできます。役員の方などのために絵文字を作ってあげれば、利用が楽になって社内でのコミュニケーションがむちゃくちゃはかどるのではないでしょうか。
おわりに
伊藤(Slack):
Slackは、メールアドレスさえあれば、わずか3分ぐらいでお試し環境を用意できます。最初から全社導入といったように大きく取り入れなくとも、何かのプロジェクトなどでフリー版を導入し、何がどこまでできるのかをまずお試しいただく。そうして小さい成功を積み重ね、そこで得た実績を基に会社側と交渉するというように、ステップ・バイ・ステップで進めることはできると思いますので、一度お試しいただけるとありがたいかなと思っております。
伊藤(パソナグループ):
ハイブリッドワークによって、1人ひとりの暮らし方や働き方の自由度や活躍度を2倍、3倍にすれば、今の人口減などの問題も怖くないということを訴えています。みんながそれぞれの自由度や活躍度合いをしっかりハイブリッドワークで伸ばしていくことで、企業も社会もこれからどんどん成長していくと確信しています。
高木(パソナグループ):
これから働く上で大事なこととは、自分の好きなことや得意なことを活かしていく、ということに尽きるのではないかなと思います。自分らしさとは何なのかや、これからの人生をどのように描き、自分のキャリアをどう作っていきたいのか。そこに素直であればあるほど、実は生産性や仕事に対するモチベーションも上がると考えています。
リーダーは、ツールの活用とコミュニケーションを併用して各社員の気持ちや考えを理解していくことが、これからの時代はとても大事だと思っています。われわれも何らかのご支援やサポートができればなと考えています。
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