ERPと製造業の関係
比較軸を見る前に、製造業でERPが何を担うのかを押さえておきましょう。
製造業でERPが担う範囲
ERPとは、会計、販売、購買、在庫、生産といった業務の情報を一つの基盤で扱う仕組みです。部門ごとに分かれていた情報を結び付け、全体の状況を把握できるようにすることが目的になります。
製造業では、これに生産の計画と実績、部品や材料の手配、原価の計算が加わります。受注の情報が生産の計画につながり、その実績が原価と在庫に反映されるという流れを一貫して扱える点が、業務ごとに別のシステムを使う構成との違いです。
他業種と異なる要件
製造業では、生産の方式によって求められる機能が大きく変わります。受注ごとに設計する形、決まった仕様を繰り返し作る形、見込みで生産する形では、計画の立て方も原価の捉え方も異なります。
部品表の管理、工程ごとの進捗把握、ロットや製造番号の追跡といった要素も関わります。これらは業種を問わない一般的なERPには十分に備わっていない場合があります。製造業向けとして提供されている製品でも、どの生産方式を想定しているかは製品ごとに異なる点を踏まえておきましょう。
シェアの数値を読む際の前提
公開されている数値をどう扱うかを、三つの観点から確認します。
調査ごとに異なる集計の範囲
ERPのシェアに関する調査は複数の機関から公表されていますが、対象とする範囲の定義が異なります。会計を中心とした製品までを含めるのか、生産管理を備えた製品に限るのかによって、集計の対象が変わります。
対象とする企業の規模や地域も、調査によって異なります。国内の中堅企業を対象とした調査と、世界全体を対象とした調査では、上位に並ぶ製品が一致しないことも珍しくありません。異なる調査の数値を並べて比較することは避けたほうが安全です。
導入社数と金額による順位の違い
シェアを導入した企業の数で見るか、契約の金額で見るかによっても、順位は変わります。大規模な企業に導入される製品は、社数では上位に入らなくても金額では大きな割合を占める場合があります。
自社と近い規模の企業でどの製品が使われているかを知りたい場合、社数を基準とした数値のほうが参考になることもあります。どの指標にもとづく数値なのかを確認したうえで読むと、判断を誤りにくくなります。
企業規模による分かれ方
大規模な企業向けの製品と、中堅や中小の企業向けの製品では、想定する導入の進め方も費用も異なります。全体のシェアが高い製品が、自社の規模に適するとは限りません。
自社に近い規模の区分で公表されている数値があれば、そちらを参考にするほうが実態に近づきます。同業種で規模の近い企業の導入例を知る手段としては、業界団体の情報や、ベンダーが公開している事例も材料になります。
シェアより重視したい比較軸
数値の順位より、自社の要件に合うかどうかが判断の中心になります。二つの軸を挙げます。
生産方式との適合
自社の生産方式に合った計画の立て方ができるかは、最も重視したい部分です。受注ごとに仕様が変わる事業では、案件単位で原価を積み上げる仕組みが必要になります。繰り返し生産する事業では、標準として見込んだ原価との差を確認する使い方が中心になります。
試用や説明の機会があれば、自社の実際の受注や工程を使って動きを確かめることをおすすめします。資料上は対応していても、運用の流れに合わない場合があります。複数の生産方式が混在している場合は、その扱いもあわせて確認しましょう。
既存システムとの連携
すでに使っている生産管理や設計のシステム、部品表の情報とどうつなぐかも検討点です。すべてを入れ替える構成と、既存のものを活かして連携する構成では、費用も期間も変わります。
連携の方式に加えて、どちらが情報の起点になるかも整理しておく必要があります。取り込みに失敗した際に気づける仕組みがあるかも確かめておきましょう。判断が難しい部分は情報システム部門やベンダーに相談しながら進めることをおすすめします。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でERPの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
導入で失敗しやすい点
製品を決めた後の進め方にも、つまずきやすい部分があります。二つ挙げます。
自社に合わせた作り込みの範囲
現在の業務の流れをそのまま再現しようとすると、作り込みの範囲が広がります。費用と期間が膨らむだけでなく、後の更新の際にも手間がかかる状態になります。
製品が想定する標準的な流れに業務を合わせる部分と、どうしても譲れない部分を分けて整理しましょう。譲れない部分を明確にしておけば、比較の際の判断基準にもなります。関係する部署を検討の段階から交え、業務の見直しも含めて議論することが望まれます。
現場への定着と教育
ERPでは、現場での入力が全体の情報の質を左右します。入力が滞れば、集計された数値も実態から離れます。
入力の項目を必要な範囲に絞り、操作しやすい端末を用意するといった工夫が定着につながります。集計した結果を現場にも共有し、何のための入力かが伝わる状態にしておくことも有効です。稼働の直後は問い合わせが集中するため、対応の窓口を用意しておきましょう。
ERPの選び方
ここまでの内容を踏まえ、製品を選ぶ際の確認事項を整理します。
対象業務と規模の整理
最初に、どの業務を対象にするのかを決めます。会計と販売から始めるのか、生産や原価まで一度に含めるのかによって、導入の範囲と期間が変わります。
あわせて、利用する人数と拠点数、月あたりの取引件数も整理しましょう。規模の想定は費用の試算に直結します。海外の拠点を含める場合は、対応する言語や通貨、会計基準も確認が必要です。
導入体制と期間の見積もり
ERPの導入は、システムの設定だけでなく業務の整理を伴います。社内で誰が推進するのか、各部門から誰が関わるのかを決めておく必要があります。
通常業務と並行して進めるため、担当者の時間をどれだけ確保できるかが期間を左右します。ベンダー側の支援がどこまで得られるかもあわせて確認しましょう。決算期や繁忙期を避けた計画を立てることも重要です。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じたライセンス、機能ごとのプラン分け、初期費用と保守費の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。作り込みの費用や導入支援が別立てになる場合もあるため、総額で比べることが必要です。
サポートについては、稼働後にどこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、設定の変更や制度改正への対応まで含まれるのかは製品ごとに差があります。数年単位で使う仕組みであるため、長期の支援体制も判断材料になります。
製造業での導入実績があるERP製品
比較の軸にあわせて検討できる、製造業向けのERP製品を紹介します。
SAP Business One
- 27か国の言語、世界42か国の税制や商習慣に対応
- 低コスト・スピーディーに導入できるクラウドプランも利用可能
- 国内トップクラスの実績で海外拠点への確実な導入を実現
株式会社日立システムズが提供する「SAP Business One」は、中堅・中小企業向けのERPパッケージです。生産管理を含む幅広い業務領域をカバーする構成になっており、海外拠点を持つ製造業での導入実績もあります。短期間かつ低コストで導入しやすい点も特徴です。
Infor SyteLine (CloudSuite Industrial)
- グローバルで製造業を中心に6,000社以上の導入実績!!
- 国内外の製造、販売拠点の統合管理を実現し、企業力強化!!
- 自社運用が可能なカスタマイズ性と使いやすいインターフェース!!
京セラコミュニケーションシステム株式会社が提供する「Infor SyteLine (CloudSuite Industrial)」は、製造業に特化したERPシステムです。個別受注生産や繰り返し生産など、生産形態にあわせた機能を備えており、製造業向けERPとして特定の業種でのシェアを持つ製品です。
PROACTIVE
- 30年以上、7,500社を超える導入実績
- PROACTIVE AIによる、高度な経営判断と業務の効率化・自動化
- AIネイティブな次世代型ERP
SCSK株式会社が提供する「PROACTIVE」は、国内の商習慣にあわせて開発されたERPパッケージです。生産管理を含む複数のモジュールを組み合わせて導入できる構成になっており、国内製造業での豊富な導入実績があります。日本語での手厚いサポート体制も特徴です。
J+ComFITs (富士通株式会社)
- 建設業の成功事例を集約し機能の共通化・標準化を実現。
- 建設業固有の会計処理に対応した、一貫管理と原価・損益管理
- 多通貨・多言語対応、外部連携可でグローバル対応
エイアイエムコンサルティング (エイアイエムコンサルティング株式会社)
- 内部監査・経理・情シスを支援し、企業経営と成長を後押し。
- 成長とビジョンの懸け橋となるコンサルティング
- IPO監査・経理・情シス向けに特化したサービスを提供。
製造業のERPに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: シェアの高い製品を選べば間違いありませんか?
- 数値は調査の対象範囲や指標によって変わるため、それだけを根拠に選ぶことは避けたほうが安全です。自社の生産方式に合うか、既存システムと連携できるかといった要件を基準に候補を絞ることをおすすめします。
- Q2: 中小規模の製造業でも導入する意味はありますか?
- 部門ごとに情報が分かれていて集計に時間がかかっている場合は、規模にかかわらず効果が見込めます。中小規模向けのプランを用意する製品もあります。まず負担の大きい業務から対象を絞って検討するとよいでしょう。
- Q3: 既存の生産管理システムは残せますか?
- 連携する構成を採れば残せる場合があります。ただし情報の起点をどちらにするかを整理しておかなければ、二重管理が生じます。連携の方式と同期する項目を確認したうえで判断しましょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 対象業務の範囲や作り込みの量、拠点数によって幅があります。会計を中心に標準の機能で始める場合と、生産から原価まで含める場合では大きく異なります。決算期を避け、段階的に広げる計画を立てましょう。
まとめ
ERPのシェアに関する数値は、調査ごとに集計の範囲や指標が異なるため、そのまま順位として受け取ることは適切ではありません。製造業では生産方式によって求められる機能が大きく変わるため、自社の受注や工程に合うかどうかを基準に候補を絞ることが実務的です。既存システムとの連携範囲や、作り込みをどこまで行うかもあわせて整理しましょう。対象業務と規模を踏まえ、導入体制と費用を比べて選ぶことをおすすめします。


