属人化が起こる背景
取り組みを見る前に、なぜ生じるのかを押さえておきましょう。要因が分かると、どの取り組みが自社に効くかも判断しやすくなります。
属人化が生じる要因
担当者が長く同じ業務を続けるうちに、手順が本人の中で最適化されていきます。効率よく進められる一方、その進め方が本人以外に伝わらない状態が生まれます。忙しさから記録を残す時間が取れないことも、要因の一つです。
組織の側にも要因があります。人員が限られていて一人が一つの業務を担う体制、記録を残す時間が評価に反映されない仕組み、共有の場が用意されていない状況などです。担当者の姿勢だけの問題として捉えると、解決の手立てを見誤ります。
属人化によって生じる影響
担当者が休暇を取る、異動する、退職するといった場面で、業務が滞る可能性があります。問い合わせへの回答が遅れる、判断が保留になるといった影響が生じます。
引き継ぎの際にも時間を要します。手順が残っていなければ口頭で伝えることになり、伝わり方に差が生じます。本人にとっても、休みにくい、他の業務に移りにくいという負担につながります。組織と本人の双方に関わる課題といえます。
取り組みの型から見た事例
事例で語られる取り組みは、大きく三つの型に分かれます。段階として捉えると進め方が整理しやすくなります。
手順を文書として残す取り組み
作業の順序や使用する資料、注意点を書き出す取り組みです。最も着手しやすい型で、定型的な業務では効果が出やすい領域です。
ただし、文書を作ること自体が目的になると続きません。すべての業務を一度に対象にするのではなく、担当者が一人しかいない業務や、問い合わせが多い業務から着手する進め方が現実的です。作成した文書が実際に使われているかを確認し、使われていないものは内容を見直す流れまで含めて設計しましょう。
判断の理由まで共有する取り組み
手順だけでなく、なぜその判断をしたのかを残す取り組みです。同じ状況でも条件によって対応が変わる業務では、手順書だけでは対応しきれません。
過去の案件でどう判断したか、その理由は何だったかを記録として残す方法が採られます。事例の形で蓄積すれば、似た状況に直面した際の手がかりになります。文章にしにくい内容は、対話の記録や動画として残す方法もあります。書き手の負担を抑える形式を選ぶことが、継続につながります。
人と人をつなぐ仕組みを作る取り組み
すべてを文書化することは難しいという前提に立ち、誰が何に詳しいかを分かるようにする取り組みです。質問を投げれば答えられる人につながる状態を作ります。
社内の質問と回答を蓄積する場を設ける、担当分野を一覧にして公開するといった方法があります。回答が記録として残れば、次に同じ疑問を持った人が参照できます。特定の人に質問が集中しないよう、回答する担当を分担する配慮も必要です。
部門から見た適用場面
業務の性質によって、適する型が変わります。二つの部門を例に確認します。
営業や顧客対応の部門での適用
顧客との経緯や提案の内容、断られた理由といった情報が、担当者の手元にとどまりやすい領域です。担当が変わった際に、顧客へ同じ説明を求めることになりかねません。
この領域では、対応の記録を残す仕組みと、成果につながった進め方を共有する取り組みが組み合わされます。記録が営業活動の管理に使われると感じられると、入力への抵抗が生まれる場合もあります。何のための共有かを伝え、記録した本人にも役立つ形にすることが定着につながります。
技術や保守の部門での適用
特定の機器やシステムに詳しい担当者に対応が集中しやすい領域です。障害への対応では、経験にもとづく判断が求められる場面もあります。
過去の対応事例を検索できる形で蓄積する取り組みが採られます。発生した現象、確認した内容、対処の方法、結果を組みにして残すと、次の対応で参照しやすくなります。すべてを網羅しようとせず、対応に時間がかかった案件から残す進め方も現実的です。
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事例を読み解く際の着眼点
公開されている事例をそのまま自社に当てはめると、想定と異なる結果になることがあります。読む際に確認したい点を二つ挙げます。
共有が続く仕組みの有無
取り組みを始めた直後は、関心が集まって記録が増えます。問題はその後で、日常の業務に押されて更新が止まる例も少なくありません。
事例を読む際は、記録を残す時間をどう確保したか、誰が内容を確認しているか、更新の期限をどう設けているかに注目しましょう。担当者の善意に頼る形では続きにくいため、業務の一部として位置づけられているかが分かれ目になります。上長が確認する流れを設けている例もあります。
効果の測り方と期間
引き継ぎの時間が短くなった、問い合わせが減ったという記述は、何をもって測っているかによって意味が変わります。記録の件数が増えたことと、業務が回るようになったことは別の話です。
また、成果が表れるまでには一定の期間を要します。稼働直後の数値だけでなく、その後の推移まで書かれている事例があれば、より実態に近い見通しを得られます。自社で始める際も、短期での成果を求めすぎない計画を立てましょう。
ナレッジマネジメントツールの選び方
ここまでの内容を踏まえ、ツールを選ぶ際の確認事項を整理します。
対象業務と共有したい情報の整理
最初に、どの業務の属人化を解消したいのかを決めます。定型的な手順が中心なのか、判断を伴う内容なのか、対応事例の蓄積なのかによって、必要な機能が変わります。
あわせて、誰が書き手になり、誰が読み手になるのかも整理しましょう。書き手が限られる場合は作成の負担を抑える機能が、読み手が多い場合は探しやすさが重要になります。人数に応じた料金体系を採る製品が多いため、対象範囲は費用の試算にも関わります。
検索と分類の機能
蓄積した情報にたどり着けなければ、残した意味が薄れます。表記の揺れを吸収した検索ができるか、分類をたどって探せるか、検索されたのに結果が出なかった内容を把握できるかを確認しましょう。
閲覧の状況を確認できる機能があれば、読まれている内容と読まれていない内容を把握できます。改善の優先順位を決める材料になります。既存の文書やファイルを取り込めるかも、着手の負担に関わる要素です。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、保存容量によるプラン分け、閲覧のみの利用者を別の単価とする形など、製品によって考え方が異なります。全社を対象にする場合は、この違いが総額に影響します。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、分類の設計や社内展開の進め方を相談できるのかは製品ごとに差があります。定着に不安がある場合は、この支援の内容も判断材料になります。
属人化の解消に活用できるナレッジマネジメントツール
取り組みの型や部門の運用にあわせて検討できるツールを紹介します。
NotePM
- 社内のナレッジ情報を蓄積・共有するツール
- 豊富なAI機能(チャットボット・マニュアル作成・要約・校正等)
- 大手・金融機関も導入。実績と安心のセキュリティ
株式会社プロジェクト・モードが提供する「NotePM」は、社内の業務マニュアルやノウハウを蓄積できるナレッジ管理システムです。文書の更新履歴を残せる機能を備えており、情報が古いまま放置される状態を防ぎやすくなります。検索機能により、必要な情報を探す手間を軽減できます。
Helpfeel(ヘルプフィール)
- 様々な言い回しやスペルミスにも対応ー新感覚なAI-検索システム
- AI×特許技術で、数千ページのマニュアルから欲しい回答をPick up
- 継続率99%!充実のレポート&サポート体制で効果的な運用が続く
株式会社Helpfeelが提供する「Helpfeel(ヘルプフィール)」は、社内外からの問い合わせに対応するFAQシステムです。曖昧な表現での検索にも対応できる検索機能を備えており、質問の仕方が定まらない利用者でも情報にたどり着きやすい構成になっています。属人化した対応の標準化に活用できます。
Confluence
- チームのナレッジを1か所に統合し、あらゆるチームをつなぐ
- お気に入りのツールを統合し、シームレスに仕事を進める
- AIによって、Confluenceでの作業をより効率的・生産的に
アトラシアン株式会社が提供する「Confluence」は、チームでの情報共有を目的としたドキュメント管理ツールです。プロジェクトごとに情報を整理できる機能を備えており、開発部門をはじめとした複数人での共同編集が必要な業務での活用が想定されています。
KnowledgeSh@reナレッジシェア (株式会社富士通ラーニングメディア)
- AI翻訳連携で多言語マニュアル作成に対応
- 現場の気づきをマニュアルに反映可能
- アクセスログでマニュアル改善点を可視化
コンパスシェア (アクシスコンサルティング株式会社)
- 多様な課題を即時相談可能。
- 大手コンサル出身のハイエンド人材をマッチング。
- 30~60分で低料金スポット相談が可能。
属人化解消に関するよくある質問
取り組みを検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 何から着手すべきですか?
- 担当者が一人しかいない業務や、その人が不在だと止まる業務から着手する進め方が現実的です。すべてを一度に対象にすると負担が大きくなります。影響が大きい業務を洗い出すところから始めるとよいでしょう。
- Q2: 担当者が記録を残したがらない場合はどうすればよいですか?
- 時間が確保されていない、記録が評価につながらない、共有すると自分の役割が減ると感じるといった要因が考えられます。作成の時間を業務として認める、書式を簡単にする、共有した人が評価される仕組みを設けるといった対応が挙げられます。
- Q3: 文書化すれば属人化は解消できますか?
- 定型的な業務では効果が出やすい一方、判断を伴う業務は手順だけでは伝わりにくい面があります。判断の理由を残す、質問できる相手が分かるようにするといった取り組みを組み合わせることが望まれます。
- Q4: 効果はどのくらいで表れますか?
- 業務の内容や記録の蓄積量によって幅があります。引き継ぎや問い合わせの場面で使われて初めて効果が見えるため、一定の期間が必要です。短期での成果を求めすぎず、記録が使われているかを確認しながら進めましょう。
まとめ
属人化解消の事例では、手順を文書として残す取り組み、判断の理由まで共有する取り組み、人と人をつなぐ仕組みを作る取り組みという三つの型が語られます。営業や顧客対応の部門と技術や保守の部門では、適する型も異なります。事例を読む際は、共有が続く仕組みが用意されているかを確認しましょう。対象業務と共有したい情報を整理したうえで、検索や分類の機能、費用を比べて選ぶことをおすすめします。


