属人化の解消方法
属人化の対になる言葉として「標準化」があります。標準化は誰でも業務が遂行できる状態を指します。業務の標準化ができている組織では、急な欠勤や異動、離職が生じた場合にも問題なく代行や引き継ぎが可能です。
ここでは業務標準化や属人化解消につながる5つの方法を紹介します。
- ●業務責任の分散
- ●業務プロセスのシンプル化
- ●業務マニュアルの作成
- ●従業員の意識改革
- ●ITツールの活用
業務責任の分散
仕事の責任が特定の人物に集中していると、ほかの従業員が把握できない情報が増え、意見もでず属人化しやすくなります。
まずは、属人化している業務の棚卸しをしましょう。業務の責任範囲を確認したら可能な限り部下に権限委譲する、もしくは権限者を複数人おきます。
例えば、長期休暇を取得する際の引き継ぎも責任の分散といえます。自分以外の従業員で代行が務まるよう情報共有し、代行者にも責任意識をもってもらうことは属人化の解消につながります。
業務プロセスのシンプル化
属人化は、シンプルな業務よりも複雑な業務で発生しがちです。そのため、業務の仕組みを簡素化すれば属人化を解消できると考えられます。
複雑な業務工程を分解し、省略できる業務はないか見直しましょう。あわせて作業量や難易度に偏りはないかなども確認すれば、従業員の業務負担の均一化にもつながり、業務平準化が期待できます。
業務に使用するツールの数を必要最低限にするのも効果的です。なくても困らないツールは省いたうえで、余計な作業を取り除き、最低限のシンプルな業務フローを構築しましょう。
業務マニュアルの作成
誰が担当しても一定の品質を担保できるように、業務マニュアルを作成しましょう。担当者が不在でも、マニュアルがあれば対応可能な状態にします。マニュアル作成時は、まず業務フローを洗い出し、業務の流れや担当者の役割を可視化します。そのなかで属人化している業務ごとにマニュアルを作成しましょう。
マニュアルを作成する過程で従業員が意見を出し合い、ノウハウが共有されることも属人化の解消に寄与します。
従業員の意識改革
属人化を解消するためには、社内の風通しをよくし連帯感を生み出すことも大切です。
企業は属人化の不利益だけでなく、情報やナレッジ共有の重要性を啓蒙し、従業員の意識改革にも注力しましょう。また、属人化解消への取り組みを評価する制度を設けるなど、従業員が当事者意識をもって業務に臨めるための体制づくりも必要です。
情報共有やスキルが共有される仕組みが整っていない場合や、多忙すぎて共有時間がとれない場合などは、ITツール導入を検討するのも選択肢の一つです。
ITツールの活用
属人化解消には、ITツールの活用も有効です。例えば、タスク管理ツールは業務進捗の管理が簡単にできます。コミュニケーションツールは、リモートワークにおけるメンバー間のスムーズな情報共有を支援するでしょう。ほかにもFAQツールや社内wikiツールなど、属人化解消に役立つITツールは多数存在します。
ITツールに頼らない属人化解消もムリではありませんが、持続するにはかなりの時間と労力が必要です。ITツールを用いて、パワーを注ぐべき業務に集中できる体制を整えると、効率よく属人化解消が進むでしょう。
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そもそも属人化とは
属人化とは、業務の進め方や内容などを特定の人しか把握していない状態のことです。短期的に見れば熟練した人が担当するため、業務効率化や専門性が高まるメリットもありますが、一般的にはデメリットやリスクのほうが大きいとされています。
業務属人化のデメリットは、以下のとおりです。
- ■長期的に見て業務効率が低下しやすい
- 担当者が出張や病気で不在になれば、業務が完全に停滞してしまうことも。また業績拡大などで対応量が倍増した場合、一人で対応するには限界があり、業務遅延が発生する場合もあります。生産性の低下も懸念されるでしょう。
- ■業務品質が不安定になりやすい
- 属人化している業務の詳細は担当者しか把握できないため、業務の質や成果を適切に判断できず、管理者は評価や指導が難しくなります。問題が発生しても発見が遅れ、大幅なやり直しを迫られる可能性も否めません。
- ■社内の風通しが悪くなりやすい
- 属人化により担当者以外が業務内容を理解できないため、従業員間での意見交換や連携は生まれず、お互いの領域には口出しをすべきでないという風潮が醸成されます。
属人化とスペシャリストの違い
属人化とスペシャリストの存在は、しばしば混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。この違いを理解することは、組織運営において適切な人材戦略を立てるうえで重要です。
前述のとおり、属人化は特定の業務や知識が一人の従業員に依存する状態を指します。この状況では、その従業員の不在時や退職時に業務の継続が困難になるリスクがあるでしょう。属人化は業務の透明性を損ない、組織の柔軟性と成長を妨げる要因となります。
一方で、スペシャリストは特定の専門分野において高度な知識や技術をもつ従業員です。スペシャリストはその専門性を活かして組織に貢献し、革新や問題解決に重要な役割を果たしています。スペシャリストがもつ知識や技術を組織内で共有し、組織全体の能力向上に寄与することが期待されています。
業務が属人化する原因
なぜ、業務の属人化が発生してしまうのでしょうか。属人化する原因を解説します。
業務の専門性が高い
専門性の高い業務は、知識の共有が困難なため属人化しやすい傾向にあります。特に、咄嗟の対応が求められるような業務は、画一的な手順や方法を定めるのが容易ではありません。
一度特定の人物に業務を任せると、同じ人物が継続して担当する場合が多くなるでしょう。結果、特定の担当者だけが専門技術に熟達し、ほかの人は身につける機会が減少します。
業務負担が大きく教育の余裕がない
マニュアル化できない高度な知識や技術を共有するには、従業員の教育が必要です。特に技術継承は、指導する側も受ける側も時間的・体力的余裕がなければなりません。
目の前の担当業務だけで手一杯の状態だと、教育する時間を捻出できないままとなり、属人化に拍車をかけます。属人化を解消するには、まずは業務改善に取り組みましょう。時間的余裕が生まれることで負の連鎖からの脱却が期待できます。
自らの地位や立場を守る意図
業務の属人化は、担当者がいなくなった際に代わりを務められる人物がいないため、企業にとっては問題です。しかし属人化した業務に携わる従業員のなかには、属人化をむしろ歓迎している人もいます。自分よりも技術や知識に詳しい人がいなければ、ミスの隠蔽行為も可能です。自分の代わりがいないことで自身のポジションを保てると考えるため、担当者にとって好都合と感じる要因となります。
リモートワークによる情報共有不足
リモートワークはメンバーが離れた場所で仕事をするため、コミュニケーション不足が起こりやすい環境です。コミュニケーションが不足すると、必然的に業務の情報共有も少なくなり、属人化を加速させる原因になります。
同じオフィスフロアにいれば、目の届くところに同僚や上司がいて、相談ごとや業務の振り分けなども気軽にできます。しかし、リモートでは相手の状況が見えにくいため自分一人で対応することを選んでしまうでしょう。
属人化による弊害
属人化は多くの組織で見られる問題で、多くの弊害や問題を抱えています。具体例を交え、属人化による弊害をさらに深く掘り下げてみましょう。
長時間労働につながりやすい
属人化された業務は、特定の個人に過度な負担が集中し、結果として長時間労働につながることがあります。特定のスキルや知識をもつ個人が業務の全責任を担うため、その人の労働時間が過剰になりがちです。
例えば、特定のシステムの操作を熟知している従業員が、そのシステムに関連するすべての問い合わせやトラブル対応を担う場合、過重な業務負荷がかかり、結果的に長時間労働につながるでしょう。業務負荷が大きいと、従業員の健康問題やモチベーションの低下を招く可能性もあります。
何をやっているかが不透明になる
業務が特定の個人に依存すると、その人が行っている作業内容や進捗状況がほかのメンバーには不透明になりがちです。これにより、チーム全体の協力や調整が困難になり、組織の効率が低下してしまいます。
例えば、販売データの分析を一人の従業員が担当している場合、その分析方法やデータの解釈がほかのメンバーには明らかでないため、透明性が失われます。これにより、業務に関連する意思決定プロセスがほかのチームメンバーには理解しにくくなり、組織全体の連携が妨げられるといったことが発生してしまうでしょう。
ほかにも、一人の従業員が独自の方法で顧客データベースを管理している場合、ほかのメンバーがその情報を利用する際に追加の時間と労力が必要になり、全体の業務効率が低下するといった懸念点も考えられます。
ミスやトラブルを見つけられる人がいない
属人化した業務では、その業務を深く理解している人が限られるため、ミスやトラブルが発生した際の対応が遅れたり、適切な解決策が見つからなかったりすることがあります。
特定の業務を独占的に担当している従業員が休暇を取っている際に、システムトラブルが発生した場合を考えると想像しやすいでしょう。ほかの誰も対応策を知らないため、解決までに時間がかかります。このような状況は、業務の遅延や顧客満足度の低下につながります。
また、上述したとおり、ミスやトラブルを見つけられる人がいないとミスの隠蔽行為も可能になってしまうのは、非常に大きな問題です。
退職によるダメージが大きい
特定の個人に業務が集中している場合、その人が退職すると業務に大きな穴が開きます。後任者の育成や業務の引き継ぎが困難であり、組織全体の運営に影響を与えることもあるでしょう。
例えば、重要なクライアントの管理を一人の営業担当者が行っていた場合、その担当者が退職するとクライアント情報や関係構築の詳細が失われ、新しい担当者が同じレベルのサービスを提供するまでに時間がかかったり、そもそも不可能になったりします。
工数管理ができない
属人化された業務は工数の見積もりや管理が困難です。業務が特定の個人の経験や判断に依存しているため、正確な工数評価や効率化の取り組みが難しくなります。
どのくらいの作業感でどのくらいの工数が発生するかが不透明だと、もし仮にサボっていたとしても周囲は気づかず、全体的な生産性も低下してしまうでしょう。
業務の成果を評価できる人がいない
特定の個人に依存する業務は、その成果を適切に評価できる人が不足する傾向があります。業務の専門性が高いほど、評価するための知識や経験をもつ人が限られ、公正な評価が難しくなるでしょう。
例えば、ある特殊な技術をもつエンジニアがいる場合、その技術に関する深い理解をもつ人がほかにいないと、そのエンジニアの業務成果の適切な評価が困難になるといったことが考えられます。
サービスの品質担保や改善が難しい
属人化された業務では、サービスの品質を一貫して担保することが難しくなります。なぜなら、特定の個人の知識や経験に依存しているため、サービスの改善やイノベーションが起こりにくい状況にあるからです。
特定の従業員のみが顧客対応のノウハウをもっている場合、その従業員が不在のときにサービスの品質が一貫せず、顧客からの信頼を損なうこともあるでしょう。また、ノウハウの共有がなければ、業務の改善や革新が進まず、競争力の低下にもつながります。
属人化解消にはITツール活用がおすすめ
属人化解消に役立つITツールはさまざまな種類があります。そのなかでも、特にマニュアル作成ツールやナレッジマネジメントシステムの活用がおすすめです。メリットを踏まえつつ各ツールについて解説します。
マニュアル作成ツール
手順書や動画マニュアルなどを簡単に効率よく作成できるのが、マニュアル作成ツールです。テンプレートを利用すればゼロからマニュアルを作成する必要がなく、クオリティも担保されます。実際の手順を繰り返し確認できる動画マニュアルなどは、専門性が高く属人化しやすい業務にも適しているでしょう。
マニュアル作成ツールに興味がある方は、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
ナレッジマネジメントツール
属人化した知識やノウハウを組織全体で共有し、業務や事業の円滑化をサポートするのがナレッジマネジメントシステムです。
主な機能は、マニュアルなどのファイル検索機能です。業務で行き詰まった際に、文書内のキーワードなどで検索をかけ、求めている情報に素早くアクセスできます。ほかにもマニュアル作成機能や、従業員同士のコミュニケーション機能など便利な機能があります。
機能についてより知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
ナレッジマネジメントシステムを活用した属人化解消の事例
ナレッジマネジメントシステムを導入して、属人化を解消した企業の事例を紹介します。どのような業務の属人化に悩み、どのようなITツールを活用したのか、製品導入を検討する際の参考にしてください。各ITツールの機能や特徴は、製品詳細ページボタンから確認できます。
大鵬薬品工業株式会社様の導入事例
製薬会社の大鵬薬品工業株式会社様では、臨床試験で用いる製剤の試験方法開発や専門文書作成の際に、蓄積された大量の資料や文献のなかから情報を収集する必要がありました。しかし、ナレッジ共有がシステム化されておらず、人事異動のたびに人づてに参考文書を確認するというやりとりが発生し、属人化が問題になっていたのです。
そこで、ナレッジ活用ソリューションである「Knowledge Explorer」を導入。検索速度や精度が高く、属人化されていた知見にも素早くアクセスできるため、情報収集に要していた時間が大幅に削減されました。
株式会社日本旅行様の導入事例
総合旅行会社の株式会社日本旅行様は、シフト制による知識の属人化に課題感をもっていました。課や部門を越えた全社横断での情報共有を目指しており、方法を模索するなかでナレッジ経営クラウド「Qast」の導入を決定。
Q&A機能により社内ナレッジを蓄積できるようになっただけでなく、メモ機能によって商品の新情報を従業員全員へ共有することも容易になりました。誰がどれだけ質問や回答したかを可視化できるため、人事評価への活用も検討しています。
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属人化を解消する際に気をつけるポイント
属人化解消のための施策は、一度実施すれば終わりではありません。放置していれば、あらたな属人化が生まれる可能性もあり、継続的に取り組まなければなりません。属人化解消を持続させるために意識すべきなのがPDCAサイクルをまわしていくことです。課題に対してどのような計画を立てたか、実践してどうだったかを検証して、次に必要なアクションは何かを見極めます。一連のプロセスの繰り返しにより、業務は標準化され、属人化解消につながります。
例えば、一度完成したマニュアルをそのまま使い続けるとしましょう。業務の方針転換や、細かなルール変更は日常的に起こるため、時間の経過とともに参考にならない情報へと変化します。管理者も従業員も、属人化解消の意識を常にもち、マニュアルのアップデートを協力的に行うことで、最新情報にもとづいた標準化が維持できるでしょう。
業務の属人化を解消して個人の知識を企業の財産にしよう
業務が属人化すると、担当者が急に不在となった際に、業務が停滞するリスクが生じます。ナレッジマネジメントシステムやマニュアル作成ツールなどITシステムを利用することで、リスク対策と知識の共有・標準化が可能です。企業全体のナレッジとして蓄積されたものは財産となり、業績拡大にもつながっていくでしょう。
なお、ITツール(ナレッジマネジメントシステム)の導入に興味がある方には、効率よく情報収集できる一括資料請求がおすすめです。