マーケティングオートメーションにおける「シナリオ」とは
マーケティングオートメーションにおけるシナリオの概要を見ていきましょう。
見込み顧客を購買へとつなげるための筋道のこと
本来、シナリオとは映画やドラマなどの脚本を示す言葉ですが、マーケティング分野では顧客との関係性における筋書きを意味します。
一般的に、人間同士の関係性はリアルタイムに変化していくため、簡単に予測したりコントロールしたりできません。しかし、優れたマーケティングを目指すのならば、自社と顧客の関係を運に任せるわけにもいきません。どのような流れで関係を進展させたいのかをあらかじめ想定し、そのシナリオどおりになるようにアクションを起こす必要があるのです。
具体的には、「メルマガを通じてサイトに招き、資料請求ののちにDMを送って…」のようにシナリオを設計します。これによって、顧客に「サイトを訪問し、資料請求で興味を深め、DMに反応し…」というアクションを起こしてもらいます。そして、その流れの最後に商品やサービスを購入してもらうのがシナリオのゴールです。
検討段階の顧客を取りこぼさないために必要
自社の商品・サービスを購入しようと検討している顧客は、なんとしてでも受注につなげたい存在です。この顧客をゴールへ導けるかどうかで利益は大きく変わってきます。そこで必要になるのがシナリオです。
例として、顧客が自社製品の資料請求をしてきたとしましょう。この時点で顧客の興味関心は強いため、メールなどでアプローチすれば受注を獲得できるかもしれません。
ところが、すぐにメールを送らなかったら顧客は他社製品に興味を移す可能性があります。タイミングを間違えるだけで利益を逃すことになるのです。したがって、この例では「資料請求の後、〇日以内にメールを送る」というシナリオを用意しておき、そのとおりにアクションを起こせば良いことになります。
ちなみに、マーケティングオートメーションツールにはこうしたシナリオ機能が備わっていて、事前に設定していればメールを自動配信できます。手作業でシナリオを実行する負担はありません。
シナリオの作り方
続いて、マーケティングオートメーションにおけるシナリオの作成方法を解説します。
1.ペルソナの設定
シナリオを作成するためには、まずペルソナの設定を行います。
ペルソナとは、自社の価値をもっとも提供できる架空のターゲット像のことです。このペルソナを設定することで、顧客の行動ベースでシナリオを設計できます。BtoBのビジネスの場合は、「企業像」「購買担当者像」の2種類のペルソナを設定しましょう。
そして、企業のペルソナでは規模や業種、業務課題、導入状況などを想定しましょう。購買担当者のペルソナでは検討に関わる人を洗い出し、抱えている課題や重視している検討ポイントを想定します。
また、ペルソナを設定する際には、客観的な根拠がある情報を参考にしましょう。既存顧客の情報や、一般公開されている調査データ、アクセス解析などの結果を参考にします。また、自社が行ったアンケートや営業担当が把握しているヒアリング情報も活用すると良いでしょう。
2.カスタマージャーニーの整理
次のステップでは、設定したペルソナに基づいてカスタマージャーニーを整理します。
カスタマージャーニーとは、商品の認知・情報収集・検討・購入という購買プロセスを旅に見立てた用語です。シナリオどおりに顧客を導いた結果として生じる、一連の顧客体験とも言えます。顧客がカスタマージャーニーを経験する中で何を考え、どのように行動するかを理解・想定しましょう。
BtoBの場合、顧客は既に課題を抱えており、解決手段を探していることがほとんどです。カスタマージャーニーを整理することで、顧客の心理や行動をより理解できるでしょう。結果として、顧客に寄り添ったシナリオを作成できます。
3.アプローチチャネルの明確化
アプローチチャネルとは、マーケティングにおいて顧客にアプローチする手段のことです。いくつか例を見てみましょう。
- ■店頭での接客
- ■営業
- ■セミナー
- ■アウトバウンドコール
- ■ダイレクトメール
- ■Eメール・メルマガ
- ■SNS
- ■自社サイト
- ■オウンドメディア
上記のようなチャネルうち、どれを使うのかを決めてシナリオを作成しましょう。チャネルによって適切なアプローチ方法は変わってきます。
特にBtoBでうまく活用したいのがメールです。先述したように、マーケティングオートメーションツールのメール配信にはシナリオ機能が備わっていて、シナリオどおりにメールを自動配信してくれます。一度メールのコンテンツと送信するタイミングを決めてしまえば、人が作業する必要はありません。
シナリオ機能で自動的に顧客との関係性を深め、自社サイトや店頭など、より密接なチャネルへとつなげるのが理想的です。
シナリオ設計のコツ
続いて、マーケティングオートメーションにおけるシナリオ設計のコツを3つ紹介します。
メルマガや資料などのコンテンツを用意する
効果的なシナリオを作成するためには、複数のコンテンツを用意することが重要です。
顧客に提供できるコンテンツの数が少なければ、マーケティング活動の幅もそれだけ狭くなります。同じ内容のメルマガを何回も配信していれば、顧客は飽きてしまうでしょう。
シナリオ作成のために分析したペルソナやカスタマージャーニーに沿って、コンテンツも随時追加していきましょう。マーケティングオートメーションツールを使ってメール配信を自動化していれば、コンテンツ作成に注力できるはずです。
また、メール本文だけではなく、Web上でダウンロードできる資料も作成するなど工夫が必要です。どのようなチャネルで顧客が情報収集するか考慮し、複数のコンテンツを提供するようにしましょう。
トリガーを設定する
マーケティングでは適切なコンテンツを提供するだけでなく、最適なトリガーの設定も重要な要素です。
トリガーとは、顧客がどんなアクションを起こしたときにコンテンツを提供するのか、といったタイミングのことです。例えば、資料をダウンロードしたタイミングで、ステップメールを用いてイベント情報を配信すると良いでしょう。このように顧客の行動・心理に合わせて最適なトリガーを考えます。
しかし、どのようなタイミングがトリガーとして最適なのか分からないケースも多いでしょう。そのような場面でも、マーケティングオートメーションツールが役立ちます。ツール上では顧客が起こした行動を管理できるため、それらのデータを分析して顧客の心理やニーズを掴みましょう。
反応分析を実施する
どれほど緻密にシナリオを作成しても、それは机上の空論です。実行に移し、結果に基づいて改善を続けなければ優れたシナリオにはなりません。
したがって、シナリオを実行した後はターゲットの反応分析を行いましょう。想定したとおりに顧客がアクションを起こしてくれているのであれば、ひとまず成功と言えます。さらに効果的なマーケティングを目指し、新たなシナリオを考えてみましょう。
しかし、ターゲットが想定と異なる行動を取る場合は、カスタマージャーニーの整理が間違っているのかもしれません。顧客の態度に変化がなければ、アプローチの内容やトリガー設定、あるいはペルソナ自体がそもそも不適切だった可能性もあります。
このように顧客の反応を分析してPDCAサイクルを回すことで、より精度が高いシナリオの作成が可能です。もし、望んだ成果が得られなくても今後の礎となるでしょう。
シナリオ設計の例
最後に簡単なシナリオの例を紹介するため参考にしてください。
- 【シナリオの具体例】
-
- ターゲット
- メール内のURLから資料をダウンロードした顧客
- 訴求内容
- セミナー参加の案内
- チャネル
- ステップメール
- トリガー
- 資料ダウンロードの3日後、リマインドとしてセミナー開催2日前
上記は顧客の中からセミナーに参加する確度が高い顧客の創出を目的とした場合の例です。
まずは、自社の製品やサービスの簡単な案内メールを一斉送信します。案内メールの開封状況や本文のURLをクリックしたか確認しましょう。開封率・クリック率が高い顧客には、より詳細な資料のダウンロードぺージをメールで案内します。
次は資料を実際にダウンロードした顧客に対して、セミナーの案内メールを送信しましょう。セミナーの開催日が近づいたら再度メール配信を行い、確度を高めます。
マーケティングオートメーションでシナリオ設計を実施!
マーケティングオートメーションにおけるシナリオとは、顧客と自社が関係を構築する筋書きのことです。適切なタイミングで漏れなくアプローチをするために設計します。
作り方は以下のとおりです。
- 1.ペルソナ設定
- 2.カスタマージャーニーの整理
- 3.アプローチチャネル
また、シナリオ設計のコツは以下のとおりです。
以上を踏まえてシナリオを設計し、売上アップを目指しましょう。