日本の農業経営の実情
日本における農業経営は現在どのようになっているのでしょうか。課題と改善に向けての取り組みを解説します。
日本の農業経営における課題
日本が農業経営において抱える課題とはどのような点があげられるのでしょうか。大きく2つに分けて解説します。
新規参入が少なく、農業人口の減少と後継者不足
農業自体のビジネスモデルが成熟しておらず、職業として魅力的ではないようにみえてしまっていることがあります。さらに、農業を始めるに当たって、初期投資額が多く採算が取れるかがわかりにくいため、手が出しにくいという点があります。のれらの問題により新規参入が増えないため、農業人口が減り後継者不足につながっています。
紙媒体での記録により、情報の管理ができていない
多くの農業経営者が紙媒体で記録をとっているため、情報の管理がうまくできていない場合が多くあります。日々の情報の蓄積や、過去情報の検索を手作業で行うため時間がかかっていることや、出荷金額や農薬などの費用を確認したいような場合も、情報を集計できていないために活用することができていないという問題があります。
農業従事者には高齢の方が多いこともあり、今までのやり方から抜け出しづらく、IT化やシステム化が思うように進めることができていないというのが現状です。
適正な生産を行うための農業生産工程管理(GAP)とは?
農業生産工程管理(GAP:Good Agricultural Practice)とは農業における「良い生産工程管理」を行うことです。主に下記の4つの課題を改善してく取組みです。
- ・食の安全
- ・環境の保護
- ・安全な労働
- ・効率的な生産工程
適正な生産工程管理を行っているか第三者機関から厳密に審査が行われ、GAPの認証を取得することができます。しかし、GAP認証の取得には40万~100万円の審査料がかかり、160~200項目のチェック項目があるため、取得は難しいとされています。
しかし、GAPの取り組みを行うことで生産工程が整備され、生産活動の効率化や農作物の品質向上にも繋がります。
参照:農業生産工程管理(GAP)に関する情報|農林水産省
農業にも適用される生産管理システム
農業経営における上記のような課題を解決する1つの手段として、生産管理システムの導入が挙げられます。
生産管理システムを導入するメリット
生産管理システムを導入すると、これまで紙で記録していた農作物の出荷記録や、資材や機械などの使用記録などを電子化できるので、情報の蓄積や確認がスムーズになります。また月度単位の売上・原価・費用が集計され、月度単位での推移などを追うこともできるようになります。
このように生産管理システムの導入は、農業経営で利益をあげるための課題・糸口や現状を把握することにつながるでしょう。
導入するならクラウド型生産管理システム!
生産管理システムにはさまざまな提供形態がありますが、クラウド型(SaaS型)であれば低価格で簡単に導入することができます。サーバが必要なオンプレミス型のシステムと違い、クラウド型生産管理システムはサーバを置く必要なくシステムの運用・管理もありません。近年では、クラウド型システムを導入する方が増えてきています。クラウド型生産管理システムに興味のある方は、他の記事も読んでみてください。
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「農業」×「IT」で成果を出すスマートアグリ
農業のIT化とは一体どのように行われているのでしょうか。具体的な事例とともに「スマートアグリ」について紹介します。
スマートアグリとは?
スマートアグリとは、生産管理システムよりも大きな枠組みで農業とITを組み合わせ、最新テクノロジーを活かして農作物の栽培を行う手法のことです。スマートアグリカルチャー(Smart Agriculture)とも言います。
農業は元来から人の手による作業が中心であり、なおかつそのノウハウは経験の中で培われる部分が多く、習得には長期にわたる時間を要します。
そこで、ITやロボット技術を活用して農作業の省力化を図ったり、感知機を使って情報を観測できるセンシング技術を活用して情報を数値化し、効率的な農作業を行ったりといった動きが始まっています。このような手法こそが、スマートアグリなのです。
オランダで大成功を収めたスマートアグリ
海外に目を向けると、この分野で先行している国家としてオランダの名前をたびたび目にします。オランダはこのスマートアグリを、国家的プロジェクトと位置づけて実行しています。
オランダは、国土面積は日本の1/9ながら、スマートアグリの実施により農業輸出額を世界2位の680億ドル(約8兆1400億円)まで伸ばしました。
現在日本の農業輸出額は世界57位と落ち込んでいます。これを解決する手段として、スマートアグリの実現が今注目を集めています。
オランダにおけるスマートアグリの事例
オランダの農場では、どこにいてもスマートフォンやタブレットで作物の発育状況を把握できるインフラが整備され、24時間いつでも監視・制御される体制が整っています。植物工場における温度・湿度・養分の自動管理には、センシング技術や、IoTによるネットワーク技術が使われており、さらには省エネのために再生可能エネルギーも利用されています。
オランダにおけるスマートアグリは、このように最先端技術を駆使し、計画的・効率的な農業の基盤を支えています。
いくつかのオランダ企業は、豊富なスマートアグリのノウハウをパッケージ化して、海外への事業展開を図っています。例えばオランダのIT企業・デイコム社は、日本のNEC社と共同でビッグデータ事業を世界各地で展開しています。
すでに2014年10月に、ルーマニアのジャガイモ農場で気象センサーや土壌センサーをもとに計測された環境データを収集・解析しており、今後はそのビッグデータを欧州・中東・アフリカの大規模経営農家向けに販売していくようです。
参照:「オランダで大成功のスマートアグリが日本の農業を推進する!?」|CHANGE MAKERS
生産管理システムを使って農業を効率化!
日本での農業分野のIT導入は、他業種に比べ、遅れているといわれています。記事中でご紹介した作物の生産管理システムも、日本では一部の大規模農業法人をのぞき、ほとんど導入は実施されていません。今後生産管理システムやスマートアグリといったITによる農業経営を行うことで、農業ビジネスの発展が期待できるのではないでしょうか。
クラウド型生産管理システム以外にも農業の生産管理に適したシステムは多数あるので、ご興味のある方は実際の製品をご覧になってみてはいかがでしょうか。
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