経理の役割と目的
経理の目的は、組織全体の現状や実績を経営層に提示するため、各部門の会計情報を管理することです。そのため、経理部門は経営層が見落としがちな「些細でも重要なこと」に気づき、提言することができます。経営層の意思決定のサポート役といえるでしょう。
経理は他部門からすると、旅費精算や帳簿記帳などの経費管理が主な業務と見られがちです。本来、経理は「経営管理」の略称です。経営管理とは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を有効活用して組織の目標達成を図ることです。
そこで経理は、お金の管理だけでなく組織全体の情報を数値化し資料にまとめ、経営層に提出します。経理でまとめられた情報は、組織の現状把握や収益性を明らかにします。したがって、経理は経営層の意思決定をサポートする重要な役割も担っているのです。
経理と他部門の違い
経理と他部門との違いは、部門に特化した業務ではない点です。
例えば人事管理は人事部門が、生産管理は生産部門がその管理を担い、決められた範囲の管理を行っています。しかし経理は部門に関係なく、組織全体の横断的な管理を行う部門です。
各部門で発生した日々のお金の流れを記録し、月単位の会計情報は、試算表・損益計算書として、年単位では決算書としてまとめられます。
経理は各部門の会計情報を資料にまとめて経営をサポートする、組織の中でも非常に重要な役割を担う部門です。
経理の仕事内容
経理の仕事内容を、3つに大別して解説します。
日常業務
日々の現預金や経費の管理が主な業務になり、経理の日常的な業務は以下の通りです。
- ・小口現金管理
- ・経費・旅費精算
- ・売上金の計上・支払い
- ・預金管理(記帳)
- ・伝票作成・記帳
- ・領収証などの各種伝票の管理
細々した日常の経理業務は試算表や決算書作成につながっていくため、正確性が求められます。各帳票の内容をチェックし、不明点があれば担当者に確認が必要です。
月次業務
経理の月次業務は売掛金・買掛金管理、給与計算などがあります。それぞれの業務内容は以下のとおりです。
- ・売掛金管理
- 請求書を発行し、請求先の締め日や支払い期日、支払い方法を把握して入金を確認します。銀行振込が多いですが、金額が大きくなると手形を発行する取引先もあるでしょう。入金を確認し、差額発生時は内容を精査します。
- ・買掛金管理
- 請求書の金額に間違いがないかをチェックし、問題がなければ支払日に支払います。
- ・給与計算
- 経理部門が給与計算を担う場合は、給与に関係する各項目を確認し、計算と支給を行います。特に従業員の家庭環境や勤務状況の変化による手当や社会保険、税金の金額変更に注意が必要です。
他にも月次の試算表や損益計算書を作成し、経営層への報告する業務もあります。当月の損益や資産状況を示し、経営上の判断材料となります。
年次業務
経理の年次業務は主に決算書作成や税務申告です。決算書は年間の収益状況をまとめた書類です。
決算日の2ヶ月以内に集計を締め、税務署に決算申告を行い、期限までに各種税金を納付します。
また、株主総会の開催は決算日から3ヶ月以内です。
経理の仕事の分類
また、経理の仕事は3つに分類することができます。
過去の取引を数値化する
年次業務がこれに当たるでしょう。日々の売上や経費などを決算書にまとめることで、細かな会社のお金の動きを長期的な目線で追うことができます。
お金のやり取り、流れを管理
経営活動においての基本はお金のやりとりです。これらのとりまとめをおこなうのが、経理の仕事となります。
経営計画の補助
経理が作成する対策対照表などは経営計画を作成する上での指針となるものです。中期、長期の経営計画を建てるには、これらの実際のお金動きを把握した上で行う必要があります。
経理の仕事を行う上での注意点
経理業務を行う上での注意点を解説します。
書類の保管期間に注意
経理に関する帳簿書類は、法律で保管期間が設けられているため注意しましょう。
書類や帳簿の保管期間と関連法令は以下の通りです。
7年間(法人税法):領収書、請求書、契約書、見積書、預金通帳 など
10年間(法人税法・会社法):仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、貸借対照表、損益計算書など
半永久的(特になし): 税務申告書、税務届出書、決算書、社則・社内規定、定款など
書類や帳簿の保管期間を遵守しないと、組織に損害を与えかねないため注意が必要です。
書類は勘定科目ごとに整理
経理業務を最適化するため、書類は勘定科目ごとに整理しましょう。
膨大な書類を経理が処理しますが、書類が整理されていなければ過去の取引を照会する際に時間がかかります。さらに紛失につながりやすく、損益の正確な把握が難しくなることがあります。
そのうえ、税務調査の際に領収証の確認が行われるため、書類の整理が行き届いている企業とそうでない企業とでは、調査官に与える印象が変わってくるでしょう。
積極的なコミュニケーションが大切
経理業務には積極的なコミュニケーションが大切です。
経理の日常業務は従業員の経費精算や取引先への支払い、入金などです。それらの作業に不明点があれば、担当者に確認しなければいけません。不明なままでは仕事を進められないため、担当者とのやりとりが必要です。
中には経理からの確認を疎ましく感じる方もいるでしょう。コミュニケーションスキルがあれば、担当者への確認もしやすいです。
コミュニケーションのスキルアップのためには、積極的に他部署や取引先の方と接することをおすすめします。
経理の目的を再確認し、自社の経営管理を効率的に行おう
経理は自社の経理状況を管理しなければいけません。組織全体を横断的に管理し、経営をサポートする資料作成や決算業務を行うため、特定の業務を専門に行う他部門と異なります。
書類の保管期間を厳守し、勘定科目ごとに整理することが求められます。さらに他部門と積極的なコミュニケーションをとることも大切な仕事です。
経理の目的や意義を再確認し、自社の経営管理が効率的に行えるよう業務に励みましょう。