
予算管理における差異分析とは?
予算差異分析とは、予算の計画段階で算出していた数値と実際の数値を比較し、差額を分析することで経営上の課題や改善策を見つける分析手法です。
差異分析の目的は「計画と比較してどれくらい差が生じたか」「その原因はなにか」を把握することです。
差異分析は全体において行うほか、販売・製造・財務など各部門で行うのも効果的です。分析する箇所をより細分化することで、差異が生じた際の原因を掴みやすくなり、詳細なデータを得られます。
差異分析は予算管理プロセスのひとつですが、そもそも予算管理について詳しく理解しきれていない方は、こちらの記事を参考にしてください。
差異分析の実施方法3パターン

ここでは、実際に差異分析する際の手法を3種類紹介します。
1.利益差異を算出
予算を策定する際に設定した利益額と実際の利益額を比べ、差異について検証します。単純に利益差異を算出して収益・経費が見合っているかを確認すればよいため簡単ではあるものの、大きな変化に対応しづらいというデメリットもあります。
2.収益・原価差異を算出
利益差異を「収益差異」「原価差異」に分解して分析する方法もあります。収益は「商品価格✕数量」で求められるため、販売価格差異と数量差異に分割して検証するのが一般的です。
また、それぞれの差異をさらに「市場数量差異」「市場占有率差異」「製品配合差異」「販売費差異」「製造原価差異」「固定費差異」などに分解して分析することもできます。また、データを細分化すればするほど差異の原因を特定しやすくなり、経営課題や改善点が明確になります。
3.自社の戦略に合わせた項目で差異を算出
3つめの手法は、自社独自のフレームワークを用いて分析する方法です。一般的な差異分析の方法は上述の通りですが、それだけでは各企業にとって最適な分析はできません。その場合、自社独自の分析フレームワークを作るのが効果的です。
差異分析の目的は「予算と実績の差を明確にし、原因を突き止め今後に活かす」ことです。そのため、達成につながるよりよい方法を構築するのも重要です。
一例として、売上高を「新規顧客売上高」「既存顧客売上高」に細分化し、さらに「営業工数」や「受注率」などに分解することが挙げられます。
差異分析を実施するメリット
差異分析を実施することで、経営戦略の立案や損失の防止につながります。ここでは、差異分析におけるメリットについて詳しく解説します。
経営戦略の立案
計画を上回る利益が出た場合も、成功のポイントを究明しましょう。 再現性がある方法を発見すると、以降の経営戦略に展開できるかもしれません。一方、予算差異分析を行わなければ、経営課題に気づけなくなる可能性があります。差異分析により抽出したデータは、経営戦略の立案に活かすことが可能です。損失につながる根本的な要因を明確にできれば、経営戦略における適切な改善策を立てられるでしょう。
また、差異分析をきっかけとした新たな経営戦略は、今後の経営における施策のベースとして活用できるかもしれません。反対に、差異分析を実施しないと、現状の課題に気づけないままになる可能性があるでしょう。
損失の防止
新たな経営戦略などを実施すると、損失が生じる場合もあります。差異分析を定期的に実施しておけば、仮に損失が出ていてもすぐに気付くことが可能です。
また、損失を最小限に抑えられるのもメリットといえます。
差異分析する際の3つの注意点
ここでは、差異分析を実施する際の注意点をいくつか紹介します。差異分析は予算管理に不可欠な手法ですが、正しく行わなければその効果が発揮されません。
1.定期的に差異分析する
差異分析は、なるべく定期的に行うように心がけましょう。頻度は自社の都合で決めても問題ないものの、毎月実施するのが一般的とされています。
毎月月次試算表を作成して差異分析を実行すれば、予算と実績の差異を早めに発見でき、然るべき対策を施せます。問題が生じた場合、対処が迅速であればあるほど解決が容易になるでしょう。
月次ベースでの差異分析はもちろん、当月までの累積値による差異分析を行うのもおすすめです。月々の差異はあまりなかったとしても、累積した場合に無視できない数値になっているケースもあります。
2.数値が正確か確認する
差異分析は、正しいデータに基づいて行うのが鉄則です。誤ったデータを基に差異分析を行っても誤った結論しか導かれないため、そこから得た課題や改善点に意味はありません。
差異分析の際は、用意するデータの正確性に注意しましょう。当事者意識をもってしっかりとデータを管理するのはもちろん、各所からの報告を鵜呑みにしないことも大切です。
例えば、営業部から「プラスマイナスゼロです」という報告を受けたとします。「問題ない」と即断するのではなく、どこがプラスでどこがマイナスかまで掘り下げましょう。その結果、即座に対応すべき問題点が発見されるかもしれません。
3.分析結果を次に活かす
差異分析を行う目的は「予算と実績の差異から原因を特定し、事業改善につなげること」です。分析を経て問題点や改善点を発見し、解決するところまでが差異分析の範疇といえます。
分析結果を次に活かすためには、定期的に差異分析を実施し、自社の状態をチェックすることが重要です。分析データが細分化されていればいるほど、原因を特定しやすくなるのは前述の通りです。ただし、詳細に分析しすぎて報告や対処が遅れないよう気をつける必要もあります。
予算管理・差異分析を効率化する方法
大まかな差異分析であれば手動で実施できますが、詳細なものであればツールを活用しましょう。ツールを使うことで予算管理や差異分析を効率化できるのはもちろん、異常値の把握や原因特定につながりやすくなります。
エクセル(Excel)を使う
差異分析が小規模であれば、表計算ソフトであるExcelの活用を検討してみましょう。Excelを使えば各セルにさまざまな計算式を入力できるため、自分で差異分析用のシートを作成可能です。
インターネット上には数多くの無料テンプレートがアップロードされているため、そちらを活用するという手もあるでしょう。
自分でシートをゼロから作るのは面倒という場合、既存のフォーマットを活用するか、カスタマイズしたものを使用するのがおすすめです。ただ、Excelを活用するにあたっての問題点もいくつかあります。
- ●管理手法の変更がある度にフォーマットを修正する必要が生じる
- ●入力ミスや関数ミスがある場合、前段階に戻って修正しなければならない場合がある
- ●ファイル管理が複雑化・煩雑化しやすい
- ●リアルタイム性に乏しい
- ●専門的な分析には不十分
エクセルで予算管理をする方法に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
予算管理システムを使う
大規模な予算管理や差異分析を行うのであれば、専用の予算管理システムを活用しましょう。Excelは汎用的な表計算ソフトのため、差異分析に用いるにはそれ相応の枠組みを作成しなければなりません。しかし、専用の予算管理システムであれば、必要な機能が最初から搭載されています。
予算管理システムには、差異分析の他にもさまざまな機能があります。こちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
システムに左右されるところもありますが、使い勝手のよさも専用システムの特長です。ツールの操作は容易であるほど余計なことを覚える手間を省け、本来の業務に集中できます。
予算管理システムのメリットや選び方が気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
差異分析の理解を深め、適切な方法で予算管理をしよう!
予算管理は事業を行ううえで避けては通れないもので、適切な予算管理は自社のビジネスを正しい方向に導いてくれます。しかし、当初策定した予算通りに事業が進行することは稀であり、実際の数字とは少なからず差異が生じるでしょう。
差異を定期的に分析し、策定した予算から大きく離れないようにするのが「差異分析」の目的です。あらかじめ立てておいた予算と実績数値の差異を分析・検証して原因を突き止め、経営課題や改善点を明確にします。
差異分析を行う際には概念に対する理解をしっかりと深め、自社の規模に適したツールを用いて適切かつ効率的に行いましょう。
こちらの記事では、ITトレンドおすすめの予算管理システムを比較しています。自社に最適な製品を選ぶには、できるだけ多くの製品を比較・検討することが重要になるため、ぜひ参考にしてください。また、早速製品詳細の情報を知りたい方は資料請求をしてみましょう。
