そもそも予算管理とは?
予算管理とは、企業の売上計画とそれにかかる経費計画を期首に策定し、期末の実績と比較して予算を管理することです。
企業の予算にはさまざまなものがあり、主に以下の4つに分類できます。
予算管理のさらに詳しい概要については、以下の記事で解説しています。
予算管理の歴史とは
予算管理の歴史について語るうえでは、以下3つの段階に分かれていることを理解する必要があります。
- 1.ギリシャ・ローマ時代における予算管理の誕生
- 2.財務会計・予算管理のシステム化
- 3.管理会計に対する差別化やシステムの流通
それぞれの段階については、以下の項目で深堀りしています。
予算管理における歴史を知っておくことで、自社内の予算管理に対する認識が変わるでしょう。新たな認識をもったうえで、ITトレンドでおすすめしている予算管理システムの導入も検討してください。
歴史1.ギリシャ・ローマ時代における予算管理の誕生
会計の歴史は、ギリシャ/ローマ時代からはじまります。国家の財政の維持から始まり、商業の発達につれて仕組みとして定まっていきました。
財務会計と予算管理の区別
会計が財務会計と予算管理(管理会計)に分かれたのは、中世ルネサンス期のベネチアと伝えられています。ベネチアは、世界を相手に交易で稼ぐ商業都市でした。多くの船が仕立てられ、ベネチアから貿易へと旅立ちます。
貿易船に出資していたのは、複数の貴族でした。リスクを分散するために数人で出資し、貿易船が稼いだ富を分散していました。その際、原価となった積み荷や船員へのサラリーを差し引いて利益を集計し、出資額に応じて割り振りしていました。この手法が、後の財務会計へと発展します。
年度間に会社が上げた売上から経費を差し引き、利益を出して税金を申告するのが現在の手法です。
予算管理の必要性
財務会計は船員達にとって、過去の情報に過ぎませんでした。船員達は、自分達の船にはどれだけの価値があり、どれだけの利益を上げられるのか理解しておくことが求められていました。また、利益を最大にするにはどの市場でどれほど売ればいいのか、次の仕入れをどこで行えばいいのかもわからなければなりません。船員たちのこの考え方が、予算管理の原型となっています。
予算管理はもともと、船乗り(主に船長)のための会計として活用されていました。現代に置き換えると、社長が会社を経営するための情報を提供する仕組みに該当します。予算管理が原価管理などと一体化し、管理会計となって発達していくという歴史を歩んできました。
歴史2.財務会計・予算管理のシステム化
予算管理は産業革命の大量生産の時代を迎え、企業の会計システムに組み込まれていきます。
財務会計のシステム化
予算管理がコンピュータで処理されていくのは、一部大企業が会計処理をコンピュータ化した1960~1970年ごろからです。ただし、この時期は財務会計(税金を申告するための外向きの会計)が中心でした。優先順位としては財務会計の方が高かったため、管理会計はシステム化されていませんでした。
予算管理システムの誕生
1980年代になり、比較的低価格で購入できるオフィスコンピュータが登場し、中堅・中小企業でもコンピュータを導入するようになりました。また小型のコンピュータを利用して、「経営管理システム」「意思決定支援システム」を構築していく先進的な企業も増えていきます。これがまさに予算管理システムであり、管理会計システムです。
さらに1990年代にはダウンサイジングとオープン化により、会計システムのデータベースに蓄積されているデータをパソコンにダウンロードし、情報武装化する動きが見られはじめました。蓄積されたデータを、積極的に経営戦略や販売戦略立案に活用する動きが出てきたのです。
ちなみにダウンサイジングとは、費用削減や効率化を目的にモノの大きさを小さくしていくことです。コンピュータのダウンサイジングの場合は、同じ性能を持つ電子機器を小型化していくことを指します。
予算管理システムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
歴史3.管理会計に対する差別化やシステムの流通
現代の管理会計業界には、どのような流れが生まれているのでしょうか。
管理会計による企業の差別化
2000年代になってERPが潮流となり、一部大企業に限られていたトータルなシステム化が中堅・中小企業でも見られるようになりました。また、生産から財務まで一貫したシステムではなく、日本企業の多くは会計部門から順次ERPを導入していこうという動きが見られるようになります。
これを背景に中堅・中小企業向けERPとして、財務会計パッケージが発売されました。財務会計パッケージに搭載され、多くの企業が差別化として利用したのが「管理会計」の機能でした。
予算管理に特化したシステムの販売
財務会計パッケージが発売された後、管理会計が経営者に注目され、管理会計の役割が認識されるようになったのです。
管理会計が潮流となったことで財務会計パッケージはもちろん、専用のパッケージや予算管理に特化した製品も販売されるようになります。
ERPについて知りたい方は、以下に掲載している記事をご覧ください。こちらの記事ではERPの概要だけでなく、種類や導入パターンまで詳しく解説しています
予算管理の歴史を知って理解を更に深めよう!
今回は、予算管理システムの誕生から発展までを振り返りました。厳しい競争環境の中で経営効率を高め、最適な意思決定をするために予算管理が不可欠であることがわかります。そして、予算管理の需要は次第に大きくなっていくでしょう。
しかし、安易に管理会計や予算管理の言葉の響きに惹かれ、使いこなせないシステムを構築する失敗例もあるため注意が必要です。システム選定に際しては、提供事業者の導入成功事例やコンサルティング能力も重視しましょう。
予算管理システムの導入に失敗したくない人は、こちらの記事で予算管理システムを比較しているのでぜひ参考にしてください。