予算管理と予実管理の違い
予算管理と予実管理は、どちらも予算に基づいた実績を管理し、分析する目的で実施されます。そのため、双方に大きな違いはありません。
正確には、予算計画そのものを指すか、目的と実績を比較するかという違いがあります。どちらも予算計画における「管理」という観点が共通しているため、同じものと認識していても問題ないでしょう。
以下の項目からは、予算管理と予実管理を同じものと認識している前提でさまざまな観点に触れています。
予算管理(予実管理)とは?
事業を行う際には予算管理が重要といわれていますが、予算管理とは一体どのような概念なのでしょうか。まずは、予算管理について詳しく見てみましょう。
利益目標達成のために予算と実績を管理すること
予算管理(予実管理)とは、企業が立てた利益目標を達成するために予算と実績を管理することです。事業を行う際には、実際に着手する前に売上や経費額を予測し、予算として策定しておくのが一般的です。
ビジネスというのは必ずしも予定通りに進行するわけではないため、予算と実績の間に乖離が生じることがあります。その乖離の原因を分析して対処し、なるべく実績が予算に沿うようにコントロールするのが予算管理の目的です。
予算は4つの区分に分けられる
予算は以下の4つに区分されるのが一般的です。
それぞれについて大まかに解説すると、「売上」は企業が商品やサービスを提供した対価として得るお金、「原価」は売り物や原材料・部品を仕入れたお金のことです。そして「経費」は事業を行うために支出したお金、「利益」は売上から(売り上げた分の)原価と経費を差し引いたものであり、最終的に会社に残るお金のことです。
予算管理の必要性
予算管理は、予算計画に基づく経営が実行できているかどうか判断する目的で必要とされています。
経営において、資金を確保する際に事業計画書を作成し、金融機関から融資を受けることがあるでしょう。しかし、事業計画書を作成するだけでは不十分と判断される場合が多く、予算計画通りに経営が進められているかは判断しにくいといえます。
予算計画が正確に進められているかどうかコントロールするための、プロセスに活用する目的で予算管理が必要とされています。
予算管理についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
財務とは?
会社のお金を扱う業務として、会計や経理、財務といったものがあります。会計や経理は比較的よく耳にする言葉ですが、財務とは一体どのような存在なのでしょうか。
資金計画に基づき融資・投資などを行うこと
財務とは、決算書や資金計画を基に融資・投資することです。会社が事業を行うためには運営資金が必要であり、運営資金をどのように活用するかによって得られる効果が異なってきます。
金配分や融資の調達などが、財務という業務に含まれます。適切な財務を行うことで事業が育成され、会社の健全な成長につながります。
会計・経理との違い
財務とよく似た言葉に会計や経理が挙げられます。会計や経理が過去〜現在のお金を管理するのに対し、財務は未来の資金計画を管理することが違いとして挙げられるでしょう。
会計や経理は会社に入ってきたお金や出ていったお金を管理し、最終的に決算書を作成したり税金を申告したりするのが主な業務です。すなわち、現在発生している金銭の収支にまつわる業務になるため、過去〜現在における会社の財務状況を記録する業務といえるでしょう。
一方、財務は前述の通り「今あるお金をどのように振り分けるか」「今後のお金をどのように調達するか」といった部分に踏み込む業務といえます。
予算管理と財務の関連性
ここでは、予算管理と財務の関係性について解説します。両者には、一体どのような関連性があるのでしょうか。
どちらも経営管理の一部
予算管理も財務も共に「経営管理」という概念に含まれます。経営管理を細分化すると「会計管理」「財務管理」「生産管理」などに分類でき、その中に予算管理などの小項目が存在します。
「予算管理」は管理会計の一部
経営管理の中に会計管理が含まれることは前述の通りですが、会計管理をさらに細分化すると「管理会計」「財務会計」に分類できます。そして、管理会計の中には「予算管理」と「原価管理」が含まれることになるため、予算管理は経営管理だけでなく会計管理や管理会計の一部と表現することもできるでしょう。
「財務」は財務管理と財務会計で意味が異なる
経営管理の中に「財務」と名のつく業務は2つあり、それぞれ「財務管理」「財務会計」と呼ばれています。財務管理は主に決算書に基づいて資金調達を行うことであり、財務会計は外部へ公表する決算書を作成するなど、主に経理としての仕事を指します。
上記で説明した「財務」とはいわゆる「財務管理」のことで、「財務会計」は会計管理の一部に含まれるため会計業務・経理業務の一環という認識です。
予算管理をする3つの手順
予算管理の基本的な手順と、具体的に何をすべきか解説します。必ずしもプロセスを厳守する必要はありませんが、ある程度はテンプレートに沿った方が効率化できるのではないでしょうか。
1.計画
予算管理を行うためには、まず予算を編成しなければなりません。予算を編成するにあたってはトップダウン方式とボトムアップ方式の2種類があり、それぞれをバランス良く組み入れることで適正な予算編成につながります。
トップダウン方式は経営目標や利益目標をもとにそれを逆算して各所に落とし込んでいく手法です。一方、ボトムアップ方式は現場や担当者レベルでの見積もりを行い、それをもとにして予算を編成していくやり方です。
どちらもそれぞれメリットとデメリットが存在するため、どちらかに偏るのではなく両者のバランスを鑑みて編成フローを構築するのが予算編成のコツといえるでしょう。
予算計画に関しては、こちらの記事で詳しく解説しているので参照してください。
2.実施
適正に予算編成ができたら、次はそれを実施するフェーズです。策定した予算通りに業務を進行させるのが一般的ですが、当然ながら予算と実績が全く同じというわけにはいきません。
その際に「乖離するのは当たり前」というスタンスで放置するのではなく、「何故乖離するのか」「その原因は何か」などを明確にすることが大切です。そのためにも執行記録を残し、後から分析・改善が容易になる仕組みを構築しておきましょう。
3.評価
次に、実行した予算管理に対して評価します。前述した通り予算と実績の間には乖離が生じるのが一般的なため、それを放置することなく原因追求を行い、課題や改善点を明確にしましょう。評価は毎月行うのが好ましいものの、業種や繁忙度合いによって臨機応変に設定することをおすすめします。
予算管理を行う目的はあくまでも「経営の効率化」であるため、予算管理にリソースを割いて肝心の本業が疎かになってしまっては本末転倒です。
予算管理(予実管理)を実施するうえでのポイント
予算管理を実施するうえでは、以下に挙げるポイントを意識することが大切です。
- できるだけ定期的に実施する
- 予算と実績の差異を分析する
- 結果に応じて予算を適宜修正する
- 的確な改善につながる情報を精査する
- 情報インフラを整備する
結果に応じてどのような動きをするかで、今後の動きや結果が大きく変動するでしょう。本記事で触れている予算管理における観点をふまえたうえで、上記に挙げたポイントも意識してください。
予算管理を行うツール
予算管理を行う際にツールを用いることで、効率をアップさせることが可能です。ここでは、予算管理に用いるツールを紹介します。
エクセル
シンプルな表計算ソフトであるエクセルを活用することで、予算管理の効率化につながります。エクセルはデータを集計するだけでなく、数式や関数を用いてさまざまな形でデータを取り扱えるため、専用のフォーマットを作成すれば予算管理を行えます。
エクセルで予算管理をするメリット
エクセルを予算管理に用いるメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。
- ●費用がかからない
- ●汎用性が高い
- ●インターネット上からフォーマットをダウンロード可能
Excelを導入している会社は多いため、導入に別途費用がかかるケースは少ないでしょう。また、Excelは汎用性が高く機能も豊富なため、使いこなせれば自社の要望通りのフォーマットを作成可能です。そして、自分でフォーマットを作成するのが難しい場合はインターネットからフォーマットをダウンロードすることもできます。
予算管理をExcelで行うデメリット
一方、Excelを予算管理に用いる場合、下記のようなデメリットが生じます。
- ●扱いが難しい
- ●集計のルールを厳密に定める必要がある
- ●データのリアルタイム性に欠ける
Excelは汎用的なソフトなため、予算管理専用に作られているわけではありません。そのため、予算管理のフォーマットを自分で作成・カスタマイズしなければならず、少々扱いにくい面があります。
また、集計されたデータが誤っている場合は前段階に戻ってやり直さなければならないケースもあり、効率的とは言えない部分もあるでしょう。そして、集計の手間などでリアルタイムなデータ活用ができないので、実績をすぐに経営判断に参照するのも難しいところです。
エクセルによる予算管理はコスト面でメリットがあるものの、実際には予算管理システムの方がコストパフォーマンスに優れているといえます。その理由についてはこちらの記事で解説しています。エクセルで予算管理しようか悩んでいる人は、考えが大きく変わるかもしれません。
予算管理システム
予算管理システムとは、予算目標に対する進捗がどの程度なのかを比較するためのツールです。システム活用により、効率的に予算管理を実施できます。
予算管理システムの概要についてはこちらの記事をご覧ください。
予算管理システムの導入メリット
予算管理システムは各社によってリリースされているため、それぞれに異なった特長を持っていますが、大まかなメリットとしては下記のようなものが挙げられます。
- ●直感的に操作できる
- ●データの反映性が高く、入力の二度手間を減らせる
- ●データのリアルタイム性が高いため、即座に経営判断に用いることが可能
予算管理システムはそれ専用に作られているため、操作性やUIに優れています。そのため、初めて触った人でも扱いやすく、システム定着率の向上が期待できるでしょう。
また、予算管理システムはデータを一元管理するため、異なる部署で同じデータを複数回入力する必要はありません。入力されたデータは即座に集計されグラフ化などの見やすい形で表示可能なため、即座に経営判断に用いることが可能です。
※UI(ユーザーインターフェース)→ユーザーがシステムを操作する際に扱う画面のこと
予算管理システムの導入メリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。予算管理に悩みがある方は解決する兆しが見えてくるはずです。
予算管理システム活用のデメリット
一方、予算管理システムのデメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。
- ●導入に費用がかかる
- ●目的を明確にしないと形骸化する可能性がある
予算管理システムの導入にはある程度のコストがかかります。そのため、導入の際にはあらかじめ費用対効果を検討しておく必要があるでしょう。
また、予算管理システムを導入する際はその目的を明確にし、関係者間で共有しておく必要があります。新しいシステムの操作を覚えるのは手間がかかるため、導入目的の共有が疎かな場合はシステムが形骸化してしまう可能性があります。
予算管理システムを導入する際は、正確に費用対効果を見積もることが大切です。こちらの記事では予算管理システムの機能を紹介しているので、自社に必要な機能を確認してください。
予算管理・財務を知り、適切な管理をしよう
適切な予算管理を行うことで企業は進路を誤ることなく、目的とする結果に到達できます。事業が必ずしも予算通りに進行するとは限りませんが、実績との差異を軽んじることなく分析することで、進路を修正する余地が生じるでしょう。
予算管理と混同されがちな言葉に「財務」がありますが、これは一言で「未来のお金を扱うこと」と表現できます。予算管理と財務に対する知識をしっかりと身に付け、適切な経営や資金の運用を行うことが大切です。
ただ、予算管理にリソースを割いてしまったり、予算管理で問題が新たに出たりしては本末転倒です。これを防ぐために、予算管理システムの導入を検討するのも効果的でしょう。
こちらの記事では19の予算管理システムを紹介し、比較しています。皆さんが自社に最適なシステムを選ぶ際の助けになると思うので、読んでみてはいかがでしょうか。