CMSとは?
CMSとは、コンテンツマネジメントシステム(英: content management system)の略で、Webサイトやポータルコンテンツの運用・管理に使用されているソリューションの総称です。
Webサイトを運営するためには、たくさんのHTMLファイルや画像ファイル、現在では動画のファイルなどの管理が必要となり、また、それらを正確に表示させるため、フォルダなどのディレクトリ構造などの知識が必須です。
そこでCMSは『コンテンツマネジメント』の言葉通り、Webコンテンツに構成するための、文章や画像、動画などのパーツを効率よく管理しながら運用することを目的に誕生しました。
一般的には「更新しやすくするためのシステム」という印象が強いCMSですが、本来はWebサイト上で使用するパーツの管理や、サイト自体の運営をより簡単に行うために開発されたものなのです。
このCMSが誕生したのは意外と早く、1995年には企業向けの「Webコンテンツ管理システム」として開発されたソリューションが登場しています。これはまさに、世界初のWebサイトが登場した1991年の5年後となります。
その後、CMSは企業ユーザやサーバなどの知識を持つ専門家の間を中心に広がりを見せました。一般的な普及がはじまったのは、ブログの流行とともに無料で使用できるオープンソースのCMSが数多く台頭した2005年ごろのことのようです。
現在、CMSを活用しているサイトは多数溢れていますが、有名なところでは2001年よりWeb上に登場したウィキペディア、一世を風靡したソーシャルネットワーキングシステム、さらにはホワイトハウスなど行政・公的なWebサイトなどが挙げられます。
市場の広がりとともに進化し続けるCMS
ITの進化とともに市場も広がり、さまざまな機能を搭載したCMSが多数登場しつつある今。そのため、基本機能はどれもほぼ変わりがなくなっており、ほとんどのCMSソリューションでは、ほぼ共通して以下の機能を使用できるようになっています。
- 複数の作業者による決まったデザインのページ更新
- Wordのような操作感での投稿
- 画像やテキストコンテンツの管理
- Webサイト内コンテンツのキーワード検索
- 閲覧ユーザの書き込み閲覧制限
- 更新時刻を予定した投稿
※CMSとは?について、詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になります。
CMSの3つの基本機能
機能1 コンテンツの登録と管理
CMS はコンテンツ管理システムですので、その一番の基本機能はテキストや画像など、サイトの肝であるコンテンツの登録と管理です。ここで登録するのは、正味のテキストや画像、図表などのデータであり、レイアウトなどのいわゆる見た目は、(後述する)別機能に任せてしまいます。
つまり、コンテンツ作成者が本来必要なコンテンツの内容のみに注力することができるということになります。また、登録作業自体についても、技術的な知識は不要ですので、コンテンツ作成者自らが行うことも可能です。
ただし、このコンテンツの管理が、何のルールもなくできるようになっていると煩雑化するだけで逆効果です。そのため、多くのCMSでは、登録できるコンテンツの種類や大きさの規定を設定することができるようになっています。
また、バージョン管理機能を使用することで、いざという時には、サイト丸ごとはもとより、一部のコンテンツだけロールバックするなど、より安全で可用性の高い運用を実現することができます。
機能2 サイトのデザイン管理
サイトのレイアウトやデザイン、ヘッダフッタなどを管理する機能です。この機能はコンテンツと完全に切り離されており、ウェブサイト全体のデザインをテンプレートという形で一元的に管理することができるようになっています。
そのため、コンテンツを更新するたびにレイアウトを調整するというような手間をかける必要がありません。サイト全体のデザインの統一性は、非常に重要なもので、サイトの品質に関わります。しかし企業サイトの多くは非常に多くのページを持っているため、統一性の維持はサイト運営の困難さの一つとなっています。CMSはテンプレートによってこの問題を解消することができるのです。
また、レイアウトの変更や更新について、ドラッグアンドドロップなどの容易な操作で行える機能を有するものもあります。この機能を使えば、CSSやHTML、JavaScriptといった技術的な知識を持っていない方でも対応ができるようになり、必要とする方が自ら自分のイメージを具現化することで、より目的に叶ったサイト作りを進めることができます。
機能3 ワークフロー管理
サイトを多人数で共同して作成するための、コンテンツ編集や確認、登録といった作業の流れを承認という形などで管理し、一連の流れに則って公開できるようにする機能です。
一般的な企業サイトは、提供情報が部署ごとに違っているため、ページ単位で管理者が違っているなど、複数の担当者が共同して管理していることが多く、そのそれぞれが各部署の都合で変更や登録を行うと、サイトの統一性や情報の整合性が崩れ、サイト情報の信頼度、ひいては企業の信頼度低下をまねきます。
コンテンツ登録やレイアウト変更に対する承認機能を利用することで、不用意なコンテンツやデザインの変更を防ぎ、サイト全体の統一性を維持するわけです。
この機能には、公開した場合にどう見えるかを事前に確認できる検証機能が含まれていることも多く、承認者は確認用の仮サイトを使用して実際にどう見えるかをチェックし、登録承認することができます。
※CMSの基本機能について、詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になります。
CMSの4つの導入メリット
メリット1 Webサイトの更新や管理に必要なこと
一般的に、CMSを使用せずにHTMLなどを組んでWebサイトを構築する際、下記の準備や知識が必要になります。
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<Webサイト構築時>
- ・Webサーバ
- ・ディレクトリ構築や管理
- ・デザインセンスやユーザビリティを考慮したデザインの知識
- ・HTMLの知識
- ・メールフォームなどを使用する場合はPHPやCGIの知識
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<Webサイト構築後の更新時>
- ・更新したい情報
- ・HTMLの知識
- ・ディレクトリ管理の知識
- ・主要なSNSへのリンクなどを追加する
箇条書きにすると大した手間ではないように思えますが、多人数で更新作業をするようなケースで、FTPなどの重要なパスワードを複数担当者で共有することはとても危険です。
そのため、更新できる担当者は数名に絞る必要がある上、全体的なデザインが複雑なサイトでは、Web制作会社の手を借りることもあるため、更新したいときにすぐ更新する、ということが難しくなります。これでは、手間がかかり効率が悪いだけでなく、情報伝達のスピードを求められる現代において、大きな妨げになり、機会損失につながることもあるでしょう。
メリット2 CMSなら誰でもいつでも更新可能に!
それでは、CMSを導入した場合は、どのような作業が必要になるのか、一例を挙げてみます。
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<Webサイト構築時>
- HTMLによるWeb構築と同じものに加え、
- ・データベースサーバ
- ・導入したいCMS特有の知識
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<Webサイト構築後の更新時>
導入時は一見手間がかかるように思えますが、ほとんどのCMSでは導入も簡単に行えるような工夫がされています。また、一般的なサイト向けのテンプレートも配布されているため、オリジナリティを求めなければ、基本的なデザインは画像を用意するだけでもWebサイトを作ることができます。
また導入後、更新する際にかかる手間の差は一目瞭然です。
多くの製品では、WYSIWYG(ウィジウィグ=見たままの結果が得られる)と呼ばれる機能が搭載されているため、Wordのような操作で、編集画面での表示がそのまま同じ表示で、実際のサイトにも反映されるため、直感的、かつ効率的に更新作業を行えます。
さらに、Web上からの更新が可能となるため、FTPなどの重要なパスワード情報を分散させる必要がありません。情報を掲載したい担当者ごとにIDやパスワードを作っておくことで、素早く、よりセキュアな更新・運用を可能とします。
メリット3 サイト運営中のデザイン変更もより素早く簡単に
CMS導入のメリットは、更新作業が簡単になり、かつスピーディに行えることだけではありません。誰がどんな形で更新を重ねても、ディレクトリの構成は常に統一され、テキストなどのコンテンツそのものがデータベースによって管理されていることこそが、CMS導入の最大のメリットです。
これは、Webサイトのデザインを変えたいというときに大きな効力を発揮します。CMSを利用せずHTMLを組んで構築されたサイトでは、サイト全体のデザインテーマを変更する際に、仮に100ページのコンテンツで構成されていると、コンテンツの内容に変更がなくても100ページすべてのHTMLファイルへの修正が必要になり、非常に大掛かりな作業となっていました。
しかし、CMSを利用しているサイトでは、テンプレートと呼ばれるファイルに修正や変更を加えるだけで、全体のデザインテーマの変更ができるのです。これは、特にページ数の多いサイトでは大きなアドバンテージになります。
メリット4 セキュリティホール対応など管理の手間も削減
日進月歩のITの世界では、Webからの脅威も日々進歩し、私たちに襲い掛かろうとしています。Webからの脅威はもはや対岸の火事ではありません。2009年ごろ、Webサイトを閲覧するだけでPCが感染してしまうタイプのウィルスが登場した際、国内でも複数のサイトが被害に遭いました。記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
出典:マイナビニュース「ウイルス「Gumblar」がJR東、ホンダ、モロゾフなど企業サイトを次々と改竄」
http://news.mynavi.jp/articles/2010/01/07/gumblar/
そのため、Webサイトを運営する際にはセキュリティホールへの対応が必要です。特に自社のサーバ内に構築したHTMLサイトの場合、常にWebセキュリティ情報に網を張り、対策をとる必要があります。しかし頻繁に更新がなされ、こまめに最新のセキュリティ状態を保つCMSであれば、Webからの脅威の被害にあう危険性は大幅に減少します。
特にSaaSなどのクラウドタイプで提供されているCMSを選択すれば、Webからの脅威への対策に時間をとられることはありません。サイト更新のみに注力することが可能となります。
CMSの選定ポイント
選定ポイント1 どんなサイトを作りたいのかを考える
「情報発信型サイト」の場合、情報の更新頻度、情報の鮮度がサイトの生命線となります。CMSを使用すれば、統一したテンプレートのWebサイトの更新を容易に行え、各種SNSとの連携もでき、新しい情報を素早く発信することを可能とします。
情報内容によっては、毎日のように更新ができるブログのようなページが必要なケースもありますし、そこまで更新が頻繁ではないこともあります。また、少量の製品の販売を行いたいという希望があったり、スマートフォンやケータイサイト閲覧などのマルチデバイス対応が必須というケースもあるでしょう。
まずは何が目的のサイトなのか、どのデバイスに対応が必要なのか、サイトが重要視するポイントをまとめてみましょう。
選定ポイント2 目的に適した個性を持つCMSを選ぶ
さまざまな種類があるCMSは基本的な更新機能やそれ以外の機能も大きな差異はなく、どのCMSもカスタマイズ次第で様々な用途に使用できるものがほとんどです。しかしそれでも、それぞれに特徴があり、得意分野があります。
まずは無料で使用できるオープンソース系と呼ばれるCMSを中心に得意分野によって分類してみましょう。
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●ブログシステム系
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ブログのような記事を日々更新できる機能に最も特化したCMS
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●ポータルサイト系
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コーポレートサイトや行政サイトなどの制作に特化したCMS
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●コミュニティ系
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SNSや会員制サイト制作に特化したCMS
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●イーコマース系
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ショッピングサイト構築に特化した機能を持つCMS
CMSの機能は日々進化しています。いずれのCMSも少しだけ買い物ができるようにショッピングカートを付けたい、などのケースであれば対応可能な場合も多いため、注意が必要です。サイトのメインをどこに据えるのかをまずはよく考えてみましょう。
選定ポイント3 セキュリティ・管理の工数を考える
CMS選定のポイントのひとつとして、セキュリティホールへの対応がマメに行われているかも欠かせないポイントです。有償のCMSであれば、しっかり対応されていることが多いですが、問題はセキュリティホールへの対応を行うために、CMSそのものの更新を行う必要があることです。
CMSを使用するためには、主に2つのパターンがあります。一つは自らWebサーバへCMSをインストールして構築する方法、そしてもう一つは、クラウドを活用したSaaS型で提供されているCMSを利用する方法です。
自らオープンソースCMSをインストールして使用する場合、更新時には対応する必要があります。さらにそのためには、ある程度のITスキルが求められることもあります。
そのような手間をかけることが難しい、もしくは技術者がいない場合は、有償でもそれらの管理まで一括で行ってくれるクラウドサービスを活用するべきでしょう。
選定ポイント4 Webサイトの規模はどれぐらいか
ページ数が多い大規模なWebサイトほど、CMSのメリットを享受できることは言うまでもありません。しかし、数ページで完結する会社概要を中心としたコーポレートサイトにとっても、CMSの導入は無駄にはなりません。
なぜなら、CMS特有の連携の強さや素早い更新を行える点は、情報のスピード感が増した現在では、必ず役に立つからです。
小規模といえるCMSであれば、データベースすら不要であるケースもあります。Webサーバ環境や管理者の知識に応じたCMSを選ぶことも一つの選択肢となります。
一方、大規模サイトを運用する場合は、より管理者の技術と手間が求められることとなります。その理由の一つに、データの通信量、トラフィックが挙げられます。Webサーバではコンテンツのボリュームに応じたディスクの使用容量はもちろん、トラフィック量(サイトへのアクセス数)によって、処理性能などのサーバのグレードを適切に選定、あるいは変更する必要があります。
そのため、サーバに負担をかける可能性の高いCMSを利用することは費用面だけでなく、閲覧に時間がかかるなどのデメリットも生まれます。その場合は、大規模サイト向きと呼ばれるCMSを利用することをお勧めします。また、管理者の知識や経験が乏しい場合は、ハードウェアの管理をサービス提供事業者に任せられるSaaS型のCMSを検討するべきでしょう。
※CMS選定ポイントについて、詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になります。