医療事務が「紙カルテは大変」と感じる主な理由
紙カルテは手作業が多く、情報の検索・共有にも時間がかかるため、医療事務の業務負担を大きくしています。カルテ管理に追われることで、本来注力すべき受付・会計・レセプトといった業務の効率が低下し、現場全体の生産性にも影響が生じます。ここでは、医療事務が紙カルテ運用を大変だと感じる代表的な理由を整理します。
カルテを探す・運ぶ・戻すだけで多くの時間が奪われる
紙カルテは物理的に保管されているため、必要なカルテを棚から探し出し、利用後に元の場所へ戻す作業が必ず発生します。診療科が多いほどカルテ量は膨大になり、取り違えや紛失リスクも増加するでしょう。その結果、医療事務が本来の業務に割ける時間が減り、業務負担が大幅に増えてしまいます。
手書きの読みにくさ・記載ミスが業務を停滞させる
紙カルテの手書き文字は、書き手によってクセが大きく異なり、読み取りに時間がかかることも珍しくありません。不明点の確認が必要になると、会計処理やレセプト作成が遅れがちです。また、記載漏れや書き直しも発生しやすく、こうした細かな手戻りが業務全体の滞りにつながります。
職種間で同時に閲覧できず、情報共有が遅れる
紙カルテは1冊のみのため、医師・看護師・医療事務が同時に閲覧できません。外来や会計で「カルテ待ち」が発生し、業務の流れが止まる場面も多くみられます。情報共有がスムーズに進まないことで、患者対応にも遅れが生じやすくなります。
過去情報の検索・集計が完全に手作業になる
過去の診療内容や検査結果を確認する際、紙カルテの場合は必要な情報を一枚ずつめくって探す必要があります。統計作成やレセプト業務に必要な情報抽出もすべて人力で行うため、時間と手間が大きくかかることが避けられません。
紙カルテ運用が生む具体的な負担
紙カルテは「探す」「運ぶ」「読み取る」といったアナログ作業が多く、医療事務をはじめ院内のあらゆる業務に影響します。日々の受付対応から会計・レセプト作成、新人教育まで、さまざまな場面で非効率を生み出しているのが実情です。ここでは、紙カルテが実際の業務にどのような負担をもたらしているのかを具体的にみていきます。
受付が混み合う原因になる
カルテの検索や取り出し、移動の作業が滞ると、受付の流れが乱れやすくなります。患者呼び出しが遅れたり、前の患者の会計処理が終わらなかったりして、次の患者対応に移れない状況が生じることもあります。こうした積み重ねにより、外来全体の待ち時間が増加し、混雑の原因となってしまいます。
会計処理が遅れやすくなる
手書き文字が判読しづらい場合、入力ミスの確認や医師への問い合わせが増え、会計処理が後ろ倒しになります。診療内容が複数ページに分かれて記載されているケースも多く、必要情報の洗い出しに時間を取られがちです。これらが重なると、会計窓口の混雑にもつながります。
レセプト作成が非効率になりやすい
レセプトに必要な診療情報が紙カルテ内に散在しているため、確認のために何度もページをめくる必要があります。記載漏れや情報の欠落があると、返戻リスクが高まり、再確認や修正作業の負荷が増大します。月末・月初の繁忙期には、大きな残業要因となることも少なくありません。
新人教育にも時間がかかる
紙カルテ運用は「どこに何を保管するか」「どの順番で処理するか」などルールが細かく、どうしても属人化しやすい傾向があります。新人職員はまず運用ルールの習得に多くの時間を要し、即戦力化までに時間がかかります。その結果、教育担当者の負担も増えてしまいます。
紙カルテの限界を超える鍵は「電子カルテ化」
紙カルテで生じていた「探す」「待つ」「確認する」といったアナログ作業の多くは、電子カルテ化によって解消できます。情報がデジタルで統合されることで、業務フローが滑らかになり、医療事務だけでなく医師・看護師も含めた院内全体の効率化につながります。ここでは電子カルテ化がもたらす主な改善ポイントを解説します。
業務フローがデジタルでつながる
電子カルテは、受付・診療・会計・レセプトといった一連の情報をデジタルで一元管理できます。紙カルテで発生していた移動や検索、記載確認のようなムダな作業が大幅に削減されるため、業務の流れが途切れにくくなります。また、データが自動で蓄積されるため、改善分析や運用最適化にも役立ちます。
同時閲覧が可能で情報共有がスムーズになる
電子カルテなら、医師・看護師・医療事務が必要な情報を同時に閲覧できます。カルテの受け渡し待ちがなくなることで、外来の流れが滞りにくくなり、患者対応のスピードも向上します。その結果、医療安全の向上や院内コミュニケーションの円滑化にもつながります。
検索・集計・レセプト連携がワンクリックで完了する
患者情報や過去の診療内容を瞬時に検索できるうえ、統計データの抽出やレセプト作成も自動化が可能です。人手で情報を探したり、紙をめくって確認したりする必要がなくなるため、業務が大幅にスピードアップします。職員同士の「情報待ち」も解消され、生産性が飛躍的に向上します。
ヒューマンエラーの発生率が大幅に低減する
電子カルテでは記録内容が統一され、入力チェックも行われるため、記載ミスや読み取り間違いが大幅に減少します。会計処理やレセプト作成の精度が向上し、確認工数も削減できます。診療側の負担軽減にもつながり、業務品質全体が底上げされる点が大きなメリットです。
電子カルテについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。電子カルテメーカーのランキングをはじめ、クラウド型とオンプレミス型の違いや、レセコン一体型・分離型の特徴まで幅広く解説しています。
電子カルテなら「紙カルテの大変さ」はこう変わる
紙カルテで発生していた探す・待つ・確認するといった負担は、電子カルテへの移行によって大幅に軽減できます。業務がリアルタイムにつながることで、医療事務だけでなく外来全体の流れがスムーズになり、患者満足度の向上にも直結します。ここでは、電子カルテ化によって具体的に何がどう改善するのかを見ていきましょう。
カルテ管理の工数がゼロに
電子カルテなら、紙のようにカルテを探したり運んだり戻したりする作業が一切不要になります。物理的な管理がなくなることで、医療事務の業務時間が大幅に削減され、空いた時間を患者対応や会計業務に充てられるようになります。保管スペースの削減にもつながり、院内レイアウトの見直しにも効果的です。
受付・会計の待ち時間が短縮
情報がリアルタイムで更新され、職種間で同時に閲覧できるため、受付から会計までの流れが格段にスムーズになります。カルテ待ちが解消されれば呼び出しも滞りにくく、混雑時でも対応が止まりにくい運用が実現します。患者の待ち時間短縮や満足度向上へつながる点が大きなメリットです。
レセプト・統計処理が自動化
電子カルテでは診療内容がデジタルで蓄積されるため、必要なデータを自動で抽出でき、レセプト作成や統計処理にかかる工数が大幅に削減されます。情報不足による返戻リスクも下がり、毎月の大量作業の効率化が可能に。事務負荷の軽減だけでなく、作業精度の向上にもつながります。
多職種との連携がスムーズに
電子カルテは医師・看護師・医療事務が同時にアクセスできるため、情報共有のスピードが一気に高まります。カルテの受け渡しや順番待ちが不要になり、チーム医療全体の質が向上。医療安全の強化や、院内連携レベルの底上げにも寄与します。
電子カルテ製品を比較する際のポイント
電子カルテは製品ごとに特徴が異なるため、医療機関の規模や診療内容、運用体制に合ったものを選ぶことが欠かせません。導入後の業務効率やレセプト作業の負担にも直結するため、比較すべき項目を押さえて検討することが重要です。ここでは、失敗しないための主なチェックポイントを解説します。
診療形態との相性(外来/在宅/病棟)
医療機関の規模や診療科構成によって最適な電子カルテは変わります。外来中心か、在宅医療が多いか、病棟運用があるかによって求められる機能も異なるため、自院の診療スタイルに合ったタイプを把握することが第一歩です。ワークフローに無理なく組み込めるかどうかも重要な判断材料になります。
レセプトシステムとの連携性
会計やレセプト処理と円滑に連携できるかは、運用効率に大きく影響します。連携方式によって返戻リスクが変わるケースもあり、月次作業の負担軽減にも直結します。導入前に対応可能なレセコンや連携方法を確認しておくことで、運用後のトラブルを避けやすくなります。
操作性とサポート体制
スタッフ全員が使いやすい操作性かどうか、そして導入後のサポートがどれほど充実しているかも重要なポイントです。ITに不慣れな職員でも直感的に使えるUIか、問い合わせへの対応が迅速かといった点は、現場のストレス軽減につながります。運用を安定させるうえで欠かせない要素です。
クラウドかオンプレか
クラウド型とオンプレミス型では、コスト・セキュリティ・運用体制にそれぞれ異なる強みがあります。クラウド型はアップデートの手間が少なく、限られた人員でも運用しやすい点が魅力です。
一方、オンプレミス型は自院のサーバー環境で運用できるため、ネットワーク障害の影響を受けにくく、セキュリティポリシーを細かく設定できるという利点があります。自院のリソースや求める管理レベルに応じて、最適な方式を選びましょう。
おすすめの電子カルテ製品を紹介
ここでは、「ITトレンド2025年上半期ランキング(電子カルテ)」をもとに、ユーザーから資料請求の多かった上位製品を紹介します。自院の診療スタイルや規模に応じて、まず比較検討する候補として押さえておくとよいでしょう。
CLIUS (クリアス)
- 【無料】WEB予約・問診・在宅・オンライン診療全て追加料金なし
- カルテ入力時間を短縮できるUI・UX。初心者でも使いやすい
- iPadでも使える!訪問診療や院内での持ち運びに役立ちます
株式会社DONUTSが提供する「CLIUS(クリアス)」は、クリニックから中小病院、在宅医療まで幅広い診療形態に対応したクラウド型電子カルテです。予約・問診・オンライン診療・在宅診療などの機能を追加料金なしで利用できるうえ、初期費用も抑えて導入しやすい点が大きな魅力です。さらに、PCだけでなくiPadにも対応しており、訪問診療や院内移動にも柔軟に活用できます。直感的な操作画面により、ITに不慣れなスタッフでもスムーズに扱いやすい設計となっています。
クラウド診療支援システムCLINICS
- 診療業務を革新するAIソリューション
- 業務効率化を支援するカルテ/レセコン機能
- 患者とのつながりを強化するかかりつけ支援機能
株式会社メドレーが提供する「クラウド診療支援システムCLINICS」は、オンライン診療・予約管理・電子カルテを一体化したクラウド型の統合システムです。外来はもちろん、オンライン診療を積極的に活用したい医療機関に向いており、受付から会計までの一連の流れをシームレスに管理できます。クラウドならではの自動アップデートにより常に最新機能を利用でき、複数拠点での運用にも柔軟に対応可能です。
エムスリーデジカル
- 初期0円、AIによる自動学習で入力時間80%削減!
- 15年利用で約1,000万円のコスト削減が可能!
- 金融機関・政府機関も利用する安全技術
エムスリーデジカル株式会社が提供する「エムスリーデジカル」は、シンプルで直感的な操作性を重視したクラウド型電子カルテです。カルテ入力のしやすさや画面の見やすさに加え、オンライン診療や医療機器との連携など、日々の診療に必要な機能をバランスよく備えています。導入や運用のサポートも手厚く、ITに不慣れなスタッフが多い医療機関でも安心して利用しやすい点が評価されています。
MAPs for CLINIC
- 初期ライセンス0円!Web予約問診(LINE連携)も追加費用0円!
- 柔軟な入力セット・画面表示カスタマイズで4倍速の高速入力
- ネットワーク障害時は別回線に自動切換。オフラインでも入力可能
株式会社EMシステムズが提供する「MAPs for CLINIC」は、クラウド型かつSaaS型の電子カルテで、柔軟な画面設定や操作性を重視する医療機関に適した製品です。通常の約4倍の高速入力を実現しており、カルテ入力や診療記録の効率化を図りたいクリニックにとって心強い選択肢になります。さらに、ネットワーク障害時でも利用を継続できる機能やリーズナブルな料金体系など、安定運用とコストパフォーマンスの両立を実現する設計も特徴です。
Qualis Cloud/Qualis
- 多機能なのに直感的な使い心地
- 各種システムとの連携も充実
- BMLだからできる、安心のサポート
株式会社ビー・エム・エルが提供する「Qualis Cloud/Qualis」は、医療機関の会計処理を効率化するクラウド型の業務支援システムです。仕訳入力や帳簿管理をわかりやすく操作でき、日々の会計業務をスムーズに進められる点が特徴です。電子カルテやレセプトシステムと組み合わせて利用することで、会計処理の正確性とスピード向上にも寄与します。医療事務の負担を軽くし、バックオフィス全体の生産性向上をサポートするツールです。
まとめ
電子カルテを導入することで、紙カルテで発生していた「探す・運ぶ・戻す」「読み直す」「検索・集計する」といったムダが大幅に削減され、業務効率や医療の質が高まります。また、複数の職種での同時閲覧・連携が可能になることで、診療の流れもスムーズになります。
しかし、電子カルテはどの製品も同じではなく、自院の診療形態・規模・運用体制に応じて、どこを重視するかを明確にしたうえで選定することが重要です。特徴・得意分野が異なる製品を複数比較検討し、可能ならデモや無料トライアルで実際の操作性を確認するのがおすすめです。


