交通費精算とは
交通費精算とは、従業員が業務上の移動で一時的に立て替えた交通費を申請し、会社がその金額を払い戻す手続きです。
例えば、取引先への訪問で利用した電車やバス、出張時の新幹線・飛行機、業務上必要となったタクシーなどの費用が挙げられます。
一般的には、従業員が利用日や経路、金額、移動目的などを申請し、上長や経理担当者が内容を確認したうえで精算します。交通費精算は、会社が行う経費精算業務の一つです。
交通費精算の対象となる主な費用
交通費精算の対象になるのは、原則として業務上必要な移動にかかった費用です。代表例は以下のとおりです。
| 交通手段・費用 | 主な例 |
|---|---|
| 電車・バス | 取引先への訪問、営業活動、出張などで利用した運賃 |
| 新幹線・特急 | 出張などで利用した乗車券・特急券など |
| 飛行機・船舶 | 遠方への出張などで利用した運賃 |
| タクシー | 業務上必要と認められる場合の利用料金 |
| 高速道路・駐車場 | 業務で自動車を利用した場合の料金 |
ただし、どこまでを精算対象とするかは会社の旅費・経費規程によって異なります。タクシーや新幹線の指定席などについて利用条件を設ける場合もあるため、社内ルールを明確にしておくことが重要です。
それぞれの経費との違い
同じ「交通費」でも、支出の目的や内容によって扱いが異なる場合があります。以下の4つの違いについて確認しましょう。
- ■旅費・交通費との違い
- ■出張費との違い
- ■通勤手当との違い
- ■その他の経費との違い
それぞれ詳しく解説します。
旅費・交通費との違い
「旅費・交通費」との違いは、それぞれの企業の規定によって異なります。フェリーや飛行機を含む公共交通機関を使用した場合の交通費が「旅費・交通費」となるため、費用が高額になることが多いでしょう。「出張費」となる場合もありますが、詳しい勘定科目は企業によります。
出張費との違い
「出張費」は旅費・交通費だけでなく、出張にかかる費用の総額のことを指します。出張費に含まれるのは、主に以下の項目です。
- ■交通費
- ■宿泊費
- ■出張手当(日当)
旅費・交通費と似ているため、どちらの勘定科目を使用するかはそれぞれの企業の規定によって異なります。
通勤手当との違い
通勤手当は給与の一部として支給され、一定の限度額までは所得税が非課税となります。そのため、経費として精算する交通費とは区別して扱う必要があります。なお、公共交通機関だけを利用している従業員と、自家用車や自転車なども併用して通勤している従業員とでは、非課税限度額が異なります。
その他の経費との違い
ほかにも、交通費ではなく別の勘定科目として計上する場合があります。代表的な例を紹介します。
- ■就活生や求職者の交通費を負担する場合
- 企業の規定によって異なりますが、一般的には「採用教育費」として仕訳します。交通費として仕訳をしても税務上問題はありませんが、領収書の提出を求めたり求職者に受領証を書いてもらったりするなどの対応が必要です。
交通費精算のやり方・基本的な流れ
交通費精算は、一般的に「申請→承認→確認→支払い」の流れで行います。具体的な手順を見ていきましょう。
手順1:従業員が交通費を記録する
業務上の移動で交通費が発生したら、従業員は利用日や交通機関、乗車区間、金額、訪問先、利用目的などを記録します。
領収書が発行される交通手段を利用した場合は、領収書も保管しておきます。交通系ICカードを利用している場合は、利用履歴を交通費の確認に活用する方法もあります。
手順2:交通費精算を申請する
従業員は、会社指定の交通費精算書や経費精算システムを使って申請します。
申請する際には、利用経路や金額だけでなく、訪問先や移動目的も記載します。会社が領収書などの証憑提出を求めている場合は、あわせて提出しましょう。
手順3:上長・承認者が内容を確認する
申請後は、上長などの承認者が業務上必要な交通費であるか、社内規程に沿った経路・交通手段であるかなどを確認します。
内容に誤りや不足がある場合は、申請者へ差し戻して修正を依頼します。
手順4:経理担当者が確認・精算する
承認された申請について、経理担当者が金額や勘定科目、証憑などを確認し、会計処理を行います。
確認後、会社が定めた方法で従業員へ交通費を払い戻します。給与とあわせて支給する場合もあれば、経費精算分として別途振り込む場合もあります。
交通費精算書に記載する主な項目
交通費精算を正確に行うためには、利用内容を確認できる情報を残す必要があります。交通費精算書には、主に以下の項目を記載します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 利用日 | 交通機関を利用した日 |
| 交通機関 | 電車、バス、タクシーなどの移動手段 |
| 経路 | 出発地・到着地、利用区間など |
| 金額 | 実際に支払った運賃・料金 |
| 訪問先 | 取引先や出張先など |
| 目的 | 商談、打ち合わせ、出張などの利用目的 |
| 備考 | 通常と異なる経路や交通手段を利用した理由など |
交通費精算書に決まった全国共通のフォーマットがあるわけではありません。自社の経理処理や承認に必要な情報を整理し、記入漏れが起こりにくい形式にしましょう。
交通費精算に領収書は必要?インボイス制度の注意点
交通費精算では、利用した交通機関や金額などによって領収書・インボイスの取り扱いが異なります。また、税務上の取り扱いとは別に、会社が不正防止や経費管理のために領収書の提出を求める場合もあります。
3万円未満の公共交通機関はインボイスの保存が不要
インボイス制度では、1回の取引の税込価額が3万円未満となる一定の公共交通機関による旅客運送について「公共交通機関特例」が設けられています。
対象となるのは、一定の船舶・バス・鉄道などです。条件を満たす場合は、適格請求書の保存がなくても、必要事項を記載した帳簿を保存することで仕入税額控除を受けられます。
なお、タクシーはこの公共交通機関特例の対象には含まれません。利用する交通手段や取引内容に応じて必要な証憑を確認しましょう。
参考:仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存|国税庁
出張旅費などには別の特例もある
従業員に支給する出張旅費や宿泊費、日当などのうち、通常必要と認められる金額については「出張旅費等特例」の対象となり、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合があります。
公共交通機関特例とは適用条件が異なるため、「3万円未満ならすべて領収書が不要」などと一律に判断しないよう注意しましょう。
参考:出張旅費、宿泊費、日当等に係る仕入税額控除の適用要件|国税庁
交通費精算を行う際の注意点
交通費精算では、入力ミスや二重申請、不適切な経路による申請などが発生する可能性があります。正確に精算するためのポイントを紹介します。
業務上の移動であることを確認する
交通費として精算するのは、原則として業務上必要な移動にかかった費用です。
申請時には訪問先や目的などを記録し、なぜその交通費が発生したのか後から確認できるようにしましょう。
通勤定期区間との二重精算を防ぐ
通勤定期券を会社が支給している場合、業務上の移動経路と定期区間が重複すると、同じ区間の交通費を二重に支払ってしまう可能性があります。
定期区間を自動控除する仕組みを利用したり、申請ルールを明確にしたりして二重精算を防ぎましょう。
合理的な経路・交通手段か確認する
交通費の申請ルールとして、経済的かつ合理的な経路を利用するよう定めている企業もあります。
ただし、単純に最安ルートだけを認めると、移動時間が大幅に長くなる場合があります。金額や所要時間、乗換回数などを踏まえ、どのような経路を認めるか社内規程で明確にしておくとよいでしょう。
申請期限と承認ルールを明確にする
交通費を長期間申請しない従業員がいると、経理処理が遅れたり、利用内容を確認しにくくなったりします。
「毎月○日まで」など申請期限を設定するとともに、誰が承認するのか、申請内容に不備があった場合はどう対応するのかを明確にしておきましょう。
インボイス制度に沿って証憑を管理する
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として帳簿と適格請求書などの保存が必要です。一方、公共交通機関特例や出張旅費等特例など、帳簿のみの保存が認められるケースもあります。
交通手段や支払い方法によって取り扱いが異なるため、自社の経理ルールに反映し、申請者にも周知しましょう。
交通費精算を効率化する方法
交通費精算における業務効率化を進めるためには、以下の4つのポイントをおさえましょう。
- ■交通費精算のルールを就業規則に明記する
- ■ICカードのデータを活用する
- ■交通費精算の承認ルートを明確化する
- ■経費精算システムを導入する
それぞれ解説します。
交通費精算のルールを就業規則に明記する
交通費精算のルールを就業規則に明記しておけば、いつでも従業員が確認できます。また、新しく入社した従業員へも就業規則を使用して丁寧に周知できるでしょう。 社内ネットワーク上での公開や、一人1冊ずつ常備してもらうなどして、いつでも閲覧・確認が可能な状態にしておきましょう。
ICカードのデータを活用する
SuicaやPASMOなどのICカードは、通勤手当や定期代とは別に計算できるため、業務利用として作ってもらうことがおすすめです。自己申告でなく、実際に交通費として使用した金額をデータで把握しているため、不正を防止できる点がメリットです。
なお、以下の記事でICカードでの交通費精算効率化について詳しく解説しているためぜひご覧ください。
交通費精算の承認ルートを明確化する
従業員から交通費精算の申請があった場合、どのような承認ルートを通るかを明確化させましょう。一般的に交通費精算を行う場合は、上長の確認のうえ経理担当者がチェックするという流れを採用している会社が多いでしょう。上長承認者や経理部門とのダブルチェックにより、不明瞭な交通費や金額の間違いを防止できます。
経費精算システムを導入する
経費精算システムとは、手間がかかりやすい経費精算業務を効率化するシステムです。ヒューマンエラーでおこってしまうミスも、経費精算システムを導入すれば改善できます。システム上でルールを設定することにより、ミスだけでなく不正も防ぎやすいでしょう。
またiPhoneなどのスマートフォンや、アプリと連携可能な製品もあります。外出先でも確認や申請ができるため、さらに効率化がはかれるでしょう。
「自社に合う経費精算システムを診断してみたい」、「どんな観点で選べばいいかわからない」という方向けの診断ページもあります。
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なお、以下の記事で経費精算システムの選び方について詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
交通費精算を効率化して経理業務の負担を軽減しよう
交通費精算とは、従業員が業務上の移動で立て替えた交通費を会社が払い戻す手続きです。正確に処理するためには、利用日や経路、金額、目的などを記録し、社内規程に沿って申請・承認する必要があります。
また、通勤定期区間との二重精算や領収書・インボイスの取り扱いにも注意が必要です。交通費の申請件数が多く、入力や確認、差し戻しに負担がかかっている場合は、経路検索やICカード連携などに対応した経費精算システムの導入も検討しましょう。




