労災が起こった場合の対応手順3つ
労災が起きたときにとるべき3つのステップを解説します。
1.医療機関への搬送をし、災害の事実関係を把握する
労災発生時に真っ先に考えるべきなのは、負傷者の治療です。基本的には労災指定病院に、それが困難な場合は一般の病院に搬送しましょう。労災指定病院の場合は労災保険から治療費が支払われるため、被災者が支払う必要はありません。一方、労災病院以外で治療を受けた場合は一時的に患者が立て替え、後で被災者に現金が支給されることになります。
また、労災が大規模なものであれば救急車を呼び、警察に通報しなければなりません。さらに、労働基準監督署に連絡してその後の対処について指示を受けましょう。
通報や連絡を行いながら、災害の事実関係を把握することも大切です。いつ誰がどのような労災に遭ったのか、その場には誰がいたのか、どうして労災が発生したのかなどを記録します。
2.労災保険の手続きをする
続いて、労災保険の手続きを行います。労災指定病院とそうでない病院では手続きが異なるため、それぞれ見てみましょう。
- 【労災指定病院】
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「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を作成します。被災者本人が作成すべき書類ですが、怪我をしていてそれが困難なケースが多いため、企業は支援しなければなりません。
この書類を作成し、病院に提出することで、被災者は費用を払うことなく治療を受けられます。ただし、病院搬送時点で書類を用意できることは稀なため、実際には一度全額負担してから後に返金されるのが一般的です。
- 【労災指定病院以外】
治療費は一度被災者が全額負担しなければなりません。そして、後日「療養補償給付たる費用請求書(様式第7号)」を作成し、事業場を所轄する労働基準監督署に提出します。その後、口座にお金を振り込んでもらえます。この書類には領収書・レシートの添付が必要なため、紛失しないようにしましょう。
3.労働者死傷病報告を提出する
被災者が死亡したかまたは休業する場合、労働基準監督署に労働者死傷病報告という書類を提出しなければなりません。これには様式23号・24号の2種類があるため、状況に応じて使い分ける必要があります。
- 【様式23号】
- 被災者が死亡した場合、あるいは被災者の負傷が重篤で4日以上の休業を余儀なくされる場合に提出する書類です。状況が確定次第、速やかに提出しましょう。
- 【様式24号】
- 休業が1~3日で済む場合に提出する書類です。こちらはすぐに提出する必要はありません。四半期ごとにまとめて報告しましょう。
被災者に死亡も休業もない場合は、どちらも必要ありません。しかし、必要なケースであるにもかかわらず報告しなければ、「労災隠し」として厳しい罰則を受けることになります。
労災発生時における企業側の義務
労災が発生した際、事業者は以下の2つの義務を負うことになります。
- 【待機期間分の賃金支払】
被災者が休業する場合、4日目以降は労災保険から賃金が支払われます。逆にいえば、1~3日目までの待機期間分は労災保険からは支払われません。その分は、企業が代わりに支払う必要があります。
労働基準法では、平均賃金の60%を支払わなければならないとされています。しかし、被災者の負担軽減のため100%を補償する企業も多いです。
- 【安全衛生管理】
事業者には従業員の安全を確保する義務が課せられています。労災が再び起きないよう職場環境を見直しましょう。不備があれば刑事責任に問われる可能性もあります。
労災に対応する際のポイント
最後に、労災に対応する際のポイントを解説します。
健康保険証を使用しないよう周知しておく
健康保険と労災保険は同時適用できません。したがって、労災に遭って治療を受ける場合、健康保険証を提示しないよう被災者に知らせておきましょう。
一般に知られているとおり、健康保険証を使うと治療費の自己負担は基本的に3割となります。しかし、労災で怪我をした場合は、労災保険を利用することで自己負担は0円です。つまり、健康保険を適用すると3割負担分を損することになります。
先述したように、労災で病院に搬送された際は被災者が一時的に治療費を立て替えることが多いです。その際に誤って健康保険を適用すると労災保険による返金を受けられないため注意しましょう。
ただし、誤って健康保険を適用してもそれを取り消すことは可能です。健康保険組合に事情を説明し、負担してもらった7割分を返金しましょう。その後、改めて労災保険を適用して全額負担してもらいましょう。
労災隠しをすると罰則がある
以下の行為をすると労災隠しと見なされ、罰則が与えられます。
- ■故意に労働者死傷病報告を提出しない
- ■虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出する
厚生労働省は、これらの労災隠しに極めて厳しい姿勢をとっています。具体的には、50万円以下の罰金や、会社名公開による社会的信用の低下などの処罰を受けることになります。被災者が死亡あるいは休業した場合は必ず提出しましょう。
通勤災害の場合は異なる手続きが必要となる
労災は以下の2種類に分類されます。
- 業務災害
- 仕事上で従業員が死傷する災害
- 通勤災害
- 通勤時に従業員が死傷する災害
一般的に労災と言った際には業務災害を指すことが多いため、この記事でも業務災害に着眼して解説してきました。
一方、通勤災害の場合は業務災害とは異なる手続きが必要になります。治療を受けた医療機関に応じて、それぞれ以下の書類を提出しましょう。
- 労災指定病院
- 療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)
- 労災指定病院以外
- 療養給付たる療養の費用請求書(様式16号の5)
通勤経路(交通手段、駅名など)や通勤災害発生時刻など、詳しい状況を記載して提出します。
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ポイントを押さえて労災の対応手順をマスターしよう
労災発生時の対応手順は以下のとおりです。
- 1.被災者を医療機関に搬送し、労災の事実関係を確認する
- 2.労災保険の手続きをする
- 3.労働者死傷病報告書を提出する
また、労災に対応する際には以下のポイントに留意しましょう。
- ■健康保険証を使わないよう周知する
- ■労災隠しをしてはいけない
- ■通勤災害の場合は異なる手続きを行う
以上を踏まえ、労災発生時に適切に対応しましょう。