雇用形態とは
雇用形態とは、企業と従業員間で交わされる雇用契約の採用種別のことです。正社員や契約社員、パート・アルバイト、派遣といった種類に分けられます。
雇用形態の区分
また、雇用形態は大きく2つに区分できます。「正規雇用・非正規雇用」というくくりと、「直接雇用・間接雇用」です。
正規雇用と非正規雇用
正規雇用とは、雇用期間に期限がない無期雇用の働き方でいわゆる「正社員」が該当します。企業との直接雇用で、一般的にフルタイム勤務が基準となりますが、3歳未満の子どもを育てている場合や企業の制度によっては1日6時間などの短時間勤務も可能です。
非正規雇用は、正規雇用以外のすべての雇用形態を指します。契約更新の可能性はあるものの、有期雇用であることが最大の特徴です。非正規雇用には、パートやアルバイトのほか、契約社員や嘱託社員、派遣社員等も含まれます。
直接雇用と間接雇用
直接雇用は企業と従業員が直接契約を結ぶ方法で、正社員やパート・アルバイト、契約社員などが該当します。一方、間接雇用は派遣社員が該当し、人材派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結んだうえで派遣先企業で働く方法です。
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雇用形態の種類
次に雇用形態の種類について解説します。雇用形態によってメリット・デメリットがありますので、あわせて確認しましょう。
正社員
前述したとおり、正社員は雇用期間に定めのない雇用形態です。企業と長期雇用を前提に労働契約を結びます。社会保険や交通費、住宅手当といった福利厚生が完備され、賞与・退職金が支給されるケースが多いでしょう。配属先や職種によっては転勤や残業を求められる場合があります。
- ■メリット
- ・安定雇用など従業員にとってもメリットが大きいため、優秀な人材を集めやすい
- ・社内教育や人材育成に一定の時間をかけられ、将来的な業績向上につなげられる
- ■デメリット
- ・社内教育や人材育成にコストがかかる
- ・簡単には解雇できない
フルタイム正社員
正社員の中でも、企業が定める就業規則の所定労働時間の上限まで働く雇用形態です。1日8時間、週40時間働きます。正規社員と呼ぶケースもあります。企業の中心として働き、その発展を大きく担う存在です。昇進により、重要な役職に就くこともあります。
短時間正社員
短時間正社員は、フルタイム正社員と比べると所定労働時間(日数)が短い雇用形態です。厚生労働省は、短時間正社員を「雇用期間の定めがない」「時間あたりの基本給や退職金の算定方法がフルタイム正社員と同じである」と定義しています。
このような働き方を導入すると、家庭の事情でフルタイムで働けない社員の活躍の場が広がります。したがって優秀な人材を獲得しやすく、定着率も向上しやすいです。また、企業のイメージアップにもつながるでしょう。
非正規社員
非正規社員は雇用期間に定めがある雇用形態です。労働時間はフルタイム正社員と同等か短く、給与・福利厚生面は正社員と比べると充実していない場合が多いです。
非正規社員の種類は「派遣労働者」「契約・嘱託社員」「パートタイム労働者」等が挙げられます。派遣労働者は「間接雇用」で、それ以外は企業に「直接雇用」される形となります。
派遣労働者
派遣労働者は、雇用主と就業先が異なる雇用形態です。まず、労働者は派遣会社と雇用契約を結びます。そして、派遣元と労働者派遣契約を結んでいる派遣先で働きます。業務の指揮・命令を行うのは派遣先です。派遣労働者は派遣元の福利厚生を利用可能です。
厚生労働省では、雇用主と就業先が異なることで起こり得る問題の発生を危惧し、「派遣労働者法」で派遣労働者のためにさまざまな規定を設けています。同法において、問題発生時は派遣元と派遣先が責任を分担するとしています。
- ■メリット
- ・専門スキルを有する即戦力な人材を、手間と時間をかけずに集められる
- ・各種保険や給与計算の対応が不要
- ■デメリット
- ・派遣期間が決められているため、都度育成が必要になる
契約社員(有期労働契約)、嘱託社員
契約社員(有期労働契約)は、雇用期間に定めがある雇用形態です。契約期間の上限は3年のケースがほとんどで、期間満了により労働契約は自動で終了します。しかし、高度な専門知識をもつ人や60歳以上の人の上限は5年間です。さらに、同じ事業主のもとで5年以上働いた場合は、双方の合意があれば期限のない契約社員への転向が可能です。
嘱託社員は、定年後に再雇用される雇用形態です。正社員と同等の契約内容だったり、労働時間が短い分、給与が安くなったりと、嘱託社員の扱いは企業により異なります。
- ■メリット
- ・正社員と同じように仕事を任せられ、人件費は正社員より抑えられるケースも
- ・スキルのある人を繁忙期など期間限定で採用できるため、人材調整がしやすい
- ■デメリット
- ・契約更新拒否や無期労働契約の申し出に対して、人員配置を改める必要がある
パートタイム労働者
パートタイム労働者は、同企業内の正社員と比べて所定労働時間が短く、雇用期間に定めがある雇用形態です。企業がパートタイム労働者を雇う際は「パートタイム労働法」に則り、労働条件や昇給・賞与の有無といった、所定文書の明示・交付を義務化しています。
また、業務態度・内容の公正な評価・判断を行い、正社員への転換といった適切な措置に取り組まなければいけません。
- ■メリット
- ・繁忙期や閑散期など必要に応じた人員調整がしやすい
- ・正社員より時間単価が低いため、人件費の抑制にも効果的
- ■デメリット
- ・入れ替わりが激しいため、求人や教育も頻繁に発生しがち
注意したい契約形態
「業務委託契約」や「自営型テレワーカー」も雇用形態の一つと思われがちですが、企業側と個人事業主等の間に雇用契約は結ばれません。そのため雇用形態には含まれず、契約形態として捉えられます。
業務委託(請負)契約を結ぶ事業主
業務委託契約を結ぶ事業主は、企業から仕事を委託され、業務の指揮・命令を受けません。委託を受けた仕事の完成物に対し、企業から報酬が支払われます。ほかの雇用形態の労働者と異なり、労働基準法の保護対象ではありません。ただし、働き方の実態から「労働者」と見なされれば、労働基準法の保護対象となります。
自営型テレワーカー
自営型テレワーカーは事業主と同じく、企業から仕事を委託され、パソコンなどの機器を使い業務を行います。業務を行う場所は主に自宅やカフェといった場所が多いでしょう。報酬は仕事の完成物に対して支払われます。近年、個々のライフスタイルにあう柔軟な働き方として、自営型テレワーカーに関心・期待が集まっています。
しかし、労働契約を交わさないことによる報酬未払いや仕事の一方的な打ち切りなど、企業対テレワーカーの問題が相ついで発生しているのが現状です。そこで、厚生労働省は「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」を定めています。それにもとづき仕事の依頼を行うといった、自営型テレワーカーに対する企業の適切な対応が望まれています。
雇用形態による社会保険の適用範囲
社会保険は、雇用形態や勤務時間・収入によって加入条件が異なります。非正規社員であっても、条件を満たしていれば社会保険に加入できます。社会保険種別の加入条件は以下のとおりです。
- 雇用保険
- 週20時間以上勤務する場合、正規・非正規社員が対象です。
- 労働災害保険
- すべての労働者が対象です。
- 厚生年金、健康保険
- 加入条件が2つあります。1つは、就業時間が正社員の4分の3以上(おおむね週30時間以上)です。もう1つは、以下の項目すべてを満たしていれば加入対象です。
-
- 1.所定労働時間週20時間以上
- 2.月額賃金88,000円以上
- 3.勤務期間1年以上見込み
- 4.従業員数501名以上の企業(500名以下の企業は別途条件有)
- 5.学生は不可
なお、事業主や自営型テレワーカーは企業と雇用契約を結んでいないので、上記に該当しません。
なお労務管理業務のなかでも、社会保険や福利厚生の加入管理などは手数がかかり、担当者の負担も大きいものです。労務管理システムの導入によって、業務効率化を実現できるため、打開策を講じたい方はぜひ以下の記事なども参考にしてください。
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雇用形態を変更する方法
社員の雇用形態を変更するときは手続きが必要です。正社員からパートタイムになる場合、新たに労働契約を結びましょう。内容の変更を書面に明記し、必ず交付してください。雇用契約書の交付はトラブル防止に役立ちます。
勤務時間が短くても、条件を満たせば社会保険の加入対象です。しかし、雇用形態の変更後3か月間の平均給与額が以前と比べ、2等級以上の差が生じた場合は社会保険料の改定手続きが必要です。また、双方の合意であっても就業規則を下回る労働条件は法律上認められないので、注意してください。
そして、派遣労働者を直接雇用する際は以下の点に注意しましょう。
- ■派遣元企業は、雇用期間終了後における派遣先企業の直接雇用契約を制限してはならない
- ■派遣労働者を直接雇用に切り替える場合、派遣先企業は派遣元企業へ紹介手数料を支払う
- ■派遣期間中に派遣先企業が直接雇用しようとすると、派遣元企業から損害賠償を請求される恐れがある
雇用形態についての正しい知識を身に着けよう
雇用形態とは、正社員・契約社員・アルバイトといった雇用契約の種類を指します。雇用形態ごとの特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、自社にあった人材確保や適切な労務管理業務を行うようにしましょう。