IP-PBXとは
IP-PBXとは、インターネット回線を活用したPBX(電話交換機)を指します。
PBXとは、内線通話や外線の制御、転送機能を各電話機で利用するための専用装置のことで、従来は固定電話の回線網が使われてきました。複数事業所間での内線通話や、オフィス内のどの電話機からでも会社の電話番号で外線の発着信ができるなど、PBXは企業にとって欠かせない存在です。
なかでもIP-PBXは、通話料や導入コストの低さなどから人気があり、2017年にNTT東日本・西日本の固定電話回線のIP網移行が発表されてからは、ますますそのシェアを拡大させています。
参考:固定電話(加入電話・INSネット)のIP網移行|NTT東日本
IP-PBXの仕組み
IP-PBXと従来のPBXには構造上の違いはなく、基本的にサーバとネットワークを構築して利用します。大きな違いは、構成しているネットワークが電話回線か、LANケーブルなどのインターネット回線であるかです。
そのほか、IP-PBXでは音声通話システムであるVoIPを利用します。VoIPは「Voice Over IP」のことであり、インターネット上で音声データの交換などのやり取りを行います。
IP-PBXの種類
IP-PBXは、ハードウェアとソフトウェアの2タイプに大別されます。それぞれの特徴を紹介します。
ハードウェアタイプ
ハードウェアで導入する場合は、IP-PBXの専用機器を用意し、社内に設置します。社内で通信網を管理するため、セキュリティ性が高く稼働も安定しているのが特徴です。その反面、機能を拡張させたい場合は、新しい機器を追加したり交換したりする必要があるため、追加コストが発生しやすいです。通信環境を安定させたい企業や、利用人数や機能など、利用環境があまり変わらない事業者に適しているでしょう。
ソフトウェアタイプ
ソフトウェアで導入する場合は、自社内に設置しているサーバにIP-PBXのソフトウェアをインストールし、環境を構築します。拡張性に優れており、従業員が増えてもライセンスを追加するだけで対応できるのが特徴です。アップデートなどのメンテナンスも容易でしょう。ハードウェアに比べると、システム構築までに少し時間がかかります。事業形態や利用人数に応じた柔軟性を重視したい企業におすすめです。
ビジネスフォン・クラウドPBXとの違い
ここでは、混同されがちなビジネスフォンやクラウドPBXとの違いを簡単にまとめました。
- ■ビジネスフォン
- 単独拠点において1~数十台の電話機で利用。主に外線通話向け。
- ■IP-PBX
- 複数拠点間で数十台以上の大規模利用に最適。内線通話と外線通話の両方に使える。
ビジネスフォンは、小・中規模の1か所で営業している事業所向けの電話システムです。IP-PBXとは対象企業規模や機能が異なるため、それぞれの違いを把握したうえで導入しましょう。
- ■クラウドPBX
- クラウド上に構築されたPBX機能を、インターネット回線を通じて利用するサービス。PBXのクラウド化によって、社外からの利用も可能。
- ■IP-PBX
- オフィス内にPBX環境を構築するため、社内での利用に限定。
上記のとおり、クラウドPBXならインターネット環境さえあれば、どこからでもオフィスと同等の電話機能を利用できます。IP-PBXはオフィス内に限定されるため、自社のワークスタイルにより選択をしましょう。
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IP-PBXを導入するメリット
IP-PBXの主なメリットを5つ紹介します。自社の電話環境と比較しながら確認しましょう。
- ・簡単に導入できる
- ・通話以外の機能も搭載できる
- ・低コストで運用できる
- ・カスタマイズの自由度が高い
- ・地理的制約が少なく1拠点の設置で済む
簡単に導入できる
従来のPBXを構築する場合は、サーバと社内に物理的な電話回線のケーブルでネットワークを構築する必要がありました。IP-PBXの場合は、インターネット回線で接続しているネットワーク上にIP電話の機能をもたせるため、すでに社内ネットワークが構築されている場合は、IP-PBXのシステムを導入するだけで簡単に利用できます。
通話以外の機能も搭載できる
IP-PBXはインターネットの技術を使っているため、パソコンとの親和性が高いのも特徴です。パソコンと電話を連携させるCTIシステムを活用すれば、通話以外の機能をもたせることが可能です。
例えば、通話内容を記録しパソコンに保存したり、保存した通話内容をサーバへバックアップしたり、音声データをメールで送信したりといった機能があります。ほかにもCTIの技術を使って、顧客の情報を着信時に表示できるようになれば、コールセンターの顧客対応の品質向上も可能です。
低コストで運用できる
一般的に外線と内線では通話料が異なり、内線は無料の場合が多いでしょう。従来のPBXでは、外出中の社員とオフィスにいる社員同士の電話は外線になってしまい、通話料金がかかります。
IP-PBXはスマートフォンを内線化できるため、自社内の電話コストを削減します。また、電話回線と違いLANケーブルを差し替えるだけで設定が可能なため、席が移動したときなどの運用の手間も減るでしょう。
カスタマイズの自由度が高い
電話業務に必要な機能は、企業によって異なります。IP-PBXはパソコンと電話を連携できるため、パソコンを使って電話機能を拡張しやすいのも特徴です。IP-PBXであればコールセンターの構築も比較的簡単であり、コールセンター業務に必要な着信の振り分け機能や、通話録音機能などのカスタマイズが可能です。
地理的制約が少なく1拠点の設置で済む
IP-PBXはIP電話のネットワークがつながる環境であれば、どこでも内線化が可能で、PBX構築は1拠点で済みます。複数拠点がある企業の場合、それぞれの拠点でPBXの構築が必要でしたが、IP-PBXであれば複雑な設定も、各拠点にPBXを構築する必要もありません。
IP-PBX製品の選定ポイント
IP-PBXを導入する際のポイントも確認しましょう。
- ・初期コスト、運用コストを確認する
- ・システムの許容量と自社の通話量を比較する
- ・自社に必要な機能を明確にする
- ・停電対策を考える
初期費用・運用コストを確認する
IP-PBXの導入時には、初期費用が発生します。前述したとおり、ハードウェアを導入するよりもソフトウェアで導入した方が価格を抑えられるため、導入時の一つのポイントとなるでしょう。また、自社内にシステムを構築するため、保守・運用も自社で行う必要があります。事前に運用コストを把握することも重要です。
システムの許容量と自社の通話量を比較する
インターネット回線を利用しているIP-PBXは、許容量を超える通話を行ったときに通話が途切れたり、ノイズが発生したり、通話品質が低くなる可能性があります。使用するシステムの許容量と、自社の通話量が見あっているか、導入前に確認しましょう。
自社に必要な機能を明確にする
IP-PBXのシステムには、主に以下の機能があります。
- ・内線、転送機能
- ・パソコン連携機能
- ・通話履歴、録音機能
- ・代表着信機能
これらのPBX機能は、すべてのシステムに備わっているわけではなく、システムによって使える機能は異なります。例えば、コールセンターの電話システムとして利用するのであれば、上記の機能を網羅していると便利です。しかし、小規模企業で電話コストの削減が導入目的であれば、必要最低限の機能で十分でしょう。IP-PBX製品の検討時には、まず自社の目的から必要な機能を把握することが重要です。
停電対策を考える
IP-PBXは、長時間停電すると機能が停止してしまう特性があります。停電対策には、自社に予備発電機を導入するか、スマートフォンを使って発信する方法があります。IP-PBXの導入と並行して、機能が停止した際の対策を検討しておきましょう。
IP-PBXを理解し、適したシステムを導入しよう
IP-PBXは導入が容易であり、通話にかかるコストを削減できます。パソコンとの連携によって、通話録音や着信の振り分けができるなどの高い実用性から、より質の高い電話環境を実現可能です。製品によって機能や性能は異なるため、各社製品の資料で比較して選ぶことをおすすめします。
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