納期管理の改善方法
受注企業が納期管理を改善する方法を3種類紹介します。
リードタイムを把握して短縮に努める
リードタイムとは、受注から納品までの所要時間です。代表的なリードタイムには以下のものがあります。
- 【調達リードタイム】
- 原材料や部品を仕入れるのに要する時間のことです。ここで遅延が生じると後の製造や出荷にも影響が及ぶため、充分な注意が求められます。
- 【製造リードタイム】
- 製造に着手してから製品が完成するまでの所要時間です。製品によって大きく異なるため、どのくらいの製造リードタイムがかかるかを踏まえて納期を決めなければなりません。
- 【出荷リードタイム】
- 製品を製造し終えてから出荷するまでに要する時間です。納期ぎりぎりで製品を製造しても、出荷に時間がかかれば納期を守れません。
納期を守るにはこれらのリードタイムを短縮することが大切です。たとえば、出荷リードタイムは配送ルートの見直しなどで短縮できる可能性があります。自社の場合はどれを縮められそうか考えてみましょう。
管理を見える化する
現場の状況を把握しきれないことが、納品の遅延につながるケースもあります。そこで、次は管理を見える化する方法を紹介します。
生産性を向上させる「5S」
5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」のことです。この5つは、単に現場をきれいにしようといったことではありません。それぞれ以下のことを意味します。
- 整理
- 不要なものを処分すること
- 整頓
- 必要なものを必要なときに取り出せるようにすること
- 清掃
- ゴミやチリを排除すること
- 清潔
- 上記3つの活動を持続的に行うこと
- 躾
- 整理・整頓・清掃が習慣化し、現場の全員が取り組んでいること
これらはそれぞれ独立した活動ではなく、上から順番にステップしていくものです。最終的には全員が職場を綺麗に保てる「躾」の状態を目指しましょう。
5Sを達成すると、現場の見通しが良くなります。必要なものを必要なときにすぐに取り出せることで、タイムロスが減少します。このことは納期を守るのに少なからず貢献するでしょう。
ムリ・ムダをなくす「4M」
4Mとは「Man・Machine・Material・Method」の略で、それぞれ「人・機械・原材料・方法」を意味します。これらはいずれも、製品を製造するうえで重要な要素であるため、充分な管理が必要です。
特に、これらの要素が変わる際には注意が求められます。変更時にムリやムダが発生する可能性が高いからです。それぞれ具体的に見ていきましょう。
- 【Man】
- 作業者が交代する際、製品の品質などが変わることがあります。不慣れな従業員に変わるときなどは特に注意が必要です。
- 【Machine】
- 機械そのものが変わるとき、あるいはメンテナンスなどに伴って停止・再稼働するときにトラブルが起きることがあります。
- 【Material】
- 原材料の変更が製品の品質に影響を及ぼすことがあります。
- 【Method】
- 作業方法や工具などが変わる際にも製品の品質に影響が及ぶ可能性があります。
品質・コスト・納期・安全を保つ「QCDS」
QCDSとは「Quality・Cost・Delivery・Safety」のことで、それぞれ「品質・コスト・納期・安全」を意味します。適切に納期管理を行うには、QCDSを意識した製造現場の見える化を実施することが大切です。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
- 【Quality】
- 上述した4Mの視点を踏まえながら、欠陥品の発生を防ぎます。
- 【Cost】
- 労働生産性や在庫回転率といった、コストを表す指標を活用しながらコストを最適化します。
- 【Delivery】
- QCDSのうち、納期管理においてはもっとも重要な要素です。こちらも4Mに着眼しながら見える化に取り組みます。たとえば、どこに何があるのかすぐに分かれば、積み直しなどによるタイムロスを防げるでしょう。
- 【Safety】
- ヒヤリハット率などの指標を活用しながら、安全対策に取り組みます。
生産管理システムを導入する
適切に納期管理を行うには、まず現場の状態をリアルタイムに把握できなければなりません。たとえば、製品製造工程のどこかで無理が生じている場合は、管理者がそのことをすぐに把握し、体制を見直せる必要があります。
そして、そのために役立つのが生産管理システムです。生産管理に役立つ機能を多く備えています。たとえば、工程管理機能を使えば各工程にどのくらいの負荷がかかっているのかを把握できます。
また、社内での情報共有にも役立。製品製造状況を営業部と共有できれば、営業部が無理な納期で受注することはなくなるでしょう。このほかにも、生産管理システムは納期を守るうえで有益な機能を多く備えています。
納期管理における遅延の原因
納期管理における遅延の原因は、発注側に起因するものと受注側に起因するものに大別されます。それぞれの例をいくつか見ていきましょう。
- 【発注側に起因するケース】
-
- ■急に仕様変更が伝えられる
- ■変更図面が届くのが遅い
- ■新規案件が急に入る
- ■厳しい納期を設定される
- ■事務手続きなどが遅い
- 【受注側に起因するケース】
-
- ■営業が無理な納期で受注してしまう
- ■納期管理体制が不適切
- ■材料調達の遅延
- ■不良品発生
- ■二次外注の遅延
これらのうち、発注側に起因するケースは受注側での改善は難しいかもしれません。しかし、受注側に起因するケースは納期管理体制を見直すことで改善できる可能性があります。次の項ではそのための方法を見ていきましょう。
納期管理の課題を生産管理システムで解決した事例
生産管理システムを導入すると、どのように納期管理を改善できるのでしょうか。納期管理に関する問題を解決した事例を基に解説します。
- 【営業とのデータ共有に成功した事例】
- 機械部品を製造するある企業は、営業とのデータ連携に苦労しながら対応していました。そこで、生産管理システムを導入します。
- その結果、データの二重入力が不要になり、購買履歴の可視化に成功しました。また、営業データの加工にかかる時間も大幅に短縮できるようになったといいます。
- 【部門をまたいだ情報共有に成功した事例】
- プラスチック製品などを手掛けるある企業は、部門ごとにデータが分断されていることに悩んでいました。ある部門から別の部門にデータを渡す際には、Excelへの転記作業をしており、手間やミスが多かったとのことです。
- そこで生産管理システムを導入した結果、入力ミスが大幅に減少し、受発注に関わる工数が半分以下になったそうです。
生産管理システムを導入して納期管理を改善しよう!
納期管理に遅延が生じる原因は、発注側と受注側のどちらにもあります。受注側の原因は以下の方法で改善可能です。
- ■リードタイムの短縮
- ■管理の見える化(5S・4M・QCDSを意識する)
- ■生産管理システムの導入
特に生産管理システムの活用は、人力では困難だった業務の効率化を実現してくれます。システムの導入を視野に入れながら、納期管理を改善していきましょう。