倉庫での保管効率を把握する方法
倉庫の保管効率は物流管理指標の1つで、これが高いほど倉庫スペースを有効活用できていることを示します。では始めに、保管効率を把握する方法を見ていきましょう。
理論上の倉庫スペースを計算
まず、理論的にどのくらいの倉庫スペースが使われているのか把握する必要があります。消費されるスペースは商品の保管方法によって異なるため、それぞれに適した方法で算出しなければなりません。たとえば、以下の条件のラックにおける消費スペースを計算してみましょう。
- 幅
- 縦1m、横2.7m
- 収納パレット数
- 6つ
- 通路幅(縦)
- 1.6m
- 1ラック分の消費スペース=(1m+1.6m÷2)×2.7m=4.86㎡
- 1パレット分の消費スペース=4.86㎡÷6=0.81㎡
通路幅を半分として計算しているのは、ラック同士が背中合わせで2つ並んでいる状況を想定しているためです。そうでない場合は状況に応じて計算式を工夫しましょう。
実際のスペースロスを分析し、理論値と比較
前項で算出した理論上のスペースと、実際に使われているスペースを比較しましょう。基本的に「実際値>理論値」となり、その差がスペースロスとなります。スペースロスを分析する際には、以下の3つの視点を用いましょう。
- 平面ロス
- 物が置かれていない平面が多い
- 高さロス
- 立体的な空間を使えていない
- 山欠けロス
- 荷物同士の間に無駄な隙間がある
前項の例でいえば、収納パレットを6つも使わなくてもよい(山欠けロスがある)可能性が考えられます。1つのパレットに商品を集約できればスペースロスが減るでしょう。また、もっと背の高いラックを使えれば、高さロスを軽減できます。
倉庫における保管効率を改善させるポイント
続いて、保管効率を改善する方法を見ていきましょう。
設備を刷新し、保管量を増やす
商品やスペースに適した保管什器を選ぶことでスペースロスを抑えることが可能です。では、保管什器の種類と特徴を見ていきましょう。
積層ラック
積層ラックとは、中二階あるいは積層棚の床材のことです。ラックの下のスペースを無駄にすることなく、その上に保管スペースを作れます。立体的に空間を活用するうえで適しています。また、組立や解体も容易なため、工場や倉庫を移転する際に負担が少ないのも特徴です。
一口に積層ラックといっても、製品によってさまざまな特徴があります。たとえば、昇降機付きのものや階段が可動式のタイプがあります。利用形態や保管する商品に応じて適切なものを選ぶとよいでしょう。
高層ラック
高層ラックは縦の空間を最大限に活用できるラックです。巨大な本棚をイメージすると分かりやすいでしょう。バラやケースなどの単位で商品を保管可能です。積層ラックと比べると、小さい商品を大量に保管するのに向いています。そのため、Eコマースにおける少量多品種の保管などによく使われます。
高いところにある荷物は、人力だけでは取れません。そのため、人を乗せて上昇する「ハイピックランナー」と呼ばれる装置が使われます。フォークリフトよりも狭い通路で運用可能なため、単位面積当たりのスペース利用効率が優れた高層ラックと相性が良いです。
パレットラック
パレットラックとは、一棚あたりの積載荷重が500kgを超過するラックのことです。基本的にパレットを使って荷物を保管するため、パレットラックと呼ばれます。パレットを使っている工場や倉庫ではもっとも一般的なラックといえます。
パレットラックの特徴は自由度が高いことです。フォークリフトの仕様や荷物の形態によって棚の高さを自由に調節できます。一段目を高さ1m、二段目を1.5mにするといった柔軟な運用が可能です。そのため、取り扱う荷物の変更への対応も容易です。組立や分解も難しくないため、移転の際の負担も大きくありません。
移動ラック
移動ラックとは、床に設置したレールの上を移動させて使うラックのことです。手動式のほか、電動式やハンドル式のタイプもあります。
移動ラックのメリットは、密集させても使いやすいことです。通常はラック同士を密集させると荷物を取りにくくなりますが、移動ラックであれば必要に応じて動かせるため、問題ありません。ただし、動かすのに手間がかかるのは確かなため、頻繁に出し入れする荷物の保管には不適です。
タイプによって特徴が異なるため、簡単に把握しておきましょう。
- 手動式
- 安価で操作が簡単。移動に時間がかかる。
- 電動式
- 高額だがスペースの利用効率が非常に高い。
- ハンドル式
- 手間や価格が手動式と電動式の中間。
プッシュバックラック
プッシュバックラックとは、押し込み格納方式のラックです。先に入れた荷物は、後で入れた手前の荷物を取り出すと後ろから自重で流れてきます。
コンビニエンスストアで缶ジュースを取り出す様子をイメージすると分かりやすいでしょう。ただし、棚に収納するのは前からなため、先入れ後出しとなります。
プッシュバックラックの特徴はスペース利用効率が高いことです。奥に押し込んだ荷物は自重で流れてくるため、それを取り出すための作業スペースは必要ありません。したがって、普通の棚より通路に割く面積が少なく済みます。
自動倉庫システム
自動倉庫システムとは、コンピューターで制御する倉庫のことです。具体的には、専用のクレーンやベルトコンベアなどをコンピューターで動かし、荷物の出し入れを行います。
作業が自動化されるため、作業スペースが必要ありません。したがって、自動倉庫システムの活用により倉庫スペースを効率的に使えるようになります。
出荷頻度によって保管場所を変更する
商品を出し入れする頻度によって、適切な保管場所は異なります。
たとえば、出荷頻度の高い商品であれば、倉庫の奥に保管するのは適しません。無駄に荷物や作業員が往復する回数が増えるからです。たとえスペースを有効活用していても、これでは効率的に保管しているとは言い難いでしょう。
そのため、商品を出荷頻度に応じてグループ分けするのがおすすめです。出荷頻度の高いグループほど、出荷場に近い位置に保管しましょう。また、外部倉庫を借りる場合は、倉庫内での保管だけでなく倉庫の立地も出荷頻度を考慮して決めるとよいでしょう。
倉庫レイアウトを見直し作業動線を短縮する
スペースにおける保管効率を追求すると、作業効率が悪くなりがちです。極端な例を挙げると、荷物の種類を分けずに密集させればスペース効率は非常に高くなります。
しかし、これではピッキングなどの作業に支障をきたすでしょう。したがって、スペースの保管効率を犠牲にしすぎない程度に、作業効率も確保しなければなりません。具体的には以下の工夫が考えられます。
- ■ピッキングしやすいように通路の幅を広くする
- ■同時にピッキングされやすい商品を近くに保管する
- ■荷物が混同しないようにスペースに余裕を持たせる
作業と保管スペースの効率をそれぞれどのくらい優先するか考えて工夫しましょう。
倉庫保管効率の現状を把握し、自社に合った改善をしよう
倉庫スペースの保管効率を把握するための方法は以下のとおりです。
- 1.理論上の消費スペースを算出
- 2.実際のスペースと理論値を比較
また、倉庫の保管効率を高める方法は以下のとおりです。
- ■保管什器を見直す
- 積層ラック
- 高層ラック
- パレットラック
- 移動ラック
- プッシュバックラック
- 自動倉庫システム
- ・出荷頻度に応じて保管場所を変える
- ・倉庫レイアウトを見直す
以上を踏まえ、自社に適した改善活動を行いましょう。