
GDP(医薬品の適正流通基準)とは?
医薬品の品質は人間の命にかかわるため、その製造工程では厳重な規制と管理が求められています。しかし、医薬品の品質は製造工程だけに依存するものではありません。原料の製造から提供、製造、保管、販売・流通まで、サプライチェーンすべてにおける品質管理が必要です。
保管時の適正な温度管理(低温、低湿)が必要ですし、異物の混入もあってはなりません。そこで、医薬品の適正な流通基準として定められたのがGDP(Good Distribution Practice)です。
WHO(World Health Organization:世界保健機関)にはGDPガイドラインがあり、EUではGDPが法的規制となっています。日本では厚生労働省が「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」(更新日:平成30年12月)を発表し、品質管理や流通経路の管理などの手法が定められています。
またこれに伴い、一般社団法人日本医薬品卸売業連合会は「GDP国際整合化対応版」であるJGSP(JAPAN GOOD SUPPLYING PRACTICE)を見直し、国内での対応強化に努めています。
参照:
医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて|厚生労働省
JGSP「GDP国際整合化対応版」の
作成経緯と今後の取組|一般社団法人日本医薬品卸売業連合会
倉庫管理におけるGDPの必要性
ではなぜGDPは倉庫管理に必要なのでしょうか。その必要になった背景として「GMP省令」と「PIC/S」について解説します。
GMP省令:医薬品の管理と品質を徹底するための省令
GMPはGood Manufacturing Practiceの略で、「医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準」と訳されています。これを平成16年12月24日に省令として定めたのがGMP省令です。
GMPの目的は、医薬品製造時における管理と品質を徹底することにあります。そのため、人による間違いを最小限にすること、医薬品が汚染されたり品質が低下するのを防ぐこと、高い品質を保つ仕組みを作ること、が事業者には求められています。
整備しなければならないものにハードとソフトがあります。ハードは設備関連のものであり、ソフトは人的な約束事や教育訓練です。GMP省令ではこれら取り決めた自社ルールを基準書としてまとめるよう定めており、以下のような基準書です。
- ◆製造管理基準書
- ◆品質管理基準書
- ◆衛生管理基準書
その他にも製造管理及び品質管理を適正かつ円滑に実施するため、手順書と呼ばれる文書を製造所ごとに作成し、保管する必要があると省令では定められています。
PIC/S:医薬品の品質を保つ非公式の国際的な枠組み
PIC/Sとは、PIC(Pharmaceutical Inspection Convention)とPICS(Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme)の総合名称です。「医薬品査察協定および医薬品査察共同スキーム」と訳され、GMPを国際化するための非公式の枠組みのことです。
医薬品の品質維持はサプライチェーンすべてにおける管理が必要で、これは1国だけでは実現できません。そこで、各国政府や査察機関が協力する、国際的な枠組みがPIC/Sなのです。
この原型は1970年のPICまでさかのぼることができ、その目的は、査察の相互認証、GMPの協調、査察システムの統一、査察者の教育、情報交換などでした。これが改善されPIC/Sとなります。
ここにおいて「品質システムとGMP基準」が設けられ、PIC/S -GMPを整備してきました。PIC/Sの活動には、教育セミナー(1回/年)、共同査察プログラム、エキスパートサークル会議(1回/年以上)などがあります。
日本は2014年7月に加盟し、これは45番目となります。PIC/S -GMPはGMPの国際標準と考えられ、日本もPIC/S-GMPに準拠した製造管理や品質管理が求められています。
WMS(倉庫管理システム)とGDP
GDPを適切に行なっていくためにはWMSを導入することをおすすめします。WMSとは倉庫内における在庫の入出庫の管理やロケーション管理を行うことができるシステムです。システムを導入することによって、倉庫内の情報を一元管理することができるため、在庫管理はもちろんのこと品質管理も効率的に行なえます。
WMSにご興味のある方は、実際の製品をご覧になってみてはいかがでしょうか。以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
製薬会社のグローバル化を支援するWMS(倉庫管理システム)
医薬品の倉庫管理システム選択の場合は、GDP、GMP、PIC/S対応の確認が必要になっています。
PIC/Sはヨーロッパで発足した組織で、現在ではワールドワイドに活動を広げ、世界基準となっています。日本国内の製薬会社も輸出の有無にかかわらず、順守が求められます。規制や負荷が増えるように思えるかもしれませんが、これはビジネスチャンスでもあります。
新薬承認期間の短縮、公的機関の査察の免除、ダブルスタンダード(基準が国内と海外で異なること)の解消、経費の削減、使用者の保護・安心・安全性の確保などの効果があるからです。これを機にWMSを導入して、グローバル化の対応を行っていってはいかがでしょうか。
