BIツール導入時における要件定義の失敗例
BIツールを導入する際の要件定義に失敗する例は少なくありません。ここでは2つの失敗例を紹介します。
- 基幹システムと連携できなかった例
- ある企業は、基幹システムのリプレイスとデータウェアハウスの導入を同時に進行していました。ところが、いざデータウェアハウスを導入してみると、基幹システムの一部のデータと連携できないことが判明しました。データウェアハウスに求められる機能や特徴を、IT部門の担当者が充分に理解していないのが原因だったといいます。
- IT部門に要件定義を任せきりにした例
- ある企業は、ユーザー部門がIT部門にBIツールの要件定義を一任していました。本来の業務に加え、BIツールの導入プロジェクトにまで労力を割く余裕が無かったためです。IT部門はユーザー部門から提供された資料を基に要件定義を行いました。しかし、結局ユーザー部門が望むような仕上がりにはならず、使いづらいツールになったといいます。

BIツール導入時における要件定義のステップ
BIツールを導入する際の要件定義はどのように進めれば良いのでしょうか。3つのステップに分けて見ていきましょう。
1.分析対象・情報の明確化
BIツールは情報を分析し、それを行動につなげるためのツールです。したがって、まずはどのような情報を分析するのかを明らかにしましょう。
このとき、分析対象はユーザーの目線で明らかにする必要があります。IT部門は、ユーザー部門に日々の業務から分析したい情報を洗い出してもらいましょう。
また、その際には「BIツールの導入により何を改善したいのか」を考えることが重要です。たとえば、売上を高めたいのであれば、分析対象は売上金額や売上数量などになるでしょう。
2.切り口・数値の設定
続いて、情報を分析する切り口と、分析対象である数値を定めます。たとえば、売上を商品が売れた時期別に分析したいのであれば「年」や「月」が切り口です。そして、このときの数値は「売上金額」となります。
そして、切り口や数値を分類しましょう。たとえば、切り口の「年」や「月」は同じ「時間」の次元として分類可能です。一方、数値は「売上金額」「売上数量」などを同じ「売上実績」として分類できます。逆に、「売上予測」は「売上金額」や「売上数量」とは分析の切り口などが異なるため、同じものとして分類できません。
IT部門はこうした分類を基にモデルの草案を作りましょう。そして、それを基にユーザーにヒアリングを行い、意見を擦り合わせます。
3.データ取得先の決定
最後に、分析したいデータをどこから得るのかを定めます。IT部門は、BIツールの導入によって分析したい対象やその切り口と、既存システムとの対応について確認しましょう。
もっとも理想的なのは、ETLやDWHといったシステムとBIツールでデータを全面的に統合できることです。これらを導入済みの場合だけでなく、これから導入する予定がある場合もBIツールとの連携が可能かどうかよく考えなければなりません。
BI導入時における要件定義のポイント
BI導入時に完璧な仕様を目指そうとする企業は少なくありません。しかし、こうした完璧主義は失敗を招く要因になります。なぜなら、完璧がどのような状態であるかは、ビジネス環境の変遷に伴ってすぐに変化するからです。
そのため、BIツールを導入する際、必要最低限の機能を盛り込めたらまずは実際に導入してみましょう。一度導入してその効果をユーザーに実感してもらえれば、スムーズに社内に定着させられるでしょう。要望が出ればさらに付け加えて行けばよいだけです。初めにどれほど完璧にしても、こういった新しい要望への対応は避けられません。
さらに、自社だけで要件定義を行うのが難しい場合は、コンサルタントから支援を受ける手もあります。単に要件定義のサポートが受けられるだけでなく、目的の設定や導入後の運用までの支援を行ってくれるサービスもあります。
BIツールの要件定義を正しく行い、導入を成功させよう!
BIツールの要件定義は、IT部門がユーザー部門のニーズを的確に把握できずに失敗する例が多いです。こうした失敗を避けるには以下の手順で要件定義を行いましょう。
- 1.分析対象・情報の明確化
- 2.切り口・数値の設定
- 3.データ取得先の決定
また、BIツール導入時の要件定義におけるポイントは以下のとおりです。
- ■初めから完璧を目指さない
- ■支援サービスの利用も視野に入れる
以上を踏まえ、適切な要件定義を目指しましょう。
