従来型BIツールを運用する上での課題
既存のBIツールで運用の主体となっているのは、情報システム部門です。定期的なレポートを作成したり、グラフィカルなダッシュボードを提供したり、といった作業が情報システム部門の専門家の手で行われています。業務部門に所属する現場の人間が、直接分析を実行することはありません。
ここで課題となるのが、レポートやダッシュボードの分析用データの運用です。レポートやダッシュボードでは、素早く提供するため使用するデータが固定されています。現場で必要となったデータが含まれていないことがあり、「データの正確性を重視すると意思決定が遅れる」「スピードを重視すると不完全なデータで意思決定を行わなければならない」といった相反するケースも生じています。
また企業によっては、業務部門の担当者が個別に要求した内容のデータ分析を、情報システム部門が行っています。しかし、このようなリクエストが増加してくると分析結果を得るまでに時間がかかるようになってしまいます。
セルフサービスBIとは
従来のBIツールの問題点を解決するために登場したのが「セルフサービスBI」です。セルフサービスBIは通常のパソコンにインストールして使うことが可能なツールです。直感的に操作できるGUIを採用しているので、トレーニングを受けなくてもすぐに利用できるようになっています。
既存のBIツールと比較してデータを迅速かつ少ない労力で分析できる「セルフサービスBI」は、「データディスカバリツール」や「データビジュアリゼーションツール」とも呼ばれ、多くの企業で導入が進んでいます。
現場目線で使える!セルフサービスBIの特徴
セルフサービスBIは現場による現場のためのBIツールです。では、どんな特長があるのでしょうか。詳しく説明していきます。
特長(1)自らダッシュボードを作成できる
「ダッシュボード」とは、飛行機などに見られる機材で操縦用の計器の一覧のことをいいます。BIツールのダッシュボードは、様々な経営データをが視覚的にビジュアル表示してされ、正しい経営判断を支援する機能です。
BIツールが日本に紹介された当初は、情報システム部門が経営層のためのダッシュボードを作成して提供していました。セルフサービスBIでは、このダッシュボードを現場の利用者が自ら作成できます。自分に必要なデータを集め、それらをグラフ化し、モニターできるのです。必要に応じて表示するデータも柔軟に変更ができます。
特長(2)操作性が良く直感的に使える
セルフサービスBIは、現場のエンドユーザー自らがダッシュボードを作成できますが、操作が難しくては使いこなすことができません。
そのため、セルフサービスBIは、直感的に使って瞬時に見たいデータにたどりつくことができる操作画面になっています。また、必要なデータについて次から次へと連想的に探索を繰り返すことができる機能も盛り込まれています。
特長(3)種類や容量を問わずに分析できる
これまでは、現場の担当者が専門のBIツールに頼ることなく分析しようとすると、Excel(エクセル)を利用するのが一般的でした。エクセルには分析用の機能が豊富に用意されているものの、分析が目的のアプリケーションではありません。
そのため、扱えるデータの種類が限られます。例えば、Web上からSNSデータを取り込むことは簡単にはできまません。また、入力できるデータ容量も限られているので、大きなデータを保存するとなると動作が遅くなります。一方、セルフサービスBIはデータの種類や容量にとらわれることなく、自在に分析できるのです。
特徴(4)手軽にメンテナンスできる
作成したグラフの参照元データの変更などは、従来のBIツールでは情報システム部門など、専門的知識のある担当者にメンテナンスを依頼する必要がありました。しかしセルフサービスBIでは、データ連携の設定などもユーザー自ら簡単に行うことができ、必要な情報を必要なときにすぐその場で手に入れることができるのです。
従来のBIとセルフサービスBIの違い:使い勝手の良さ
では、セルフサービスBIは、従来のBIとどう違うのでしょうか。端的に言うならば、それはエンドユーザーにとっての使い勝手の良さであると言えるでしょう。
従来型のBIツール:仕様外のデータ処理は手間がかかる
従来のBIツールは、事前に仕様をきっちり決めてから作らなければならず、エンドユーザーへは、事前に決められた仕様でのデータ抽出・レポート出力という条件付きとなることが一般的です。もし、エンドユーザーが求めるデータ要件が、ツールで対応できない場合は、ツールからデータを出力し、ユーザーが加工する必要がありました。
セルフサービスBI:エンドユーザーでも柔軟に作業できる
一方、セルフサービスBIは、エンドユーザー自身が必要とする様々なデータ取込みやデータ結合ができるほか、抽出項目やレポートのレイアウトをカスタマイズできる、比較的容易に操作性できる、視覚性に優れた表示のユーザーインターフェースなど、専門家でなくても使える機能が盛り込まれていることが特長です。
エンドユーザーが直感的な操作で瞬時に見たいデータにアクセスすることができ、次々と連鎖的にデータの検索を繰り返すことができます。その結果、漠然としたニーズから具体的な課題を発見できたり、現場が抱える課題に対し、データを基に解決策の立案ができるようになったりします。

2つのツールの違いは「ユーザーの使い勝手の良さ」にある
ニーズの具体化や現場の課題を解決するためには、業務部門の担当者が直接BIツールを操作することが必要になります。しかし、BIツールは高度な専門知識がなければ的確なデータ分析を実行することができず、「分析用ツールがあるのに業務に必要な分析を行えない」という問題が発生していました。
セルフサービスBIは従来型のBIツールとは異なり、業務部門に所属する担当者が必要なときに直接ツールを操作して分析を実行できます。操作で要求されるのはどのデータを「見える化」したいか選択することです。そのデータが「どこに」「どのように」格納されているかを考えてデータベースを操作するなどの専門知識がなくても利用できるのです。
このようにユーザーの使い勝手がよいということが従来型のBIと最も違う点といえます。
\ BIツール の製品を調べて比較 /
製品をまとめて資料請求!
資料請求フォームはこちら
資料請求した製品の比較表が無料で作成できます
セルフサービスBIの活用メリット
セルフサービスBIのメリットを具体的に見ていきましょう。
見たいデータをすぐに見ることができる
これまでのBIツールでは、集計されたレポートから「何らかの傾向」をつかむまでしかサポートされていません。しかしセルフサービスBIがあれば、集計されたデータだけでなく個々の明細データにアクセスできます。気になるデータを直接確認することで、自分で問題を特定、明確化することが可能です。
グラフ作成の手間がなくなる
セルフサービスBIでは、データを選択するだけで必要なグラフを表示することが可能です。Excelなどを使った分析における表とグラフ作成の労力が必要なくなるため、分析に集中でき、よりよい成果をあげられるでしょう。
また、セルフサービスBIの中には、簡単な質問を投げかけることでグラフを自動生成してくれるものもあります。こういった方向性で製品が進化していけば、高度な分析に要する時間が短くなっていくはずです。
グラフの軸を簡単に変更できる
BIツールによるダッシュボードのグラフでは、軸となるデータが限定されています。一方「セルフサービスBI」なら時間や地域、製品、顧客などあらゆるデータを軸にしてグラフを表示できます。この環境では担当者が自ら仮説を構築し、その場で検証するという効率的な分析作業が行えます。
【職種別】セルフサービスBIの活用事例
セルフサービスBIが実際にどう使われているか、様々な事例を参考に代表的なケースを2つ紹介します。
セールスマネージャーの活用例
A社では、販売グループの実績を管理・分析するためにセルフサービスBIを導入しました。マネージャーが出社後PCを起動すると、モニター上にダッシュボードが現れ、昨日までの売り上げやKPIの実績がすぐに分かるようになっています。
ダッシュボード形式のため、ひと目で売上目標の達成状況が把握でき、すぐに部下に対して指示を出すこともできます。このように、A社では販売上の迅速な課題発見と解決にセルフサービスBIを活用しています。
企画担当者の活用例
B社では、経営計画や新サービスを立案する企画部門にセルフサービスBIを導入しました。自社のシステムからのデータ以外に、Web上からSNSデータを取り込んだり、国税調査のデータなどをダウンロードして利用しています。セルフサービスBIは、新たなアイディアの創出や経営企画に活かされています。
セルフサービスBIを比較検討しよう
このように従来型のBIツールが実際に利用されている現場のニーズを反映して進化したといえる「セルフサービスBI」ですが、同じ「セルフサービス」というコンセプトでも製品によって特徴が異なります。導入検討においては、製品の特徴を正しく理解して比較検討することが重要です。
関連記事
watch_later
2023.02.16
【2023年版】BIツール比較!最新ランキングや比較表あり
続きを読む ≫