セルフサービスBIとは
従来のBIツールの問題点を解決するために登場したのが「セルフサービスBI」です。セルフサービスBIは通常のパソコンにインストールして使用します。直感的に操作できるGUIによって、トレーニングを受けなくても誰でもすぐに利用可能です。
既存のBIツールと比較して、データを迅速かつ少ない労力で分析できる「セルフサービスBI」は、「データディスカバリツール」や「データビジュアリゼーションツール」とも呼ばれ、多くの企業で導入が進んでいます。
現場目線で使える!セルフサービスBIの特徴
セルフサービスBIは現場による現場のためのBIツールです。では、どんな特徴があるのでしょうか。
自らダッシュボードを作成できる
「ダッシュボード」とは、飛行機などに見られる機材の一つで、操縦用計器の一覧のことをいいます。BIツールのダッシュボードは、さまざまな経営データが視覚的に表示され、正しい経営判断を支援する機能です。
BIツールが日本に紹介された当初は、情報システム部門が経営層のためのダッシュボードを作成していました。セルフサービスBIでは、このダッシュボードを現場の利用者が自ら作成できます。自分に必要なデータを集め、それらをグラフ化し、モニターできるのです。必要に応じて表示するデータも柔軟に変更可能です。
操作性がよく直感的に使える
セルフサービスBIは、現場のエンドユーザー自らがダッシュボードを作成できますが、操作が難しくては使いこなせません。
そのため、セルフサービスBIは、直感的に使って瞬時に見たいデータにたどりつける操作画面になっています。また、必要なデータについて次から次へと連想的に探索を繰り返せる機能も盛り込まれています。
種類や容量を問わずに分析できる
これまでは、現場の担当者が専門のBIツールに頼ることなく分析しようとすると、Excel(エクセル)を利用するのが一般的でした。Excelには分析用の機能が豊富に用意されているものの、分析が目的のアプリケーションではありません。
そのため、扱えるデータの種類が限られます。例えば、Web上からSNSデータを取り込むことは簡単にはできまません。また、入力できるデータ容量も限られているので、大きなデータを保存するとなると動作が遅くなります。一方、セルフサービスBIはデータの種類や容量にとらわれることなく、自在に分析できるのです。
手軽にメンテナンスできる
作成したグラフの参照元データの変更などは、従来のBIツールでは情報システム部門など、専門的知識のある担当者にメンテナンスを依頼する必要がありました。しかしセルフサービスBIでは、データ連携の設定などもユーザー自ら簡単に行え、必要な情報を必要なときにすぐその場で手に入れられるのです。
従来のBIとセルフサービスBIの違い:使い勝手のよさ
では、セルフサービスBIは、従来のBIとどう違うのでしょうか。端的にいうならば、それはエンドユーザーにとっての使い勝手のよさであるといえるでしょう。
従来型のBIツール:仕様外のデータ処理に手間がかかる
従来のBIツールは、事前に仕様をきっちり決めてから作らなければならず、エンドユーザーへは、事前に決められた仕様でのデータ抽出・レポート出力という条件付きとなることが一般的です。もし、エンドユーザーが求めるデータ要件がツールで対応できない場合は、ツールからデータを出力し、ユーザーが加工する必要がありました。
セルフサービスBI:エンドユーザーでも柔軟に作業できる
一方、セルフサービスBIは、エンドユーザー自身が必要とするさまざまなデータ取込みやデータ結合に対応するほか、抽出項目やレポートのレイアウトをカスタマイズできる、比較的容易に操作性できる、視覚性に優れた表示のUIを利用できるなど、専門家でなくても使える機能が盛り込まれていることが特徴です。
エンドユーザーが直感的な操作で瞬時に見たいデータにアクセスでき、次々と連鎖的にデータの検索を繰り返せます。その結果、漠然としたニーズから具体的な課題を発見できたり、現場が抱える課題に対し、データをもとに解決策の立案ができるようになったりします。
2つのツールの違いは「ユーザーの使い勝手のよさ」にある
ニーズの具体化や現場の課題を解決するためには、業務部門の担当者が直接BIツールを操作する必要があります。しかし、BIツールは高度な専門知識がなければ的確なデータ分析を実行できず、「分析用ツールがあるのに業務に必要な分析を行えない」という問題が発生していました。
セルフサービスBIは従来型のBIツールとは異なり、業務部門に所属する担当者が必要なときに直接ツールを操作して分析を実行できます。操作で要求されるのはどのデータを「見える化」したいか選択することです。そのデータが「どこに」「どのように」格納されているかを考えてデータベースを操作するなどの専門知識がなくても利用できるのです。
このように、ユーザーの使い勝手のよさが従来型のBIと最も違う点といえます。
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従来型BIツールを運用するうえでの課題
既存のBIツールで運用の主体となっているのは、情報システム部門です。定期的なレポートを作成したり、グラフィカルなダッシュボードを提供したり、といった作業が情報システム部門の専門家の手で行われています。業務部門に所属する現場の人間が、直接分析を実行することはありません。
ここで課題となるのが、レポートやダッシュボードの分析用データの運用です。レポートやダッシュボードでは、素早く提供するため使用するデータが固定されています。現場で必要となったデータが含まれていないことがあり、「データの正確性を重視すると意思決定が遅れる」「スピードを重視すると不完全なデータで意思決定を行わなければならない」といった相反するケースも生じています。
また企業によっては、業務部門の担当者が個別に要求した内容のデータ分析を、情報システム部門が行っているでしょう。しかし、このようなリクエストが増加してくると分析結果を得るまでにさらに時間がかかってしまいます。
セルフサービスBIの活用メリット
セルフサービスBIのメリットを具体的に見ていきましょう。
見たいデータをすぐに確認できる
これまでのBIツールでは、集計されたレポートから「なんらかの傾向」をつかむまでしかサポートされていません。しかしセルフサービスBIがあれば、集計されたデータだけでなく個々の明細データにアクセスできます。気になるデータを直接確認することで、自分で問題を特定し、明確化も可能です。
グラフ作成の手間がなくなる
セルフサービスBIでは、データを選択するだけで必要なグラフを表示可能です。Excelなどを使った分析における表とグラフ作成の労力が必要なくなるため、分析に集中でき、よりよい成果をあげられるでしょう。
また、セルフサービスBIには、簡単な質問を投げかけることでグラフを自動生成してくれるものもあります。こういった方向性で製品が進化していけば、高度な分析に要する時間が短くなっていくはずです。
グラフの軸を簡単に変更できる
BIツールによるダッシュボードのグラフでは、軸となるデータが限定されています。一方セルフサービスBIなら、時間や地域、製品、顧客などあらゆるデータを軸にしてグラフを表示可能です。この環境では担当者が自ら仮説を構築し、その場で検証するという効率的な分析作業が行えます。
データを活用する文化が形成される
セルフサービスBIの導入によって、組織内でのデータ活用文化が促進されるでしょう。従業員が確認すべきすべてのデータにアクセスし、自分で分析できるようになると、データをもとにした意思決定が日常的なものとなります。情報共有もしやすくなり、改善点も見つけやすくなるでしょう。
データの管理がしやすくなる
セルフサービスBIでは、データのソースが一元管理されるため、データの整合性と品質が保たれます。そのため、従業員が分析に使用するデータは、常に最新かつ正確であることが保証されます。特に、従来は各部署で独立したデータを扱っていた場合でも、一元管理によって管理が楽になり、工数削減にもつながるでしょう。
また、データアクセスの権限も管理できるため、機密情報のセキュリティも問題ありません。
セルフサービスBIの導入によるデメリットと課題
セルフサービスBIを導入することによるメリットは多いものの、いくつかのデメリットも存在します。次に、導入によるデメリットと課題を紹介します。
データ分析には相応のスキルが求められる
セルフサービスBIは、非技術者でもデータ分析が行えるよう設計されていますが、それでも有効な分析を行うためにはある程度のスキルが必要です。
例えば、データの前処理や分析手法の選択、結果の解釈には、基本的な統計知識やビジネスに関する理解が求められます。従業員にこれらのスキルが不足している場合、分析結果の誤解釈や間違った意思決定につながるリスクがあるでしょう。
組織全体で分析における基準を設ける必要がある
セルフサービスBIを導入する際には、組織全体でデータ分析の方法論や指標の定義を統一する必要があります。これが不足していると、部門や個人ごとに異なる分析基準や解釈が生まれ、結果の比較や共有が困難になります。
例えば、ある部門では顧客満足度を「再購入率」で測定しているのに対し、別の部門では「顧客アンケートのスコア」で評価していると、全社的な顧客満足度の把握が難しくなるでしょう。
そもそも導入する必要がない場合もある
セルフサービスBIの導入は多くの場合、組織に大きなメリットをもたらしますが、すべての組織に必要なわけではありません。
例えば、小規模なビジネスやスタートアップでは、シンプルなデータ分析で十分な場合もあります。また、データ駆動型の意思決定がそれほど頻繁に行われない組織では、高度なBIツールの導入コストがその利益を上回る可能性もあるでしょう。
このように、組織のニーズや現状を正しく評価しないまま導入を進めると、不必要な投資やリソースの浪費につながることがあります。
セルフサービスBIの活用事例
セルフサービスBIが実際にどう使われているか、具体的な事例を紹介します。
広告業での活用例
バリューコマース株式会社では、運用している広告の実績や最新のレポーティング結果を見るためにBIツール「Yellowfin」を導入しました。導入前はそれぞれの広告運用担当者が数値を管理しており、経営陣が実績を見るためには都度担当者が管理している数字を集計する必要がありました。
BIツール「Yellowfin」を導入してからは、経営陣が実績を見たいタイミングで常に最新のレポーティングが見られるようになり、担当者によって更新日がずれてしまうといった課題もなくなりました。
さらに、すべてのデータを全社員が閲覧できるようになり、情報共有スピードも向上。業務改善の提案もしやすくなりました。また、見るべき指標が標準化されたため、メンバー間のコミュニケーションミスも減り、ロジカルになったとのことです。
参考:Yellowfinの導入事例【バリューコマース株式会社 様】|ITトレンド
そのほか、具体的な部門別のBIツール活用シーンを以下の記事でまとめて公開しています。ぜひ参考にしてください。
セルフサービスBIを比較検討しよう
従来型のBIツールが実際に利用されている現場のニーズを反映して進化したといえる「セルフサービスBI」ですが、同じ「セルフサービス」というコンセプトでも製品によって特徴が異なります。導入検討においては、製品の特徴を正しく理解して比較検討することが重要です。
以下の記事では、セルフサービスBIをはじめおすすめのBIツールを比較しています。自社にあうツールを選ぶポイントも紹介しているのでぜひご覧ください。