そもそもBIとは何か
BIとはビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略で、企業や組織がデータに基づいた意思決定が行えるようにデータ活用を支援する取り組みのことです。BIは以下のような技術を組み合わせて行われます。
- ●ビジネス分析
- ●データマイニング
- ●データビジュアライゼーション
- ●データツール
- ●インフラストラクチャ
- ●ベストプラクティス
BIによるデータ活用の支援がしやすくなるよう、各データの集約や分析などを行うのがBIツールです。
BIツール(BIサービス)とは
BIツールとは、企業に大量に蓄積しているデータから必要な情報を集約・分析し、経営や業務に活用できるようにするツールのことです。近年、企業のビッグデータ活用が増えている中で、経営の意思決定や予算編成などのシミュレーションに役立てるため、BIツールを導入する企業が増えています。BIシステムと呼ばれることもあります。
BIツールの導入目的【ユーザー別】
ここでは、経営層と一般ユーザーにわけて、BIツールの導入目的例を紹介します。
- ■経営層:データを統合して経営に活かす
- リアルタイムで社内データを確認し、グラフ化などの加工機能で経常利益率や売上などの経営指標を可視化する。売上予測のシミュレーションも可能なので、データから消費者のニーズや市場動向などを予測し、経営に活かせる。
- ■一般ユーザー:わかりやすいデータの分析に活かす
- 複数のデータを「クロス分析」や「回帰分析」といった方法で分析し、レポーティングする機能を搭載。スキル不要で膨大なデータをわかりやすく加工し、データ間の関連性や傾向を見出すことが容易になる。
以下の記事では、BIツールのおすすめ製品を比較して一挙紹介しています。具体的な製品情報と照らし合わせて検討を進めたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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BIツールの種類とできること【図解】
BIツールは、レポーティングツール・OLAP分析ツール・データマイニングツール・プランニングツールの4つにわけられます。ここではそれぞれの特徴と、導入効果について紹介します。
レポーティングツール
レポーティングツールは、いかに素早くタイムリーに問題の兆候を発見できるかを目標とするツールです。企業のあらゆる活動の履歴データからパフォーマンスを計測し、監視します。企業活動に何らかの異常が認められた場合、即座に状況の評価と分析が行われ、手遅れになる前に対処を施して軌道修正します。
▼活用例 |
|
『BIツールで作成したWebレポートを、経営者や中間管理者などがブラウザ上から確認できるようになり、情報の共有化が促進した。』 |
OLAP分析ツール
問題の要因を深く掘り下げ、検証を行うのがOLAP分析ツールの目的です。OLAPとは「Online Analytical Processing(オンライン分析処理)」の略であり、蓄積したデータベースをさまざまな角度から解析して問題点や解決策を発見します。
経営において何か問題が起こった場合、問題点を分析し修正するための意思決定を行う必要があります。OLAP分析ツールは、意思決定プロセスに必要な問題点の分析や検証を的確に実施できるツールです。
▼活用例 |
|
『OLAP分析の結果、ある店舗での突出した売り上げの要因が、同日の近くでのイベント開催であったことが判明した。』 |
データマイニングツール
リポーティングツールとOLAP分析ツールは、ある定められた数値や目標に対してずれが生じた場合の検証が目的でしたが、データマイニングツールは問題への対処のヒントを得るために使用されるものです。
対処のヒントを得るために、データマイニングツールはさまざまなデータから使えそうな未知の関係や傾向などを探して分析します。クロス分析・相関分析・回帰分析などの手法が取られ、経営においてはこれらの分析データを用いて対処策を実行します。
▼活用例 |
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『休日のネットショップ利用者数が大幅に減少していた。データマイニングツールの分析結果により、その要因の一つとして、天気や時季に密接に関係していることがわかった。』 |
プランニングツール
プランニングツールは経営層による予算編成に役立つツールで、計画の根拠を得るために使用されます。過去実績データの分析やシミュレーションの結果を活用して、予算計画などに反映します。
▼活用例 |
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『トップダウン予算を作成する際に、為替や需要の予測を行い、全体の利益や売り上げがどうなるかをシミュレーションできるようになったため、予算計画がより具体的で確実性を帯びるようになった。』 |
BIツールとExcelの違い
BIツールもExcelも、データから表やグラフを作成し、企業活動での意思決定で役立てるという点では同じようなツールに見えるかもしれません。しかし、BIツールとExcelでは以下のようにできることの幅が異なります。Excelにはできず、BIツールにできることは以下のとおりです。
- ●大量のデータを分析できる
- ●異なるデータソースを組み合わせて分析できる
- ●情報をリアルタイムで更新・共有できる
BIツールとExcelの違いについては、以下の記事をご覧ください。
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BIツールとERP・DWH・ETLの違い
BIツールと並んでよく聞く言葉として、ERPやDWH、ETLがあります。それぞれの意味は以下の通りです。
- ■ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)
- 会計や生産など企業に存在する複数のデータを統合し、一つのデータベースとして管理するシステム。統合基幹業務システムとも呼ばれている。
- ■DWH(Data WareHouse:データの倉庫)
- DWHとは、社内のさまざまなデータを活用するために、複数のシステムからデータを取得して、最適な形式で蓄積するシステム。
- ■ETL(Extract:抽出/Transform:変換/Load:格納の略)
- 複数のシステムからデータの抽出、変換、書き出しを行うシステム。DWHに複数システムのデータを書き出すために利用される。
これらERPやDWH、ETLに統合されたデータを集計・可視化し、分析できるようにするのがBIツールです。各ツールの特徴や概要についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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ビジネスシーンでのBIツール活用事例
BIツールはビジネスシーンにおいて、以下のような場面で活用されています。
- ●経営・財務分析
- ●営業・売上分析
- ●人事データ分析
- ●勤怠・残業分析
- ●予実管理
- ●帳票作成自動化
それぞれの活用事例について詳しく解説します。
経営・財務分析
BIツールは企業の財務データの集計や経営資料の自動作成が可能です。そのため、経営分析や財務分析で活用される事例が多くあります。Excelなど手作業でデータ集計や資料作成をするのに比べて迅速にデータの分析結果を活用できるようになるため、企業の財務状況がリアルタイムに把握でき経営判断に活かせます。
営業・売上分析
BIツールはSFAやCRM、販売管理システムなど営業や売上に関わるさまざまなシステムから横断的にデータを集計・分析できます。複数システムのデータから顧客属性や売上傾向などを把握できるため、より効果的な営業戦略の企画・実行が可能です。また、従業員の経験に頼るところが多く属人化しがちな営業業務を分析・共有することで、企業の体制強化にもつながるでしょう。
人事データ分析
BIツールを活用することで、社内の人事データや人材育成状況、スキルマップなど人事に関するデータの分析も可能です。自社内の人材情報や人事課題が迅速に把握できるため、将来予測や人材配置、人材育成計画や採用計画の立案にも役立ちます。また、生産性や賃金の妥当性も判断可能なため、人事評価の改善や待遇の適切化にも貢献するでしょう。
勤怠・残業分析
BIツールは勤怠データの集計・分析も可能なため、残業状況の把握に活用できます。近年は働き方改革に対応するために、従業員の残業削減への取り組みを重要視している企業も少なくありません。残業状況を正確に把握することで、業務上の問題改善や管理体制の構築に取り組みやすくなるでしょう。
予実管理
BIツールを活用することで社内の複数システムのデータを横断的に集計・分析できるため、予算管理業務の効率化に役立ちます。予算管理に必要な情報は原価管理や購買情報など多岐にわたり、データの集計や資料作成は手間のかかる業務です。BIツールは自動でデータの集計・分析と資料作成が可能なため、業務が効率化でき迅速な予算状況の把握ができます。
帳票作成自動化
BIツールは複数システムのデータを横断的に活用できるため、社内のさまざまな帳票作成の自動化が可能です。それぞれのシステムから個別にデータを抽出し、Excelを用いてデータの集計・分析をして帳票を作成していると、各帳票の作成に時間がかかります。また、「Excelのマクロが使えない」などスキルの問題で業務が属人化する場合もあるでしょう。BIツールを活用することで各帳票の作成を自動化できるため、業務効率化と属人化解消に効果的です。
以下の記事では、BIツールの活用ポイントについてさらに詳しく解説しています。部署別の活用事例も紹介しているので、より具体的にBIツールの活用方法を知りたい方は参考にしてください。
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BIツールの導入メリット
BIツールを導入することで、経営分析や売上分析が容易になります。BIツール導入の具体的なメリットは、以下のとおりです。
- ●社内のデータが集約され、管理がしやすくなる
- ●レポートを作成する手間が省ける
- ●迅速な経営判断が行える
- ●課題の早期発見、早期解決につながる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
社内のデータが集約され、管理がしやすくなる
BIツールによっては基幹システムから分析用データを抽出・加工し、分析用データベースに格納するETL機能も備えています。Excelなどのファイルで管理していたデータが統合され、活用しやすくなるでしょう。さらに、データが集約されることによって各部署の状況をまとめて可視化できます。
レポートを作成する手間が省ける
レポート出力・デザイン機能があれば、既存帳票に合わせた運用も容易です。上司への報告に使うレポートや定型帳票をBIツールで作成・共有できるため、Excelでレポートを大量に作る必要がなくなります。日々のルーティンワークの大幅な効率化が可能になるでしょう。
迅速な経営判断が行える
外出の多い経営層にとって、移動時間などを使ってモバイルデバイスから必要な情報に安全にアクセスできることは大きなメリットでしょう。また、配信機能やアラート機能は、意思決定のスピードを早め、正しい判断を支援します。
課題の早期発見、早期解決につながる
BIツールを活用することで、企業内のデータ分析を迅速に行えるようになり、課題の早期発見が可能になります。また、BIツールは人が気づかないようなデータの関連性や異変を検知することもできます。このように人力では難しいデータの分析を迅速に行えるため、課題の早期解決にもつながることがメリットです。トラブルや機会損失防止にも役立つでしょう。
BIツールの導入デメリット
BIツールを導入することでさまざまなメリットを得られますが、自社の企業規模や業務に適したBIツールを導入しないと、ツール導入がデメリットになってしまう場合があります。自社に適さないBIツールを導入してしまうと、運用体制にあわず社内に定着しなかったり、使いにくく従業員の作業負担が増すといったデメリットが発生するでしょう。
BIツールの導入前に運用体制を整備し、製品の特徴や機能、提供形態や料金プランなどをよく比較して選定することがおすすめです。
以下の記事では、BIツールのメリット・デメリットについてより詳しく解説しています。BIツールの導入効果や注意点についてさらに詳しく知りたい方は、あわせて参考にしてください。
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BIツールの基本機能
BIツールの基本機能は「データ分析」「レポート出力・デザイン機能」「ダッシュボード・モバイル対応」の3つです。ここでは、BIツールの主な機能を詳しく紹介します。
データ分析
BIツールは、基幹データベースなどから集積された分析用データベースのデータを用いて、誰でも最適な分析結果を得られます。データベースの操作を直接行うためには専門的なスキルが求められますが、適切にデータベースに接続されていれば、BIツールの操作や分析にはそれほど専門的なスキルは必要ありません。
ドラッグ&ドロップでデータを可視化
ドラッグ&ドロップでデータ項目を選び、出力したいレポートの形態を指示するなどシンプルな操作をするだけで、さまざまな切り口でデータの可視化が可能です。
ドリルダウンによりワンクリックでデータの詳細が見られる
BIツールでは多次元のデータ構造をもつ「キューブ(cube)」にデータを格納しておき、効率的な分析を実行できる製品もあります。
Excelであれば、もう一度最初から集計、レポート作成をしなければなりませんが、BIツールの分析方法としては「ドリルダウン」「ドリルアップ」などのデータの階層を掘り下げる操作が、レポート上のクリックだけで実現できます。
「キューブ」については、以下の記事で詳しく解説しています。より深く理解したい方はあわせて参考にしてください。
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スライシングによりデータから任意の2軸を取り出す
「スライシング(任意の2軸の集計表)」「ダイシング(スライシングの集計軸を入れ替える)」といった手法に対応しており、必要に応じて「ドリルスルー」による明細表示も可能です。また、予算編成などの業務に活用できる「シミュレーション」機能を搭載している製品もあります。
レポート出力・デザイン機能
BIツールには、定型レポート出力機能と非定型レポート出力機能、OLAPレポート機能などが備わっています。Webレポーティングに対応し、「PDF」「Excel」「Word」「PowerPoint」「CSV」など、各ファイルへのエクスポートにも対応しています。
レポートの表示画面や印刷するための帳票をデザインする機能もあり、現場に合ったデザインでの出力が可能です。
ダッシュボード・モバイル対応
BIツールの分析結果を視覚的にわかりやすく表示してくれるものに「ダッシュボード」機能があります。ダッシュボードはグラフや重要指標の一覧表示、クロス集計表などの表示に対応しています。
リアルタイムでの情報参照も可能で、分析データが可視化されることで現場の改善活動などのスピードが飛躍的に向上するでしょう。
BIツールでは、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイス用のネイティブアプリも提供されています。ネイティブアプリには、パソコンで作成したレポートをそのまま閲覧する機能やディスカッション・レポートの配信機能、アラートの設定機能などが搭載されている製品もあります。
BIツールはこんな企業におすすめ
BIツールは、経営層がスピーディーに意思決定をしたり、効率的な経営戦略を行ったりするためのツールです。主に、以下のような課題を抱えている企業に有効だといえます。
- ●一般社員が資料を作成する手間と時間を軽減したい
- ●各部署の現状を一目で確認できない
- ●社内で事業の進捗を共有したい
- ●専門家に頼らず必要なデータを抽出・分析・加工したい
- ●専門部署のシステムを横断してデータを分析したい
これらの課題を抱えている企業は、BIツールの導入を検討してみてください。
BIツール導入までのステップ
BIツールを導入する際の流れを紹介します。通常のシステム構築と大きな差異はありませんが、以下のステップを参考にしてください。
- ■利用トレーニングを行う
- BIツールは専門知識がなくとも簡単に運用できますが、ある程度データ分析の知識は必要になるため、ツール利用のためのトレーニングが不可欠です。
- ■活用する部署を決める
- どの部署がどのデータを活用するのかを経営陣や現場担当者と話し合い、BIツールを活用して解決したい課題と目的を明確化しましょう。
- ■要件定義から導入までのステップ
- 1:経営陣や現場スタッフなど、さまざまな立場から要望をもらう
- 2:利用ニーズから、どのようなデータや形式で活用したいかの要件定義をする
- 3:必要なデータを決める
- 4:リアルタイム or 日次なのかも含め、データの取得方法を定義する
- 5:実際にシステムを構築し、レポートのレイアウトまで設定する
近年話題の「セルフサービスBI」とは
セルフサービスBIとは、分析データを活用したい本人がBIツールを活用して、分析結果を出力できるBIツールのことです。従来のBIツールは異なるデータソースの数値を紐づける必要がありました。しかし、分析する人と分析データを活用したい人がそれぞれ異なるため、ほしいタイミングで分析データが得られなかったり、想定していた分析データが得られなかったりすることがありました。
そこで、分析データを活用したい本人がセルフサービスBIを用いてデータ分析することで、データ活用の促進化が可能になりました。難しい操作も少ないので、中小企業でも取り扱いやすいメリットがあります。
以下の記事では、セルフBIサービスについてより詳しく解説しています。セルフBIサービスに興味がある方は、あわせて参考にしてください。
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散在している情報を活用するために必要なBIツール
経営判断に効果的なデータを得るために重要なのが、扱うデータの質・量・鮮度です。BIツールを活用して膨大なデータを迅速に集計し正確な分析結果を得ることで、より的確で効果的な経営判断が可能になります。
BIツール導入による業務改善を成功させるには、自社の業務に適したBIツールを選定することも重要です。まずはBIツールを導入する目的や自社の課題を明確にし、製品を比較することからはじめるとよいでしょう。各社製品の資料請求をしてみて、どのようなBIツールがあるか詳しく知ることがおすすめです。