BIツールの市場規模
まずはBIツール市場が成長した背景を解説し、それを踏まえて2020年の市場規模を紹介します。
BIツール市場が成長した背景
BIツールは、1990年頃に米国で提唱され、DWH(データウェアハウス)で大量のデータが保存できるようになったことで、一気にその市場を拡大させてきました。日本では2000年代から、企業内で統合されたデータベースから情報を抽出し、迅速な経営判断を行うために、大企業を中心に利用する企業が増えました。
特に近年、成長を後押ししているのがビッグデータ活用のニーズの高まりです。市場の競争激化やマーケティング活動の複雑化などの課題を解決するために、企業内のデータ資産に注目が集まるようになりました。データドリブン経営といった、データ分析の結果をもとにした経営手法は、外資系やIT企業でよく取り入れられているでしょう。
ビッグデータの取り扱いには、それまでは情報システム部の担当者や分析の専門家の知識が必要でしたが、セルフサービスBIツールの登場によって誰でも簡単な操作でデータの加工や分析をできるようになったのです。
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2020年市場規模は3,977億、前年比114.2%の見込み
ミック経済研究所が2020年11月26日に発表した「ビジネス・アナリティクス市場展望 2020年度版」によると、2019年度の市場規模は3,484億円で13.5%増となっています。2020年度は3,977億円、前年度比114.2%と推測されています。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で需要予測のニーズが増え、テキストや音声データを活用する動きが活発になったことで市場の成長は好調です。
特にクラウド型の分析ツール・サービスは注目されており、2019年度は前年比22.9%増、2020年度は同41.2%増の見込みとなっています。クラウドBIツールなら、ネットワークにさえつながっていれば外出先にいる営業担当者もデータを参照し、その場で意思決定が行えるようになります。スマートフォンやタブレット対応のアプリを提供しているサービスも増え、ますます身近なツールとなるでしょう。
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2025年までに市場は7,368億へと成長
ミック経済研究所の調査では、2025年度までの年率平均成長率は13.3%増で、7,368億円に成長すると見込まれています。今後はコロナ禍での需要やサービスの変化、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や付随するアナリティクスおよびAI活用への取り組みがさらに広がっていき、BIツール市場にも大きく影響するでしょう。
参照:ビジネス・アナリティクス市場展望 2020年度版|デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社
BIツールのシェアは?人気製品ランキングを紹介
このように、BIツール市場は今後も成長し続けると予測されており、多くのベンダーからさまざまな製品が販売されています。TableauやOracle BIは、シェア率の高い製品として有名でしょう。ITトレンドでは、BIツールの人気製品ランキングを毎週更新して紹介しています。ご興味のある方は以下からご覧ください。
また、以下の記事ではおすすめのBIツールを特徴別に分類して比較しています。導入を検討中の方はぜひこちらもご覧ください。
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企業におけるBIツールの導入状況
では、実際に日本国内ではどのくらいの企業がBIツールを導入・活用しているのでしょうか。ガートナー社は、2019年3月に日本国内 (主に首都圏、大阪圏、名古屋圏) で働くビジネス・ワーカーを対象に調査を実施しました。
回答者の所属企業の従業員数規模については、2,000人以上:249件、1,000~1,999人:64件、300~999人:74件、300人未満:52件となっており、大企業からの回答が多くなっています。
74%の企業が導入済みだが個人の利用頻度にはばらつきがある
回答者の74%が自社でBIツールを利用していると回答し、大企業でのBIツール導入はかなり一般的になったと言えるでしょう。一方で、企業内の個人の回答結果に着目すると、利用頻度や利用に対する積極性には差が見られました。
自社でBIを導入しているという回答者のうち、最も多い割合の41%が全く利用していないと回答し、自身の分析ニーズによって積極的にに利用できているという回答者は35%にとどまりました。また、細かく利用頻度を尋ねたところ、BIツール導入企業において週1回以上BIツールを利用していると回答したのは全体の49%でした。
BIツールに対する不満は「難しく使いこなせない」が37%で最多
利用中のBIツールに対する不満を最大3つまで回答する設問については、「ツールの使い方が難しい、使いこなせない」という回答が37%と最多であり、続いて「パフォーマンスが低い、処理に時間がかかる」(27%)、「導入の有用性あるいは費用対効果を検証するのが困難」(22%) という結果になりました。
一方で、「提供される機能が足りない」「提供されるグラフなどビジュアルの種類が足りない」と回答したユーザーもそれぞれ20%程度を占め、利用している製品やユーザーのITリテラシーのレベルによって、2極化した結果となりました。
同社のマネージング バイス プレジデントの堀内 秀明氏は、「企業単位ではBIツールはかなり浸透したが、個人レベルでは、まだまだ浸透したとは言い難い。また個人によって利用頻度やデータ・リテラシーはバラバラであり、利用中のツールのタイプ、ユーザーの不満の有無、積極性、データ・リテラシー、サポート体制を確認して改善策を検討すべき」と述べています。
参照:ガートナー、企業におけるBIツールの導入状況に関する調査結果を発表|Gartner
そもそもBIツールとは
BIツールとは、企業に蓄積された膨大なデータを分析し、視覚的に表示できるツールです。社内でシステムごとに分散しているデータを集約して可視化するので、経営の意思決定に役立てることができます。
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BIツールの主な機能
BIツールには大きく4つの機能があります。機能ごとに詳しく見ていきましょう。
レポーティング
BIツールの基本的なアウトプットの機能です。分析、集計したデータをグラフなどで表示する機能です。「ダッシュボード」機能を利用して、複数のデータをより視覚的に確認することもできます。
OLAP分析
Online Analytical Processing(オンライン分析処理)の略で、特定の指標に対して要因を掘り下げ、検証を支援する機能です。この機能を利用すれば、分析の初心者でも簡単に「スライス分析」「ドリル分析」などが可能になります。
データマイニング
さまざまなデータから関係や傾向を探索するためのツールです。仮説を立てなくともBIツールが自動的にデータ間の法則などを発見してくれます。
プランニング
過去実績の分析と、その分析をベースにしたシミュレーションを実行し、計画の根拠を確認することを支援する機能です。経営層による意思決定の大きな味方になります。
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「BIツール」と「BAツール」の違いは意思決定への関わり方
BIツールとよく似た言葉で「BAツール」という製品があります。BAツールは、BIツールと同様に企業に蓄積されたデータを分析することができるツールです。
BIツールとの違いは、過去データの分析だけでなく未来の予測まで行うことができ、主体的に意思決定に関わる点でしょう。企業へのBAツールの導入も徐々に増えてきていますが、BIツールよりもシェアは低い状況です。
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BIツール導入前に押さえるべきポイント
BIツールは今後も導入企業が増えていくことが想定されます。しかし、導入状況の調査の回答にもあったように、自社内でうまく活用できず失敗してしまうケースも多いので導入前に確認しておくべきポイントを2つ紹介します。
1.導入の目的と使用ユーザーの想定
BIツールは、経営層から現場まで幅広い部署で利用できます。そこで大切なのは、「どの部署で誰がどのように」活用するのかを明確に決めておくことです。
例えば、「調達部門で為替の変動に合わせた仕入れ価格のシュミレーションを行い予算を作成する」「営業部門で、営業担当者ごとの売上とKPIを可視化する」などを決めておきましょう。毎日確認するのか、週次か会議で発表するのかなど活用のシーンもイメージしておくと運用がスムーズです。
2.操作性と必要な分析のレベルの確認
BIツール活用で成果を上げるためには、データの取り扱いやすさや、アウトプットの形式が重要です。デモやお試し版で、実際に使用予定のユーザーに操作してもらい確認しましょう。
またツールによって、レポーティングが得意なツールや、データマイニングが得意なツールなど特徴が分かれます。自社の導入目的に合わせて、必要な機能があるかどうか、満足いく分析が可能かどうかを比較しましょう。
自社に合った製品を導入しよう
BIツールの市場規模は拡大し、導入企業は今後も増え続けると予想されます。しかし、導入後にユーザーから不満の声が上がることも多く、製品比較はしっかり行う必要があると言えます。自社の選定基準を整理した上で、自社に合ったBIツールを導入しましょう。