BIツール導入の失敗例と原因
BIツールを導入しても、必要な分析結果が出せなかったり、使われずに放置されていたりといった場合が多くあります。BIツール導入前の準備が不十分であることが原因です。
ここでは、BIツール導入失敗の具体例を挙げ、原因を詳しく解説します。
利用目的が漠然としている
BIツールは利用方法が多岐に渡ることから、利用目的や業務での活用イメージが不明確なまま導入して失敗してしまうケースがあります。BIツール以外の多くの業務用システムは、利用目的が比較的明確であり、できることの範囲も限られています。導入後の活用イメージをもちやすく、使用するだけで導入目的の達成につながる場合が多いでしょう。
一方、BIツールはデータ分析した情報を経営や戦略に役立てることを目的としたツールです。さまざまなデータを分析し可視化できるため用途は幅広く、どのように活用するのか自社で設定する必要があります。導入目的が曖昧なまま製品選定をしてしまうと、自社の目的達成・課題解決に適していない製品を選択してしまう恐れがあります。導入しても効果的に活用できず、結果としてBIツールを使いこなせていない状態になるでしょう。
使えないシステムと判断される
多くの業務用システムは比較的用途がわかりやすく、現場の業務効率化に直結しています。そのため一度業務に最適化して使い方が定まると、常に同じ操作方法で活用される傾向が強く、システムの必要性が認識されやすいでしょう。
一方でBIツールは分析ツールという性質上、現場の業務に直結しているシステムではないため、利用されなくても業務遂行における支障は見えにくい面があります。その結果、BIツールを活用する従業員がいなくなり「使えないシステム」という印象をもたれてしまうようです。
BIツールが扱う業務は多岐に渡り、使い方も外部環境の変化などに応じて変わります。そのため、導入担当者と利用者が異なっていたり、使い慣れた従業員が異動や退職などで不在になったりすると、誰も利用しないシステムとして放置されてしまいがちです。
投資コストに見合わない
BIツールの多機能性と柔軟性が理解されず、一部のレポート作成でしか利用されないと、BIツールが特定のレポート作成システムとして認識されてしまうことがあります。さまざまな機能をもつBIツールは高額になる傾向があるため、一部の目的にしか活用されないと、高額な割には用途が少ないシステムだと判断されるでしょう。その結果、システムの導入自体が失敗だったとの評価につながってしまうのです。
また、目的や課題・利用イメージが明確になっていても、そのイメージ実現には何のデータが必要なのかがわかっていなければ効果的な活用はできません。イメージを明確化することと同じくらい、どの機能を活用し、どのようなデータを分析すれば利用イメージを実現可能になるのかを明確にしておくことが重要です。
BIツールを使えるツールにするには
BIツールを使いこなすためには、以下のようなポイントに着目してツールを導入・活用するとよいでしょう。
- ●BIツール導入の目的を明確にする
- ●データベースとの連携設定を確認しておく
- ●運用ルールを具体的に決めておく
- ●PDCAを回しながら改善を続ける体制を作る
- ●ユーザー研修を開催し活用方法を周知する
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
BIツール導入の目的を明確にする
まずは、「BIツールの導入によりどのような情報を得たいのか」という目的を明確にしましょう。BIツールのアウトプットは人が考えるための情報です。そのアウトプットによって、自分が何を考え、決定したいのかというゴール設定が必要です。BIツールで実現したいことや、現在の課題を整理してBIツール導入の目的を明確にしておきましょう。
また、経営者・マネージャー・一般社員と立場によって求める情報が異なります。導入にあたってはこの違いを考慮しなくてはなりません。
例えば、営業部門の担当者が使う場合と経営層が使う場合とでは必要とされる機能は異なります。営業担当者であれば売上目標や達成度を管理できるもの、経営層であれば社内のさまざまなデータを把握し、将来のシミュレーションができるようなBIツールが求められるでしょう。誰がどのような情報を求めているかを把握することで、必要な機能も明確になります。
データベースとの連携設定を確認しておく
BIツールのメリットの一つは、異なるシステム間のデータを横断して分析できることです。しかし、既存の業務システムやデータベースなどと連携しなければ、横断分析の実行は不可能です。社内にあるETLやDWHなどとの相性は、BIツール導入前に必ず確認しておきましょう。
連携がうまくいかず、BIツールを導入しなおすケースも少なくありません。事前に確認しておけば、比較検討する製品やベンダーなども絞りやすくなります。新規導入であれば、DWHの機能をもったBIツールという選択肢もあるでしょう。
運用ルールを具体的に決めておく
最近のBIツールは、操作難易度や分析レベルなどが多様になっています。そのため、実際に活用する人材や運用体制を想定して製品を選定することが重要です。導入するBIツールの操作が難しすぎたり、求める分析レベルと異なっていたりする場合はツールの有効活用が難しくなります。このような失敗を回避するために、導入前に無料トライアルを活用し操作性や分析レベルを確認したうえで、運用体制を検討するのがおすすめです。
実際にBIツールを使って出した分析指標は経営者が活用する場合が多いでしょう。しかし、BIツールの設定や分析は主に情報システム部門などの従業員が行います。BIツールを活用する各部門とBIツール利用の目的を共有し、欲しいデータについて十分に摺り合わせをすることが大切です。また、導入後は利用するメンバーや担当者の異動などに備えて、記録や引き継ぎも欠かさずに行いましょう。
PDCAを回しながら改善を続ける体制を作る
BIツールからの情報を経営改善などに活用すると、新たな指標や別な角度からの情報が必要になる場合もあるでしょう。大きな変更は情報システム部に依頼を行う必要がありますが、簡単な修正や変更は現場でもできるようなシステムを選ぶとよいでしょう。
また、業務の現場では業務上の課題や改善イメージはもてるものの、業務改善のためにどのようなデータが利用できるのか、そのデータはどこにあるのかはわからない場合が多くあります。そのため、分析結果の活用方法に具体的なイメージをもっている経営陣と密にコミュニケーションを行うことで、スムーズにPDCAを行うとよいでしょう。
ユーザー研修を開催し活用方法を周知する
BIツールは、要求される情報をいかに見やすく、いかに簡単に取り出せるかが重要です。BIツールを使いこなせず「高機能な分析機能をうまくアウトプットできない」「情報システム部門に非常に負担がかかってしまう」といった問題が発生すると、単一的な情報のやりとりになってしまう恐れもあります。
BIツール導入後、スムーズに業務に定着させるためには、ツールの活用方法を社内教育することが大切です。世代や普段関わっている業務によっては、ITシステムの使用が不得意な従業員もいるでしょう。すべての従業員にBIツールを積極的に活用してもらうために、研修やセミナーを社内で開いて実際に操作してもらうことがおすすめです。社内で使用するにあたってのマニュアルを作成し配布すれば、研修後も継続して活用しやすくなるでしょう。
以下の記事では、ITトレンド編集部がおすすめするBIツールを比較紹介しています。実際の製品を見てBIツールの導入検討をはじめたい方は、ぜひ参考にしてください。
セルフサービスBIという選択
利用イメージが明確で、現場とのコミュニケーションも取れているという場合におすすめしたいのがセルフサービスBIです。セルフサービスBIは専門知識がなくても分析レポートを作成できるBIツールで、「現場による現場のためのBIツール」と称されることもあります。
従来のBIツールはシステム部門主導のツールであり、分析のリソースとなるデータの管理はシステム部門に依存しているものでした。そのため、現場のリクエストへの対応が遅れてしまい、すぐに分析結果が見たい現場にとっては不便さを感じるものでした。
そこで登場したのがセルフサービスBIです。セルフサービスBIは現場主導のツールであり、現場担当者が欲しいデータを自分で選んで分析できるようになります。これにより、課題であった現場のリクエストに対するタイムラグが解消できるようになるでしょう。
以下の記事では、セルフサービスBIについてより詳しく解説しています。セルフサービスBIについて理解を深めたい方は、あわせて参考にしてください。
目標をもった運用でBIツールを効果的に使おう
BIツールは操作や分析が難しく、使いこなせない場合も多くあります。原因はツールが導入目的にあっていないことやツールの使い方にあるので、BIツールの導入前から活用方法や運用体制を明確にしておくことが重要です。
自社に最適なBIツールを導入するためにも、各社製品の特徴や機能を十分に比較し検討することをおすすめします。以下のボタンから各社製品の資料を一括請求できるので、BIツール導入検討にぜひご活用ください。