印紙税とは?納付方法と対象の課税文書
印紙税とは、日々の経済取引で作られる契約書や領収書などに課税される税金のことです。文書の種類によって印紙税額が定められています。
収入印紙による納付が原則
印紙税は収入印紙で納付するのが原則です。収入印紙とは、国が発行する切手サイズの証票のことを指します。課税文書に貼り付け、消印をすることで印紙税の納付を証明できます。
収入印紙の利用は、領収書・契約書・約束手形・株券・出資証券など幅広い書類に用いられており、印紙税が多大なコストとなる企業も多いでしょう。
契約書を多く交わす必要がある企業では、電子契約書の導入がコスト削減につながります。しかし電子契約書は、改ざんの可能性がない取引をする要件がいくつもあるため、注意が必要です。そのため、電子契約システムを導入する企業が増えています。
そのほか、毎月継続して作成されるなど一定の条件に当てはまる場合、特例として以下の納付方法が認められています。
- ■印紙税の納付方法
- 原則:収入印紙による納付
- 特例1:税印なつ印による納付
- 特例2:印紙税納付計器の使用による納付
- 特例3:書式表示による納付
- 特例4:預貯金通帳などに係る一括納付
参考:印紙税目次一覧|国税庁
参考:令和5年5月 印紙税の手引|国税庁
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課税となる文書一覧
印紙税が課税される主な文書とその税額は以下のとおりです。
- ■印紙税が必要な文書一覧(一部抜粋)
- 不動産に関わる契約書(売買、交換など):0円~60万円
- 請負に関する契約書(工事、運送、広告など):0円~60万円
- 約束手形、為替手形:0円~20万円
- 金銭や物品の受取書(売上代金、家賃、保証金など):0円~20万円
- 定款の原本:4万円
- 株券、出資証券:0円~2万円
- 継続取引の基本契約書:4,000円
印紙税は文書の種類に応じた税額が決められています。
例えば、不動産売買契約書や金銭使用貸借契約書などは第1号文書に属しており、工事請負契約書や広告契約書など、請負に関する契約書は第2号文書に属します。それぞれ、契約金額に応じて0~60万円/通の印紙税が必要です。また、領収書は第17号の「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当し、受け取り金額に応じて0円~20万円課税されます。
これらの文書を作成する際は、契約金額や受け取り金額に応じて印紙税が発生します。課税額は文書の種類によって細かく定められているため、詳細は国税庁の資料等で確認するのがおすすめです。
参考:印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)|国税庁
以下の記事では、領収書を電子発行するメリットや有効性について解説しています。リモート環境への対応やペーパーレス化、業務効率化を図りたい企業は、ぜひ一読ください。
電子契約で収入印紙が不要な理由
実は、「電子契約では印紙税がかからない」と明記された法律はありません。なぜ、電子契約では収入印紙が不要と考えられているのでしょうか。
印紙税法では「印紙税の対象は紙の文書」と解釈できる
印紙税法の基本通達第44条では、印紙税の対象となる文書の「作成」について、次のように定義しています。
法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
参考:第7節 作成者等|国税庁
つまり、印紙税の対象となるのは、紙の書面に記載し、それを交付することを指します。一方、電子データの場合は交付がないため、「課税文書の作成にあたらない=印紙税は非課税である」と解釈されているのです。
また、電子契約で締結した契約書を印刷した場合でも、押印しなければ複製物とみなされ、課税要件に該当しないとの政府見解が示されています。
国税庁の見解からも「電子文書は非課税」と判断
福岡国税局のWebサイトでは、請負契約の注文請書を電子文書で作成し、メール送信した場合の印紙税について、以下のような見解を示しています。
本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
参考:(別紙)|国税庁
つまり国税庁は、電子契約書は課税文書にはあたらないとしています。そのため電子契約は課税対象にならず、印紙税を納める必要はありません。
参議院の答弁でも「電子文書は非課税」と発言
さらに、国会答弁の場でも電子文書の課税の可否が問われました。2005年の「参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書」における質問に対し、当時の小泉内閣総理大臣が以下のような答弁をしています。
「事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。」
参考:印紙税に関する質問に対する答弁書:答弁本文|参議院
電子文書は印紙税の課税対象外であるという政府の見解が、ここでも示されました。国税庁と政府によるこれらの見解は、現在も変更されておらず、電子契約は非課税の対象とされています。
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電子契約で印紙税を削減する際の注意点
電子契約で印紙税削減を図る際の注意点を見ていきましょう。
今後は課税対象となる可能性もある
将来、電子文書が印紙税の課税対象となる可能性がゼロではないことに留意しましょう。また、これまで紹介した法律や、国税庁と政府の見解は「印紙税の課税対象」について述べています。
決して「電子契約に印紙税が不要」と定めているわけではありません。「書面契約は課税対象なのに、電子契約が非課税では中立性に欠ける」との指摘も聞かれます。世界的にみると印紙税制度を導入している国は多くありませんが、印紙税削減を一番の目的に電子契約を導入するのはリスクが高いかもしれません。
すべての印紙税を節約できるとは限らない
契約書を電子化する際は、自社だけでなく取引先も電子契約に対応する必要があります。電子契約を適切に締結するには、電子証明書で認められた電子署名に対応しなければなりません。
契約相手が電子契約に応じなければ、従来どおり書面による契約で対応することになります。つまり自社だけでは、すべての印紙税を節約できるとは限らないのです。なお、電子契約に用いられる仕組みは以下のとおりです。どれも電子契約システムを導入すれば簡単に自社で用意できます。
- ●サインや印鑑に相当する「電子署名」
- ●本人確認のために必要な「電子証明書」
- ●非改ざん性を証明する「タイムスタンプ」
以下の記事では、おすすめの電子契約システムを紹介しています。自社にあうシステムの選び方も解説しているため、導入を検討したい方はご覧ください。
印紙税非課税の根拠を理解し電子契約の導入を検討しよう
書面による契約では、契約金額に応じた印紙税を納めなければなりません。しかし、電子契約は印紙税が不要なため、コストを削減できます。
電子契約において収入印紙がいらない理由は、電子データの印紙税が対象外であるという、政府の見解を根拠としています。ただし、印紙税が不要であると明確に定めているわけではないため、今後も非課税のままとは断定できません。それ以外でもメリットの多い電子契約を適切に導入し、コスト削減を実現しましょう。