電子領収書は印紙が不要
紙の領収書の場合、記載金額が5万円以上であれば原則として収入印紙の貼付による印紙税の支払が必要です。しかし、電子領収書は法令の解釈によって現在は印紙や印紙税の支払が不要とされています。
印紙税法の規定と国税庁の見解
印紙税について定める印紙税法には、電子領収書に印紙や印紙税を不要とする直接の規定がありません。しかし国税庁から出される印紙税法基本通達の記載内容や、法令を解釈するために示される情報に加えて、国会における答弁内容などを通じて電子領収書には印紙や印紙税が不要とされています。
個々の解釈の内容について詳しくは触れませんが、代表的なものとして次の情報が挙げられます。
参考:請負契約にかかる注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について|国税庁
参考:コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い(問2)|国税庁
参考:印紙税に関する質問に対する答弁書|参議院
電子発行の要件
領収書の電子発行は、主に領収書の発行自体をWeb上で行う場合が想定されますが、作成した電子領収書をメールやFAXで送信するいわゆる電子取引まで含めて、電子領収書に関する法令を解釈する範囲がおよびます。
電子領収書の有効性とメリット
電子領収書は紙の領収書と変わらず業務に活用でき、デジタル社会に適応するための業務効率化や生産性の向上、働き方の柔軟性を目指す企業にとって導入・移行のメリットが大きいといえます。
紙の領収書と有効性に違いはなし
電子領収書も含め領収書は国税関係書類の一つに数えられる重要書類です。このため、法令の要件を満たす必要がありますが、紙の領収書と電子領収書で記載項目による違いはなく、両者の有効性にも違いはありません。
電子領収書には印鑑を押印できませんが、紙の領収書であっても印鑑がなくても有効に成立するのと同じく、電子領収書に押印がなくても通用します。
以下の記事では、領収書に必要な記載項目や印鑑の必要性について紹介しています。
なお、社内ルールや取引先との取り決めなどの関係で電子領収書への押印が求められる場合には、電子印鑑を活用するとよいでしょう。
作業時間の節約、業務効率化、コスト削減につながる
紙の領収書では、作成した領収書を出力する手間、印刷コスト、社内決裁のための回覧に要する時間、郵送の手間とコストなどがかかりますが、電子領収書の場合にはこれらが不要です。加えて、電子領収書では、Web上で作成から社内回覧、決裁に至るまでを行うことが可能になり、メール送信などを通じて相手先とやり取りできます。在宅勤務などリモート環境下での対応を可能にし、時間の短縮による業務の大幅な効率化も望めます。
導入コストなどのデメリットは克服できる
電子領収書の導入や移行にあたっては、領収書などの帳票を発行できるシステムを活用するケースが多いため、初期費用などの導入コストがかかります。しかしながら、導入・移行前と比べて、業務の効率化、時間の短縮、作業を行う従業員の人件費といった諸々のコスト削減を実現できるわけですから、電子領収書には導入コストを十分に克服できるだけのメリットがあるといえます。
電子領収書の発行方法
会社として、電子領収書の導入や紙の領収書からの移行を検討するのであれば、電子領収書の発行に対応しているシステムを活用するのがおすすめです。電子印鑑や電子帳簿保存法に対応しているものであれば、社内外の対応がよりスムーズになるだけでなく、デジタル対応へのスピード感で他社をリードできます。
電子発行システムを導入する
代表的なシステムであれば、クラウドシステム対応となっており、外出先や在宅からのアクセスや作業が可能です。Web上で発行した電子領収書を受け取る相手側でダウンロードできるほか、メール添付、出力してFAXで送信するなど電子領収書の受取状況に応じた対応が可能なものを選ぶと便利です。こうしたシステムでは、紙の領収書でなければならない相手に限って郵送する、といったように、相手先によって手段の選択もできるようになっています。
印刷とダウンロードへの対応
電子領収書を受け取る相手側では、ダウンロードや印刷による保管が可能です。このような場合、新たに正本となる領収書を発行して別途持参するなどで交付がされない限りは、電子領収書を相手側で出力した場合であっても電子領収書をコピーした文書と同様に扱われ、印紙は不要です。
電子印鑑を活用する
紙の領収書、電子領収書のいずれの場合にも印鑑の押印は不要ですが、社内ルールで求める場合や、取引先からの要望、商慣習で押印を求められるケースは考えられます。電子領収書では、電子印鑑を活用すれば、こうした要望などを満たすのが可能ですし、領収書の電子発行システムの中にはこのようなニーズに応えるものがあります。
以下の記事では、電子印鑑の作成方法や利用シーンなどについて紹介しています。
改正電子帳簿保存法で税務署への対応が変わる
電子帳簿保存法の相次ぐ改正に伴って、領収書を含む国税関係書類の電子化や電子保存をしやすい環境へと進んでいます。電子領収書を発行可能なシステムを選ぶ際には、改正電子帳簿保存法に対応したものをおすすめします。
以下の記事では、2020年10月に施行された改正電子帳簿保存法の内容や、その後の税制改正によって今後変わる電子帳簿保存法の方向性などについて紹介しています。こちらもぜひご覧ください。