飲食店における在庫管理の重要性
飲食店で仕入れる食材費は、建物の賃貸料などの固定費とは異なり、店側でコントロールできる経費です。適切に在庫管理できれば、仕入れコストを最小限にできます。
飲食店において、仕入れコストは利益を左右する重要な費用です。食材を過大に仕入れれば売れ残ってしまい、少なすぎれば機会損失が発生します。特に食材は、ずさんな在庫管理をしていると、食中毒問題にまで発展するため注意が必要です。そのため、不足した食材を適時補充し、古い食材を随時廃棄しなければなりません。

飲食店における在庫管理の方法
では、具体的にどのように在庫管理を行えばいいのか見ていきましょう。
1.在庫状況の把握
まずは現在の在庫量を把握します。このとき、シェルフライフやホールディングタイムを意識することが大切です。
シェルフライフとは食材の消費期限のことです。消費期限を過ぎると、人体に悪影響を及ぼす可能性があります。ホールディングタイムとは、半製品・製品の賞味期限を指します。賞味期限が過ぎると、風味や品質を保てなくなり、商品としての価値がなくなります。
2.適正な仕入れ量の決定
予約状況・天気・気温・曜日・イベントの有無などから、お客さんの数を予測し、仕入れ量を決定します。
生ものは、その日に使い切れる分だけ確保しましょう。定期的に仕入れる食材の仕入れ量は、1日の利用量・現在の在庫状況・リードタイムなどから決定します。季節の食材は、前年の仕入れ量を参考にすると良いでしょう。開店したばかりの飲食店であれば、予測量に20%上乗せして仕入れるのがおすすめです。
3.棚卸の実施
棚卸とは、週や月ごとに在庫量や品質をチェックする作業です。保管方法や衛生状態が適正か確認します。記録された在庫数は、月次の原価率や利益率を計算するときに利用されます。仕入れ価格の変動を把握するときにも役立ち、経営の分析・改善に活かせるでしょう。
具体的なやり方は、棚卸表に数量・単価を入れ、売上原価を算出します。食材や食品名は、棚卸表にあらかじめ印刷しておくのがおすすめです。また、棚卸は調理スタッフ全員で取り組みましょう。スタッフひとりひとりに、在庫=お金という意識が生まれ、在庫管理を効率化できるはずです。
飲食店で在庫管理をうまく行うポイント
在庫管理をうまく行うには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
決まった手順・時間で発注する
在庫管理は1日のうち他業務との兼ね合いがつく時間帯に、決まった手順で行う必要があります。決まった時間に行うことで、スケジュール管理も楽になるでしょう。手順をマニュアル化すれば在庫管理のミスも減らせます。
ひとりで業務を行うのが困難な場合は、他のスタッフに助言を求めましょう。在庫管理がうまい企業ほど、食材の在庫表や発注表などを作成して、全員が在庫を把握しやすいように工夫しています。
ABC分析を活用する
ABC分析は、複数の指標から優先すべき項目を決め、管理を行う方法です。在庫商品を以下のようなグループに分けます。
- Aグループ
- 累計売上額の7割までの商品
- Bグループ
- 累計売上額が7割~9割の商品
- Cグループ
- 累計売上額が9~10割の商品
累計売上額が7割までの商品は、売上の大部分を占めるため、特に力を入れたい商品です。7割~9割の商品は、今後主力となる可能性を秘めているため、価格や名前などを変え、売上アップを目指します。9割~10割の商品はほとんど売れないため、最小限の管理体制をとります。
提供をやめて新メニューと入れ替えるなどの対処をするのも良いでしょう。
エクセルの無料テンプレートを活用する
エクセルのテンプレートには、あらかじめ項目や計算式が設定されています。そのため、数値を入力するだけで在庫数などを確認可能です。ただし、入出庫一覧表と在庫一覧表など、異なる性質をもったデータ同士の連携には向いていません。
在庫管理システムのような機能をエクセルに持たせることは難しいのです。
在庫管理システムを活用する
在庫管理システムとは、大量の在庫を効率的に管理できるソフトウェアのことです。在庫の入出庫状況を一元管理でき、仕入れ量を予測しやすくなります。
また、在庫管理システムは、一部の作業を自動化することにより業務の時間や手間を省けます。バーコードをハンディーターミナルで読み込むだけで棚卸ができ、入力作業がないため人的ミスを防ぐことも可能です。
飲食店における在庫管理を徹底し、利益を増加させよう!
飲食店における在庫管理は、利益を左右する重要な業務です。
まずは在庫状況を把握し、適正な仕入れ量を推算することが大切です。そして、決まった時間、手順で発注します。ABC分析の実施やエクセルの無料テンプレートを活用し、管理するのも良いでしょう。管理対象が多い場合は、在庫管理システムの導入がおすすめです。
飲食店における在庫管理を徹底し、利益を増加させましょう。
