フルフィルメントとは
フルフィルメントとは、もともとは業務の遂行や実行、達成などを意味する言葉です。しかし、ビジネス場面で使われる際は、ECサイトにおいて商品が注文されてからそれを届けるまでの一連の業務を指します。ただし、具体的な意味は企業によって異なるケースもあるため注意しましょう。
フルフィルメントの業務は顧客満足度と極めて密接に関わっています。たとえば、同じ商品でも発送されるのが早いか遅いかによって満足度は変わるでしょう。フルフィルメント業務をスムーズに行い、顧客の要望に答えられれば企業の評価を高められます。
そのため、フルフィルメントは企業のブランディングを行ううえで重要な業務と言えます。
フルフィルメントの業務内容
では、フルフィルメントは具体的にどのような業務を指すのでしょうか。7つに分けて見ていきましょう。
1.入荷・検品
入荷とは、卸業者やメーカーから商品が物流倉庫へ届く段階です。商品の種類や色、サイズ、数量などに誤りがないか確認します。
目視と手作業でも確認できますが、近年は機械を使っているケースもあります。バーコードとハンディターミナルを利用して管理すると作業効率を高められ、ミスを削減することが可能です。
ちなみに、入荷と入庫は意味が異なります。入荷は物流倉庫に荷物が届く段階を指すのに対し、入庫は入荷した荷物を保管場所に運ぶ業務を指します。
2.商品保管
入庫した商品は消費者に発送されるまで、物流倉庫で適切に保管する必要があります。ラックやパレットなど保管方法はさまざまです。商品によっては、温度や湿度を調節しなければならない場合もあります。
商品を保管する物流倉庫は、ECサイトからの注文が多い都内に構えられるケースが多いです。最近では高騰した配送費をカバーするため、土地代を安くしようと試みる企業が増えています。
3.受注処理
受注処理は商品の注文を受ける段階です。具体的な受注方法は電話やメール、Webフォームなど通販の形態によってさまざまです。注文内容や決済方法、在庫の有無などを確認します。
これらの一連の処理を、在庫管理システムとの連携によって自動化しているケースも少なくありません。
受注処理のうち、決済は多様化してきています。以前は代引きが主流で配送業者に決済を委託できていましたが、現在はクレジットカードの利用が一般的です。通販企業が自ら対応するか、フルフィルメント業務として外注するケースが増えています。
このほか、顧客からの問い合わせやクレームへの対応、返品交換なども受注処理業務に含まれます。
4.ピッキング
受注処理が行われた商品は、出荷指示書や伝票が発行されます。これを基に、対象の商品を倉庫から探し出すのがピッキングです。
商品が軽い場合は、従業員が手でかごを持って倉庫内を回り、指示された種類・数量の商品を集めます。大きな商品の場合は、台車やフォークリフトを使うこともあります。また、近年は人為的ミスを減らすため、デジタルピッキングと呼ばれるITツールを使用するケースも多いです。
ピッキングされた商品は、流通加工される場合もあります。流通加工とは、その名のとおり流通途中での加工のことです。たとえば、商品の箱詰めやラベル貼りなどがあります。
5.ピッキング商品の検品
ピッキングした商品に異常がないか確認します。確認内容は商品によって異なりますが、一部の例を以下に挙げます。
- ■数量やサイズ、色に間違いはないか
- ■破損や傷、汚れはないか
- ■賞味期限や消費期限が適切か
- ■異物混入はないか
ここで確認した商品がそのまま顧客の手元に届くことになります。そのため、商品の異常は必ずこの段階で発見しなければなりません。どの企業もこの段階は念入りに行っています。
6.梱包
梱包は検品した商品をダンボールに詰める段階です。運送途中で商品に傷が生じないよう、緩衝材を一緒に入れます。また、必要に応じて感謝状やクーポン、アンケートなどを入れることもあります。
梱包も顧客の満足度を左右する重要な要素です。同じ価格・商品でも、ダンボールの開けやすさや梱包の丁寧さによって顧客に与える印象は大きく左右されます。実際に、ECサイトのレビューでは梱包の質に言及するものが少なくありません。
顔が見えないやり取りだからこそ、直接やり取りされる荷物が与える影響は大きくなると言えるでしょう。
7.発送
梱包された商品を配送業者に引き渡し、発送する段階です。受注処理時に作成した伝票に従って対象の顧客に届けられます。具体的な届け先は自宅だけでなく、コンビニやオフィスのこともあります。
商品が発送されたら、その旨を消費者にメールで通知するのが一般的です。商品の配送完了時にも通知することがあります。
フルフィルメントサービスを利用するメリット
ここまで紹介してきたように、フルフィルメントの各工程はいずれの作業も顧客満足度を左右する重要な要素です。しかし、ECサイト運営において企業がもっとも注力すべき点はほかにあります。
そこで有効活用したいのがフルフィルメントサービスです。これはフルフィルメントの代行サービスであり、ECサイト運営の効率化に役立ちます。そこで、次はフルフィルメントサービスのメリットを2つ解説します。
業務を効率化できる
ECサイトの運営者がもっとも注力すべきなのは、商品企画や販売活動、マーケティングなどです。上記はいずれもECサイト運営に関して深い知識が求められ、売上の鍵を握る肝要な要素と言えます。
これらと比較すると、フルフィルメントは比較的単純な作業です。フルフィルメントに労力を奪われ、より重要な業務に割けるリソースが減るのは避けたいところです。
そこでフルフィルメントサービスを利用すれば、労力を重要な業務に集中させられるようになります。入荷から発送までにおける一連の作業そのものはもちろん、在庫管理の負担からも解放されます。
一方、フルフィルメントサービス業者がフルフィルメントに関して優れたノウハウを持っている点も見逃せないメリットです。自社でゼロから行うより、専門の業者に委託した方が高品質なフルフィルメントが実現します。
効果的にプロモーションを行える
フルフィルメントにおいて顧客満足度を高める要素には以下のものがあります。
- 決済方法
- 多様な決済方法に対応しているECサイトの方が幅広い顧客に利用されやすくなります。
- 配送方法
- 決済方法と同様、多様な方法に対応している方が顧客満足度が高くなります。
- その他オプション
- ギフトラッピングなど、配送に関してオプションがある方が望ましいです。
自社でフルフィルメントを行う場合、上記の要素にまで配慮するのは大変です。しかし、フルフィルメントサービスではこれらに対応してくれる業者もあり、自社の競争力を高められます。
フルフィルメントサービスを利用するデメリット
フルフィルメントサービスにあるのはメリットばかりではありません。次はデメリットを2つ見ていきましょう。
外注コストが高くなりやすい
フルフィルメントサービスを利用すると費用がかかります。ここで考えなければならないのが、外注がもたらすコストと負担軽減のどちらが大きいかです。
外注によって自社の負担が具体的にどの程度減少するのか事前に試算しましょう。人件費や在庫を保管する倉庫代などを踏まえ、外注コストと比較します。外注コストの方が高額なのであれば、フルフィルメントサービスを利用すべきではありません。
ただし、フルフィルメントに要する手間や費用はECサイトにおけるオーダー量に比例するため常に一定ではなく、予測が困難です。過去の実績などを参考にできるだけ正確な予測を立て、それに基づいて判断しましょう。
商品や顧客の現状を把握しにくい
先述したように、フルフィルメントサービスを利用すると在庫管理も委託できます。扱う商品の種類が多いECサイトにとって、これは大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、在庫管理を委託すると商品の状態を把握しづらくなるのはデメリットです。リアルタイムに商品の状態を確認したい場合、委託先のフルフィルメントセンターから送ってもらわなければなりません。
一方、フルフィルメントサービスの中には顧客対応まで委託できるものもあります。もちろん、これもコールセンター業務に割く負担を減らせる点ではメリットと言えるでしょう。しかし、委託すると顧客対応がフルフィルメントセンターで完結し、顧客の声が自社に届かなくなります。その結果、自社のサービス品質向上に有益な意見を聞き逃しかねません。
フルフィルメントについて理解し、業務効率化を図ろう!
フルフィルメントとは、ECサイトにおいて商品が注文されてからそれを届けるまでの業務のことです。主に以下の7業務からなります。
- 1.入荷・検品
- 2.商品保管
- 3.受注処理
- 4.ピッキング
- 5.ピッキング商品の検品
- 6.梱包
- 7.発送
これらの業務はフルフィルメントサービスへの委託により自社の負担を軽減できます。メリットとデメリットがあるため、両方を踏まえて利用を検討しましょう。
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