システム構築のゴールを設定する
多くのメリットを提供する在庫管理システムですが、まずそれらメリットの重要度を明らかにしましょう。それによって選定するべき製品が明らかになり、失敗の危険性を削減できます。
在庫管理の省力化
在庫管理において、多く設定されるゴールが省力化です。これまで熟練者によるノウハウでカバーしてきた在庫管理業務ですが、それら従業員の確保が困難になりつつあります。ここでポイントとなるのが、ハンディターミナルやモバイル端末の活用です。RFIDを使ったシステムもあります。手入力の手間がなくなり、正確な入出庫と棚卸が可能となります。
なお、新たな端末の導入は業務フローの変更になり、現場から抵抗されることもあります。事前の説明や訓練が不可欠です。また、省力化を重視するのであれば、操作性にも注意してください。システム選定の際も現場の担当者を加えるなどの工夫が必要です。
在庫の見える化
ハンディターミナル、モバイル端末、RFIDの活用により、正確な入力が可能になり、在庫の見える化が可能になります。ビジュアルな画面表示の製品を導入することで、見える化の手助けになります。
もっとも、システム導入だけでは正確な在庫管理の実現には限界があります。「サンプル出荷の管理があいまい」「返品や誤配への対応が人まかせ」などの不統一があるからです。これらフローの標準化と徹底も必要となります。また、いつ、どこに、どれだけ入ったかを見える化するにはトレーサビリティ、消費期限、ロット管理などの機能が役立ちます。
適正在庫の確保
在庫の見える化をすることで、適正在庫の確保が容易になります。また、多くの在庫管理システムには適正在庫を割ると発注指示が出て、過剰になるとアラームが発せられる機能が用意されています。その有無を確認しましょう。
さらに、より正確な適正在庫を確保したい場合は、需要予測システムとの連携が考えられます。在庫過剰になりがちな要因に、営業担当者の売上目標に合わせていることがあります。目標は予想とは異なります。正確な予想に合わせて在庫量を調整しましょう。
自社に必要な機能を考える
システムのゴールを設定したら、必要な機能を洗い出します。
複数の倉庫の在庫を一元管理する機能、グローバルな物流に対応する外国語表示機能など、その重要性が企業により異なる機能も多いのは在庫管理システムの特徴の一つです。無用の機能が多すぎると、使い勝手の悪さにつながります。必要な機能の優先順位を決め、自社に合う製品を見極めましょう。
- ■他システムとの連携
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在庫管理は購買・調達、受発注、販売など一連の業務と深い関係があります。これら他システムとの連携機能が備わっているかを確認しましょう。
- ■棚卸処理
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定期棚卸、随時棚卸、商品単位の棚卸、ハンディターミナルやモバイル対応などを確認します。
- ■トレーサビリティ、消費期限
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食品においてはトレーサビリティと消費期限の管理が求められます。
- ■預かり在庫
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自社の買取り在庫に加え、メーカーからの預り在庫、施設への貸出在庫、販売先への預け在庫の管理が可能かどうかを確認します。
- ■ロット管理
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在庫を製品単位で管理できるかを確認します。トレーサビリティと消費期限の管理もロット単位に可能かどうかを確認しましょう。商品に問題が発生した場合、ロット番号で絞り込み、早急に対応できるようになります。
- ■ロケーション管理
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棚、ラック、エリアなど、倉庫内のどこに保管しているかを登録・管理する機能です。ピッキング作業を支援します。
- ■外国語対応
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グローバルな物流に対応して日本語以外の言語表記ができる機能です。海外拠点では、英語圏や中国語圏の社員が対応することもあるため、これらの機能が標準搭載されていると便利です。
在庫管理システム 8つの選定ポイント
在庫管理システムを選定する際に確認すべき8つのポイントを紹介します。
- ■自社の業務への適合性
- ■情報の登録方法
- ■カスタマイズの柔軟性
- ■必要な設備とスキルの有無
- ■料金体系とシステムの規模
- ■基幹システムの連携など情報の活用
- ■セキュリティレベルの高さ
- ■サポート体制の充実度
では、詳しく見ていきましょう
選定ポイント1.自社の業務への適合性
在庫管理システムの選定でまず大切なのは、自社の業務内容に合う製品であることです。その多様性から、賞味期限が管理できる「食品卸業向け」、色違い商品の管理がしやすい「アパレル業向け」のように特定の業種を対象にした製品も展開されています。自社にとって使いやすい製品であるかをチェックしましょう。
在庫管理システムは、単なる在庫数の把握だけでなく、ピッキングや伝票処理などの作業にも影響を及ぼします。自社の物流全体を見渡し、現在抱える問題点の解消、さらなる効率化に必要な要素をピックアップ。その対応に効果が見込めることを念頭に選定することで、導入後により効果的な活用が見込めます。
選定ポイント2.作業効率を左右する情報の登録方法
在庫の管理には、入出庫の状況や棚卸の結果などデータの登録作業は欠かせません。この登録の方法は、在庫管理システムの使い勝手、正確性や効率に大きく影響する要素です。
例えばバーコードを読み取って情報を登録できるシステムであれば、自ら入力するシステムに比べ、より早く人的ミスの少ない情報の登録が可能です。管理する商品のアイテム数や倉庫の規模などによって変わる登録情報の量なども考慮し、自社に最適な登録方法を検討しましょう。
選定ポイント3.カスタマイズの柔軟性
在庫管理システムの利用を開始してから、この項目を追加できたら…といった希望や、倉庫の数が増えたといった変更が生じることはよくあります。自社にとって使いやすい環境を常に整えられるカスタマイズの柔軟性もチェックしておきたい項目です。
自身でカスタマイズするためのツールが付属したシステム、追加料金を支払うことでカスタマイズが可能なシステムなど、その対応の仕方はさまざまです。カスタマイズの柔軟性、対応可能な範囲と共にカスタマイズ方法も確認しておくと安心です。
選定ポイント4.必要な設備とスキルの有無
自社で運用するパッケージ型製品の場合、サーバーやシステム管理者を自社で用意する必要があります。一方クラウド型であれば、こうした用意がなくても導入が可能です。情報の登録方法によっては、バーコードの読み込み機器などが必要なケースもあります。必要な設備の種類、入手方法とコストを把握しておきましょう。
また、システムの利用に必要なITスキルが自社に見合うかも押さえておきたいポイントです。その際は、システムを管理する担当者だけでなく、実際に使用する現場担当者の状況も考慮することが大切です。担当者のITスキルに対して操作が複雑すぎるようでは、スムーズな運用の妨げになります。
選定ポイント5.料金体系とシステムの規模
在庫管理システムは、利用する機能の数や使用するユーザー数などにより料金の異なる製品も多くあります。
コストを比較する際は、同じ条件で使用した場合にかかる費用を算出した上で比べる必要があるでしょう。また運用開始後にカスタマイズを加えることで、料金体系が変わる場合などもあります。導入時だけでなく、維持、管理にかかるコストも事前にチェックしましょう。
選定ポイント6.システムの連携やデータの活用度
受注情報を入力するシステム、POSレジのシステムなど、他のシステムと連携させることで在庫管理の効率化やデータの有効活用が可能なケースは多くあります。こうした連携の可否は、事前にしっかり把握しておく必要があります。
また、在庫管理システムに蓄積された情報は、需要の推移予測などにも利用できる有用なデータです。分析に役立つ機能があるか、その内容はどのようなものかも確認しておくとよいでしょう。
選定ポイント7.セキュリティレベルの高さ
在庫管理システムには自社の在庫の変動などのデータが蓄積されています。在庫データは自社にとっての情報資産であるため、情報漏えいが起きないようなセキュリティ対策が標準で備わっているかを必ず確認しましょう。
また情報漏えい対策だけでなく、利用したいときにいつでもシステムを利用できるか(可用性)も重要です。繁忙期などにシステムがダウンすると、業務が滞り大きな損害を受けることもあります。
選定ポイント8.サポート体制の充実度
システムを導入することはゴールではなくスタートです。導入後は想定外のトラブルが起きることも多々あり、その際に製品販売元からどれだけサポートを受けられるかは、製品を選定する上で非常に重要なポイントです。
トラブル解決まで時間がかかればかかるほど、現場は混乱し在庫管理業務の効率化からは遠ざかっていくでしょう。導入を決める前にサポート体制についてチェックするようにしましょう。
選定ポイントを把握して自社に合った製品を導入しよう
在庫管理システムを選定する際の8つのポイントを紹介しました。自社に導入するシステムを選ぶことは、コスト面や使用感など気になる点も多く非常に難しいものです。この記事を参考に是非自社に最適なシステムを導入してください。
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