インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、電話・メール・Web広告などを活用した、外出を伴わない非対面型の営業活動のことをいいます。まずは、インサイドセールスの理解を深めるために、求められる背景や、営業活動全体に占めるインサイドセールスの位置づけについて確認していきましょう。
インサイドセールスが求められる背景
インサイドセールスが求められる背景には、ユーザー行動の変化があります。インターネットの広がりとともに、購買行動に移る前に商品に関する情報収集をおこなうことが一般化しています。読者のみなさんも、カメラやパソコンといった高価なものを購入する前に、商品のスペックやクチコミを重要視する方は少なくないはずです。
このような情報収集は、BtoCでは一般化していますが、BtoBでは営業が対面で情報提供するスタイルが長らく続けられました。このため、「御用聞き営業」が通用していたのです。ところが、購買行動の変化はBtoBにも押し寄せます。もはや、BtoBの世界でも事前の情報収集なくして購入することはありえません。
商品を提供する側は、このような顧客に対して効果的に必要な情報を提供する必要に迫られているのです。
インサイドセールスに求められること
インサイドセールスに求められていることは、商品情報を求める顧客の検討段階に応じて、最適なタイミグ、最適な方法で情報を提供することです。長期にわたり関係性を維持し、クロージング活動に誘導しなくてはなりません。
このため、インサイドセールスを展開するためには、アプローチする顧客リストを入手する必要があります。インサイドセールスは、顧客を段階的に育成し、クロージングを担うフィールドセールスに引き継ぎます。
営業活動を、リード(見込客獲得)、ナーチャリング(育成)、クロージングの段階に分けた場合、インサイドセールスは、真ん中のナーチャリングを担うことになるのです。
インサイドセールスとフィールドセールス
インサイドセールスは、ナーチャリングの過程で得られた情報を、フィールドセールスに引き継ぎクロージングに持ち込みます。顧客担当者の趣味や人間関係などを含めて情報提供できれば、成約精度は高まります。
インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担は、従来型のテレアポと外回り営業とは異なります。テレアポはアポイントしかとらず、外回り営業は成約できるかどうか不明確でも、足で稼ぐことが求められました。インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担は、営業活動を飛躍的に向上させる可能性を秘めているのです。
インサイドセールスとマーケティング
インサイドセールスが、ナーチャリングを展開する前提になるのは、質の高いリードの存在です。そして、リードを獲得する役割を担うのが、マーケティング部隊です。マーケティング部隊は、自社の商品に興味があるであろう良質な顧客リストを入手しなければなりません。
そのために、近年重視されているのが、オウンドメディアです。あえて自社の製品色を薄めて、情報提供するサイトを立ち上げ、ホワイトペーパーやその他の資料ダウンロードの際に顧客情報を登録させたり、セミナーを開催したりして良質なリードを獲得し、これをインサイドセールスに引き継ぎます。
インサイドセールスを導入するかどうかの判断基準
インサイドセールスを導入することは、営業変革に着手することに他なりません。安易にインサイドセールスを導入することは、営業現場の混乱を招きます。ここでは、インサイドセールスの導入が効果を上げやすい企業について整理しておきましょう。
BtoB企業かどうか
インサイドセールスは、BtoB企業にこそ大きな恩恵をもたらします。BtoC企業では、もはや営業活動自体が必要ではなくなり、ブランド戦略やプロモーション戦略といったマーケティングに重点が置かれています。
一方で、BtoB企業では、マーケティングに加えて営業活動も重要となりますが、顧客を育成し関係性を維持するインサイドセールスの重要度が高まっているのです。
営業人員の数
営業人員の数が少ない場合、効果的に営業活動をしなければなりません。成約できるかどうか分からない顧客を無駄に訪問する訳にはいかないのです。このため、営業人員が少ない企業の場合、インサイドセールスの導入を優先的に検討してもよいでしょう。すでに、マーケティング部門が立ち上がっていれば、インサイドセールス導入の敷居は下がります。
見込客リスト(リードの数)
リードの数が多い企業の場合、それぞれの顧客に外回り営業がアプローチすることは現実的ではありません。インサイドセールスを導入し、訪問をせずに顧客を育成する体制を整備することは、営業活動の効率性を高めます。リードの獲得具合から、インサイドセールス導入を検討してもよいでしょう。
インサイドセールスの導入手順
インサイドセールスの導入は、いままでの営業のやり方を変え、営業に対する考え方も変えます。このため、従来の営業スタイルから脱却できず、現場の混乱を招くことも少なくありません。ここでは、インサイドセールス導入の手順について解説します。
営業プロセスの可視化
インサイドセール導入の最初の一歩は、現状を把握することです。販売している商品や経営方針を俯瞰したうえで、営業プロセスを可視化してください。そのうえで、現状の営業プロセスに潜む問題点を明らかにし、これを解消するためにインサイドセールスの導入を進めるのです。最初からインサイドセールありきで営業変革を進めても、失敗の可能性が高まります。
インサイドセールスの役割分担の明確化
インサイドセールスのあり方に正解はありません。インサイドセールスがリード獲得においても中心的な役割を果たす場合もあれば、インサイドセールスでも客先訪問することもあり得ます。商品の特色や営業戦略、自社の組織体制によって、インサイドセールスが果たす役割は異なるのです。
いずれの場合でも、自社の営業力を最大化するために必要なインサイドセールスの姿を明確化する必要があります。
自社リソースかアウトソースかの判断
インサイドセールスは、従来型の営業スタイルとは全く異なるため、自社リソースでインサイドセールス部隊を編成するのは難しい場合もあるかもしれません。
このような場合、インサイドセールスをアウトソースするという選択肢も視野に入れるようにしてください。営業戦略に基づきインサイドセールスの役割が明確になっていれば、アウトソースの活用が効果を上げる可能性は高まります。
インサイドセールスに役立つITツール
インサイドセールスの導入には、ITツールの活用が欠かせません。ここでは、インサイドセールスには欠かせないITツールを紹介します。
CRM/SFA
CRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)は、顧客情報を一元的に管理し、顧客ごとの営業状況を可視化するためのITツールです。インサイドセールスを導入するのであれば、もはやCRM/SFAなくして成り立たないといっても過言ではありません。CRM/SFAは、リード獲得からナーチャリング、クロージングに至る営業プロセス全般において、プラットフォームとしての役割を果たすことになるでしょう。
MA
MA(Marketing Automation)は、顧客の検討段階に応じて、最適なプロモーションを自動的に実行してくれるツールのことです。主に、顧客の検討状況をスコア化し、数値に応じてあらかじめ定めたプロモーションを実行します。インサイドセールスを導入しても、すべての情報発信を人手でおこなうのには限界があります。MAを使って自動化すると、業務効率は格段に向上します。
オンライン商談ツール
オンライン商談ツールは、従来は対面(オフライン)でおこなっていた商談を、オンラインでおこなうための営業ツールです。多くの場合、顧客はソフトウェアのインストールなど複雑な操作をする必要はありません。
オンライン商談ツールは、インサイドセールスがメールや電話以外に営業活動の幅を広げることを目的に導入されていました。しかし、新型コロナウイルスの拡大を受け、オンライン商談ツールは、フィールドセールスやオンラインセミナーへと活用の幅が広がる可能性があるといえそうです。
アフターコロナを見据えたインサイドセールス導入を
インサイドセールスは、営業の現場に押し寄せる変革の波を象徴する営業手法です。変化する購買活動により効率的な営業活動が求められ、働き方改革の流れもあってインサイドセールスの導入が拡大しました。
今後、インサイドセールスの流れをさらに加速させる可能性があるのが新型コロナウイルスです。ソーシャルディスタンスの意識が高まる中、対面による営業活動は過去のものとなるかもしれません。