
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とは
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(以下、PPM)は経営資源を適切に分配し、利益の最大化を目指す経営戦略のためのフレームワークです。企業の展開する複数商品・事業について、市場に占める割合や成長率などの位置づけを分析したうえで、資源を投入すべき分野がどれか洗い出しを行います。プロダクトと聞くと一見製品・商品のみを指すようにみえますが、実際には事業を分析対象としています。
なおPPMには複数理論ありますが、ここで紹介するのは1970年代に提唱された「BCGマトリクス」です。複数の商品を展開する企業において、長期的な戦略計画に活用されています。具体的には、主に新商品開発や、既存サービス・商品のマーケティング戦略の策定時に用いられます。
PPM分析の4つの象限

PPM分析する際には、市場成長率と市場占有率の2軸に各事業を配置し、現状と投資配分などを判断します。ここでは4つの象限について詳しく解説します。
売上を伸ばしやすい「花形」
花形は市場成長率と市場占有率がともに高く、売上を伸ばしやすい状態です。しかしシェア率が高い一方で、ほかの企業との競合が激しいため、積極的な経営資源の投下が求められます。そのため、現状ではあまり収益が見込めません。
また、顧客との関係が重要視される時期でもあります。固定客を獲得し、長期的な収益につなげる地盤を固めておくことが大切です。ここでシェアを維持できるかどうかが正念場といえるでしょう。事業を守り抜き、そのまま市場成長率が低下すれば、プロダクトは「金のなる木」へと進展します。
成長の見込みがある「問題児」
問題児は、市場成長率は高いものの、自社の市場占有率が高くない状態を示します。うまく成長させられれば、市場成長率と自社シェアがともに高い「花形」へと発展するでしょう。しかし、自社シェアを伸ばせないまま市場成長率が低下した場合は「負け犬」になります。
ビジネスにおいては、この問題児が花形事業へ成長するかどうかの見極めが肝要です。成長の見込みが高ければ、積極的に投資すべきでしょう。問題児は、大きな利益は見込めず他事業からの余剰資金の投下が必要なため、金喰い虫と称されることもあります。
収益を生み出せない「負け犬」
負け犬は、市場成長率も市場占有率も低い状態です。投資しても思うような成果は得られません。また再起を図ってシェアを伸ばせても、その時にはすでに市場成長率が低下しているため望ましい成果は得られません。撤退・売却などの方法をとり、余剰資金を他のプロダクトに分配するのがよいでしょう。
なお、負け犬は問題児が成長に失敗し転落したものです。問題児の動向は注意深く見ておく必要があります。
多くの収益を生む「金のなる木」
金のなる木は、市場成長率が低い反面、市場占有率が高い状態です。新規参入してくる企業が少なく、積極的な投資を必要としないため、安定して高い収益を生み出します。また、企業内で事業に関わる人材も成長し、初期投資の償却が済んでいる点からもコストがかからない事業と判断できるでしょう。
ここから大切なのは、営業効率を高めることです。営業費を減らすなど、より少ないコストで収益化できる仕組みを形成します。ただし、どんな事業でもやがて撤退期が訪れます。同時に新たな「問題児」を育てていきましょう。
PPM分析の流れ
PPM分析にはいくつかの数値の算出が必要です。ここでは数値の求め方を含めたPPM分析の手順を紹介します。
1.市場成長率を計算する
まずは市場成長率を求めます。計算方法は次のとおりです。

市場規模は経済産業省や各業界団体などのWebサイトを参考にするとよいでしょう。より細かいデータが必要な場合は調査会社のレポートを活用するのも有効です。
2.相対的市場占有率を計算する
相対的市場占有率とは、自社以外の業界トップ企業のシェアに対して、自社がどの程度シェアを占めているかの数値です。以下の式で計算します。

市場占有率がわからない場合は「売上高÷市場規模」で求められます。
3.バブルの大きさを決める
最後に、座標中に示す円の大きさを決めます。各事業の売上高に応じて、大きさを調整してください。
これでPPM分析に必要な図の作成は完了です。各事業が4つの象限のどこに分類されているかに応じて経営戦略を立てていきましょう。問題児を花形に、花形を金のなる木へと育てるべく経営資源の投入を行います。金のなる木が増えれば、問題児にまわせる成長資金の獲得が容易となるでしょう。
PPM分析の課題点
PPMには今までにない新たな事業の立ち上げには適さないなど、いくつかの欠点もあります。PPMの課題点を知ったうえでうまく使いこなしましょう。
事業の存在意義や関係性は考慮されない
企業には慈善事業や環境保護など、社会貢献の観点で存在意義をもつ事業もあります。しかしPPM分析では、こうした情報は加味されません。さらに、複数事業を並行して拡大することで売上の増幅が狙えるなど、事業間のシナジー効果も考慮されません。負け犬に位置していても、これらの事情から欠かせない事業である可能性があります。
将来性を見込んだ分析は不可能
PPMは現時点での市場成長率・占有率でしか事業価値を判断できません。例えばAI技術の進歩や自動車の自動運転技術など、将来的な可能性は分析材料に含めないため、あわせて別の分析方法も試してみる必要があるでしょう。
PPMをうまく活用して利益を最大化しよう
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、複数事業を展開する企業には欠かせないフレームワークです。4つの象限に各事業を当てはめ、経営資源の分配適正化を図ります。事業の現状を可視化し、適切な経営戦略をとりましょう。
