PPMとは
PPMの概要を説明します。
組織全体のリソースを最適化する管理手法
PPMは「Project Portfolio Management」の略で、組織全体のリソースを適切に管理するための手法です。
ポートフォリオマネジメントは、全体を統括的に管理することを意味します。PPMはプロジェクト管理にその考え方を適用したもので、複数のプロジェクトを管理するための手法として用いられます。
組織全体の管理が必要なので注目されている
PPMが注目されているのは、企業において組織全体を管理することの重要性が増しているためです。
近年、企業ではプロジェクト型の業務が増加しています。市場の変化が著しく、それに適応しなければならないためです。それに伴い、企業内で複数のプロジェクトが同時進行する機会が増えました。
その結果、組織全体のリソースをどのプロジェクトに配分するのが適切かを考える必要が生じました。さらに、その判断のためにはタイムリーな状況把握手法が求められます。
そこで注目されたのがPPMです。複数のプロジェクトを俯瞰的に把握し、最適な経営判断を目指します。
PPMの4つの概念
PPMではプロダクトを4つの概念に当てはめて考えます。それぞれ見ていきましょう。
1:成長の見込みがある「問題児」
問題児は成長の見込みがあるプロダクトです。市場成長率は高いものの、自社のシェアが高くない状態を示します。
うまく成長させられれば、市場成長率と自社シェアがともに高い花形事業へと発展するでしょう。しかし、自社シェアを伸ばせないまま市場成長率が低下した場合は負け犬になります。
ビジネスにおいては、この問題児が花形事業へ成長するかどうかの見極めが肝要です。成長の見込みが高ければ、積極的に投資すべきでしょう。そのため、問題児は「金喰い虫」と称されることもあります。
2:シェアを多く獲得する「花形事業」
花形事業は市場成長率と自社シェアがともに高い状態です。シェアが大きい一方で、ほかの企業との競合が激しくコストがかかるため、あまり収益は見込めません。
また、顧客との関係が重要視される時期でもあります。固定客を獲得し、長期的な収益につなげる地盤を固めておくことが大切です。ただし、将来的に大きな収益が見込めます。ここでシェアを維持できるかどうかが正念場といえるでしょう。
花形事業を守り抜き、そのまま市場成長率が低下すれば、プロダクトは金の成る木へと進展します。
3:多くの収益を生む「金の成る木」
金の成る木は、自社シェアが高く、市場成長率が低い状態です。この時期はコストはあまりかかりません。成長率が低下すると競合企業が減るためです。また、企業内でこのプロダクトに関わる人材も成長し、初期投資の償却が済んでいるのも理由といえます。
ここから大切なのは、営業効率を高めることです。営業に割くコストを減らすなどし、少ないコストで収益を上げられる仕組みを形成します。ただし、どんなプロダクトでもやがて撤退期が訪れます。その時に備えて、新たな問題児を育てておくことも大切です。
4:収益を生み出せない「負け犬」
負け犬は、花形事業へと成長できなかった問題児が行きつく状態です。この状態はいくら投資しても成果が得られないため、早急に投資をやめることが大切です。
再起を図ってシェアを伸ばせても、その時にはすでに市場成長率が低下しているため、望ましい成果は得られません。また、人材の成長という観点でも、すでに先行してシェアを抑えている企業には及ばないためハイリスクいえます。撤退や売却などの方法をとりましょう。
PPM導入のポイント
PPMを導入する際に、どのようなポイントを意識すればよいのでしょうか。
製品ライフサイクルの見極め
製品ライフサイクルを見極めましょう。PPMでは、製品のライフサイクルが以下の4段階を経ることを前提としています。
ところが、実際の製品ライフサイクルが必ずこのように推移するとは限りません。一度成熟したものが、再度急激に成長する可能性もあります。
特に、まったく新しい分野での製品はどのような推移をたどるのか予測が困難です。PPMの考え方を適用する際には、自社の製品がどのようなサイクルをたどるのか、よくみきわめることが大切です。
経験がベースとなるマーケットシェアの把握
PPMでは相対シェアが重要視されていますが、これは経験効果がベースとなっている点に注意しましょう。
経験効果とは、経験が豊富であるほどコストを下げられるという考え方です。PPMでは相対シェアが高いほどコストが下がると考えますが、これは相対シェアが高いほど多く経験を積めるためです。
そのため、マーケットシェアにおける自社の位置をよく把握しましょう。自社よりも経験豊富な企業が市場を席巻しつつあるようなら、撤退や方針変更を考えなければいけません。
ただし、この考え方が必ずしも正しいとは限りません。業種によっては、経験が多くてもコストがあまり下がらないこともあります。経験の優位性は事業の性質によって左右されやすいことを知っておきましょう。
PPMをうまく活用して利益を最大化しましょう!
PPMは組織全体のプロジェクトを統括的に管理し、最適なリソース配分を実現するための手法です。PPMは以下の4つの概念を製品に当てはめて考えます。
これらの概念をもとに、適切なリソース配分を考えましょう。また、PPM導入のポイントは以下の2つです。
- ■製品ライフサイクルの見極め
- ■マーケットシェアの把握
ぜひ参考にして、自社の利益を最大化を目指してください。