「CDN」とは
CDNは、どのような場面で何を目的に活用されているのでしょうか。CDNの仕組みや概要について解説します。
高負荷コンテンツを高速配信するための仕組み
CDNは「Content Delivery Network」の略で、コンテンツをWeb上で効率的に配信するためのネットワークのことです。
昨今、画像や音楽、動画など、Web上でやり取りされるコンテンツの容量は増大しています。結果としてネットワークにかかる負荷が増え、サーバダウンなどが度々生じています。
これらの問題を回避するべく、コンテンツを効率的に配信する仕組みがCDNです。動画配信はもちろん、OSのアップデートやゲーム、アプリ、金融サービス、SNSなどで広く活用されています。
エッジサーバを利用することで負荷を分散する
CDNは、エッジサーバの役割を果たします。エッジとは周辺のことで、エッジサーバはオリジンサーバ(コンテンツ配信の中心となる自社サーバ)の周辺に用意するサーバーのことです。これらが負荷を分散して担うため、自社のオリジンサーバの負担を軽減できます。
例えば、自社のサーバで大規模動画を配信する場合、そのサーバには高負荷がかかるでしょう。そこで、エッジサーバを用意し、それらにオリジンサーバのデータをコピーしておきます。その結果、エッジサーバが分身のような役割を果たし、負荷を担います。
自社で多数のサーバを保有しても対応できますが、一時的にCDNサービスを利用した方が経済的でしょう。
CDNの利用がおすすめのケース
CDNは、以下のようなケースで活用するのがおすすめです。
- ●動画などの大容量コンテンツを配信する場合
- ●一時的なアクセス集中が予想される場合
- ●海外展開している事業の場合
CDNは、動画などの大容量コンテンツを配信する場合に活用するとよいでしょう。例えば、動画配信サービスにおいて、読み込みに時間がかかったりスムーズに再生できなかったりした場合、ユーザビリティを低下させ顧客離脱を招く恐れがあります。CDNは、ユーザーに近い位置で複数のサーバを設置することで負担を分散させるため、重くなりがちな動画表示も高速化が可能です。
また、広告やプロモーションなどでサイトのアクセス数増加が予想される場合にも、CDNはおすすめです。ユーザーに一斉メールを配信した場合、数分ほどでメール内のURLにアクセスが集中し、サイトダウンや表示遅延などのトラブルを引き起こすケースがあります。CDNを活用したピーク対策の実施により、コンテンツを確実にユーザーへ届けられるでしょう。
さらに、日本を拠点として海外展開しているサービスにもCDNは役立ちます。海外から日本へアクセスする場合は物理的な距離があるため、表示速度が低下しがちです。海外に設置されたCDN事業者のサーバを利用することで、表示速度が安定化するでしょう。ただし、CDN事業者によって対応エリアが異なるため、注意が必要です。
動画配信でCDNを活用するメリット
動画配信にCDNを活用すると、配信の安定性やセキュリティ性、SEO対策の面でさまざまなメリットが得られます。以下で詳しく解説します。
安定した動画配信を実現できる
容量の大きいコンテンツを配信すると、サーバに大きな負荷がかかります。動画の場合は、映像の遅延や停滞が発生し、ユーザーの満足度低下につながりかねません。
しかし、CDNを利用すれば、そのリスクを抑えられます。なぜなら、先述したようにCDNはエッジサーバの役割を果たし、負荷を担ってくれるからです。
特に、共有型のインターネットを利用している企業にとってCDNのメリットは大きいでしょう。共有型とは、他社と一つの回線を共有する形態であり、安価な代わりに回線が混雑しやすいのが難点です。CDNを用いれば複数のサーバとネットワークを利用できるため、共有型回線を利用していても円滑な通信が実現します。
セキュリティの向上を期待できる
サーバに大量の負荷を与えることで、サーバダウンを引き起こすサイバー攻撃を、DDoS攻撃といいます。Webサイトやサービスが一時的に利用できなくなるため、企業にとって機会損失につながります。今後、IoT機器の普及に伴い増加すると考えられており、対策必須の脅威といえるでしょう。
CDNは、このDDoS攻撃への対策として有効です。DDoS攻撃によって与えられた負荷を、エッジサーバで分散できるからです。一つのサーバに負担が集中せずに済み、サーバダウンに追い込まれるリスクが小さくなります。
SEO対策ができ売上向上が期待できる
SEO対策の重要な要素の一つとして、表示速度が挙げられます。表示速度が遅い場合、ユーザーの離脱率が上がり、サイト全体のパフォーマンスも低下するでしょう。CDNの活用によりサイトスピードを改善できれば、ユーザーはサイト内をスムーズに回遊できるため、CV率や売上向上が期待できます。また、表示速度はGoogleの検索順位アルゴリズムの一つであるため、CDNによって改善されることで順位向上の効果もあるでしょう。
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動画配信でCDNサービスを活用するデメリット・注意点
CDNサービスを利用して動画を配信する際、コンテンツの更新時間やシステム障害、アクセスログの取得などに留意する必要があります。詳しく見ていきましょう。
動画コンテンツの更新に時間がかかることがある
エッジサーバには、オリジンサーバの動画データをコピーして利用します。そのため、オリジンサーバ側で動画を更新しても、エッジサーバのキャッシュには同時に反映されません。
特に、大規模なCDNを利用している場合、すべてのエッジサーバで更新されるには時間がかかります。更新中にユーザーがアクセスしてきた場合、古い動画が途中で新しいものに切り替わるなど、不適切な見え方になるケースがあります。
そこで重要なのが、キャッシュの更新が速やかなサービスを選ぶことです。サービスによっては、すべてのキャッシュを更新するのに数分かかり遅い場合があります。できれば1秒以内に更新できるサービスを選定しましょう。
システム障害の要因が増える
CDNを利用してコンテンツを配信する場合、CDNに障害が起こると、当然動画視聴に支障をきたします。つまり、CDNを利用すると、動画配信における障害発生のリスク要因が増える可能性があります。
万が一障害が発生したときのことを考え、マニュアルなどを準備しておくとよいでしょう。また、事業者が障害に備えて可用性を高めているか、サービス選定時に確認しましょう。
アクセスログを取得できないケースがある
CDNでは、エンドユーザーからのアクセスは必ずCDNを経由する仕組みです。オリジンサーバは、CDN以外からのアクセスが受けられないため、エンドユーザーに関するアクセスログを確認したい場合は、CDNに蓄積されているログを取得する必要があります。
CDN内のログが提供可能かどうかは、事業者によって異なります。ログの提供が有料(または無料)の場合もあるため、CDN製品を選定する際に問い合わせてみましょう。
CDNの料金体系・費用相場
CDNには、従量料金、コミット料金、定額料金の3種類の料金体系があります。以下で詳しく見ていきましょう。また、具体的な費用例も紹介しています。
従量料金
従量料金タイプは、1GBあたりのデータ転送量における費用を設定し、その月の使用量に応じて課金する形式です。課金対象として、エンドユーザーへのデータ転送量やCDNとオリジンサーバ間のデータ転送量、リクエスト数や配信するサイト数などがあります。これらすべてを課金対象とするか一部のみを対象とするかは、事業者によって異なるため、製品選定時に詳細を問い合わせてみるとよいでしょう。
従量料金型は、使用した分のみの支払いで済む点がメリットであり、月々100PV程度までは月額数千円~数万円程度で利用できる場合もあります。しかし、アクセス数が増えた場合は高額になる可能性があり、毎月の請求額が安定しないのがデメリットでしょう。
コミット料金
コミット料金は、毎月一定のデータ転送量までは固定の月額料金を支払い、上限に達した分を従量料金で支払うプランです。毎月の配信ボリュームが決まっている場合は、月額料金を一定に保てます。また、データ量あたりの単価は多くの場合従量料金より安く設定されているのもメリットです。
しかし、コミット料金タイプの相場は月々数万円からですが、中には10万円を超える場合もあり、安定したアクセス数が得られなければ、コストパフォーマンスがよいとはいえません。自社に最適な料金プランを選択するためには、製品導入前にデータ転送量を算出する必要があるでしょう。
定額料金
使用したデータ量にかかわらず、毎月決まった金額を支払うプランです。オリジンサーバとCDN間のデータ転送量やリクエスト数による課金はなく、HTTPS配信に関しても基本料金に含まれる場合があります。
定額料金プランは、アクセス数やダウンロード数を考慮せずに安定したサイト運営が可能です。一定のアクセス数が担保されている場合は活用しやすいでしょう。また予算が立てやすいのもメリットの一つです。
しかし、今現在CDNの完全定額料金プランを提供している事業者は少なく、月額定額料金+従量課金のコミット形式を採用しているケースが多い傾向にあります。
CDNを利用した際の費用例
ここで、CDNの費用例を算出してみましょう。まず、アクセス解析ツールを活用し、PV数(Webサイト閲覧者数)とWebサイトの容量から、おおよそのデータ量を割り出します。また、月々10TBまで、1GBあたり15円の従量料金制プランを提供するCDNを利用すると仮定します。
- ■データ量=PV数(Webサイト閲覧者数)✕ Webサイトの容量
- 月のPV数(Webサイト閲覧者数):1,000,000
Webサイトの総容量:3MB
- 1,000,000✕3MB=3,000,000MB
※3,000,000MB=3,000GB(3TB)
- ■1か月あたりの従量料金
- 3,000GB✕15円=45,000円
CDNを選ぶ際のポイント
CDN選定時には、まず対象エリアに着目してみましょう。CDNを利用すれば、事業者が展開する現地サーバを利用して、ユーザーは快適な表示速度でサイトを閲覧できます。サーバの設置エリアは、事業者ごとに海外展開している場合もあれば、国内エリアに強みをもつ場合もあります。ターゲットユーザーのエリアを対象としているかどうか、選定時にチェックしてみましょう。
また、サポート体制の充実度も確認しておくべきポイントです。システムトラブルが生じた場合、ダウンタイムが長引くと企業への信頼性低下につながり、利益損失につながりかねません。そのため、トラフィックやサーバなどの運用を24時間365日体制で監視しているか、メールや電話など常時対応可能な相談窓口が設置されているかなどもチェックしておきましょう。
以下の記事では、自社に最適なCDNを選定する際のポイントについて詳しく解説しています。興味のある方は、参考にしてください。
動画配信でCDNを利用する方法
動画配信でCDNを利用するには、動画配信に対応したCDNサービスに申し込みましょう。利用規模やコストを踏まえて、自社に最適なサービスの選定が大切です。
サービス申し込み後は、はじめにオリジンサーバを設定します。オリジンサーバに保存されているコンテンツをCDNのエッジサーバにコピーすると、エッジサーバがコンテンツを配信できるようになります。
その後は、CDNの利用に関する詳細な設定をします。自社ですべて対応できますが、CDNサービスのサポートを受けながらの設定も可能です。
大規模配信に耐える!CDNサービスを比較
ここからは、動画配信に活用しやすいCDNサービスを紹介します。
製品・サービスのPOINT
- Webコンテンツ自動最適化機能で表示速度を高速化
- サイトのPV数に合わせて月額1万円のプランからご提供
- WAF、DDoS防御等のWebセキュリティも◎
株式会社クララオンラインが提供する「Cloudflare導入支援ソリューション」は、100か国以上、270を超える都市に展開する世界最大規模のCDNです。既存のモバイルWebを改修せずに、サイト高速化が可能です。セキュリティ性も高く、DDoS攻撃や悪意のあるボット、データの盗難などから自社のサイトを守ります。
Akamai
Akamai Technologies, Inc.が提供する「Akamai」は、135か国、1,400以上のネットワークと4,200か所以上の拠点で構成されており、世界中で利用される信頼性の高いサービスです。専用のツールセットを利用することで、ユーザーはCDNの障害、パフォーマンス、セキュリティなどを包括的に管理できます。
Fastly
「Fastly」は、Fastly, Inc.が提供するソリューションです。エッジサーバとオリジンサーバ間の要求や応答を高速化することで、滞りのない通信を実現するCDNサービスです。Instant Purgeという機能を利用すると、グローバル平均で150ミリ秒以内に古いコンテンツを更新できます。
Amazon CloudFront
Amazon Web Services,Inc.が提供する「Amazon CloudFront」は、AWSと連携し、同一プラットフォーム上でAmazon S3、Amazon EC2などのサービスと一元管理できるのが特徴です。同社のAmazon Prime Videoでも利用されているなど、信頼性が高いのも魅力です。
CDNetworks
「CDNetworks」は株式会社シーディーネットワークス・ジャパンが提供しており、アジアを中心に利用されているサービスです。中国やロシアなど、コンテンツ配信が困難といわれる地域でも実績があります。ほかの多くの海外サービスと異なり、24時間365日体制で日本語でのサポートが受けられるのも魅力です。
以下の記事では、おすすめのCDNサービスを比較紹介しています。CDNの基本知識や選び方なども解説しているので、興味のある方は参考にしてください。
動画配信でCDNを活用し、安定した運用を実現しよう
CDNは複数のエッジサーバによってオリジンサーバの負荷を分散する仕組みで、動画配信などで利用されます。一つのサーバだけで配信するよりも動画の安定性が向上するほか、DDoS攻撃への対策になるのも魅力です。利用するには専用のサービスに申し込む必要があります。動画配信を最適化するために、さっそく資料を取り寄せ、自社に合うCDNサービスの比較をしてみてはいかがでしょうか。