建設業で電子契約はできる?
電子契約とは、紙の契約書を電子データでやりとりすることです。建設業では従来、建設業法第19条により書面交付が義務付けられていました。
しかし平成13年にIT書面一括法が施行されたことで、建設業法もあわせて改正され、電子契約ができるようになりました。
建設業における電子契約の要件とは
建設業で電子契約を結ぶにあたって必要な法的要件は、次のとおりです。
- ■ 書面の交付に代えられる電磁的措置の種類
- 電子メールやWeb、または電子記録媒体を利用すること。
- ■電磁的措置の種類および内容にかかる相手方の事前の承諾
- データを何の種類でやりとりするか、またファイルの記録形式は何かを事前に知らせ相手方の承諾を得ること。
- ■電磁的措置の技術的基準
見読性・非改ざん性・本人性の3つの要件から成る。
- ・見読性:契約の相手方がファイルへの記録を出力することにより書面作成できるものであること
- ・非改ざん性:ファイルに記録された契約事項等について、改変されていないかどうか確認できる措置を講じていること
- ・本人性:契約の相手方が本人であることを確認するための措置を講じていること
参考:建設工事の電子契約についての解説 |財団法人建設業振興基金
これらの要件を満たすためには、電子契約システムの導入がおすすめです。ただし、電子契約システムには本人性の担保が難しいものもあります。そのため、法的要件を満たせるかよく吟味する必要があります。
建設業で電子契約が利用できる契約一覧
建設業に関する契約のうち、電子契約が可能なものは次のとおりです。
- ●請負契約
- ●発注書
- ●売買契約
- ●賃貸借契約
- ●保証契約
電子契約を導入するメリット
電子契約の導入により、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
契約業務の効率化
書面でのやり取りには大きな労力を要します。契約書を一度受け渡すだけでも、書類の印刷から押印・郵送・返送などが必要です。特に郵送の場合、返送依頼だけで数週間を要することもあります。
また、書面の内容に誤りが見つかるなどのトラブルが生じれば、最初から一連の処理をやり直さなければなりません。さらに、書類の管理も大変です。監査などで過去の書類が求められることもあるため、関連書類は日ごろから管理を徹底しておく必要があります。しかし、紙の文書を手作業で管理するのは大きな労力を要するでしょう。
しかし、電子契約であればこれらの手間がほとんどかかりません。印刷や郵送は電子データのやり取りで完結するうえ、過去の書類を探す際も検索機能ですぐに見つかります。
契約コストの削減
書面による契約には以下のコストがかかります。
- 郵送
- 郵送料金そのものに加え、封筒代も付随する
- 印刷代
- 契約書を印刷するのに必要なインクや用紙に要する費用
- 印紙代
- 課税文書に貼る印紙に要する費用
- 保管費
- ファイルや棚、倉庫などに要する費用
- 人件費
- 印刷や封筒への封入、コミュニケーション、書類保管などに労力を要する
このほか、製本テープやクリップなどの細々とした備品にもコストがかかります。
契約書を電子データで送付するようになれば、郵送・印刷代・印紙も不要です。保管費についても、物理的なスペースを確保するより安くなるでしょう。また書類の管理をはじめ、従業員の業務負荷を軽減することで、より重要な業務へ取り組む環境を構築できます。
コンプライアンスの強化
電子契約はセキュリティの観点からも優れています。そのため、情報管理のコンプライアンスを強化するうえでも有効です。
例えば、電子契約はデータへのアクセス管理が容易です。紙の書類を棚に保管している場合は、いつだれがどの書類を閲覧・持ち出したのか把握できません。棚に鍵をかけていても、取り扱いを完全に管理するのは難しいでしょう。
一方、電子書類であればアクセスログを取得できるため、漏れなく状況を把握できます。また、契約内容の改ざんを防ぐうえでも有効です。電子署名とタイムスタンプによって電子契約の内容が正規のものであることを証明できるためです。
紙の書類では印鑑によって証明されますが、電子署名による管理は印鑑を肉眼で判別するよりも高い信頼性が期待できます。
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電子契約に関する建設業法の変遷と最新の法改正内容
電子契約に関する建設業法の移り変わりを見ていきましょう。
従来は書面での契約が義務付けられていた
建設業法(昭和24年5月24日公布)は、第19条において「建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と規定しています。つまり、あらゆる請負業者に対して、請負契約の内容を書面に記載し、当事者同士で互いに交付することが義務付けているのです。ここでいう当事者とは、発注者と元請負人だけでなく下請負人も含まれます。
しかし建設工事はさまざまな専門の工事業者が関わるため、建設業者間で交わされる請負契約は膨大なものになります。そのため書面でのやり取りは、契約業務の効率を下げる要因となっていました。
建設業法改正で建設業務請負契約の電子契約が可能になる
平成13年のIT書面一括法の施行に伴い、建設業法も同年4月に改正が行われ、第19条3項があらたに追加されました。これにより相手方の了承を得れば、建設業務請負契約を電子書面で交わすことが認められるようになりました。
建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。(第19条3項)
参考:建設業法|e-Gov法令検索
「グレーゾーン解消制度」で建設業法の解釈が明確に
法改正によって電子契約が認められるようになったものの、書面契約を原則とすることは変わりません。そのため、どの程度の電子化まで許されるのか曖昧な部分がありました。
そこで利用されたのがグレーゾーン解消制度です。グレーゾーン解消制度とは、法解釈のあいまいな点について、対象のビジネス分野を所管する省庁に問い合わせることが可能な制度です。
クラウド上での建設工事請負契約サービスを開発したある企業は、グレーゾーン解消制度を利用してクラウドサインによる電子契約について経産省・国交省に照会しました。その結果、クラウド上で建設工事の請負契約を交わすことは合法であると認められたのです。
平成30年1月にこのグレーゾーン解消が行われて以降、同様の電子契約サービスはすべて合法と見なされています。今後は建設業の分野でさまざまな電子契約サービスの誕生が期待されています。
参考:グレーゾーン解消制度における照会に対し回答がありました|経済産業省
建設工事請負契約の「技術的基準」が見直される
令和2年10月1日に建設業法施行規則が改正されました。これにより、建設工事請負契約における電子契約の技術的基準が見直されました。見読性・非改ざん性に加え、あらたに「本人性」が求められます。具体的には、契約の相手方が本人であることを確認するための措置を講じていることです。
デジタル改革関連法により見積書の電子化が可能になる
令和3年5月19日にはデジタル改革関連法が公布されました。これに伴い建設業法が一部改正され、見積書の電子化が認められました。
建設業における電子契約の導入事例
電子契約を導入することで、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。電子契約を導入した建設業の事例を紹介します。
- ■印紙代不要によりコストカットを実現した事例
- 建設会社のA社は、専門工事業者と年間多数の契約を結んでいました。さらに基本契約書や注文書などを分けて扱っていたため、印紙代が年間数百万円に及んでいたといいます。
- しかし電子契約の導入により、印紙代を約7割カットすることに成功しました。
- ■紙の契約書を扱う手間から解放された事例
- 建設会社のB社は、紙の書類を扱うのに多大な時間をかけていました。営業で受注されてから契約書の製本や郵送など、1件あたりに数十分の手間が掛かっていたといいます。
- しかし、電子契約導入後はPDFアップロードで完結するようになり、営業活動が大幅に効率化しました。
電子契約システムでさらなる業務効率化を図ろう!
建設業法改正により電子契約が可能になった昨今では、「電子契約システム」を活用して、さらなる業務効率化を目指す企業が増えています。
以下の記事では、電子契約システムの選び方から人気の電子契約システムを機能別に比較しています。今後システム導入をご検討の方は、ぜひ参考にしてください。
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