そもそも電子契約とは
電子契約とは、契約書や同意書などの文書を電子的に作成し、当事者間でデータをやりとりすることで合意形成を行う契約方式です。従来の紙の契約書に署名・捺印する代わりに、電子署名や電子認証を用います。
電子契約の主な流れは以下のとおりです。
- 1.契約書データの作成
- 2.電子署名・電子認証の実施
- 3.データの送受信
- 4.契約の成立
電子契約と紙契約の大きな違いは、契約書の形式とその管理方法にあります。従来の紙契約では印刷した契約書に手書きの署名・捺印を行い、原本を物理的に保管する必要がありました。しかし電子契約ではデータ上での処理が中心となり、電子的な保管が可能です。
電子契約の法的効力は、「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」により保証されています。一定の要件を満たす電子署名が行われた契約書は、紙の契約書と同等の法的効力をもつとされています。
参考:電子署名法の概要と認定制度について|法務省
電子契約の詳細については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
建設業における電子契約の現状や導入事情
近年、建設業界でも電子契約の導入が徐々に進んでいます。新型コロナウイルス感染症の影響により、非対面・非接触での契約手続きへのニーズが高まったことが一因といえるでしょう。加えて、建設業は印紙税の負担が大きい業種の一つであり、電子契約の導入によるコスト削減効果への期待も大きいでしょう。
しかし、建設業における電子契約の普及は、他業種と比較するとまだ道半ばといえます。なぜなら、建設業法をはじめとする各種法令への対応や、社内の業務フローの変更など、克服すべき課題が多いためです。
電子契約の導入が進まない主な理由としては、次のことが挙げられます。
- ●電子契約に関する知識・ノウハウ不足
- ●自社の業務プロセスとの不整合
- ●取引先が対応していない
- ●電子化以前にITの導入が進んでいない
電子契約への関心は高くても、具体的な導入方法がわからない、取引先の意向もあり踏み切れないといった状況があります。
電子契約のメリットを享受するためには、自社の業務フローに合ったシステムの選定と、取引先を巻き込んだ業界全体での電子化推進が重要だといえるでしょう。
建設業界では、元請企業と下請企業、資材調達先など、多数の関係者間で契約行為が発生します。電子契約の導入は、こうした建設業特有の複雑な契約プロセスの効率化に貢献できると期待されています。
今後、建設業界におけるDXの一環として、電子契約の普及はさらに加速することが予想されるでしょう。
建設業で電子契約はできるのか
電子契約とは、紙の契約書を電子データでやりとりすることです。建設業では従来、建設業法第19条により書面交付が義務付けられていました。
しかし平成13年にIT書面一括法が施行されたことで、建設業法もあわせて改正され、電子契約ができるようになりました。
建設業で電子契約が利用できる契約一覧
建設業に関する契約のうち、電子契約が可能なものは次のとおりです。
- ●請負契約
- ●発注書
- ●売買契約
- ●賃貸借契約
- ●保証契約
建設業における電子契約の要件とは
建設業で電子契約を結ぶにあたって必要な法的要件は、次のとおりです。
要件 |
内容 |
1.電磁的措置の種類 |
電子メール、Web、または電子記録媒体を利用すること。 |
2.相手方の事前承諾 |
データのやりとりに使用する電磁的措置の種類。 ファイルの記録形式について、事前に相手方に知らせ、承諾を得ること。 |
3.電磁的措置の技術的基準 ※次の3つの要件を満たすこと。 |
見読性:契約の相手方がファイルの記録を出力することにより、書面を作成できること。 非改ざん性:ファイルに記録された契約事項等について、改変されていないことを確認できる措置を講じていること。 本人性:契約の相手方が本人であることを確認するための措置を講じていること。 |
参考:建設工事の電子契約についての解説 |財団法人建設業振興基金
これらの要件を満たすためには、電子契約システムの導入がおすすめです。ただし、電子契約システムには本人性の担保が難しいものもあります。そのため、法的要件を満たせるかをよく吟味する必要があります。最新の電子契約システムは以下を参考にしてください。
電子契約を導入するメリット
電子契約の導入により、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
契約業務の効率化
書面でのやり取りには大きな労力を要します。契約書を一度受け渡すだけでも、書類の印刷から押印・郵送・返送などが必要です。特に郵送の場合、返送依頼だけで数週間を要することもあります。
また、書面の内容に誤りが見つかるなどのトラブルが生じれば、最初から一連の処理をやり直さなければなりません。さらに、書類の管理も大変です。監査などで過去の書類が求められることもあるため、関連書類は日ごろから管理を徹底しておく必要があります。しかし、紙の文書を手作業で管理するのは大きな労力を要するでしょう。
電子契約であればこれらの手間がほとんどかかりません。印刷や郵送は電子データのやり取りで完結するうえ、過去の書類を探す際も検索機能ですぐに見つかります。
契約コストの削減
書面による契約には以下のコストがかかります。
- ■郵送
- 郵送料金そのものに加え、封筒代も付随する
- ■印刷代
- 契約書を印刷するのに必要なインクや用紙に要する費用
- ■印紙代
- 課税文書に貼る印紙に要する費用
- ■保管費
- ファイルや棚、倉庫などに要する費用
- ■人件費
- 印刷や封筒への封入、コミュニケーション、書類保管などに労力を要する
このほか、製本テープやクリップなどの細々とした備品にもコストがかかります。
契約書を電子データで送付するようになれば、郵送・印刷代・印紙も不要です。保管費についても、物理的なスペースを確保するより安くなるでしょう。また書類の管理をはじめ、従業員の業務負荷を軽減することで、より重要な業務へ取り組む環境を構築できます。
コンプライアンスの強化
電子契約はセキュリティの観点からも優れています。そのため、情報管理のコンプライアンスを強化するうえでも有効です。
例えば、電子契約はデータへのアクセス管理が容易です。紙の書類を棚に保管している場合は、いつだれがどの書類を閲覧・持ち出したのか把握できません。棚に鍵をかけていても、取り扱いを完全に管理するのは難しいでしょう。
一方、電子書類であればアクセスログを取得可能なため、漏れなく状況を把握できます。また、契約内容の改ざんを防ぐうえでも有効です。電子署名とタイムスタンプによって電子契約の内容が正規のものであることを証明できるためです。
紙の書類では印鑑によって証明されますが、電子署名による管理は印鑑を肉眼で判別するよりも高い信頼性が期待できます。
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電子契約に関する建設業法の変遷と最新の法改正内容
電子契約に関する建設業法の移り変わりを見ていきましょう。
従来は書面での契約が義務付けられていた
建設業法(昭和24年5月24日公布)は、第19条において「建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と規定しています。つまり、あらゆる請負業者に対して、請負契約の内容を書面に記載し、当事者同士で互いに交付することが義務付けられているのです。ここでいう当事者とは、発注者と元請負人だけでなく下請負人も含まれます。
しかし建設工事はさまざまな専門の工事業者が関わるため、建設業者間で交わされる請負契約は膨大なものになります。そのため書面でのやり取りは、契約業務の効率を下げる要因となっていました。
建設業法改正で建設業務請負契約の電子契約が可能になる
平成13年のIT書面一括法の施行に伴い、建設業法も同年4月に改正が行われ、第19条3項があらたに追加されました。これにより相手方の了承を得れば、建設業務請負契約を電子書面で交わすことが認められるようになりました。
建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。
参考:建設業法|e-Gov法令検索
「グレーゾーン解消制度」で建設業法の解釈が明確に
法改正によって電子契約が認められるようになったものの、書面契約を原則とすることは変わりません。そのため、どの程度の電子化まで許されるのかあいまいな部分がありました。
そこで利用されたのがグレーゾーン解消制度です。グレーゾーン解消制度とは、法解釈のあいまいな点について、対象のビジネス分野を所管する省庁へ問い合わせが可能な制度です。
クラウド上での建設工事請負契約サービスを開発したある企業は、グレーゾーン解消制度を利用してクラウドサインによる電子契約について経産省・国交省に照会しました。その結果、クラウド上で建設工事の請負契約を交わすことは合法であると認められたのです。
平成30年1月にこのグレーゾーン解消が行われて以降、同様の電子契約サービスはすべて合法とみなされています。
参考:グレーゾーン解消制度における照会に対し回答がありました|経済産業省
建設工事請負契約の「技術的基準」が見直される
令和2年10月1日に建設業法施行規則が改正されました。これにより、建設工事請負契約における電子契約の技術的基準が見直されました。見読性・非改ざん性に加え、あらたに「本人性」が求められます。具体的には、契約の相手方が本人であることを確認するための措置を講じていることです。
参考:改正建設業法について~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~|国土交通省 中部地方整備局 建設産業課
デジタル改革関連法により見積書の電子化が可能になる
令和3年5月19日にはデジタル改革関連法が公布されました。これに伴い建設業法が一部改正され、見積書の電子化が認められました。
参考:デジタル改革関連法の全体像|厚生労働省
建設業における電子契約の導入事例・口コミ
電子契約を導入することで、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。電子契約を導入した建設業のユーザーから寄せられた事例を紹介します。
- ■誰でも操作しやすくスムーズに導入できた
- デジタルに抵抗のある従業員が多く、契約書の電子化に不安を感じていました。しかし、使いやすいシンプルな操作性のため、従業員から使い方に関する質問がほとんどなくシームレスに導入できました。また、パソコンやメールを使っていない取引先もあるのですが、困った時には電話で相談できる安心感も導入の決め手でした。
- 参考:使いやすくコスパも良いです 電子印鑑GMOサイン|ITトレンド
- ■契約業務の負担が大幅に軽減された
- これまで取引先との契約では、営業担当者同士で両社を行き来し、調印完了まで1週間またはそれ以上かかることもありました。電子契約システムの導入によってすべてワンストップで済むようになり、手間が大幅に削減されました。在宅勤務時でも外出せずに調印可能なため、担当者の業務負荷は大きく減っています。
- 参考:煩雑な契約業務を一気に電子化 電子印鑑GMOサイン|ITトレンド
- ■郵送作業がメールに代わり負担が減った
- 電子契約システム導入後は、契約までの一連の流れがとてもスムーズになりました。面倒な郵送作業がなくなり、メールで簡単に送信できるため当日中に作業が完了します。契約書をデータで管理するので保管場所にも困りません。在宅ワークでも快適に業務を進められました。
- 参考:操作が簡単で速くて快適 クラウドサイン|ITトレンド
- ■費用対効果が大きい
- 従来の契約書では、印刷代・印紙代・郵送代などに多くの費用がかかっていました。また、書類にミスがあると何度も相手方と郵送のやり取りを行うこともありましたが、システム化によってそれらの手間が省けて非常に楽になりました。さらに契約書以外にも、必要な資料の添付やダウンロードもWeb上で完結できるためとても便利です。
- 参考:契約書作成にかかる費用の削減 クラウドサイン|ITトレンド
電子契約システムでさらなる業務効率化を図ろう
建設業法改正により電子契約が可能になった昨今では、「電子契約システム」を活用して、さらなる業務効率化を目指す企業が増えています。
以下の記事では、電子契約システムの選び方から人気の電子契約システムを機能別に比較しています。今後システム導入をご検討の方は、ぜひ参考にしてください。