経費精算とは
経費精算とは、業務に関係する活動、例えば営業活動にかかった金銭を領収書などの証憑(しょうひょう)書類と引き換えに精算することを指します。経費精算の一連の流れとしては、従業員が申請を行った後、管理者や経理が承認を行い、経理や財務が費用の精算と支払を行います。
経費精算には、小口精算、交通費精算、旅費精算の3種類があります。
- ■小口精算
- 日々発生する少額の経費を、現金で精算すること。少額経費立替用に部署や店舗ごとに小口現金が用意されており、レシートや領収書と引き換えに直接現金を手渡しする。
- ■交通費精算
- 業務上必要な移動における支払いを対象としており、電車代やバス代、タクシー代などの交通費を精算すること。主に近距離での移動が対象となる。管理者や経理が申請内容に誤りがないかを毎月末など一定の時期に確認して、承認された金額を会社の経費として精算する。
- ■旅費精算
- 出張などで発生した、電車代や飛行機代、タクシー代などの旅費や宿泊費、出張手当などをあわせて精算すること。多額になる場合は、出張前に申請してもらい、仮払いするケースもある。研修費や交際費など旅費の対象とならないものがあるため注意が必要。
経費の対象項目・対象外の項目
経費とは、会社運営上、利益を得るために必要となる費用のことを指します。ただし、どのような費用でも経費に計上できるわけではありません。経費精算を行ううえで、経費の対象となる項目と対象外となる項目について十分に把握しておく必要があるでしょう。以下で具体的に解説します。
経費の対象となる項目
経費の対象となるものは、利益を得るのに必要か否かが判断基準となり、経費としての仕訳がなされます。以下で経費として仕訳される一部の項目を紹介します。
- ●広告宣伝費
- ●旅費・交通費
- ●交際費
- ●通信費
- ●水道光熱費
- ●事務用品費
- ●消耗品費
- ●図書費
- ●減価償却費
- ●支払手数料
- ●地代家賃
- ●保険料
これらの経費の計上を行う項目のうち、小口精算、交通費精算、旅費精算について経費精算を行います。この経費精算において最もボリュームが多く業務の負担が大きいのは「交通費」といえます。
経費の対象とならない項目
経費の項目に当てはまるものでも、すべてが経費精算の対象となるわけではなく、精算対象外となるものがあります。また、そもそも経費としてみなされない項目もあります。例えば以下のものは経費精算の対象になりません。
- ■社長、役員、従業員が個人として行った支出
- 経費精算の対象となる経費は、企業の事業に関して行われるものに限られます。取引先への接待費や贈答品購入費などのいわゆる交際費は経費精算申請の対象ですが、社長や役員、従業員個人の生活や活動を通じてかかるようなものは経費精算の対象にはなりません。
- (例)
- ●プライベートで行った旅行にかかった旅費・交通費・宿泊費
- ●家庭で消費する日用品や私物の購入費用
- ●友人との会食費
- ■法人税や住民税などの税金
- 企業の利益に対してかかる法人税、住民税、事業税は、そもそも経費ではないため経費精算の対象になりません。
経費精算のやり方・業務フローとは
では、実際に経費精算はどのような流れで行われているのでしょうか。ここでは、従業員が先に支払った旅費・交通費を後日精算するケースで段階ごとに見ていきましょう。
1.費用の支払いと領収書の受け取り
従業員が、社用にかかった交通費や出張費などを立て替えて支払います。その際、支払いの証拠として領収書(レシート)を受け取ります。領収書やレシートには、日付・金額・支払い内容(品物)・支払先の名称が必要です。なお、領収書の宛名には会社名が記載されます。
2.経費精算書を作成し経理部へ申請する
従業員は、受け取った領収書を添付し経費精算書を作成します。一般的に経費精算書の項目には、申請日・支払日・金額・用途などがありますが、差し戻しを回避するために、用途の項目では支払いの必要性や理由などをわかりやすく記載しましょう。経費精算書は、管理者の承認を得てから経理に申請します。
3.経理が内容を確認し仕訳を行う
経理が経費精算書の内容を確認します。出張旅費規程に沿って申請されているか、不備がないか、不正な申請がないかをチェックしましょう。そのうえで旅費交通費/未払金という仕訳で精算します。経費の内容に合わせた費用科目と、立替払いをした従業員に対する未払金を計上します。
4.従業員に支払いが行われる
給与支給日や、会社が取り決めた指定日に立て替え払いした代金分の支払いが経理や財務からなされます。支払いとあわせて、未払金/現金預金という仕訳で従業員に対する未払金を取崩して、現金預金で支払ったという会計処理をします。
しかし従業員が立て替えたにもかかわらず、未清算や遅延が発生するなどのトラブルが発生するケースもあるでしょう。主なトラブルの原因は以下のとおりです。
- ●「旅費」や「旅費交通費」の定義を知らない
- ●社内規程を理解していない
- ●ルールで定める長距離交通費や宿泊費の範囲や金額上限の理解が不十分
- ●領収書などの添付資料や申請内容の不備
- ●精算方法が効率化できていない
また、2023年10月から導入されたインボイス制度に対応するため、要件を満たしたレシートや領収書であることの確認も必要となりました。以下の記事では、インボイス制度の概要や税率計算方法について解説しています。あわせてご覧ください。
経費精算書の種類
経費精算業務を行ううえで欠かせない経費精算書の種類を紹介します。各申請書には決まったフォーマットはありませんが、申請内容によって区別して申請する必要があります。
仮払経費申請書
仮払い(仮払金)とは、経費にかかる費用の項目や金額が決まっていない状態で、事前に概算で経費として従業員に渡しておく現金のことです。主には、出張時の移動費や宿泊費などが高額な金額に及び、従業員が立て替えるのは負担が大きいと考えられる場合に、事前申請がなされれば概算金額の支払いが行われます。その時に必要なのが仮払経費申請書です。
仮払経費精算書
仮払いした経費を精算し、経費にかかる費用の項目や金額を確定するための書類です。仮払いした現金がどのような項目でいくら使われたのかを申告し、余剰や不足があった際には返金や追加支払い対応を行います。仮払経費申請書とセットで活用されます。
出張旅費精算書・旅費精算書
基本的には、出張費や社員旅行でかかった交通費や宿泊費などを精算するための書類ですが、出張旅費精算と旅費精算では規程が異なります。例えば出張旅費精算では、出張時の接待交際費の上限金額が決まっているなどの違いがあります。必要に応じて経理に事前確認や相談をし、領収書の管理を十分に行いましょう。
経費精算業務における課題とは
経費精算業務では、期日が定められているなかで日々膨大な量の処理に追われ、業務負担が大きいことが課題の一つです。また業務量が多ければ、ミスが発生したり書類管理が煩雑になったりするでしょう。ここでは経費精算業務で経理担当者が抱えがちな課題について紹介します。
計算ミスや仕訳ミスが起こりやすい
経費精算では日々の小口精算から交通費精算まで、膨大な量の書類を処理します。手作業で一件一件の内容を精査し、システムに入力するためヒューマンエラーが起こりやすいといえるでしょう。また従業員側の申請ミスも経理担当者を悩ませる課題の一つとなっています。よくあるミスとしては領収書の添付し忘れや経費精算書との金額相違、日当の計算方法の誤りなどがあるでしょう。
業務負担が大きい
毎月の締め切り日までに、大量の経費精算書を一件一件仕分けする作業には多くの手間がかかります。さらに、精算対象ごとに集計したりシステムに入力したりするほか、書類に不備があれば差し戻しをする必要もあるでしょう。場合によっては、試算表や決算書の修正を行わなければならず、経理精算に伴う一連の作業は経理担当者にとって大きな負荷がかかります。
領収書管理が煩雑になりがち
領収書の管理を紙ベースで行っている場合、貼付け作業やファイリング作業などが煩雑になりがちです。経費精算の領収書や帳簿などは、原則7年間保存が義務付けられており、日々蓄積されていく領収書ファイルの保管スペースを確保する必要もあります。また過去のファイルから領収書を確認する場合、どのファイルが該当するのかがわかりづらくなることも課題の一つでしょう。
なお、電子取引で受け取った領収書のデータは電子保存が義務化されました。電子取引データの保存要件については、国税庁のホームページをご確認ください。
参考:電子取引関係|国税庁
参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
経費精算業務の課題を解決する方法
非効率な経費精算業務は、経理担当者に大きな負担を強いることになります。ここでは経費精算業務を効率的に行う主な方法を紹介します。
アウトソーシングサービスの活用
経理業務すべてや経費精算業務のみを外部に委託できるサービスがあります。費用対効果を鑑みる必要はありますが、業務負担の軽減や不正防止の観点においてメリットがあります。ただし、社内に経費精算のナレッジが残らず人材育成ができない点が難点です。
経費精算システムの活用
経費精算システムの導入によって、経費精算業務を効率化します。多くの製品が電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しており、締め切りの通知機能や承認機能など多様な機能によって、業務負担が軽減されるでしょう。また、自社の経費精算規程やコンプライアンスに合わせたカスタマイズができるなど、アウトソーシングサービスにはないメリットもあります。
クラウド型システム導入
クラウド型経費精算システムは、データのバックアップなどを自動で行うので、機器の破損によるデータの損失を防げます。経費処理の流れを一元管理するとセキュリティ対策もしやすくなり、情報漏えいなどのリスクを大幅に軽減できます。
ID・パスワードでログインすれば、外出先からのアクセスも可能です。例えば直行直帰の多い従業員でもスマホやタブレット端末からいつでも場所を選ばず申請ができるので、管理者承認もスムーズに行えるようになり生産性が向上します。
加えて、ほかのソフトウェアとの連携や、経理データの電子化ができるなど、自由なカスタマイズが可能なシステムも登場しています。これらのラインナップの中では、「操作しやすい」製品が人気の上位を占めています。
以下の記事では、おすすめ経費精算システムを企業規模別に分けて比較しています。機能や効果なども紹介しているのであわせてご覧ください。
会計ソフトと連携したシステム導入
経費処理は、経理担当者の仕訳業務を経て、経費計上、企業の決算へとつながっていきます。これらの業務は一連の流れの中で行われるので、会計ソフトとの連携によって大幅な業務の効率化が見込めます。
経費処理の段階で、勘定科目や税区分を自動的に紐づけ、CSVデータを生成します。これらを、多くの企業が利用している代表的な会計ソフトと連携させれば、一気に経費計上や企業決算へと進むことができ、業務や処理の流れがスムーズになります。
さらに、導入時に、従業員が直感的に入力できるシステム選定によって、これまでのように経理担当者が従業員に指示し、従業員がマニュアルを見ながら申請するといったムダな時間を省けます。
エクセルや無料ソフト導入
エクセルや無料ソフトを活用した経費精算も可能です。エクセルは会計システムや会計ソフトの導入と比較してコストを抑えられますが、複数人で編集したり、最新データの把握がしづらくなったりするなどのデメリットもあります。
以下の記事では、経費精算業務の効率化が期待できる無料ソフトを紹介しています。
経費精算について理解し、効率的に経費精算業務を行おう
手間がかかり、煩雑になりがちな経費精算業務を効率化させるためには、経費精算システムの活用がおすすめです。製品の中には、交通系ICカードや経路検索ソフト、モバイル機器との連動にも対応したシステムも生まれ、進化し続けています。経費精算における課題を解決し、業務フローに役立つシステムをお探しの方は、以下の資料請求もぜひ活用ください。