物流倉庫における先入れ先出しとは
物流倉庫における在庫管理の基本に「先入先出法」というものがあります。この先入れ先出しの考え方は在庫管理をしている全ての企業で使われる言葉です。この先入れ先出しを徹底することで、出荷する商品の品質を保ち、適切な在庫管理を行えます。
では、具体的に先入れ先出しとはどのような管理方法なのでしょうか。ここからは物流倉庫における先入れ先出しについて説明していきます。
先に入荷したものから出荷する方法のこと
先入れ先出しとは、実際の商品の流れに関係なく、先に入荷したものから出荷する方法のことです。下の図はコンビニを例にしたものです。仕入れを先に行ったもの・古いものから順番に出荷(購入)していくため、特に食品など賞味期限があり劣化しやすい商品を扱う流通業界などで基本となる考え方です。
実践しないと品質維持や正確な在庫数の把握に影響が出る
先入れ先出しを実践しないと、出荷前期限が切れる商品からは売上を回収できず、本来不要な廃棄費用がかかるという弊害が起きます。万が一期限切れ商品を出荷してしまえばクレームとなり、企業としての信頼を失いかねません。
また倉庫で定期的に行う棚卸業務の際も、古いものから新しいものへ順番に商品が保管されていないことで現場で余計な混乱を招く原因となります。
このように在庫管理の基本ルールである先入れ先出しを遵守しないことは、企業の損失に繋がります。
先入れ先出しを実践するための6つの対策ポイント
この先入れ先出しは在庫管理の基本中の基本ですが、完璧に実践するのは難しいものです。具体的にどのような点を意識すれば、先入れ先出しを実践できるのか解説します。
1.古いものを一目でわかるようにする
この先入れ先出しの基本は、商品の状態を一目でわかるようにすることです。
そのため、賞味期限や仕入れを行った日時をシールで分かりやすく貼り付けたり、仕入れしてから一定の期間が経過したものの保管場所を変えたりすることが大切です。一目で分かるようにするポイントは、誰が見ても古いものだと分かる工夫をすることです。
例えば、カラーシールを活用し入荷した日時に応じてシールの色を変えることで分かりやすく管理できます。午前・昼・夕方に入荷した商品にそれぞれ「赤」「青」「黄」と異なる色のシールを貼るだけで、商品を取り間違うこともなくなるでしょう。
2.物の置き方を工夫する
在庫管理を行う現場では先入先出法を実施しつつ、効率的に商品を管理するためには、商品の置き方を工夫することが求められます。先程の説明のように、新しい商品と古い商品を保管する場所を明確に分けなければなりません。
例えば、コンビニの商品陳列でも新しいものを奥に配置し、古いものが手前に来るように陳列します。もし、手前から新しい商品を補充していけば、古いものは奥に追いやられてしまいます。倉庫での在庫管理も同じように新しい商品よりも古い商品を簡単に取り出せるように、物の置き方を工夫しなければなりません。
3.棚に保管する在庫量を必要最低限にする
先入れ先出しをするときは、基本的には棚に入った在庫を一度全て外に出し、入荷した商品を一番奥にして詰め直すという作業が発生します。このとき棚にあふれるほどの在庫が入っていては、再度詰め直すのに時間がかかります。また過剰な在庫は使用期限を見落とす原因にもなり得ます。適正在庫の観点から見ても、過不足のない在庫数を維持することが大切です。
4.作業員への教育を徹底する
倉庫内の作業員一人一人が先入れ先出しのルールを認識し、その重要性を正しく理解しているでしょうか。ピッキングなどの倉庫作業には派遣やアルバイトなどの短期雇用の方が携わる場合も多いでしょう。その際に一から先入れ先出しのルールやその重要性を説明していては時間のムダになってしまいます。
おすすめは先入れ先出しのルールについて図で分かりやすく説明した指示書を作成し、作業員の目に付きやすい場所に掲示することです。忙しい作業の合間でも先入れ先出しルールを徹底してもらいやすくなるでしょう。
5.責任者が抜き打ちで現場視察をする
倉庫業務は非常に忙しく、責任者からルールの徹底を呼びかけてもなかなか徹底されないという話が良く聞かれます。その場合は抜き打ちでの現場視察を行い、現場への強制力をもってルールの徹底をさせるしかありません。
物流部門の責任者は普段は本社にいる場合も多いと思いますが、報告書からでは分からないことも多いはずです。現場とはどうしても距離や温度差ができてしまうものですが、在庫管理における先入れ先出しの課題は双方が協力しなければ解決が難しい問題です。一体となって取り組むことを意識しましょう。
6.「整理」「整頓」「清掃」を行う
在庫管理を適切に行うためには「整理」「整頓」「清掃」の3Sを徹底しなければなりません。整理整頓を行い商品の位置や状態を把握できるようにしましょう。倉庫での管理方法に規則性がなく、また、乱雑だと必要な商品を探し出すのに時間がかかってしまい非効率的です。
商品を管理するときは、仕入れした日時や商品の種類ごとに保管すると良いでしょう。また、清掃を行って不要なものを処分し、管理しやすい環境を作ることが大切です。
在庫管理システム導入で先入れ先出しが楽になる
在庫管理システムの導入で先入れ先出しを効率よく実施できます。食品などの期限付きの商品は、入荷時に賞味・消費期限情報を把握する必要がありますが、エクセルなどで管理をするのは非常に手間がかかりミスも起こりやすくなります。
在庫管理システムであれば入荷時に期限を入力しておけば、ピッキング時に商品の期限を合わせてチェックしやすくなります。ピッキング時にハンディターミナルで商品バーコードを読み取ることで、万が一期限が新しいものが手前に来ていた場合は、誤って出荷してしまうのを防ぐこともできます。
在庫管理システムの基本が知りたい方は、以下の記事を参照ください。
正しい先入れ先出しを学び適切な在庫管理をしよう
先入れ先出しは在庫管理における基本原則です。しかし完璧に実践するのは難しく、どの企業でも日々工夫しながら取り組んでいるようです。今回ご紹介したポイントを意識しながら、是非完璧な先入れ先出しを目指してください。