在庫コストとは?
在庫コストは、在庫があることによって発生する費用です。在庫を保管する倉庫や従業員にかかるコストのほか、保管中の品質劣化による損失などが該当します。
在庫が少ないと、欠品による売上機会の損失が発生します。そのため、できるだけ多くの在庫を持っておきたいと考える企業は多いでしょう。しかし、在庫は抱えておくだけで在庫コストが発生します。経営を最適化するには、在庫コストの削減を考慮しなければなりません。
在庫コストの内訳は?
なぜ在庫を抱えておくだけでコストが発生するのでしょうか。在庫コストの内訳別に詳しく見ていきましょう。
保有に伴う諸費用を示す「在庫金利」
在庫金利とは、在庫を保有することで生じる費用の総称です。在庫の保有にコストがかかることを明らかにするための会計上の指標であるため、実際に支払が発生する金利ではありません。具体的には以下のコストから算出します。
- ■在庫購入時に調達する資金を借り入れる金利
- ■倉庫の賃料
- ■倉庫の管理費(作業員の人件費など)
たとえば、500万円の在庫を使い、100万円の利益をあげたとしましょう。この時、在庫金利を4%とすると、100万円の利益をあげるのに「500×0.04=20万円」の費用がかかったと考えます。よって、利益は「100-20=80万円」と見なします。
このように、利益とコストの関係を明確にするために使う架空の金利が在庫金利です。
倉庫にかかる運営費用を示す「保管費」
保管費とは、倉庫に在庫を保管することに伴って発生するコストです。外部倉庫と自社倉庫に分けて見てみましょう。
- 【外部倉庫】
- 在庫の特性や倉庫業者との取り決めによって保管費用を定めます。袋や箱、棚ごとに費用を決める場合もあれば、在庫の重量や容量で決めるケースもあります。
- たとえば、10kgあたり1,000円の保管料がかかるとした場合、500kg保管していれば保管費は50,000円です。
- また、入出庫に伴う荷役料も保管費として計上します。
- 【自社倉庫】
- 以下のような費用を保管費として計上します。
-
- ■設備費用(光熱費、建設費、減価償却費など)
- ■倉庫の保険料
- ■人件費(運搬費用、棚卸し費用など)
- ■未利用品、目減りや盗難などの損失
- ■資本の費用(在庫の調達による資金調達借入金利、機会損失など)
- ■販売促進用の物流加工費
価値低下に伴う損失費用を示す「棚卸評価損」
棚卸評価損とは、在庫の価値減少による損失のことです。たとえば、製品Aにしか使えない部品aがある場合、製品Aが生産終了すれば部品aの価値はなくなります。このように、仕入れた後に価値が大きく下がった場合は、原価ではなく時価で棚卸資産を考えなければなりません。
棚卸評価損が生じる具体的なケースは以下のとおりです。
- ■災害で大きな損傷を受けた商品
- ■品質劣化(破損、型崩れなど)がある商品
- ■流行性が極めて強い場合(アパレル商品など)
値下げ分の補填費用を表す「価格補償費」
値下げの結果生じた小売店の損失を補填する費用を価格補償費といいます。
たとえば、500円の商品Bを小売店に納入し、小売店がその商品Bを小売価格600円で販売するとしましょう。この場合、小売店は商品Bを1個販売するごとに100円の利益を得られます。
ところが、キャンペーンを実施し、商品Bの小売価格を550円に下げたとしましょう。この結果、小売店は本来得られたはずの50円分の利益を逃すことになります。そこで、その損失を補填するために販売価格を450円に下げ、小売業者に差額を返金するのが価格補償費です。
商品の返送にかかる諸費用を表す「返品費用」
販売した商品が返品された場合に生じる費用を返品費用といいます。返品されていなければ得られたはずの利益が失われるだけでなく、返品に伴う物流にもコストがかかります。それらの合計を在庫コストとして計上しましょう。
複数の商品の返品をまとめて受けた場合は、物流コストは按分になります。
在庫コストはどれくらいかかる?
米国における調査では、在庫コストは在庫金額の約2割が一般的という結果が出ています。そのうちの75%は在庫金利で、残りのほとんどは保管費と棚卸評価損で占められています。
また、パソコンなどのハードウェアを販売する米国のある企業は、在庫コストは売上の約13%との計算結果を発表しています。在庫コストの中で大きな割合を占めるのは部品評価減(棚卸評価損)で、全体の4割を超えています。
一方、基本的な在庫コストである在庫金利と保管費は、合計しても在庫コスト全体の1割程度でした。
さらに、日本におけるある調査データによると、在庫コストは在庫金額の約3割という結果が出ています。人件費と金利が約1割ずつで、そのほかのコストを合わせて合計3割です。
実際に在庫コストがどのくらいかかるかは、商品や業態によって大きく異なるため一概にはいえません。
在庫コストを削減するには?
続いて、在庫コストを削減する方法を見ていきましょう。
棚卸資産の評価方法を見直す
棚卸資産の評価方法を見直すことで、在庫コストの1種である棚卸評価損の数値が変わります。たとえば、評価方法として低価法を採用すると、ほかの方法よりも現状に則した価値を算出できます。実態を正確に把握できるため、在庫コストの改善につなげられるでしょう。
ただし、実際にどのような方法で評価すべきかは業種や業態によって異なります。いくら正確性を求めたいといっても、評価に膨大な手間がかかるのでは現実的ではありません。手間と正確性の両方を考慮して、適切な評価方法を選びましょう。
在庫管理システムを活用する
在庫管理の体制を整えるのに有効なのが、在庫管理システムの活用です。在庫管理システムとは、在庫の数や保管場所、入出庫状況などの管理を支援するITツールです。これを使うことで、倉庫における業務が円滑化します。
たとえば、ピッキングを手作業ではなく、ハンディターミナルとバーコードで行うことが可能です。その結果、人為的ミスを排除でき、商品の出入りを正確に把握できるようになります。
商品の数を正しく把握できれば、それを基にした堅実な発注が実現するでしょう。無駄な在庫を仕入れることがなくなり、スペースにかかるコストや人件費を削減可能です。抱えている在庫が少なく済む分、仕入後の商品価値減少による棚卸評価損も避けられます。これまで経験や勘に頼って発注量を決めていた場合は、大きなメリットを受けられるでしょう。
在庫管理システムについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
在庫コストを削減し、経営を効率化させよう!
在庫コストとは、在庫を保有することで生じる費用のことです。具体的にどのくらい生じるかは扱う商品や業態によって異なります。在庫コストは主に以下の5種類に分けられます。
- ■在庫金利
- ■保管費
- ■棚卸評価損
- ■価格補償費
- ■返品費用
在庫コストの削減に必要なのは適切な在庫管理です。そのためには在庫管理システムを利用するとよいでしょう。以上を踏まえて、在庫コストの削減を目指しましょう。