在庫管理に必要な「在庫分析」とは
在庫分析とは、在庫が適正に保たれるよう在庫状況を把握し分析を行うことを指します。在庫管理のPDCAサイクルにおけるC(評価)に該当する作業であり、在庫分析を行うことで自社の在庫管理に問題がないか確認したり、原価の把握や適正在庫の基準を見直したりするのに必要です。
在庫分析の目的は適正在庫の実現だけではありません。売れ筋を把握し、販売計画をはじめとした経営判断に活かされることもあります。そのため在庫分析は企業にとって重要な業務なのです。
在庫分析のメリットを以下にまとめました。
- ●不良在庫を減らし、在庫不足による販売機会の損失を防ぐ(適正在庫の維持)
- ●商品ごとの売れ行きを把握できる
- ●在庫過多による管理コストの増大を防ぐ
在庫分析の種類
一口に在庫分析といっても、いくつかの方法が存在します。では、在庫分析の種類を4つ見ていきましょう。
ABC分析
ABC分析とは、売れ筋商品とそうでない商品を分類する分析方法です。この分析によって売れ筋商品と判断された商品の管理に注力します。理想的なのはすべての商品を適切に管理することです。しかし管理に使える場所や人手は有限なため、重要商品に優先的に投じる必要があります。そこで役立つのがABC分析です。
ABC分析では、商品を以下の3種類に分類します。
- A
- 売れ筋商品。最優先で管理し、販促にも注力する。
- B
- ほどほどに売れる商品。管理体制は現状維持。
- C
- 死に筋商品。管理を緩めるほか、取扱いの見直しも行う。
売上高と売上の構成比率からグラフを用いて可視化できます。ABC分析の方法について、詳しい解説はこちらからご覧いただけます。
在庫回転率分析
在庫回転率とは、在庫がどれだけ消費されたかを示す指標です。以下の計算式で算出します。
在庫回転率=期間中の出庫数量(金額)/期間中の平均在庫数量(金額)
在庫回転率が高いほど、その商品が売れていることを意味します。
たとえば、ある期間に商品Aの在庫が平均して30個あったとしましょう。そして、その期間における商品Aの出庫数が60個だったとします。この場合、在庫はこの期間に約2回ほどすべて入れ替わったことになります。これが在庫回転率=2の意味です。「率」という言葉が入っていますが、割合ではなく回数を示す指標である点に注意しましょう。
この値を同業他社と比較することで、自社の業績が堅調か分析できます。また、在庫回転率が小さい商品は、その原因を突き止めてPDCAサイクルにつなげましょう。
在庫回転率についての詳しい解説はこちらからご覧いただけます。
在庫回転期間分析
在庫回転期間とは、在庫がすべて入れ替わるのにかかる日数のことです。以下の計算式で算出します。
在庫回転期間=在庫金額/(売上原価/365)
計算式内の「売上原価/365」は1日あたりに出荷される在庫の原価を示します。これを在庫金額で割ることで、すべての在庫が入れ替わるのに要する日数が算出されます。日数ではなく月数を求めたい場合は、365の部分を12に変更しましょう。
在庫回転期間の値が小さいほど、高速で在庫が入れ替わっていることを意味します。継続的にこの数値を算出し、増大傾向にあるようなら注意が必要です。また、中小企業庁が業種ごとの水準を発表しているため、それと比較することで自社の在庫回転期間が良好か判断できます。
交差比分析
交差比率とは、対象の商品によってどれだけの利益が生み出せているのかを示す指標です。以下の計算式で算出します。
交差比率=在庫回転率×粗利益率
この数値が大きい商品ほど、企業の利益に貢献しているといえます。
在庫回転率はどれほど効率よく在庫が入れ替わっているかを示す指標であって、これだけでは利益の多寡はわかりません。なぜなら、たとえ在庫回転率が2倍になっても、粗利益率が半分になったのであれば得られる利益は同じだからです。
そのため、利益を示す指標として、在庫回転率に粗利益率をかけた交差比率が用いられます。一般的に、交差比率が200%以上なら売れ筋、100%以下なら死に筋商品と判断されます。
ちなみに、上記の計算式は以下のように変形して使うことも可能です。
交差比率=在庫回転率×粗利益率
=(売上高/平均在庫高)×(粗利益/売上高)
=粗利益/平均在庫高
デッド在庫・緩動在庫分析
デッド在庫とは、劣化や型落ちなどで市場に出せなくなった商品を指します。また緩動在庫とは、倉庫に長期間保持されている在庫のことです。在庫回転期間をABC分析して算出します。
なおデッド在庫は安易に廃棄すればよいわけではありません。商品に試算評価額が残っていれば適切に償却処理を行う必要があるためです。緩動在庫においては、適正在庫になるまで発注や製造計画を見直さなければなりません。在庫の状態を正確に把握することで、管理コストやスペースの適正化が叶うでしょう。
在庫分析グラフの種類と作成方法
続いて、在庫分析グラフの種類と作り方を見ていきましょう。
ヒストグラム
ヒストグラムとは、データを階級別に分類して棒グラフにしたものです。横軸に階級、縦軸に度数を取ります。度数とは、データの数量のことです。たとえば、年齢別の人口を示すヒストグラムでは、階級が年齢、度数が人数になります。
ヒストグラムはExcelで作成できます。作成手順は以下のとおりです。
- 1.「ファイル」から「オプション」をクリック
- 2.「アドイン」を選んで「管理」から「Excel アドイン」を選択
- 3.「設定」をクリック
- 4.「分析ツール」のチェックボックスにチェックを入れて「OK」をクリック
- 5.「データ」タブの「データ分析」から「ヒストグラム」を選択
- 6.ヒストグラム化したいデータを指定し「OK」をクリック
Zチャート
Zチャートは、推移や傾向を把握するために用いるグラフです。在庫分析では、売上や在庫量の推移を把握するのに使われます。横軸に月、縦軸に在庫数や金額を取って折れ線グラフとします。
Zチャートは単なる折れ線グラフの一種です。そのため、Excelでは以下の手順で作成できます。
- 1.グラフ元のデータを選択する
- 2.「挿入」から「折れ線グラフ」を選択する
流動数曲線
流動数曲線とは、1つの製品を大量生産するメーカーに適した管理手法です。横軸に日付、縦軸に数量を取り、「累積計画」「累積実績」「仕掛品在庫」の3本の折れ線グラフを取ります。
このグラフの傾きが生産能力を示すことから、製造業における進捗管理に用いられます。Excelでの作り方は、Zチャートを含む通常の折れ線グラフと同じです。
在庫分析に役立つツール
前述したとおり、売上分析を行うにはExcelを使います。しかしExcelでは入力の手間や入力ミスの可能性、計算式や使い方が難しく属人化してしまう可能性などがあげられます。より効率的に分析を行うにはどうしたらよいのでしょうか。
そこで役に立つのが、在庫分析機能を備えた在庫管理システムやデータ分析が可能なBIツールなどです。データが自動で反映されるようになり、誰でも分析がしやすくなったり共有できたりするでしょう。
なお、以下の記事より在庫管理システムの最新比較表がご覧いただけます。
在庫分析を行い、在庫管理の精度を上げよう!
在庫分析とは、在庫管理における評価の段階です。さまざまな指標やグラフを用いて、在庫管理体制に問題がないか評価します。在庫分析は適正在庫を保つためにも有効な手法です。
ぜひ在庫管理システムやBIツールの活用も視野に入れながら、自社の在庫分析体制を見直してみてください。