アパレル業界の動向
アパレル業は競争が激しく、近年大きく変化している業界です。
これまでアパレル業界は生産を担う川上、流通を担う川中、販売する川下の区分けが明確でした。しかし現在では生産から販売まで1社で行うナショナルブランドや海外の大手ブランドも日本に進出しており、区分けが失われつつあります。地方都市ではシャッター商店街が多くなり、「勝ち組・負け組」が際立つ業界となってしまいました。
また、余剰在庫の処分を専門としているアウトレットストアが見られるようになりました。これもかつてはなかった業態です。現在では当初からアウトレットストア向けに製品を開発することもあるようです。
【アパレル業界】在庫管理の3つの特徴
アパレル業界の在庫管理には他の業界には無い特徴があります。1つずつ見ていきましょう。
1.商品のライフサイクルが早い
アパレル業界における在庫管理の第一の特徴は、商品のライフサイクルの速さです。トレンドの移り変わりや季節商品などが存在するために短期間での販売が求められ、流行り廃りが激しいのが特徴です。
過剰な仕入れは在庫となって停滞し、たちまち商品価値を失います。適正な在庫期間も、通常の製品は2か月、セール品は1か月など販売形態や季節により異なっています。アパレル業において在庫は「生もの」で、その巧拙によっては極めて大きなリスクとなり得ます。適正在庫を維持するための手腕が問われるのです。
2.返品による在庫リスクが高い
第二の特徴は、古い取引慣行が根強く残っていることです。返品制度がその代表で、百貨店などの小売側が在庫リスクを持たないための制度になっています。
一度出荷した商品であっても、返品され売上がなかったことになる場合が他業界よりも多い傾向があります。返品される可能性を常に踏まえつつ在庫の管理をする必要があるでしょう。
3.商品の種類が非常に多い
第三の特徴は管理対象となる商品の種類が多いことです。顧客の嗜好が多様化していることから商品のカテゴリが非常に多く、サイズや色によっても分類され、結果として膨大な商品アイテム数になります。
また、季節ごとに入れ替わる商品ラインアップやファストファッションなどに代表されるように「流行」による商品寿命が短いこともアイテム数を増やす要因となっており、更に在庫管理を難しくしています。
アパレル業によくある在庫管理の3つの課題と解決策
アパレル業での在庫管理にはどのような課題があるのでしょうか。ここでは代表的な3つの課題と解決策について紹介します。
課題1.定価で販売できる期間が短い
在庫管理の特徴で説明した通り、アパレル業が取り扱う衣料品は、流行りやトレンドが非常に重要視されます。ライフサイクルが短い商品の代表例として、消費期限を持つ食品が上げられることがありますが、衣料品についてもシーズンを意識することが必要です。
衣料品はシーズンや流行りに合ったものであれば定価で販売することができます。しかしシーズンの後半になると、割引や値下げをしなければ利益を得るどころか売り切ること自体が難しくなっていくのです。
利益を最大化するためには短いシーズンのピークに合わせて在庫量を各保し、かつシーズンが終了するまでに在庫を売りきらなければなりませんが、完璧に実施できている企業はほとんど無いでしょう。
解決策:適正在庫を保ち可能な限り定価で販売する
目指すべきは可能な限り多くの商品を定価で販売することです。そのためにはシーズンのピークに在庫が絶対に欠品せず、かつ、余ることの無い在庫量を維持することが必要です。過剰になった在庫は割引や値引きをする必要が出てきます。適正在庫を保つことを心がけましょう。
適正在庫についてはこちらの記事をご覧ください。
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課題2.立地やSNSなどの影響で需要予測が難しい
店頭販売をしているアパレル業の場合、その店舗の立地によって需要がある商品は少しずつ異なるでしょう。駅前やファッションビル、デパートなどの違いで、ある店舗では売り切れてしまうほど人気の商品が、別の店舗では余っているということも起きがちです。
特に全国展開をしている企業の場合、北海道~沖縄まで同じシーズンであっても気温差があることで、売れる商品が全く異なることもあります。その他、異常気象や最近ではSNSなどで急に人気が出る商品もあり、アパレルの需要予測は非常に難しくなっています。
解決策:需要予測の手法やツールを参考にする
アパレルの場合、需要予測には経験者の勘も少なからず必要です。しかしそれだけでは担当者の労力が大きく、必要な工数が際限なく増加してしまいます。そこで需要予測の土台となる部分は手法やツールに頼り、+αとして経験者のノウハウを生かすことでシーズンごとの需要予測を定常作業に近づけることができるでしょう。
需要予測については以下の記事を参照ください。
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課題3.アナログな検品方法によるミスが減らない
アパレル業界では一部の資金力のある企業は既にRFIDを活用した在庫管理を始めています。しかしまだほとんどの企業は手作業による検品を実施しているのが現状でしょう。
アパレルで扱う衣料品はサイズや形が微妙に異なるなどの違いがあり、アパレルで長く働いている人でも検品時に間違えることもあります。特にノウハウの無い派遣社員や単発のアルバイトによる作業を行っている場合は、小さなミスが重なることで商品の過不足が起こり、在庫管理全体に影響が出てしまうことも少なくないでしょう。
解決策:RFIDで素早く正確な検品を実現する
RFIDとは、情報を何度でも書き込めるICタグのようなものです。非接触で一度に大量のタグを読み込めるため、バーコードなどよりも利便性は高いと言えます。アパレル業界は、このRFIDの活用が特に進んでいる業界です。導入による実績も増えてきているため、自社での活用のハードルも下がってきていると言えます。
RFIDの活用については、こちらの記事をチェックしてみてください。
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在庫管理を最適化していく3つの方法
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1.在庫を見える化することで課題を見つける
在庫が過剰になったり欠品したりなぜか管理が上手く行かないという場合は、在庫の「見える化」から始めてみましょう。自社で扱っている多種類の商品ついて、どこに何がいくつ保管されているのかリアルタイムに把握できていますか。
在庫を保管する倉庫では、日々商品が出たり入ったりを繰り返し、流動的に動き続けています。その状況を常にモニターできなければ、自社の在庫管理の課題を洗い出すことは難しく、適正な在庫数を維持することもできません。在庫を見える化するために、専用の在庫管理システムを導入している企業が増えてきています。
2.在庫管理の作業手順を標準化する
在庫管理はどの企業でも業務年数の長いベテランの経験や勘に頼りがちです。急な退職などで現場が混乱し、在庫過剰や欠品に陥ってしまったという話もよく聞かれます。また人によって作業手順が異なるために作業が非効率化してはいないでしょうか。
これらの課題を解決するには、誰でも同じレベルの在庫管理ができるように作業を標準化(統一)することが重要です。作業手順が確立されていれば急な退職にも対応でき、ミスを減らすことにも繋がります。
3.在庫状況を全員で共有する習慣をつける
大量の返品が発生したという事実が仕入れの担当者に共有されておらず、在庫過剰になってしまった経験はありませんか。企業規模にもよりますが、在庫管理は基本的に複数人で担当することがほとんどでしょう。
扱う商品数や取引をする販売先が増えれば増えるほど、担当者間での情報共有を意識して行う必要があります。単純な情報共有ミスで自社に大きな損害を与えないよう、在庫状況を全員で共有する工夫が必要です。
在庫管理システムを導入で効率化
ここまでアパレルの在庫管理の課題と改善策を解説してきましたが、商品サイクルの短い大量の在庫を手作業で管理することは非常に困難であると考えられます。勘や経験に頼った管理ではノウハウを継承できず、コンピュータを利用したシステム化を進める企業が増えています。
専用の在庫管理システムを導入することで誰でも情報の入力作業や閲覧ができるようになり、作業を効率化することができます。在庫管理システムの製品を見てみたい方は、以下の記事をご覧ください。
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アパレル業の在庫管理システム導入事例
在庫管理システムを導入することでどのような効果があるのか、導入事例を紹介します。
アルバイトでも可能となった入出庫管理
クラウド対応の在庫管理システムを導入することで、スマートフォンからでも出荷指示ができるようになります。スマートフォンを使い慣れているアルバイト店員でも使いこなすことができ、店頭業務と入出庫業務の効率化を実現します。
在庫処分の適切な判断を支援
エクセルで行っていた在庫管理をシステム化するケース。在庫をリアルタイムに見える化することで、過剰在庫の処分が早期に可能となり、利益率の向上を期待できます。
RFIDでフリーロケーション
入出庫管理を効率化するために、RFIDによる管理を導入するケース。出荷指示からピッキングまで一括処理することはもちろん、倉庫のフリーロケーションが可能となります。フリーロケーションは倉庫スペースの有効活用がしやすいので、季節ごとに商品が入れ替わるアパレル業界に向いているといえます。
在庫管理システムで属人的な勘と経験からの脱却を
アパレル・ファッション業界では、シーズン毎の売れ筋を予測しながら製造や仕入れの計画を立てますが、完璧な予測は不可能です。実際の需要と計画とのズレは防ぎようがありません。それでも、品切れや売れ残りは、最小限に抑えなくてはなりません。
特に多店舗展開をしている場合、店舗ごとの在庫の最適化は重要です。少しずつのロスが全体では大きなロスになります。そのため、店舗によってアイテム構成を調整することで全体の最適化を実現します。
在庫管理システムは、そのような在庫調整をベテランでも新人店長でも同じレベルにできるよう、勘と経験に頼らずに実行できるように支援してくれます。したがって、アパレル・ファッション業界に特有の事情が反映された在庫管理システム選びが重要になります。