よくある労働基準法違反のケースは?
よく見られる労働基準法違反の事例を9つ見ていきましょう。
1.労働・残業時間の違反
労働基準法では、労働者を1日8時間・週40時間までしか働かせてはならないことが定められています。しかし、36協定を締結している場合のみは、この時間を超過して残業をさせられます。逆に言えば、労働者が残業について納得し、協定で定めた範囲でしか残業は認められないということです。
ところが、36協定で合意された範囲を超えている場合や、そもそも36協定を結ばずに残業をさせているケースがあります。これは明確な法律違反であり、6か月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金が科されます。
2.休憩時間の違反
労働基準法において、労働時間が6時間を超過する場合は45分、8時間を超過する場合は60分以上の休憩を与えるよう定められています。これに違反すると、6か月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金が科されます。
休憩時間の違反は、労働時間・残業時間の違反ほど多くありません。ただ、それは違反自体が少ないのではなく、休憩時間の違反程度で訴える労働者がいないだけです。法律違反であることは間違いないため、適切に休憩時間を与えましょう。
ちなみに、休憩時間というのは従業員が完全に職務から解放される時間のことです。休憩時間も電話待ちなどで職場を離れられないのであれば、休憩時間とは認められません。
また、休憩時間を与えるのは労働時間の途中と決まっています。たとえば、連続で8時間働かせた後、帰宅までに1時間を与えるような方法は認められないため気をつけましょう。
3.休日・有給に関する違反
雇用者は労働者に対し、週1日以上の法定休日を与えなければなりません。違反すると、6か月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金が科されます。
法定休日とは、企業が労働者に週1日あるいは4週間に4日以上与えることが義務付けられている休日です。これを与えずに代わりに有給で休ませることは違法なため気をつけましょう。
ただし、残業と同様に36協定で雇用者と労働者の間で合意を形成しているのであれば、週7日働かせても良いことになっています。
4.残業代・休日手当・深夜手当の違反
残業代・休日手当・深夜手当は必ず支払わなければなりません。違反すると、6か月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金が科されます。
ところが、多くの企業が労働者に残業代を満額与えていません。この場合、労働者は雇用者に未払い分の残業代を請求する権利を得ます。請求されると、企業は一度に莫大な額のお金を支払わなければなりません。労働基準法違反の罰則と合わせると、経営に深刻なダメージが及ぶでしょう。
また、2020年4月を境に、未払い残業代を請求する権利の時効期間が2年から3年に伸ばされたことも要注意です。企業が労働者から未払い残業代を請求される可能性が以前よりも高くなっています。
5.給料の未払いの違反
給料日に給料を全額支給しなければ労働基準法違反になります。具体的には以下の行為が法律違反です。
- 働いた分の給料が支払われない
- 50万円以下の罰金
- 給料が各地域で定められている最低賃金を下回っている
- 50万円以下の罰金
- 給料日に全額の支払いが完了しない
- 30万円以下の罰金
特に注意しなければならないのが上記の3つ目です。最終的には全額払うつもりであっても、支払の先延ばしや、給料日を過ぎての分割払いは認められません。
6.労災に関する違反
仕事中あるいは通勤中に労働者が怪我をしたり病気にかかることを労働災害(労災)といいます。労働者が労災に遭ったら、雇用者は療養・休業費用を負担しなければなりません。一方、労働者が死亡した場合は遺族補償や葬祭料を支払う必要があります。これらに違反すると6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されます。
また、上記のほかにも労働基準監督署への報告など、さまざまな義務が生じることにも留意しましょう。その義務を怠ると労災隠しとして刑事罰が与えられる可能性があります。
7.労働条件・就業規則に関する違反
労働者が入社する際には、雇用者側は労働条件や就業規則の内容について通知しなければなりません。これに違反すると30万円以下の罰金が科されます。具体的には以下の状態が法律違反に該当します。
- ■入社時に労働条件の説明をしない
- ■入社後に勝手に労働条件を変更している
- ■就業規則を作成していない
- ■作成した就業規則を労働基準監督署に届け出ていない
- ■就業規則を誰もが確認できる場所に掲げていない
8.妊娠・出産に関する違反
労働基準法では妊娠や出産に関して、雇用者に以下の義務が定められています。違反すると6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されます。
- ■労働者が産前産後休暇を求めた場合、認めなければならない
- ■妊産婦が残業をしないと言った場合、認めなければならない
- ■生後満1年未満の子どもを育てる女性が育児時間を求めた場合、与えなければならない
9.一方的な解雇に関する違反
労働基準法では、解雇について以下のことが定められています。
- ■解雇の30日以上前から、解雇について労働者に知らせておかなければならない
- ■上記を満たさなかった場合、30日分の賃金を支払わなければならない
この両方に違反した場合は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されます。
労働基準法違反が発覚したら?
労働基準法違反をした場合、以下の理由で発覚することがあります。
- ■労働者による管轄労働基準監督署への通報
- ■労働者による都道府県労働局の総合労働相談コーナーへの相談
発覚後は労働基準監督官が企業に立入検査を行います。労働基準監督官は労働基準監督署の職員ですが、警察と同様に逮捕などの権限を持ちます。
検査により違反が見つかると行政指導がなされます。指導の結果、企業が違反状況を改善すれば送検は行われません。しかし、立入検査を拒んだり行政指導を無視したりすれば、悪質な企業として送検されてしまいます。
送検される場合には、厚生労働省のHPに企業名が公表されます。社会的信頼を大きく損なうことになるでしょう。
労働基準法違反にならないための対策は?
労働基準法違反で企業が注意したいのは、知らぬ間に違反してしまうことです。実際に、明らかな違反が行われているにもかかわらず、雇用者も労働者も気づいていないケースは多いです。これは、いつか違反が発覚して大きな損失を被るリスクが潜んでいることを意味します。
このようなリスクを排除するには、労務管理を徹底しなければなりません。しかし、さまざまな業務に追われる中で完璧な労務管理を行うのは難しいでしょう。
そこで活用したいのが労務管理システムです。これは入退社時の手続きや書類作成、給与計算などを行えるITツールです。労務管理に伴う雑務をツールで効率化すれば、労働基準法違反にならない体制作りに注力できるでしょう。
労働基準法に違反しないよう労務管理を適切に行おう
労働基準法違反のよくある例は以下のとおりです。
- ■労働・残業時間の違反
- ■休憩時間の違反
- ■休日・有給に関する違反
- ■残業代・休日手当・深夜手当の違反
- ■給与未払いの違反
- ■労災に関する違反
- ■労働条件・就業規則に関する違反
- ■妊娠・出産に関する違反
- ■解雇に関する違反
違反が発覚すると懲役や罰金刑を受けるほか、企業名を公表されて社会的信頼を損ないます。労務管理を徹底し、労働基準法を遵守しましょう。