生産拠点の最適化を実現するために検討すべきこと
生産拠点を最適化するためには、どのようなことを検討した方がよいか解説します。
分散生産か、集中生産か
ある製品を複数の拠点で生産することを分散生産、1拠点だけで生産することを集中生産といいます。どちらが適しているかを判断する際は、以下の要素を踏まえて考えてみましょう。
- ■生産コスト
- ■輸送コスト
- ■法人実効税率
- ■為替変動対応
- ■製品品質
- ■顧客レスポンス
- ■カントリーリスク
- ■技術流出リスク
- ■サプライチェーンリスク
たとえば、海外拠点で製品を生産する場合は、カントリーリスクや為替変動リスクが伴います。このリスクを最小限に抑えるためには、分散生産のほうがよいでしょう。しかし、分散生産にすると技術が流出する可能性は高くなるため、一概に正解とは言えません。
一方、分散生産と集中生産を組み合わせる方法もあります。たとえば、製品の品質を握る重要な部品は国内で作り、組立は人件費の安い海外に任せるやり方があります。
このように、上述した要素を総合的に考慮して最適な方法を導き出しましょう。
どこの国・地域で生産するか
分散生産・集中生産のどちらにしても、拠点をどこにするかは重要な問題です。また、さまざまな要素を検討する必要があります。
たとえば流出させたくない技術を要する製品製造なら、日本の拠点で生産するのが安心でしょう。しかし、東アジアに対して人件費が高くなりがちです。また、製造した製品をどこで販売するのかによって輸送コストが大きく変わる点も留意しましょう。
こうした要素を踏まえて最適な国・地域を選定するためには、利益・採算のシミュレーションが大切です。製品の生産を検討している各拠点について原価計算を行い、利益・採算を比較してみましょう。

生産拠点を最適化するための実行手順
ここまでは生産拠点を最適化するための考え方を見てきました。次に、考え方にもとづいて具体的に何をすればよいのかを解説します。
1.プロジェクトの立ち上げ
プロジェクトの立ち上げ期には、以下のことを行いましょう。
- ■目的の明確化
- ■スケジュールの設計
- ■参画メンバーの役割決定
- ■利害関係者との対談
- ■マイルストーンの共有
- ■調査する拠点の選出
- ■分析フレームワークや成果物の定義
事業部で上記のことを行い次第、次は各拠点と協力しながらプロジェクトを進行させる必要があります。どこまでを事業部が担い、どこからを各拠点に任せるのかを決めましょう。たとえば、拠点横断的な意思決定やグローバルレベルで重要な案件は事業部が、それ以外は現場が担当するといった分担が可能です。
ある企業を例に取り上げて紹介します。グローバルレベルで契約した顧客への商品を生産する拠点については、在庫基準設定から生産拠点配分まで、すべて事業部が担当することになりました。一方、販売予測は各拠点の営業担当者に任せ、それを事業部がモニタリングするという形式を取ったといいます。
2.費用対効果の検証
続いて、各拠点における利益や採算をシミュレーションします。
生産拠点設置を検討している各地域で、政府機関や建築業者にインタビューを行い、費用や条件などを確認しましょう。インタビューで得た情報を基に、初期投資コストやオペレーションコストを計算します。
さらに、製品ごとやエリアごとのコストを割り出します。具体的には、どのエリアで調達した原料を使用し、どの拠点でどのような製品を作り、どこの拠点に何を転送するのかを考えてみましょう。このような流れで、地理的要因と製品の特徴を踏まえて総合的なコストを導き出します。
次に、製品を販売することでどのくらいの利益が出るのかを検討します。こちらも製品やエリアごとに、単価を予測しましょう。海外で販売する場合は、為替変動やカントリーリスクなども考慮が必要です。このようにして費用と利益をシミュレーションし、費用対効果を検証しましょう。
3.業者の選定
最後に、生産工場の立ち上げを請け負う建築業者や不動産業者、機械業者を選ぶ必要があります。クオリティを重視する場合は、実績豊富な大手の業者に任せるのが安全ですが、費用が高くなりがちです。コストを抑えたいのであれば、積極的に展示会やWebで業者から情報収集をしましょう。
ただし、業者選定を慎重にしすぎると大幅な時間ロスになります。誠実に対応してくれる業者を1社選び、綿密な打ち合わせをしながらコストカットを検討していくのが現実的です。
生産拠点の最適化を実現する上でのポイント
生産拠点の最適化を考える際には製品製造や原料の調達、製品販売エリアばかりに注目しがちです。しかし、物流のこともセットで考えましょう。物流は製造業において、収益やコストを左右する重要な要素だからです。
国内拠点で機械部品を作り、海外拠点でそれを組み立てるケースを考えてみましょう。
この場合は、国内拠点が発送した機械部品が海外拠点に届くまでに長い時間を要します。したがって海外拠点では在庫量を調節するにあたり、ある程度需要を予測しなければなりません。在庫がなくなってから部品を仕入れると大幅に遅れるためです。しかし予測にもとづいて仕入れる以上、想定外の過剰在庫や在庫切れに見舞われるリスクは高くなるでしょう。
上記の例は製造段階の話でしたが、商品を顧客に届ける段階でも同様に、物流は企業の収益やコストを左右します。物流にも充分注意して生産拠点の最適化を目指しましょう。
生産拠点を最適化し、コスト低減を実現しましょう
生産拠点を最適化する際には、まず以下の2点に留意する必要があります。
- ■分散生産か集中生産か
- ■どこの国・地域で生産するか
上記のことを決めたら、次は以下の手順で生産拠点の準備を進めましょう。
- 1.プロジェクトの立ち上げ
- 2.費用対効果の検証
- 3.業者の選定
地理的要因や製品製造コストだけではなく、物流も考慮する必要があります。以上を踏まえて、生産拠点を最適化しましょう。
