
大規模プロジェクトとは?その定義と特徴
大規模プロジェクトとは、関係者が多く、長期間にわたって進行し、コストやスケジュールに大きな影響を及ぼすプロジェクトのことです。明確な定義は業界や企業によって異なりますが、以下のような条件に当てはまるものは一般的に「大規模」とみなされます。
- ● プロジェクト期間が1年以上にわたる
- ● 参画人数が50名以上(あるいは100名を超える場合も)
- ● 関係部署・外部委託先が複数存在する
- ● 数千万円〜数億円規模の予算が動く
なお、参画人数が30〜50名程度でも、関係部署や外注先が多く関わる場合や、業務の複雑性が高い場合には、大規模プロジェクトとして扱われることがあります。人数だけでなく、構造やリスクの大きさも判断基準になります。
小規模〜中規模のプロジェクトに比べて、統制の難しさ・関係者間の意思疎通の困難さ・品質や納期への影響リスクが大きくなるのが特徴です。そのため、管理には高い専門性と体制構築が求められます。
大規模プロジェクト管理の特徴
プロジェクトが大規模な場合の管理面の特徴を解説していきます。
意思疎通が困難である
大規模プロジェクト管理は、意思疎通が困難という特徴があります。
プロジェクトによっては外部と協働で行うケースも多いでしょう。そのような場合、コミュニケーションが取りづらいだけでなく、時間的ロスも生じてしまいがち。メールを送付して返信に数日を要することも多く、その度に業務もストップします。
また、さまざまな部署がプロジェクトに参加する場合は数多くの会議が毎週開催されます。各部署間で認識のズレが発生することも多いでしょう。さらにプロジェクトを管理する側は会議の準備などに追われ、どこで何が起きているのか把握するのが困難です。
スペシャリストが必須となる
プロジェクトが大規模になるとスペシャリストが必要となってくるでしょう。大規模プロジェクトでは3~5年と期間が長く、またプロジェクトに係る費用も膨大です。
そして構成要員や複雑な要素も多いため、プロジェクトの管理が難しくなります。そこで知識だけではなく、業務全般に精通した能力やスキルを備えたプロジェクトマネージャーがプロジェクトには必須です。
プロジェクトマネージャーは全体を管理するだけでなく、メンバーのサポートも行います。大規模プロジェクトの成功は、マネージャーを支えるサポート体制づくりも成功要素の1つでしょう。
標準化が重要になる
大規模プロジェクト管理ではさまざまな部署や組織のメンバーがチームとして参加するため、業務内容の標準化が重要です。
プロジェクトが大規模になると、複数のチームを編成することが多いでしょう。品質の測定を行うにはチームリーダーから必要な情報を吸い上げるような構造を作り、標準化を図る必要があります。
また、多様なメンバーが集まり一定の品質の作業を行うには、最低限の標準化を図る必要があるでしょう。そのためにも関係調整のマネジメントが大切になってきます。
大規模プロジェクトの管理方法
大規模プロジェクトの管理方法を解説します。
PMが進捗・品質管理
PM(プロジェクトマネージャー)が大規模プロジェクトの進捗状況や製品の品質管理を行います。
大規模プロジェクトは期間が長く先行きが不透明なため、適切にプロジェクトを管理するPMの存在が必要です。専門性の高い知識があり、またメンバーをマネジメントするスキルが求められます。
PMは進捗状況を把握し標準化された方法で品質管理を行います。さらに、問題があればメンバーと共に解決を図り、必要があればメンバーを指導。また顧客とミーティングを重ね、信頼関係を築くのもPMの役割です。
PMOが業務を円滑化
大規模プロジェクト管理にはPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)による業務円滑化のサポートが不可欠でしょう。PMOとは、プロジェクトマネジメントを標準化し、人材育成を目的とする常設部署のサポートのことです。
プロジェクトが円滑に進むにはPMOによるPMのサポートが重要です。PMOのサポートによりPMはプロジェクト全体の把握や課題解決に注力できるようになります。また、PMOは高い知識をもつメンバーで構成されるため、PMに代わり交渉や説明を行うことも。
PMOにより、スムーズなプロジェクト運営が可能です。
大規模プロジェクト管理のコツ
ここでは、プロジェクト全体を円滑に進めるためにPM・PMOが心がけたいことに加え、PMに業務を依頼する側の立場から見たポイントについても紹介します。関係者が多くなる大規模プロジェクトでは、依頼の伝え方一つで進行に影響が出るため、依頼内容の整理と伝達スキルも重要です。
プロジェクトの中間で進捗状況を管理する
大規模プロジェクト遂行のため、プロジェクトの中間で進捗状況を管理しましょう。プロジェクト成功には、複数の工程でタスクどおりに作業が完了しているか評価することが大切です。
プロジェクト中間でのタスク管理は、結果的にOCD(品質・費用・納期)を維持した製品の完成につながります。評価にはKPIと呼ばれる重要業績評価指標を活用し、数値と期間を設定します。この評価は中間目標のような位置といえるでしょう。
PMBOKに基づいて管理を標準化する
大規模プロジェクトではPMBOKに基づき管理内容を標準化しましょう。
PMBOKは米国発祥のプロジェクト管理基準で、プロジェクト管理のノウハウを体系的にまとめたものです。QCDの成功を目標にPMBOKは5つのプロセスを標準化。それを基にプロジェクトを計画し実行に移します。プロセスは以下のとおりです。
- 【立ち上げ】
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- ■プロジェクトの目的・予算・成果を定義
- ■プロジェクト憲章の作成
- ■ステークホルダー(利害関係者)の特定を実施
- 【計画】
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- ■プロジェクトの目的を達成するための作業立案や計画を作成
- 【実行】
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- ■立案に基づき人員や資源の調整を行い、計画を実行する
- 【監視・コントロール】
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- ■プロジェクト実行中、継続的に計画との差異をチェックする
- 【終結】
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- ■プロジェクトの終了
- ■プロジェクトの実行中に獲得した情報や経験を保管する
PMやPMOに依頼する際のポイント
大規模プロジェクトでは、PMやPMOにさまざまな依頼や相談を行う場面が頻繁に発生します。例えば、進捗の確認・課題対応の相談・リソースの再配分・顧客調整の代行・関連資料の整備など、業務遂行に必要な判断や支援を仰ぐことが多くあります。
こうした依頼を円滑に進めるには、以下のようなポイントを意識することが効果的です。
- ● 依頼内容は目的・背景・優先順位・期限を明確にする
- ● 口頭依頼ではなく、タスクとして記録・共有する
- ● トラブルや課題を相談する際は「事実」「原因」「期待する結果」を整理して伝える
- ● 社内の意思決定フローや関係者のスケジュールも事前に共有する
依頼者側が状況を整理して伝えることで、PMやPMOは的確な判断や対応がしやすくなります。とくに大規模プロジェクトでは、情報伝達の正確さとスピードが成果を左右します。
大規模プロジェクトにはシステムの導入検討を!
大規模プロジェクトは意思疎通が難しく、また、スペシャリストが必要です。円滑なプロジェクト運営は意思の疎通や業務の標準化が大切。またPMには、知識やスキルの豊富なスペシャリストを選び、PMをサポートするPMOが不可欠です。
プロジェクト管理システムはPMやPMOの業務をサポートし、管理の効率化が可能です。大規模プロジェクトを進める際、プロジェクト管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
